琉球新報や毎日新聞の「安倍総理の「サンゴ移植発言は事実誤認だ」とする印象操作。
報道の中で東京経済大学の大久保教授の発言が悪用されている可能性が高まりました。
この点に絞って書いていきます。
- 琉球新報と毎日新聞の印象操作
- サンゴ移植しても生き残るのはわずか
- 大久保教授発言を「サンゴ移植をした場所」と錯覚させる
- 実は毎日新聞は大久保教授の発言の扱いを変えている
- 他人に語らせる・他人の言葉を利用する者に騙されるな
琉球新報と毎日新聞の印象操作
この件は安倍総理の発言「あそこのサンゴは移植している」の受け止めの話です。
安倍総理は辺野古埋め立て予定区域全体か、その内の埋め立て承認撤回部分を除く区域を対象に「あそこのサンゴ」と言っていたに過ぎません。
それを琉球新報の社説や毎日新聞が曲解し、「辺野古2-1」という現在進行形で土砂投入をしている極一部の区域に限定した発言であると騒ぎ立てているということです。
大久保教授の発言は、そのような記事の中で引用されていました。
サンゴ移植しても生き残るのはわずか
辺野古埋め立て 首相が「あそこのサンゴは移植」と発言したが…実際は土砂投入海域の移植はゼロ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
サンゴの生態に詳しい東京経済大学の大久保奈弥准教授は「発言は事実と異なる。サンゴを移植しても生き残るのはわずかで、そもそも環境保全策にはならない」と指摘した。
こちらは1月8日の琉球新報の記事です。
大久保教授の「発言は事実と異なる」というのは、どういう発言に対してでしょうか?
実は「サンゴ移植しても生き残るのはわずか」との発言は昨年の記事にもありました。
【辺野古から】サンゴ移植に疑問 研究者「生き残る可能性低い」 - 共同通信 | This Kiji:魚拓はこちら。
だが、そもそもサンゴ移植に対して異論もある。大久保氏は、移植によるサンゴ保全の効果は低いと指摘する。那覇空港の滑走路増設事業では、移植されたサンゴの8割超が死滅したエリアがあるなど、移植で生き残る割合は少ないという。
サンゴは動物で、サンゴ礁は地形。サンゴ礁には多様な生き物が生息し、サンゴ礁生態系を形成している。大久保氏は「サンゴを移植しても元の生態系は回復できない」と強調する。
辺野古移設に限らず、沿岸部の大規模開発が繰り返されてきた沖縄では、官民が環境保全策としてサンゴ移植に取り組んできた経緯がある。大久保氏は「移植がサンゴ礁生態系を再生するというのは幻想であり、移植が埋め立て開発の免罪符となっている」と指摘。「辺野古のサンゴを守る方法は移設工事を中止する以外にない」と言い切る。
2018年5月の記事です。
これを読むと「サンゴ移植をしてもサンゴ保全の効果はあまりない」という主張です。
つまり、「サンゴ移植の場所」ではなく「保全の効果がある」という意見に対して「それは幻想である」と言っているのです。これが「事実と異なる」の元となっている可能性が高いです。
1月8日の琉球新報の記事にある大久保教授の発言も、そのような意味で使われているとしか思えません。「辺野古2-1のサンゴを移植した」かどうかという質問に対する回答としてはありえない内容の言及だからです。
大久保教授発言を「サンゴ移植をした場所」と錯覚させる
先述の琉球新報の記事の全体を引用します。
全体を引用しないと検証にならないので、引用の必然性があります。
辺野古埋め立て 首相が「あそこのサンゴは移植」と発言したが…実際は土砂投入海域の移植はゼロ - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に伴う埋め立てに関し、安倍晋三首相は6日に放送されたNHKのテレビ番組「日曜討論」で事実を誤認して発言した。安倍首相は「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」と述べたが、現在土砂が投入されている辺野古側の海域「埋め立て区域2―1」からサンゴは移植していない。
埋め立て海域全体では約7万4千群体の移植が必要だが、7日までに移植が終わっているのは別海域のオキナワハマサンゴ9群体のみにとどまっている。
沖縄防衛局は、土砂投入の海域付近にあった準絶滅危惧のヒメサンゴ1群体を当初移植する方針だった。県から移植に必要な特別採捕許可が得られなかったことから、特別な装置を用いてサンゴを囲み、移植を回避するよう工法を変更した経緯がある。
首相の発言について玉城デニー知事は7日、ツイッターに「安倍総理…。それは誰からのレクチャーでしょうか。現実はそうなっておりません。だから私たちは問題を提起しているのです」と投稿した。
サンゴの生態に詳しい東京経済大学の大久保奈弥准教授は「発言は事実と異なる。サンゴを移植しても生き残るのはわずかで、そもそも環境保全策にはならない」と指摘した。
沖縄防衛局は、サンゴの移植は1メートル以上の大きさを対象とし、1メートルより小さいサンゴは移植していない。
これまでに移植したオキナワハマサンゴ9群体はいずれも「埋め立て区域2―1」ではない場所に位置していた。
移植に向けて沖縄防衛局が県に特別採捕許可を申請している約3万9千群体のサンゴも現在の土砂投入海域にはない。県は申請を許可していない。
首相は「砂浜の絶滅危惧種は砂をさらって別の浜に移す」とも発言した。沖縄防衛局の事業で、貝類や甲殻類を手で採捕して移した事例はあるものの、「砂をさらって」別の浜に移す事業は実施していない。
記事中には「サンゴ移植によるサンゴ保全の有効性」に触れるものはありません。
「サンゴ移植をした場所」についての言及しかありません。
その中で突然大久保教授の「発言は事実と異なる」が出てきます。
それは先ほど指摘した通り「サンゴ移植によるサンゴ保全の有効性」に関するもの。
大久保教授の発言が、まったく別の内容について語っていると誤認させるように悪用されていると言えます。
「いや、今回改めて大久保教授に意見を求めた結果、サンゴ移植をした場所についての安倍総理の発言を事実と異なると言った後にサンゴ保全の有効性に触れたのでは?」
こういう可能性は論理的には残りますが、「サンゴ移植の場所」がどこかについて詳しい者は、サンゴの生態に詳しい教授なんかではないということは明らかなので、その可能性は極めて低いと見るのが筋でしょう。
上記は推論です。しかし、傍証があるのです。
実は毎日新聞は大久保教授の発言の扱いを変えている
安倍首相のサンゴ移植発言が波紋 政府、打ち消しに懸命 - 毎日新聞
サンゴの生態に詳しい東京経済大の大久保奈弥准教授は「サンゴを移植しても長期生存率は低い。環境保全措置としては不十分だ」と政府の対応を疑問視している。
「発言は事実と異なる」という部分がありません。
毎日新聞の記事の内容は、環境保全措置=サンゴ移植によるサンゴ保全の可能性についても触れているため、そのような文脈で読み取ることも可能です。
決して安倍総理の「あそこのサンゴ」に対する反論としては扱っていません。
琉球新報のような扱いはマズイと思って削ったのか、当たり前の扱いをしただけなのかは定かではありませんが、同じ印象操作をしている新聞同士であっても大久保教授の発言の扱いが違うというのは、この場合は琉球新報の扱いが不適切であるという傍証になるでしょう。
もっとも、大久保教授は移設反対の意見のようなので、このような扱われ方をしてもさほど気にしないと思われますが。大久保教授が追認する可能性もありますし。
※追記:大久保教授と思われるツイッターアカウントで「安倍総理の発言は嘘だ」と「移植対象のサンゴが居た場所」の問題として言及していました。
しかし、当該アカウントは辺野古2-1に移植対象のサンゴが存在していないことを知らず、本人確認も取れなかったので、現時点で大久保教授の発言として扱うことは避けます。
他人に語らせる・他人の言葉を利用する者に騙されるな
【他人が語っていない内容を想起させる印象を、他人の言葉を使って創出する】
これは朝日新聞などのマスメディアがよく行う手法です。
過去には以下のような事例を分析しています。
私は、新聞メディアが誰かの発言を引用している際に、その発言は本当にその人が言ったことなのか?この文章から想起される印象は、この人の発言から読み取れるのか?それとも紙面の構成によって創出されたものではないか?と一歩引いて考えるようにしています。
印象操作の手法はありとあらゆるものがあるなぁと、しみじみ思います。
以上