事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

安倍首相の所信表明演説で改憲議論の呼びかけが憲法違反?:自由法曹団のヤベー奴

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10月24日、衆議院本会議で臨時国会の召集にあたり、安倍晋三内閣総理大臣が所信表明演説を行いました。

その中で改憲議論を呼び掛けた部分があり、「何故か」この部分が「憲法違反である」と騒ぎ喚く輩が多数発生しています。

そうした声の中でも、特に「ヤベー奴」が私に絡んできたので紹介します。

同時に自民党憲法草案についての誤解も指摘していきます。

安倍内閣総理大臣の所信表明演説

安倍晋三首相、所信表明演説の全文(7/7ページ) - 産経ニュース

国の理想を語るものは憲法です。憲法審査会において、政党が具体的な改正案を示すことで、国民の皆様の理解を深める努力を重ねていく。そうした中から、与党、野党といった政治的立場を超え、できるだけ幅広い合意が得られると確信しています。

 そのあるべき姿を最終的に決めるのは、国民の皆様です。制定から70年以上を経た今、国民の皆様とともに議論を深め、私たち国会議員の責任を、共に、果たしていこうではありませんか。

「彼ら」からすると、この部分が問題だというのです。

改憲議論の呼びかけが憲法違反…なわけがない

このブログでも過去2度指摘しましたが、「改憲議論の呼びかけが違憲である」という共産党界隈を中心とした批判は法解釈上も誤りであるということを書いています。

今回もまた、アチラ側の人たちが騒いでいます。

安倍総理大臣が憲法違反だという主張をする人たち

これらのツイートに書いてあるのは間違いであるか、少なくとも誤解をまき散らす行為です。

でも、もっとヤベー奴が居ました。

自由法曹団の福山和人弁護士と名乗る者

魚拓:http://archive.is/lshOC

共産党の小池晃とまったく同じ内容のツイートをしているこの者。

弁護士登録上、京都弁護士会所属、京都法律事務所の福山和人という名前の弁護士がいることは確認しましたが、果たして。

上記ツイートの①について、「国の理想を語るもの」と「国家権力を縛るもの」というのは両立します。相互排他的な関係にはありません。

②も憲法96条を無視してます。③はもはや意味不明です。

というツイートをしたら、何と反論がありました。

魚拓:http://archive.is/L8heF

これに対しては以下の返答をしました。

  1. 憲法の機能或いは性質の話から安倍総理個人の理想の話にすり替えている
  2. 発議の後に国民投票するという手続きを無視している。何をもって「民意」なのか?

そもそも「議員発議権は手続にすぎず民意を離れた発議はできません」という文言が謎過ぎて話になりません。民意を反映させるための仕組みが選挙であり、一定数の賛成がないと法案の可決ができないという国会の手続ですから、自動的に民意が反映されることになっています。

殊更に手続と民意を乖離させているのはどういう世界線を生きているのでしょうか?

そして、「民意」はどうやって測るのでしょうか?

たかが新聞社の世論調査で「民意」なのでしょうか?

「民意」を反映するのは選挙結果でしょう。

福山氏の論だとすると、少数政党から憲法改正案は提出できないことになり、憲法に反している上に、議員に改憲原案の提出権限を認めている国会法68条の2に反しています。

国会法

第六十八条の二 議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以下「憲法改正原案」という。)を発議するには、第五十六条第一項の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。

憲法改正「原案」の発議に一定数の賛成が必要であるという点では「民意」を離れた発議は出来ないと言えますが、それは既に手続に顕れています。

そして、自民党改憲草案は、本当に「国民が国を縛る立憲主義に反することは明らか」なのでしょうか?

自民党の憲法改正草案についての誤解

魚拓:http://archive.is/x1plh

①について。その前提でも自民党草案102条の憲法尊重擁護義務の名宛人に「国民」が追加されたりその他の改正があっても国を縛る機能は無くならないし主要な機能でもなくなると解釈するのは困難
安倍総理の発言の内容からは、個人的な見解ではなく憲法の性質の一般的理解を示したに過ぎないと第一に解される(同時に総理の憲法理解でもある可能性もあるが)。そして福山氏の最初のツイートは総理個人の理想に対するものと理解するのは困難。まぁ、本人が胸中を明かした以上はそれに沿いますが。

②について、国民の多数の支持であるかどうかを判断するのは誰でしょうか?多数政党だとすれば自己言及になり(単に自分で自分が「多数派である!」と言っているだけ)、説得力がない。したがって、結局は国民投票で多数の支持かが判断されることになります。

ここで、自民党改憲草案を見ていきます。

自民党憲法改正草案は国民が名宛人になってはいるが

自民党の憲法改正草案

自民党の憲法改正草案のページには、条文とQ&Aが掲載されています。

これによると、現行憲法では99条に定められている憲法尊重擁護義務は、自民党草案では102条に規定されています。

そして、1項に「国民」が「憲法を尊重しなければならない」と追加されています。

2項で国会議員等が憲法を「擁護する義務を負う」と書かれています。

文言上、義務を負うのは国会議員等で、国民は「尊重」であり、重みが違うということが分かります。

では、Q&Aではどう解説されているのか?

自民党の憲法改正草案

憲法も法であり、遵守するのは余りに当然のことであって、憲法に規定を置く以上、一歩進めて憲法尊重義務を規定したものです。

この規定は、飽くまで訓示規定であり、具体的な効果があるわけではありません。

このように、当たり前のことを明文化しただけのことであり、現行憲法の性質を全面的に変更するものではないということが明らかです。

その他の条文の変更を考慮しても、自民党憲法草案が「国民が国を縛る立憲主義に反することは明らか」であると言うことはできません。また、国を縛る機能が主要な機能ではなくなるということも困難です。

いったい、どういう解釈をしたらそのような理解になるのでしょうか?

国民の多くが自民党改憲草案を読んでいないことにつけこんで、印象操作をしているのではないでしょうか?

なお、当然のことですが、この自民党草案は平成24年に作成されたものであり、現在検討されている憲法改正の内容とは全く別個のものであり、今後の国会で提出が検討されているものではありません。

自由法曹団はオウム真理教への破防法適用に反対していた団体

こちらの記事でも指摘していますが、自由法曹団はオウム真理教への破防法適用に反対する声明を出している団体です。

現行憲法の解釈を歪め、自民党草案の理解も印象操作する者が所属している団体がどういうものなのか、これで大方の性質がわかるのではないでしょうか?

以上