根拠は誘導された朝日新聞アンケート。
鳥取県で、歌詞の中に「女子力」があることが男女共同参画推進員によって問題視されていますが、その根拠とした朝日新聞のアンケート結果に誘導が加わっていたことが判明しました。
- 鳥取県:スタミナ納豆の歌詞「女子力」を問題視
- 鳥取県の男女共同参画推進員の意見書と報告書
- 男女共同参画推進員の根拠が朝日新聞の誘導アンケート
- Twitterでの女子力に関する両記事の拡散状況
- マイナビニュースのアンケートは男性200人に対して
- 女子力に関する学術論文、寄稿論文
- 男女共同参画推進に名を借りた言葉狩り報告書
- マーブルキッズ「スタミナ納豆」の「女子力」の歌詞全体
鳥取県:スタミナ納豆の歌詞「女子力」を問題視
スタミナ納豆ダンス 絶賛レッスン中です。 pic.twitter.com/4w0Xl02wdV
— みやもとあきこ (@asbrothers01) 2020年1月20日
【鳥取県】歌詞の「女子力」が 問題視され ガールズバンドの歌が 公開停止になる - 示現舎
- 鳥取県倉吉市で活動するガールズバンド「マーブルキッズ」の「スタミナ納豆」の歌詞の一部に「女子力」があり、県民が問題視する申し出があった
- 県男女共同参画推進員がこれを取り上げ、問題視する内容の意見書を公表した結果、配布された当該楽曲のCDが回収され、Youtube動画が非公開になっている
- 7月22日に県の男女共同参画推進員から意見書が出されたことをマーブル・キッズ側に伝えたところ、マーブル・キッズ側から歌詞を変更するという申し出があった
示現舎の記事から事態をまとめるとこのようになっています。
では、鳥取県の男女共同参画推進員の意見書はどうなっているのか?
鳥取県の男女共同参画推進員の意見書と報告書
令和元年度の申出に対する審査結果/とりネット/鳥取県公式サイト(魚拓)
(3)主な申出内容
「スタミナ納豆の歌」という歌が、学校給食のスタミナ納豆の提供日に、倉吉市内全ての小中学校で繰り返し流されるとの報道があったが、この歌の「女子力が上がる」というフレーズは、女性の固定観念的なイメージを助長する恐れがある。
職員がそのことに気づかなかったのは、行政職員の男女共同参画の理解不足によるものであることから、県として、行政職員に対する男女共同参画の理解を進める研修が必要。
意見書の根拠となる報告書には、その前提として以下のアンケート結果に対する認識が示されています。
2014年にマイナビニュースで行われた男性200名に対するアンケートによると、「女子力」とは何かという問いに対し、「男性を惹きつける力」「かわいく、美しく、女性らしく見せるための演出力」、「やさしさ、包容力、母性、おしとやかさなど、男性にはない性質」「気配りや気遣い」「家事能力」などという回答が多く、「女子力」という言葉には男性の女性に対する願望や理想が投影されていると考えられる。(https://news.mynavi.jp/article/20140521-a137/)
また、2016年に朝日新聞デジタルで行われたアンケートによると、「女子力」という言葉についてどのようなイメージを持っているかという問いに対し、「よくないイメージ」「どちらかというとよくないイメージ」を持っているという回答が51%に達し、「いいイメージ」「どちらかというといいイメージ」を持っているという回答の27.6%を大きく上回った。「女子力」という言葉のどのような点が、良い又は良くないイメージにつながっているかという問いに対しては、「『女性はこうあるべきだ』『これは女性の役割だ』という考えを押し付けている」という回答が38%で第1位であり、第2位の「自分を高めたい女性の気持ちを表している」の13.6%や、第3位の「ほめ言葉として使われている」の10.6%を大きく引き離した。(https://www.asahi.com/opinion/forum/039/)
上述のアンケート結果から、「女子力」という言葉に、性別による固定的な役割分担意識が表れていると感じる人が相当数存在することが判明した。
男女共同参画推進員の根拠が朝日新聞の誘導アンケート
しかし、このアンケート結果は誘導がなされた結果であることが拭いきれないことが判明しました。
朝日新聞の女子力否定記事にアンケートリンクが
朝日新聞のアンケートは「女子力」って? - フォーラム:朝日新聞デジタル(魚拓)で行われており、調査期間が2016年12月26日~2017年1月24日14時 の計1621回答です。
ところが、このアンケート期間中の2017年1月22日に、「女子力」って何だ 宴会でサラダ取り分け上手な人?:朝日新聞デジタル(魚拓)という記事が掲載されたのです。
この記事の内容は導入部分で【女性にばかり多くを期待されることへの「もやもや」】と記述し、【朝日新聞デジタルのアンケート結果から】として、「役割を固定する」「しんどい」など、「女子力」に対する否定的な意見のみを掲載しています。
「朝日新聞デジタルのアンケート結果」が実施期間中のアンケートを指すのかは定かではありませんが、過去にそのようなアンケートを行ったということが確認できないため、実施中のアンケートの中から恣意的に選んだ意見を載せていた可能性が疑われます。
つまり、男女共同参画推進員が『「女子力」という言葉に、性別による固定的な役割分担意識が表れていると感じる人が相当数存在する』と判断した根拠が、予断を持たせて誘導されたアンケート結果であることが示唆されるのです。
※追記:(フォーラム)「女子力」って?:1 そのイメージ:朝日新聞デジタルという記事もありました。こちらはアンケートではなく「宴会でサラダ取り分け上手な人?」というタイトルのものと基本的に同一の内容です。
女子力に関する他の記事
なお、同時期の1月10日にも「女子力」向上、女子校がPR 知性や感性、育成うたう:朝日新聞デジタル(魚拓)という記事が見つかり、当該アンケートへのリンクもあります。
こちらはどちらかと言えば肯定的に捉えている雰囲気ではあるものの、無料部分では明確な肯定・否定は示しておらず、リンクも本文に付けられたものではありません。しかも、有料部分があるため全体の評価は分かりませんでした。
いずれにしても、アンケートの途中であるにもかかわらず、アンケート結果を左右しかねない=実態を反映しない可能性のある行為を朝日新聞は取っていたことになります。
※追記:「女子力」アップ、女子校PR 「モテ」ではなく「自立する力」育む:朝日新聞デジタルという記事がありましたが、有料部分が多くなっています。また、アンケートへのリンクは見つかりません。
Twitterでの女子力に関する両記事の拡散状況
1月10日の「女子力」向上、女子校がPR 知性や感性、育成うたう:朝日新聞デジタル(魚拓)の拡散状況ですが、最も多くリツイートされたツイートで20数回に留まります。画像1 画像2 魚拓1 魚拓2
「女子力」向上、女子校がPR 知性や感性、育成うたう:朝日新聞デジタル https://t.co/brV6tLTemd
— 西口想 (@100lines) 2017年1月10日
そしてインタビューに答えている教頭たちはみな男なのな
学校がこんな方針でどーすんだ?男女問わず「人間力」でいいだろ。人間力がなんか知らんが
— Simon_Sin (@Simon_Sin) 2017年1月10日
「女子力」向上、女子校がPR 知性や感性、育成うたう:朝日新聞デジタル https://t.co/4YTtwwzKBO
ところが、1月22日の「女子力」って何だ 宴会でサラダ取り分け上手な人?:朝日新聞デジタル(魚拓)は、2桁のリツイートを得ているツイートが複数あり、3桁に到達するツイートも見つかります。 魚拓3
「女子力」って何だ 宴会でサラダ取り分け上手な人?https://t.co/BXhPU5jK9u
— もうれつ先生 (@discusao) 2017年1月22日
朝日新聞がやってるアンケート。自治体が活性化の頼みの綱にしたりしてる「女子力」の話ではなく、モット―のような効用としての「女子力」についての論考でアエラっぽい。 pic.twitter.com/Q2t7H7rNpm
さらに、直接のリンクは提示していませんが、朝日新聞の紙面でも当該記事は存在していたようで、それを紹介しているツイートは1万を超えるものがありました。 魚拓4
朝刊でとてもよい特集が組まれてた。
— Tad (@TadTwi2011) 2017年1月22日
”「女子力」って?”
「古くからある性差別を流行に乗って言い換えただけの、非常に不愉快な言葉」
最初の投稿でそのものズバリだった。 pic.twitter.com/r6ulXWuroX
記事をシェアしてるツイートの総数も、1月10日のものよりも遥かに多いです。Twitterで検索しても、私のPCでは読み込み限界までいっても全てのツイートを表示することができませんでした。
したがって、1月22日の「女子力」に否定的なアンケート記事の方が多くシェアされ、そこからリンクをたどってアンケートに投稿した者が多いということが予想されます。
マイナビニュースのアンケートは男性200人に対して
男女共同参画推進員の報告書で『「女子力」という言葉には男性の女性に対する願望や理想が投影されていると考えられる。』とした根拠として「女子力」ってなんだと思いますか? --男性に聞いてみた | マイナビニュース(魚拓)が挙げられています。
これは報告書でも明記していますが、「男性200人」に対するアンケートです。
「男性の女性に対する願望や理想が投影されている」となるのは至極当たり前の話であり、これは当該記事の総評に示された認識をそのまま掲載しているに過ぎません。
女子力に関する学術論文、寄稿論文
女子力に関するアンケート結果はネット検索でいくらでも見つかります。
コメントを載せていただきました。女子力について大学生800人アンケート調査を分析した論文「女子力とポストフェミニズム」はココから読めます。女子力賛成派の方も是非どうぞ→https://t.co/fsEMhryRrE朝日新聞デジタル https://t.co/dMEuDo4Wrt
— おきく (@okiku3rd) 2017年1月11日
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究第25号2016年1月学術論文「女子力」とポストフェミニズムー大学生の「女子力」使用実態アンケート調査からー菊地夏野では、愛知県内の大学生782名に行ったアンケートにおいて、女性は「好き」「どち らかというと好き」があわせて35%「どちらかというと嫌い」「嫌い」があわせて31% であり、男性は 「好き」「どちらかというと好き」があわせて33%「どちらかというと嫌い」「嫌い」があわせて16%、他は「興味なし」という結果となっています。
女性商業誌における特定ワードイメージに関する考察 (野尻秀之教授退職記念号)著者波多江 俊介では、『先行研究は総じて、「女子」・「女子力」といった言葉(特に「女子」)を割合肯定的に評価していることが多く』とした上で、同論文の調査結果について『「女子力」は販売促進効果を狙ってポジティブな言葉として用いられることが多いが、ー省略ー 必ずしも「ポジティブ」な文脈やニュアンスで「女子力」という言葉が“イメージ”されていないことが今次の調査結果から明らかになった』としています。
「女子力」とは何か?何歳までが「女子」なのか? 社会タイプと知覚年齢 2014年11月9日(土)第49回消費者行動研究コンファレンス 於:早稲田大学松井 剛(一橋大学)では、 2014年6月に東京30キロ圏内の満15〜65歳の男女個人750名に対して行われたアンケートで、「女子力」という言葉の使用経験と好感度について男性15歳~19歳と女性60~65歳とで「女子力という言葉は好きである」がそれぞれ約35%,42%となった以外は、全て50%を超えており、10~19歳女性では80%を超える「好きである」という結果が示されています。
いずれにしても、「女子力」に関して悪い印象を持っている者が多数を占めているという事実は確認できないという事が言えるでしょう。
男女共同参画推進に名を借りた言葉狩り報告書
これらのページは、マーブルキッズ「スタミナ納豆」の「女子力」という歌詞を問題視した鳥取県民の申出から意見書・報告書の提示をするまでに、検索すれば存在が確認できていたはずのものです。
このように、鳥取県の男女共同参画推進員の報告書は、その根拠となる調査結果を吟味することなく、恣意的に利用して、その結果から演繹して「女子力と言う言葉は固定的な役割分担を助長する」と結論づけていることが明らかです。
私からは、鳥取県並びに倉吉市の関係部署に当該事実を指摘し、報告書の内容を精査するようお願いするメールをしました。
この話は「男女共同参画」と名の付く条例があるような自治体すべてに波及する事柄であるため、看過できません。
根拠に基づかない言葉狩りを許してはいけないと思います。
一盛真、高力英明、北野彬子、谷本恵美さん、こんな報告書はだめですよ。
マーブルキッズ「スタミナ納豆」の「女子力」の歌詞全体
鳥取県、「女子力」の表現を規制!? | 地元バンドの歌詞にマッタ!?|「納豆食べるよ~女子力上がるし」…歌詞に苦情、市教委がCD回収 | KAZZ-ASH
マーブルキッズ「スタミナ納豆」の「女子力」の歌詞全体については上記記事が参考になりますが、果たして「固定的な役割分担を助長する」のでしょうか?
このような実質面からも考えて頂きたいと思います。
以上