事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

海乱鬼、東京都に業務妨害の電話を呼びかけ:ヘイト規制条例と無関係な内容

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海乱鬼という似非保守界隈の匿名アカウントが行政事務に混乱を生じさせる呼びかけをしています。

海乱鬼、東京都総務局人権部に業務妨害の電話を呼びかけ

上念司氏の事務所から著作権侵害で法的手続が進められている海乱鬼(かいらぎ)ですが、発端となった動画の発言が「不当な差別的言動」であるとして、東京都総務局人権部に対して通報の電話をするよう、呼びかけをしています。

これは業務妨害です。

東京都の条例の対象外の行為

東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例

第十二条 知事は、次に掲げる表現活動が不当な差別的言動に該当すると認めるときは、事案の内容に即して当該表現活動に係る表現の内容の拡散を防止するために必要な措置を講ずるとともに、当該表現活動の概要等を公表するものとする。ただし、公表することにより第八条の趣旨を阻害すると認められるときその他特別の理由があると認められるときは、公表しないことができる。

海乱鬼のやっていることは、「東京都の条例の対象外の行為」を呼びかけています。

条例12条を持ち出しているのですが、そこで知事ができることは「不当な差別的言動」に対してです。

不当な差別的言動」は、条例では8条で定義されています。

第八条 都は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(平成二十八年法律第六十八号。以下「法」という。)第四条第二項に基づき、都の実情に応じた施策を講ずることにより、不当な差別的言動(法第二条に規定するものをいう。以下同じ。)の解消を図るものとする。

「法第二条に規定するもの」とあるので、以下の法律の2条の定義が使われます。

本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律

(定義)
第二条 この法律において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」とは、専ら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの(以下この条において「本邦外出身者」という。)に対する差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動をいう

長いので分解すると

  1. 本邦外出身者に対する差別的意識を助長等するのが専らの目的で
  2. 公然と
  3. 本邦外属性を理由として
  4. 本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する

この中で重要なのが「本邦外属性を理由として」です。

日本人(日本国籍者)であっても本邦外属性を有している者がおり(大坂なおみ選手など)、そういった人に対して本邦外属性を理由として差別的言動をすれば法律・都条例の対象になり得ます。

しかし、「日本属性を理由として」差別的言動をしても、法律・都条例による非難対象には、文言上はならないということになります。

そのため、たとえば在日韓国・朝鮮人が「チョッ〇リ」と言われても、法律・都条例における「不当な差別的言動」ではないということになりかねず法令自体が非常に差別的なものになっています。

その可能性がCMの謳い文句からは伺えるのがNIKEのCMの物語

さて、上念氏の発言にはそのような要素は微塵も存在しないので、最初から東京都の条例の対象外の言動ということになります。

※追記:条例は日本人属性者に対するものだからといって許される趣旨ではないですが、出自などの「何らかの属性を理由とした排斥」という要素を捕捉するものであるため、上念氏の発言にその要素が無いのは明らかです。

業務妨害ではないか

最初から東京都の条例の対象外の言動なのに、東京都に電話等を呼びかける行為。

端的に言って業務妨害行為だと思います。

しかも上念事務所の情報と、例文まで用意して呼びかけています。

人権一般の場合は別の部署

もっとも、都条例の「不当な差別的言動」に当たらない言動であっても、一般の人権問題として相談する窓口はあります。

東京都総務局人権部 じんけんのとびら

人権一般に関しては「東京都人権プラザ一般相談」にアクセスするよう促されてます。

東京都人権プラザ

他にも東京法務局などがあります。

そちらに相談する、ということであれば、外野が止める権利もないです。
もっとも、明らかに人権侵害なんて発生していないので、権利は無いが、やめろと言いたい。

しかし、私はブロックされているのでこのことを伝えようもありません。

議論や頭の痛い指摘から逃げているせいで、真実に辿り着けない。

完全に自業自得です。

不特定多数に対する言及について

上念氏の発言は、虎ノ門ニュースの番組収録が行われている共同通信ビルの近くにおいて、右翼が街宣車で拡声器を使って大声を出していることを例に出し、「カチ込んで来てもぶっ○します。選挙中で反撃出来ない時に来た卑怯者、つるんでるクソどもは全員ぶっ○そうと」といった内容の発言をしていました。

名宛人不明なわけです。

で、海乱鬼は以下の記事(のBIGLOBE掲載版)をTwitterでシェアして、「不特定多数でも脅迫になる」と言っていますが…

通学路に「クソがきども死ね」わら人形吊り下げ逮捕…「不特定多数」相手でも犯罪? - 弁護士ドットコム

松岡義久弁護士に聞いた

ー中略ー

特定の個人ではなく、不特定に向けての内容だった場合はどうか。

「その告知の手段をとった時点では、告知内容の害悪が不特定の者に向けられた場合でも成立する余地はあります。例えば、落とし文を拾った者に対して害悪を加える旨を記載して実際に拾った者がこれを読んだ場合などです。

  1. 弁護士に抽象的な可能性を聞いただけ
  2. 脅迫が成立するとした例示も、外で落とし文をしていた場合

こんな程度です。

繰り返しますが、上念氏の発言はクローズドの有料サロン内での話であって、外に向けて発信したわけではなく、言及対象やその関係者に向けたものではありません。

したがって、このケースに当てはまらず、不特定多数の者に対する脅迫は成立しません。

たとえば無差別の殺人予告などの書込みがあっても、それは通常、脅迫罪は成立せず、捜査や警備を担当する警察の業務を妨害したという理由で、業務妨害罪が成立し得るにとどまります。

こんなことは他の弁護士事務所のページでいくらでも書いているので、検索をまったくしない情弱向けの発信です。

要するに、フォロワーを舐めているわけです。

海乱鬼の何がダメだったか

  1. 東京都条例12条を引いてるが、そもそも対象外の行為
  2. 人権一般の場合は相談窓口があるが都の総務局人権部企画課は担当部署ではない
  3. 人権侵害が発生しているとは到底思えないが
  4. ただでさえ忙しいのに、発言と関係のない者に対してまで電話の呼びかけをしており、職員に過大な負担をかけさせることに
  5. もはや業務妨害行為

以上