事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

日経の「新型コロナ超過死亡」記事で騒い出る人は感染研のQAとデータを読め

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国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9627-jinsoku-qa.html

日経新聞で「新型コロナ超過死亡」記事が出ており、『新型コロナの死亡者報告は漏れている』さらには『感染研のデータが隠蔽・改竄されている!』などといった声が出ている始末ですが、感染研の超過死亡データの無理解から来てるので注意しましょう。

日経の「新型コロナ超過死亡」記事

新型コロナ:コロナ感染死、把握漏れも 「超過死亡」200人以上か :日本経済新聞魚拓

新型コロナウイルスの感染が拡大した2月中旬から3月までに肺炎などの死亡者が東京23区内で200人以上増えた可能性がある。同じ期間に感染確認された死亡数は都全体で計16人。PCR検査で感染を確認されていないケースが潜み、把握漏れの恐れがある。こうした「超過死亡」の分析に必要な政府月報の公表は2カ月遅れで、欧米の対応と差が出ている。

省略 (途中、2019後半~2020年のインフルの超過死亡のグラフがある)

超過死亡は19年後半も発生。インフルエンザの流行が早く、東京都で12月上旬に流行が拡大した影響とみられる。年明けには終息しており、再び超過死亡が発生した2月中旬以降は新型コロナが影響した可能性がある

日経の「新型コロナ超過死亡」記事で問題となる記述はこの部分でしょうか。

東京都のインフルエンザの超過死亡者数

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国立感染研:http://archive.is/pn6MD

日経新聞が使っているデータ、グラフはこの時点のものです。

日経はここから、「インフルエンザが収束したのに3月以降に跳ね上がっているということは、これは新型コロナの影響である」という推論を行っているのです。

ちょっと調べればこの時点で推論をすることすら憚られるというのは分かるので、これを記事化する日経の神経を疑います。

「超過死亡」の意味:インフルエンザの超過死亡を新型コロナに適用する愚

参考:インフルエンザ・肺炎死亡における超過死亡について

超過死亡とは、インフルエンザが流行したことによって、インフルエンザ・肺炎死亡がどの程度増加したかを示す、推定値である。この値は、直接および間接に、インフルエンザの流行によって生じた死亡であり、仮にインフルエンザワクチンの有効率が100%であるなら、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する。この、インフルエンザの流行によってもたらされた死亡の不測の増加を、インフルエンザの「社会的インパクト」の指標とする手法について多くの研究がなされ、現在の国際的なインフルエンザ研究のひとつの流れとなっている。

まとめると、超過死亡とは【インフルエンザ関連死の増加分の推計値であり、ワクチンの有効率が100%と仮定した場合にワクチン接種によって回避できたであろう死亡数】を意味します。

日本国内のインフルエンザ関連死の推計のために設計された国立感染研独自の概念なのであって、新型コロナに対して流用できるかどうかはまったくわからない、というか、流用できると考えるのはおかしいというのがここのページの説明だけでも理解できなければおかしい。

感染研のQAに基づく数値変動の理由・原因

 

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国立感染症研究所:https://www.niid.go.jp/niid/ja/from-idsc/9627-jinsoku-qa.html

インフルエンザ関連死亡迅速把握システムについてのQ&A

Q.毎週、「実際の死亡数」が変化しているように見えるのはなぜですか?

A.複数の保健所がある地域の場合、入力のタイミングがばらばらなので、入力された死亡数の平均値から地域全体での死亡数を推測して「実際の死亡数」として評価しています。そのため、時間の経過に伴い保健所からの入力が進むにつれ、「実際の死亡数」の値が増減することがあります。通常はシーズンが終わった5月以降に最終の数が確定します。

Q.このシステムで新型コロナウイルス感染症の影響を評価することはできますか?

A.新型コロナウイルス感染症の流行により、超過死亡が発生する可能性はあります。しかし本事業は毎年冬に流行するインフルエンザを想定して長年にわたって運用されているシステムです。本事業で新型コロナウイルス感染症による超過死亡への影響を評価することはできません

超過死亡についての説明はこのグラフを作成した当初からこちらでも行われています。

死亡数が変動するのは報告にタイムラグが出ることと、統計学の手法を用いた推計値であるため、というのが分かります。

東京都の過去の超過死亡の図を見れば、ずっと閾値を超えた数値なわけで、今年の数値だけが異常なものであるということではないわけです。

改竄・隠蔽が行われていると騒ぐ人へ

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こちらが最近のグラフですが、先述のグラフと比べると2020年の9週以降の死亡数が減っているのが分かります(同じ時期を見たグラフです)

これをもって「超過死亡が改竄・隠蔽された!」と騒ぐ人がSNSを見てると居るのですが、一般人がこう思ってしまうのはともかくそれなりの人たちも問題視しているので困ったものです。

このグラフの数字は推計手法+報告のタイムラグによって遡って変動する性質のものなので、こういうことは「いつも通り」なのです。

ためしに3月時点のグラフを見てみましょう。

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国立感染研:http://archive.is/xJV8a

3月11日の魚拓にあるグラフです。

こちらは逆に2020年第1週以降は数字が大幅に下がっているように見えている所が多いのが目立ちます。

私も新型コロナが話題になった1月中旬からこのグラフはずっと見てきたので、報告が進むにつれて数字が多くなったり少なくなったりすることはよくある話なのがわかります。それ自体は問題ではありません。

もっとも、『報告が集計されるのが遅い』という問題はあると思います。

大阪・北海道・愛知のグラフでは超過死亡は無し

そもそも感染研のグラフはインフルエンザに対応したモデルなのであって、新型コロナに流用することができないということは既に指摘しました。

仮に、流用するとしてもということで指摘したいのですが、東京以外にも新型コロナが流行した地域は大阪・北海道・愛知などがあるわけです。

そこのグラフは見ましたか?

閾値を下回っているのが分かります(魚拓を見てもずっと下回ってる)

日経新聞の記事は「東京都」に限定して論じているのですが、それは日経が煽りたい方向性に都合の良いグラフが東京都でしか見られないからです。

バカバカしいにもほどがあります。

まとめ:日経は煽動目的の記事をやめろ

  1. 国立感染研の「超過死亡」 のグラフは日本のインフルエンザのために独自に作られたモデルに基づく
  2. 感染研の超過死亡は統計的な推計値であり、ワクチン接種によって回避できたであろう死亡数を意味する
  3. よって、新型コロナの議論に直接当てはめるのは不適切
  4. この集計は報告のタイムラグによって計算結果も変わり、数字が変動する性質のもの
  5. よって、報告が集計しきっていない時期の数字をもって記事にしている日経は意味不明どころか煽動目的でしかない

「新型コロナの超過死亡」がまったくないとは思いません。

しかし、それがどの程度なのか、軽々に指摘できないでしょう。現時点ではそのためのモデルが作られていないため、専門家による議論を待つ必要があります。

グラフの隠蔽だとか改竄だとかいう話は単なる勘違いに過ぎません。

以上