事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

立憲民主党吉田はるみ議員「憲法9条自衛隊明記は中国の意向を考えろ」4月20日憲法審査会

外国忖度政党

立憲民主党吉田はるみ議員「憲法9条自衛隊明記は中国の意向を考えろ」

吉田はるみ さて、この憲法9条の議論の中で、自衛隊を明記することへの積極的な発言もありました。しかし、自衛隊を明記することは、国内だけの問題に留まりません。国際的にどう受け止められるでしょうか。2022年7月13日の産経新聞が中国の受け止めをこのように報じています。「憲法9条への自衛隊明記を行えば、戦後の歴史や平和の発展の道を否定する危険な信号を隣国とアジアに発信することになる」と。外交上の問題はないでしょうか。書かないこと、問題にしないこと、言わないこと、など、絶妙なバランスの上に外交は成り立っていることがございます。

2023年4月20日の衆議院憲法審査会で、立憲民主党の吉田はるみ議員が「憲法9条への自衛隊明記は中国の意向を考えろ」という趣旨の発言をしていました。

当該産経新聞の記事はネットでも確認できます。

中国、台湾の副総統弔問訪日「政治的策略」と反発 - 産経ニュース

中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は12日付で「改憲は宝箱ではなくパンドラの箱。開ければ災いが続く」と題した社説を掲載した。この中で、憲法9条への自衛隊明記を行えば、「戦後の歴史や平和発展の道を否定する危険な信号を、隣国とアジアに発することになる」と主張。日本政府に「軍国主義が行きつく果ては断崖絶壁だ」と一方的な考えを示した。

軍事分野の法体系について外国や国際社会が注目すると言うのは一般論として当然ですが、「戦後の歴史や平和の発展の道を否定する危険な信号」というのは言いがかり以外の何物でもなく、そのような反応に従うべき道理はありません。

このような妨害のための主張ではなく、現実を先に進めようとする実質的な議論の方が取り上げられるべきでしょう。

憲法72条、73条ではなく9条の2を創設するべきという議論

自民党の新藤義孝議員は改正案で内閣総理大臣と国会によるシビリアンコントロールの重要性は理解しているとしたうえで、国防規定として書き込むことが望ましいとしました。内閣の職務として72、73条に書き込むということ案については、当該条項は行政組織各部の統制について規定しているが、自衛隊は究極の実力行使を行う特別な機関であり、国防という機能的側面と民主的統制は切り離せないとしました。

日本維新の会小野泰輔議員も、憲法72、73条は行政各部を等しく扱っており、仮に自衛隊を書き込むと扱いの差異が生じることが説明できなくなるため、自衛のための実力組織という特殊性に鑑み9条に書き込むべきではないかとしました。

「9条に自衛隊を書き込んでも違憲論争は永遠に続くのでは?」という懸念について

「憲法9条の2に自衛隊を書き込んでも自衛隊の違憲論争は永遠に続くのでは?」という懸念が出ています。

国民民主党の玉木雄一郎議員は、憲法9条2項が残存したままでは戦力不保持条項の解釈で自衛隊の能力が規定され、その中での議論に終始するため、真に国防規定とするには単に自衛隊条項を追加しただけでは不十分だろう、そのために9条2項の削除を議論すべき、また、残すとしても自衛隊は9条2項の例外として規定するべきだ、という趣旨の発言をしました。

維新の小野議員からは、9条2項削除は政治的ハードル抜きにすればあり得るものであり、自衛権の範囲について、国際法上フルスペックの集団的自衛権を憲法上は認めた上で(現行憲法では認められていないという解釈)、法律でその範囲を実質的に画定する道もあるのではないか。その際に憲法裁判所で審査する仕組みを視野に入れるべきではないかという旨の発言がありました。前提として、自衛権の範囲は国際情勢・安全保障環境によって流動的であるところ、自衛権の範囲を憲法で確定してしまうと、硬性憲法である日本国憲法では事態に対応できなくなるという懸念を示しました。

自民党の新藤義孝議員は、国防規定として自衛隊を明記することで独立した主権国家としての法体系を完成させるという目的があるとし、集団的自衛権の範囲も解釈に委ねられることに変わりはないとしています。

国家安全保障戦略について | 内閣官房ホームページ

防衛省・自衛隊:「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」

その他、憲法改正の国民投票時のネット広告規制や緊急事態条項の新設についても議論がありました。

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