事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「未成年の水着撮影会は危険有害業務の労基法違反だから埼玉県営プールの水着撮影会中止は当然」について

事案が違います。

埼玉県営プールの水着撮影会中止事件

2023年6月、指定管理者である公益財団法人「埼玉県公園緑地協会」が運営する2つの県営プールで複数の主催者により実施が予定されていた水着撮影会が全日程中止となった事件。

その後、ルール違反が認められなかった者やルールが明確でなかった会場において他の会場のルールを適用された者に対する中止要請については、県知事の指導で撤回(計4者)されました。

これに関連して、次のような言説がSNSで流れました。

未成年の水着撮影会は危険有害業務の労基法違反だから埼玉県営プールの中止は当然である

これは端的に間違いです。

未成年の水着撮影会が労基法上の危険有害業務となった例

女子高生を撮影する「JK撮影会」で女子高生にみだらなポーズを取らせ男性客に撮影させたとして、県警少年捜査課と神奈川、戸部両署は4日、労働基準法違反(危険有害業務の就業制限)と児童福祉法違反(有害支配)の疑いで、店舗経営者2人と自称モデルの少女(19)=厚木市=を逮捕した。

県警によると、JK撮影会に労基法だけでなく児童福祉法も適用するのは全国で初めて。店舗ドアを施錠し、女子高生が自由に出入りできないようにするなどしていたという。

確かに、「未成年の水着撮影会が労基法上の危険有害業務として逮捕された」例ではあります。が、詳しい事案を見ると、明らかに埼玉県営プールでの事案とは異なります。

自己の表現ではなく客へのサービスとしてのポージングと写真撮影

逮捕容疑は、「みるきーはーと撮影会」の男と少女は5月31日、「コスマリン撮影会」の男は同7日、各店舗で、高校2年の女子生徒(16)に、男性客の注文に応じて下着が見えるポーズなどを取らせて撮影させた、としている。同課によると、両容疑者は容疑を認め、少女は否認している。

2店は、メイドなどのコスチュームや制服、水着などを着たモデルの女子高生らにポーズを取らせ、50分~1時間9千円で客に撮影させる形式で、マンションの一室で営業。学校の教室をまねたり、女子高生の私室をイメージしたりした撮影スペースを造っていた。

要するに「自己の表現」の要素が非常に薄い、「個々の客へのサービスとしてのポージングと写真撮影」が行われていたケースでした。場所もプールではなくマンションの一室など、水着姿で居ることが自然な環境ではない場所でした。

実は同様の事件が他にもあり、摘発されています。

【衝撃事件の核心】今度は「JK撮影会」摘発 リフレにお散歩…業態変えいたちごっこ(1/3ページ) - イザ!

東京都豊島区のマンション内に設けたスタジオの個室で、千葉県松戸市に住む同県立高校2年の女子生徒(16)に水着などを着用させた上、過激なポーズを男性客に撮影させた、としている。同課によると、同容疑者は容疑を認めている。

さらに有料部分では、「ホームページで募集した男性客を相手に撮影会を開催」「下着での撮影も追加料金で応じていた。」という情報もありますから、これを単なる「プールでの水着撮影会」と同列に論じることはできません。

年少者労働基準規則の特殊の遊興的接客業における業務・厚生労働大臣が別に定める業務

上掲摘発事例の法的根拠としては「年少者労働基準規則」にある「特殊の遊興的接客業における業務」です。この規則は労働基準法62条の「その他厚生労働省令で定める危険な業務」を定めているものです。

なお、規則8条46号の「厚生労働大臣が別に定める業務」は、指定がされていないようです。細かい条文や行政通達については奥村徹弁護士の以下のページを参照。

ここで改めて書く必要が無いくらいまとまっており、今回の埼玉県営プールでの水着撮影会に未成年が居たとしても、それだけでは労基法違反ではありません。

ただ、「埼玉県公園緑地協会」は使用条件に「未成年の出演禁止ルール」を設定しており、それに反した主催者が一部居たようなのですが、その撮影会の態様がどのようなものであったのかが現在の報道では不明なので、断定的な判断は避けます。もっとも、仮に労基法違反なら既に摘発されてるハズです。

埼玉県の水着撮影会における埼玉県青少年健全育成条例の「無店舗型有害役務営業」との関係

なお、埼玉県の水着撮影会における埼玉県青少年健全育成条例の「無店舗型有害役務営業」との関係についても以下で触れており、「客の性的好奇心をそそるおそれ」該当性が否定されると解説されています。

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