日本から北朝鮮に不正輸出された事例について。
CISTECと警察庁のデータがあったので紹介します。
- 日本から北朝鮮に不正輸出された事例
- 北朝鮮に不正輸出された製品・品目と韓国の戦略物資無許可輸出摘発の違い
- 日本から北朝鮮にフッ化水素酸が輸出された事例は国連の北朝鮮制裁前の1996年
- 大量破壊兵器関連物資等不正輸出事件一覧表
- まとめ
日本から北朝鮮に不正輸出された事例
外為法違反事例 | 安全保障貿易情報センター (CISTEC)
こちらの【不正輸出事件の概要】という資料に不正輸出事件のリストがあります。
昭和41年からこれまでで51件の関税法・外為法・外国貿易法違反事件があります。
日本が韓国に対して優遇措置の停止をしたのは「リスト規制」品目の3つですが、これらは基本的に外為法で処理されます。
なお、韓国の不正輸出のリストに書かれているものが、日本においてリスト規制にかかるものであるのか、その重なりはどうなっているのかは定かではないので、一概に比較はできません。
北朝鮮に不正輸出された製品・品目と韓国の戦略物資無許可輸出摘発の違い
重要なのは品目です。
韓国のリストが大騒ぎになっているのはそれが軍事転用可能な製品・素材を含むから。
日本のCISTECの資料にある北朝鮮に不正輸出された製品・品目をながめると、そのほとんどが日用品・壁紙・食料品など、概略的なものや「中古タイヤ」「冷凍たら」「GM社製乗用車「シボレー・アストロ」」などです。
しかし「大量破壊兵器関連物資等」ばかりではありません。
これを韓国の戦略物資無許可輸出摘発と同じように考えることは不可能です。
ただし、1例だけ北朝鮮にフッ化水素酸が輸出された事例が記録されています。
日本から北朝鮮にフッ化水素酸が輸出された事例は国連の北朝鮮制裁前の1996年
1996年(平成8年)1月、大阪港入港中の北朝鮮船舶にフッ化ナトリウム50キログラムを、続いて2月、神戸入港中の北朝鮮船舶にフッ化水素酸50キログラムを、それぞれ輸出託送品として積み込み、北朝鮮に不正輸出していた。
※フッ化水素酸及びフッ化ナトリウムは化学・生物兵器の原材料及び製造設備等の輸出規制であるオーストラリア・グループの規制対象であり、サリンの原料ともなるものである。また、本件は、北朝鮮に緊急支援米を送るための北朝鮮船籍貨物船を利用した不正輸出であった。
1996年にこういう事件がありましたと。そういうことです。
当時はまだ、北朝鮮への国連制裁前の話です。
この違反をした東亜技術工業(株)ですが、その後は名前が出てきません。社長が朝鮮総聯の幹部だったこともあるようですが⇒サリン原料まで輸出 神戸の“黒幕”の素顔:Foresight | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト
だからといって「仕方がない」では済みません。
日本は改善して、管理体制を強化、運用を改善したんでしょう。
これに対して、韓国は直近の4年の事案において、同じ企業が何度も不正輸出を繰り返しています。⇒韓国、無許可輸出摘発リストで戦略物資輸出管理制度の透明性を「アピール」の異常性
23年前の1件の事案と、直近4年の数件の事案を比較する意味はあるのでしょうか?
問題は単に何件発生したか、何件摘発したか、ではなく、管理体制を整えて改善してきたかです。聯合ニュースが鬼の首を取ったかのように報じていますが、何の意味も無いので無視しましょう(韓国が日本への輸出優遇を止めたところで何になるのか?)
戦略物資が日本から北朝鮮に密輸出 韓国議員が日本の資料を引用 | 聯合ニュース
戦略物資、過去に日本から北朝鮮に密輸出か 韓国議員が日本の資料で確認 - ライブドアニュース
さて、「戦略物資」は日本で言えば「大量破壊兵器関連物資等」になりますが、それに焦点を当てた資料は別にあります。
大量破壊兵器関連物資等不正輸出事件一覧表
CISTECのものとは別に、警察庁が刑事事件として立件した大量破壊兵器関連物資等不正輸出事件の一覧表もあります。
【治安の回顧と展望(平成30年版)】の資料を見ると、昭和41年からこれまで全部で36件の大量破壊兵器関連物資等不正輸出事件があったことがわかります。
また、対北朝鮮措置に係る事件の一覧表もあり、こちらは平成19年からこれまで38件が記録されています。
いずれも関税法・外為法・外国貿易法違反事件のものですが、詳細が書かれていないので、どういう品目が輸出されていたのかは分かりません。
まとめ
韓国のリストは直近の4年間であるのに対し、日本のは数十年間のものです。
また、ここであげた資料も韓国のリストも、「リスト規制」の枠組みでの話なのかは判然としません。別のものが相当数混ざっていると思います。
いずれにしても、日本の不正輸出事例と韓国のものを同列に語ることはできません。
本件に限らずいろんな報道においてデータの性質の違いを誤魔化すものがありますが、よくよく見てみると大したことがないものばかりですね。
以上