韓国の産業省は、「韓国は戦略物資管理院の年次報告書で、戦略物資無許可輸出摘発と措置の現状を毎年公開している」「日本は韓国とは異なり、不法輸出の摘発件数も公開していない」と言っていました。
韓国が公表しているとするデータに何が書いてあるかを見てみましょう。
- 韓国産業省「年次報告書で摘発と措置の現状を毎年公開」
- 韓国の戦略物資管理院(전략물자관리원(KOSTI)) の「年次報告書」
- 韓国の公表と不正輸出リスト
- 日本の大量破壊兵器関連物資等の摘発事例の公表
- 韓国も輸出管理強化の部分はあるがホワイト国としてどうか
- まとめ:韓国の不正輸出データの公表は不透明
韓国産業省「年次報告書で摘発と措置の現状を毎年公開」
日언론 ‘밀수출 보도’에 정부 “수출통제 투명성 반증”
資料を見ると、無許可輸出摘発件数は、2015年14件、2016年22件、2017年48件、2018年41件増加傾向を見せた。類型別には生物化学兵器関連系列が70件で最も多かった。加えて、通常兵器(53件)、核兵器製造・開発関連(29件)、ミサイル兵器(2件)、化学兵器(1件)の順に多かった。
省は傘下機関である、戦略物資管理院の年次報告書で、戦略物資無許可輸出摘発と措置の現状を毎年公開している。むしろ日本は韓国とは異なり、不法輸出の摘発件数も公開していないという見方も出ている。
産業省は、「日本は、いくつかの摘発事例のみを選別して公開する」とし「戦略物資輸出統制先進国である米国は、無許可の輸出摘発実績と主な事例を公開する」と伝えた。
それとともに「これは韓国の戦略物資の輸出管理制度が効果的かつ透明に運営されているという反証」と付け加えた。
公開してるということがあまり知られてなかったようですが一応公開してるようです。
どこで公開してるかを調べました。
韓国の戦略物資管理院(전략물자관리원(KOSTI)) の「年次報告書」
このページの左下にレポートがあります。
現在は2018年の年次報告書(2018 연례보고서)が見えますので、そこをクリックするとレポートPDFがダウンロードできるページに行きます。
本件で関係のあるのは、「無許可輸出による処分企業の現状」(무허가수출로 인한 처분 기업 현황)で、レポートの86頁から始まります。
韓国は対外貿易法に基づいて輸出許可等に違反した者に対し、3年以内の範囲で戦略物資等の全部または一部の輸出や輸入を制限することができる。また、無許可輸出または虚偽その他の不正な方法で許可を受けた者に対し、最大8時間の教育指導を課すことができる
表は、上から輸出制限、教育指導、それらの合計、というものになっています。
これは摘発数とイコールではなく、その中から処分をした数といえます。
その後の記述は、過去の処分事例と管理体制についての展望についてのものです。
韓国の公表と不正輸出リスト
朝鮮日報とFNNが報じた不正輸出リストには、企業名を指すアルファベット、摘発された日時、不正輸出された品目、輸出額、輸出先国、行われた行政処分、品目の規制レジーム上の類型が書いてあります。
これは国会議員が入手したものであって、一般に公開されているものではありません。
しかも、このリストですら、どの企業が違反をしたのかが分かりません。
日本の大量破壊兵器関連物資等の摘発事例の公表
日本の場合は安全保障貿易情報センター(CISTEC)のページで大量破壊兵器関連物資等の摘発事例が公表されています。
これを見ると、「いつの行為か」「どの企業名のどの立場の者が」「何の製品を」「どのようなルート・手段で不正輸出しようとしていたのか」「輸出先はどこだったか」「処分の種類」「処分の時期」などが事細かに記載されています。
他、警察庁も刑事事件とした摘発データを別途公開しています。詳細は以下。
韓国も輸出管理強化の部分はあるがホワイト国としてどうか
一応、年次報告書には韓国政府が近年取った輸出管理政策として、特定品目の輸出規制強化をしていることなどが書かれています。
ただ、同時に、2016年の法改正によって、イランに対する主要品目の輸出が従来に比べて自由になったため、これまで輸出が禁止されていた戦略物資の品目が輸出可能になったことなど(77頁)も書いています。
まとめ:韓国の不正輸出データの公表は不透明
韓国が公表しているデータだけでは、どの企業が違反をしているのかが分かりません。
そのため、現場で取引を行う日本企業が、違反をしている企業であると分からずに取引をする可能性があります。これを「透明性」と表現するのは異常でしょう。
韓国側の不透明さについてはFNNが詳細に論じています。
専門家が見た韓国不正輸出リストの問題点……韓国政府は悪質企業名の公表を - FNN.jpプライムオンライン
以上