事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

韓国軍火器管制レーダー照射の説明は二転三転していない:一貫した嘘

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 「韓国政府の主張が二転三転している」

レーダー照射事件に関するこの認識は間違いです。

日韓のメディアが誤解を招く報道を繰り返したことが原因です。

韓国国防部の公式見解や多数のメディアの情報を整理していきます。

※追記:あくまで【レーダー照射の事実】の主張についてです。当時の日本海の気象や無線交信の事実についての検証ではありません。

韓国軍レーダー照射事件の各社の報道

「韓国軍は火器管制レーダーを照射したと主張している。」

このような認識が日本で広まるのは韓国メディアが12月22日に報道してからです。

また内輪の事情優先、韓国「日本が過剰反応」と反論:イザ!2018.12.22 19:28 魚拓はこちら。

「気象条件が良くなく、遭難船を迅速に見つけるため、火器管制レーダーを含む全てのレーダーを作動させたが、哨戒機を狙う意図は全くなかった」というのが韓国軍関係者の説明だ。「人道的救助のための措置だった」と日本政府に十分伝えたとも釈明している。

「韓国軍関係者」というのは、聯合ニュースの「韓国軍の消息筋」ですね。

北朝鮮漁船救助の際に日本哨戒機へ火器管制レーダー照射=韓国軍2018.12.22 10:01 魚拓はこちら。

韓国軍の消息筋は「漂流中だった北の漁船が近くの船舶に救助信号を送り、わが軍が海軍駆逐艦(広開土大王・3200トン)を派遣し、救助作業を行った」と述べた。また、「出動した駆逐艦は遭難した北の船舶を迅速に見つけるため火器管制レーダーを含むすべてのレーダーを稼働し、この際、近くの上空を飛行していた日本の海上哨戒機に照射された」と説明した。

「火器管制レーダーを含む全てのレーダーを作動させた」

確かにこのように報道されています。

しかし、「そのような主張をしていた」というのは事実なのでしょうか?

情報源も韓国政府の公式ではなく「韓国軍の消息筋」などということに注意です。

一方、より詳細な言及をした記事がハンギョレ新聞から出ていました。

日本、“レーダー事件”外交争点化を意図…韓日外交会議時も抗議 : 日本•国際 : hankyoreh japan登録:2018-12-23 21:31 修正:2018-12-24 08:26 魚拓はこちら。

韓国軍は、救助のためにすべてのレーダーを使っただけだと明らかにした。
ー中略ー
度重なる日本側の主張に海軍関係者は「気象が良くない時や緊急状況では、火器管制用で捜索することもある」として「わが国の駆逐艦は日本の哨戒機と関係なく捜索のためにレーダーを稼動し続けていた」と説明した。彼は、日本の防衛省が「(哨戒機に向かって)火器管制レーダーを照射した」と主張したことにも反論した。射撃統制システムのうち、広範囲な探索をする3次元レーダー(MW08)を稼動しただけで、射撃のために標的にビームを撃ち距離を計算する追跡レーダー(STIR)は作動させていないとのことだ。

STIRが日本の言う火器管制レーダーです。

「すべてのレーダー」を使ったとは「救助のために用いられるレーダーはすべて使った」という意味であるということがわかります。

ハンギョレの記事にある立場は、後の韓国国防部の公式見解と矛盾しません。

また、日本政府が問題視したレーダーがSTIRであるという事とも一致します。

「韓国は最初、火器管制レーダーを使ったと言っていたのに、使っていないと言い出した」

日本でこのような認識があるのは、韓国メディアの不十分な記事を日本のメディアがさらに言葉を省いたりして紹介したことと、火器管制レーダーの分類方法の相違があることに気付かず、それを伝えておらず、現在に至っても訂正していないからです。

ここに情報の混乱があったと言えるでしょう。

火器管制レーダーの分類方法が違う

さて、すると「火器管制レーダーを含むすべてのレーダーを稼働し」という聯合ニュースの記述は意味不明なことになりますが、ここは①「消息筋」とやらの見解の誤りか、②聯合ニュースの記者の知識や記述の誤りだと思います。聯合ニュースは普段から捏造していますからね。

韓国軍の主張は「火器管制レーダー」の分類にMW-08とSTIRが含まれると言う見解ですが、なぜこうなるかというと、実は火器管制(Fire Control)に「関する機能」がMW-08にあるからです。魚拓はこちら。

韓国メディアと韓国政府は射撃統制レーダー(MW-08)と追跡レーダー(STIR)という用語を用いていることから、火器管制レーダーの内部の分類を独自に行っているとみてよいでしょう。

ただ、ハンギョレの記事でも触れられているように、MW-08は基本的には三次元レーダーとして目標捕捉のために用いられます。火器管制機能といってもSTIRに捕捉した対象物のデータを受け渡すことを指している可能性があります。また、電波の技術仕様もMW-08がCバンドであり、STIRがXバンドであるということから、全く別のものです。

おそらく、こういうことから日本政府はMW-08を「火器管制レーダー」に分類していないと思われます。また、それが世界的な軍事一般の常識となっていると思われます。

したがって、韓国政府の見解は軍事一般としてはおかしいとみられる余地があります。

なお、韓国政府の用語法だとCUES上の「火器管制レーダー」にMW08が該当するということになりかねませんが、これは別個に検討される事柄でしょう。

韓国国防部の公式見解はどうだったか

公式見解としてではないですが、中央日報は22日の段階で以下報じていました。

日本「韓国軍艦艇、自衛隊哨戒機に火器管制レーダー照射」2018年12月22日09時18分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] 魚拓はこちら

韓国軍は「日本側の誤解」という立場だ。ある海軍関係者は「この日、北朝鮮の遭難船のためにレーダーを稼働したのを日本が誤解し、この点をすでに日本側に説明した」とし「すでに午前からレーダーを稼働した状況だったため、日本を狙ったのではないことは明らかだ」と説明した。

国防部も担当記者団の携帯電話に文字メッセージを送り、「わが軍は正常な作戦活動中にレーダーを運用したが、日本海上哨戒機を追跡する目的で運用した事実はない」と明らかにした。続いて「我々は(日本側に)説明したが、今後、日本側に誤解がないように十分に説明する」と述べた。

中央日報は「火器管制レーダー」 という単語は使わず「レーダーは使ったがそれは問題のある使用ではない」という内容を伝えています。

また、情報源として「軍」と「国防部」とを意識的に分けています。

国防部からメールがあったとまで言うのですから、これがほぼ公式見解でしょう。

なお、国防部のレーダー照射事案についての公式見解が示されるのは、12月24日が最初です。これは国防部の定例記者会見での話なので、国防部のプレスリリース等、HPで確認できる状態ではありません。

国防部の定例記者会見についての報道はこのようになっています。

韓国軍「日本哨戒機に追跡目的レーダー運用せず」2018年12月24日15時16分 [ⓒ 中央日報/中央日報日本語版] 魚拓はこちら。

合同参謀本部の関係者は国防部の定例記者会見で、「通常的にみると、ある国の軍艦の上空を哨戒機が通過するのは異例の飛行」とし「我々の駆逐艦はこうした日本の哨戒機の特異な行動に対し、遭難船舶探索のために運用していた追跡レーダー(STIR)に付着する光学カメラを稼働して日本哨戒機を監視することになり、その過程で一切の電波放射はなかった」と述べた。また「韓国海軍が日本哨戒機を追跡する目的でレーダーを運用した事実はないという点を明確に伝える」と説明した。

これは2つの内容があるということに気付きます。

1つは 「遭難船舶探索のために運用していた追跡レーダー(STIR)に付着する光学カメラを稼働して日本哨戒機を監視することになり、その過程で一切の電波放射はなかった」と言っているというもの。

2つ目は「韓国海軍が日本哨戒機を追跡する目的でレーダーを運用した事実はない」と言っているということ。

2つ目はあらゆる種類のレーダーについて「一切の電波放射」をしていないというのなら、ありえない言及です。

これを受けて日本のメディアが報道したものの中に、非常に誤解を生じさせるものがあります。

レーダー照射 韓国「一切の電波放射なし」に防衛省幹部「証拠ある」2018.12.24 20:00 魚拓はこちら。

韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した問題で、韓国軍合同参謀本部幹部は24日の記者会見で、レーダーと連動する撮影用カメラで哨戒機を監視したが、哨戒機に向けた「一切の電波放射はなかった」と主張した

これは誤解を招く表現、というか、誤報と言ってもよいですね。

上で引用した通り、韓国政府公式は光学カメラに付属しているSTIRの電波照射は無かったと言っており、「韓国軍艦クァンゲトデワンに搭載しているおよそすべてのレーダーを照射していない」などとは言っていません。

「火器管制レーダー(MW-08)は照射したが火器管制レーダー(STIR)は照射していない」ということですね(笑)

ハンギョレの記事にあったことと整合性があると言えるでしょう。

韓国政府は、最初からこのような主張であり、「話が二転三転」しているのではありません。

韓国政府は一貫して嘘をついている

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防衛省:http://www.mod.go.jp/j/press/news/2018/12/28z.html

「韓国政府の主張は一貫している」

これだけ書くと、何やら韓国政府に正統性があるように聞こえますが

「韓国政府は一貫して嘘をつき続けている」

というだけの話です。

日本防衛省が映像公開に合わせて添付した資料では、明らかに指向性のレーダーが照射されたという説明であり、韓国艦船のレーダー画像も併せて紹介していることから、STIRの照射を問題視しているということが確定しています。

映像公開後の12月28日の韓国国防部HPに掲載された見解は以下です。

日本の哨戒機の動画公開に関する国防総省の立場:魚拓はこちら。

http://www.mnd.go.kr/user/boardList.action?command=view&page=1&boardId=I_42745&boardSeq=I_6590809&titleId=null&siteId=mnd&id=mnd_020600000000

・韓日当事者間緊急協議を通じて相互誤解を払拭し、国防分野の協力関係の発展を模索しようという趣旨で実務会議を開催してから、わずか一日で日本側が映像資料を公開したことについて深い懸念と遺憾を表明する。

・重ねて強調したように、広開土大王艦は通常の救助活動中にあったのであり、韓国軍が日本哨戒機の追跡レーダー(STIR)を運用していなかったという事実は変わらない。

・むしろ人道的救助活動に集中していた私たちの領域に日本哨戒機が低空で威圧飛行をしたのは、友好国として非常に残念なことである。

・日本側が公開した映像資料は、単にP1哨戒機が海上で旋回する場面とパイロットの会話シーンだけが入れられたもので、一般常識的な側面から追跡レーダーを検知したという日本側の主張の客観的な証拠として見ることができない。

・韓国軍は昨日実施されたビデオ会議で、私たちの軍艦が追跡レーダーを照射しなかった分析結果を十分に説明しており、日本側の主張を裏付けることができる具体的な根拠となる資料を提示することを要求した。

・日本側は、国際法と兵器システムの正確な理解に基づいて協議していくべきであるにも関わらず、一方的な内容を盛り込んだ映像を公開し、事実関係を糊塗していることについて、再び遺憾の意を表する。

・韓国側はこれまで何度も日本の一方的な行動について自制する対応をしてきた。韓国側は、日本側のこのような残念な行動があっても、日韓の防衛協力関係を未来志向的に発展させていかなければならないという立場に変わりはない。日本側は、韓国との軍事的友好協力関係を維持するという精神を継続的に堅持すべきものである。

公式HP上で「STIRは運用していなかった」と明言しています。

反論として「映像では分からない」と言っていますが、レーダー検知の証拠は残っていますし、当日の海域の気象条件や無線交信についての韓国側の嘘は一般人にも明確にバレているので、韓国側の主張の信頼性が無い現状では無意味でしょう。

まとめ:韓国政府の説明は二転三転していないが

  1. 韓国政府は一貫して火器管制レーダー(射撃統制レーダーMW-08)は照射したが火器管制レーダー(追跡レーダーSTIR)は照射していないという立場
  2. 韓国政府の「火器管制レーダー」の用語法は、日本政府とは異なる上に、国際的な軍事一般の用語法とも異なる可能性が高い
  3. 一部韓国メディアが事実と異なる報道をしていた
  4. 日本のメディアが韓国メディアの報道内容を誤解させる形で報じていた
  5. そのため「韓国政府が二転三転している」という認識が日本国内に広まった
  6. 韓国政府は嘘をつき通しているという意味で一貫性があるに過ぎない

韓国政府が火器管制レーダーの用語法をこのようにしているのは、元からなのか、今回の事案にあたって誤魔化すためのものなのかは分かりません。

ネット上には「韓国政府の説明は二転三転していない」というところから「だから日本側に非がある」かのように論じる者も居るので、「二転三転していないが韓国側が嘘をつき通しているだけで非は韓国側にしかない」という事を明確にするために本記事を書きました。

※追記:あくまで【レーダー照射の事実】の主張についてです。当時の日本海の気象や無線交信の事実についての検証ではありません。

以上