プルルルル、プルルルル
国民「はい、◎◎です。」
K「お忙しいところ失礼いたします。私、「投票率を向上させる市民の会」のKと申します。」
国民「はいぃ…(なにそれ?)」
K「本日は〇〇県知事選の投票日ですが、投票はお済でしょうか?」
国民「いえ、まだですぅ(そういえばTVでIさん、だっけ?女性の候補がいたような。あとは知らないわ)」
K「そうですか!投票のご予定はおありでしょうか?」
国民「いいえーあまり考えてなかったですねぇ。まぁ、私1人が投票しても結果に影響ないでしょうからねぇ(なんの電話なんだろう?)」
K「そう思われるのももっともだと思います。そこで、私どもがお伝えしているのは、投票率が上がることで、市民の皆様の意見が政治に反映されやすくなる、ということなんです」
国民「…(最近トークバラエティとかで聞く意識高い系かな?)」
K「◎◎さまのお住まいの地域ですと、投票所は△△にございますので、是非とも足を運んでいただければと思います」
国民「そうなんですか、はい、わかりました(さっさと切りたい。でも、投票所ってそんなところにあったんだ、知らなかった、選挙の紙が郵便受けにあったけど中身見てないし)」
K「お忙しいところありがとうございましたー。」
ガチャン
国民「ホントに何の電話だったんだろう?そういえば投票日って今日だったのか。私は今65歳だけど、この歳まであんまり政治には興味ないから投票したりしなかったりしてたなぁ。ちょっとどんな候補がいるかTVでやってないかしら?」
15分後
国民「なんか女性の候補者Iさんとおじさんが一騎打ちっぽい雰囲気。おじさんは政府側の固い役職を経験してたみたいだけど、女性候補のIさんは県民と一緒の場面が多くてなんかいい感じっぽいから、この人に投票しようかな。朝日新聞の記事をみても、なんか良さそうだし」
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以上は架空の物語です。
これが公職選挙法で禁止されている投票日当日の「選挙運動」に該当するでしょうか?
ということが黒岩たかひろ衆議院議員の行為を考える上で重要です。
- 黒岩たかひろ衆議院議員のツイート
- 公職選挙法上の「選挙運動」の定義
- 黒岩たかひろ衆議院議員の「電話かけ」の内容は?
- 新潟県の人口分布
- 電話と高齢者
- 高齢者とメディア利用率、投票行動の関係は?
- 黒岩たかひろの「電話かけ」は公職選挙法違反か?
- ※追記:黒岩たかひろ議員は問題のツイートを削除しました
黒岩たかひろ衆議院議員のツイート
本日は、新潟県知事選投票日。投票箱の閉まる最後の最後まで電話かけをいたしました。全国の皆さん #新潟県知事選 は、大激戦です。昨年の私の衆院選も、新潟3区は当日のNHKの出口調査で1ポイント負けていました。しかし、奇跡は起こりました。今日も新潟の奇跡を信じ待ちます。黒岩たかひろ
— 黒岩たかひろ🌾ふるさと新潟を守る🌾 (@kuroiwatakahir1) June 10, 2018
「本日は新潟県知事選投票日」
「投票箱の閉まる最後の最後まで電話かけをいたしました」
少し知識のある方は、これは公職選挙法上で禁止されている投票日当日の「選挙運動」に該当し、違法な行為なのでは?と考える人も出てくるのではないかと思います。
でも、本当にそうでしょうか?
公職選挙法上の「選挙運動」の定義
総務省によると、判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。
また、各選挙区の選挙管理委員会においてQAが掲載されています。
例えば電話に関して言及している四万十市のHPはこちらです。魚拓:http://archive.is/TqhUP
仮に、単に投票率の向上を呼び掛けるだけであれば、「選挙運動」にはあたりません。しかし、Q5に注意です。
投票日当日の投票率向上の呼びかけや啓発は、選挙管理委員会で行いますので、候補者等が行うことはありません。
これを特定の候補者の支持をしている人等がすると選挙違反のおそれがあります
「特定の候補者の支持をしている人」であることが電話口での名乗りで判断できるかを基準にするのか、それとも客観的にそういう者であれば「支持をしている人」とするのか。そうだとしても違反になるのかどうか。
この判断は検察判断でしょうね。通報は警察が受け取りますが、警察はこのような法的にグレーな事案を判断できません。
黒岩たかひろ衆議院議員の「電話かけ」の内容は?
投票日当日に電話をかける行為が公職選挙法違反ではない場合を考えてみましょう
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) June 10, 2018
・関係者へのお礼の電話→セーフ
・「投票に行きましょう」とだけ呼びかけ→セーフ
・「○○候補の事務所の者です、投票に行きましょう」→セウト
・選挙に関係の無い話題→知性的にアウト https://t.co/ppQZ6vTIJn
黒岩議員がどのような内容の電話かけをしたのかは現時点で定かではありませんが、理論上は様々なものが考えられます。
「投票箱の閉まる最後の最後まで」電話していたというのが本当なら
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) June 10, 2018
合理的に考えれば投票に関係する呼びかけだとすると余りにもバカなので、投票行動に繋がる内容ではなかったと考えるべきなんでしょうけれども。
それとも長電話するお爺ちゃんお婆ちゃんに捕まったのか(笑)
冒頭の寸劇で示したような、単なる投票行動の呼びかけであれば、どうでしょうか?
しかし、そうすると、そもそも何の得があって投票行動の呼びかけをするのでしょうか?
新潟県の人口分布
新潟県はごらんの通り、高齢者の割合が全国平均よりも高い地域です。
そして、おそらく18~20代前半の学生は東京の大学に行っており、住民票の異動をしてなくて新潟県の選挙権は持っていても、実際には投票行動をしない者が多いと思われます。
では、高齢者が多いことがどう影響するのでしょうか?
電話と高齢者
上念司氏「RDDの電話世論調査は、情報弱者の高齢者バイアスが酷い。総務省の人口統計による人口補正しないと。RDDを鵜呑みにするのは結構危ない」 https://t.co/TFZWLdLVqH
— アノニマス ポスト (@anonymous201504) April 23, 2018
上念さんによると、電話による世論調査をすると、電話に出るのは多くは高齢者であって、単なる高齢者ホイホイになるという指摘がなされています。
高齢者とメディア利用率、投票行動の関係は?
不破雷蔵さんの記事によれば、高齢者であればあるほど、マスメディアの利用時間は多いということがわかります。
そして、高齢者であるほど政権側ではない勢力への投票行動が高いということがわかります。
地方選挙の一例として仙台市長選挙や名護市長選挙の世代別投票行動の図
「投票に行きましょう」は電話に出るのが高齢者が多いという事を考えると、有効な戦術ですね。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) June 10, 2018
高齢者ほど電話に出やすく、メディアに騙されやすいから、自動的にメディアの推す候補者への投票に繋がる。
逆の投票になる事もあるが、確率から言えば利益になると考えたか。
黒岩たかひろの「電話かけ」は公職選挙法違反か?
①電話に出るのが高齢者が多い
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) June 10, 2018
②高齢者はメディアに騙されやすい
③メディアは池田氏を推していた
④だから電話で投票を呼びかける行為はそれだけで池田氏が得票するのに間接的に有利な行為だ
これらのうち、①は認められますが、②以降は厳しそうですね。
仮に、黒岩議員が上記のような効果を意図して投票行動を促していたとしても、公職選挙法違反で罪に問うのは厳しいのではないでしょうか?
ただ、そうであっても少なくともこのような行為は外形的に国民からの反感を買うと思われるので、これを公言するのはあまり良い行いとは言えないでしょう。
そして、黒岩氏が実際に電話した内容は、投票呼びかけに留まらない可能性もあり、この事実によっては公職選挙法違反かどうかが決まるので、検察・警察の捜査が行われるのか注意していきたいと思います。
※追記:黒岩たかひろ議員は問題のツイートを削除しました
公職選挙法違反ではないと確信していたのであれば、弁明すればいいものを、ツイートを削除するという対応を取ったということは…
今回の選挙関連の犯罪に関するご意見ご要望はこちら(^o^)https://t.co/EKPh8Jg0EG
— 坂東 忠信 (@Japangard) June 10, 2018
新潟県警察ホームページ - ご意見・ご要望【選挙違反に関する情報提供のお願い】
以上