事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「共産党が募金から経費を引いている」はデマなのか:維新松井知事の指摘

 

日本共産党の旗、ロゴ

魚拓:http://archive.is/vkEhS

「共産党に募金すると経費が差し引かれる」

このような情報がありますが、共産党は「すべて被災地などに届けました」と言っています。

この話をどのように整理すればいいでしょうか。

また、一般的な募金における寄付金の扱いについても紹介していきます。

共産党が募金から経費を引いている事実

共産党募金経費

実は、共産党自身が募金総額の内訳として経費を計上しているということを公表しています。魚拓:http://archive.is/YrQsb

上図は東日本大震災のときのものですが、募金の種類が2つあることに注意。

1つ目は東日本大震災救援募金という一般的な募金。これは総額10億円以上が集まり、被災地の自治体やその他に対して約6億円が充てられています。その他は支援物資やマンパワー用、諸経費に充てられている事がわかります。

2つ目は被災地「党」活動支援募金という共産党員のための募金。「常任活動家などの生活援助」という項目が気になりますが、共産党内部の話なので気にしません。ここについて非難する資格があるのは、共産党員だけでしょう。

このように、明確に募金総額から経費に充てられている分があるということを共産党自身が公表しています

ここまでの文章において、私は何も「評価」を加えておらず、事実だけ述べている事に注意して頂きたいです。

維新の会の松井知事の指摘はデマなのか?

魚拓:http://archive.fo/RfBTP

日本共産党は松井知事の指摘はデマであると言っていますが、松井知事は募金の一部が経費であると言っているだけで、それが何か悪いことなのかという評価を加えていません。他の方法に依る場合に比較して、経費が引かれるので、募金をする人はそれを認識した上で募金しましょうと言っているに過ぎません。魚拓:

http://archive.fo/0hCNy

松井知事も、決して「懐に入れている」と言っているのではありません。そんなことを弱者の味方を標ぼうしている共産党がしているハズがないと思うのですが。あくまで募金活動を運営するのに必要な経費として使用されている事実を指摘しています。

むしろ共産党の記事中の以下の文章が気になりますね。

2年前の東京・品川区の演説会での募金活動や後援会交流決起集会での募金活動については、他の募金と一体に集めたことは正しくなかったと認め、集まった全額を救援募金として被災地に届けたことを付記しておきます。

こういうことをしているから、「中抜きしたのでは?」と疑いをかけられてしまうのではないでしょうか?

「全額を被災地に届けている」は誤解を招く

共産党募金経費

共産党は松井知事に反論している文章の中で、「東日本大震災では10億円を超える募金が託され、すべて被災地の自治体などに届けました」と言っています。

さすがにこれは無理でしょう。誤解を招く。

とはいえ、無意味な批判をするのもやめた方がいいです。

まず、「自治体など」とあるのはあまり気にしない方がいいです。厳密に自治体が主体と言っていいか微妙な組織に対しても義援金が渡るのは通常の話です。ここに何が来るのか気になるなら寄付者が聞けば良い。

「支援物資の購入」項目では、一応すべてが被災地のために購入されたと考えられるので、これもいいでしょう。

「ボランティアなどによる救援活動」項目も、マンパワーを供給したという意味において、募金が被災地に届けられたと言い得ることになります。

「同情するなら人をくれ!」

という場合が復興初期には発生します。家屋の中に入り込んだ細かい瓦礫を掻き出すためには機械ではなく手作業になるため、多くの人手が必要です。したがって、募金の全てが金銭化されて自治体に送られるよりもむしろ良い結果となることがあります。人を送るのにも輸送費がかかるのです。

さて、「資材・郵送料等の諸経費」の項目は、流石に「すべて被災地の自治体などに届けました」は無理です。

共産党の意識としては被災地復興のために行動した結果なのだから、すべての募金について被災地用に使用したと考えているのでしょうが、事実として募金額そのものやマンパワーに変化したものが被災地の自治体等に行き渡っているわけではありません。

したがって、松井知事に対して「デマ」だと言う指摘は、おかしいということになります。

共産党の募金活動は評価されるべき

共産党が募金活動をしなかった場合に比して被災地には金、人、物が供給されているのですから、その活動自体は評価されるべきです。

しかし、募金の使途について話を盛っても意味がないし、外部からの指摘をデマであると断定するのも、「後ろ暗い何かがあるのではないか?」と閲覧者が感じてしまうおそれがあるため、有益であるとは思いません。

共産党は「攻撃を受けた」と認識しているようですが、過剰反応ではないでしょうか?

こうした認識の上で、ボランティア活動費に2億円というのは詳細な内訳は何か?その金額は妥当なのか?という検証をすればよろしいのではないでしょうか。

それにしても、最後の一文が気になります。

お預かりした募金は、日本共産党の政治活動のための資金とは区別し、その全額を被災者の救援に充てます。

「政治活動のための資金とは区別し」というのは、ネット上での各所からの指摘を意識したものなのか、それとも…

募金団体と寄付者の認識の齟齬が問題

さて、私はここまで「募金額の全てが義援金たる金銭として被災地に送金されていないこと」については何も問題視していない事に気づいているでしょうか?

 

募金団体が募金の存在とその目的を宣伝することで、「よし!募金してみよう!」と思う層が発掘されるのですから、被災地にとっては有益なわけです。また、有名な団体が募金を扱うことで、信頼感があるというのも事実です。募金を集めても安全に寄付対象の組織や個人に届ける管理が行き届いていなければ、募金は成り立ちません。その際にかかった経費分については、過剰な割合でない限り許容されるべきでしょう。

問題は、多くの人が「募金額は全て義援金たる金銭として被災地に送金される」と思い込んでいるにもかかわらず、募金団体がそのような事に限られないということを周知、説明してこなかったということにあると思います。

ここの認識の乖離を埋めるためには、募金団体の側(今回で言えば共産党)が募金を集める際や事後的にしっかりと説明するべきでしょう。そのような前提が共通認識としてあれば、今回のような「過剰反応」は起きなかったのではないでしょうか?

もちろん、金銭化されていないのであれば当然「中身」がどうなのかは気になります。

そこについては説明する義務が募金団体にはあると言えるでしょう。

日本ユニセフや日本赤十字の場合

実は、募金団体が募金額の一部を諸経費に充てているということは当たり前の話です。

むしろ、「募金団体の活動費は募金額から充ててはいけない」となると、きちんとした管理運営をする募金団体がなくなる危険があります。

日本ユニセフや日本赤十字なども募金についてやり玉に挙げられることが多いですが、結局のところ募金団体と寄付者の認識に乖離があることが問題だと思います。

魚拓:http://archive.is/ndbST

途上国支援のプログラムをしっかりと専門性をもって運営し、ファンドレイジングまでやろうと思えば、このくらいは間接経費としてかかることは、知っておいたほうがよいだろう。日本人は寄付といえば無償ボランティアですべて運営されるべきと考える人が多いが、そういった考えはかえって寄付がちゃんと効果的なかたちで使われない方向になりかねないことも理解しておいたほうがよい。

この記事がよくまとまっていると思いますが、ネット上にある日本ユニセフ叩きについて、どの辺りまで正当性があるのかというのは、かなり疑問があります。

唯一、この記事でも指摘しているように、間接費が約20%かかっていることについて「その割合・額はもう少し低廉に抑えられないものだろうか?」という問題意識は正当であると思います。

共産党の募金の扱いについても、このような認識を持った上で論じられるべきだと思います。

まとめ

  1. 共産党は募金の一部から経費を充てているというのは事実
  2. 松井知事はデマを言っているのではない
  3. 募金がすべて義援金として金銭化する必要はない
  4. 共産党は他人を攻撃する暇があるなら募金の使途を堂々と説明すればよい
  5. 「募金から経費が出るのはおかしい」という認識はむしろ危険
  6. 募金額と経費の割合を問題視するのは正当な行為

募金活動をしてる者を殊更取り上げて非難するというのは方向がずれてると思います。

同時に、募金団体は金銭を託されているのですから正確に説明する必要があるでしょう。

以上