事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

NHKの受信契約義務:アンテナやTVだけでは不要:NHKが映らないテレビ


ソニーから「NHKが映らないテレビ」が発売されます。

この機会に、NHKと受信契約を結ばなければならない条件を確認しましょう。

ソニーのNHKが映らない「テレビ」はチューナーがない

「テレビ」と言われていますが、チューナーがありません

要するに電波を受信する機構がない箱ものです。

つまり、NHKどころか民放各局の放送電波も受信できないということになります。

しかし、Androidアプリが内臓されているため、TVer(ティーバー)などの民放番組アプリを導入すれば、「ネット回線で」番組を見れるということになります。

さて、「TVがあればNHK受信契約をしなければならないのではないか?」と思う方もいらっしゃると思います。

その必要はありません。受信契約を締結する義務が発生する条件を見ていきましょう。

NHK受信契約義務が発生する条件

関係する規定と判例を確認しましょう。

放送法と日本放送協会放送受信規約:受信機の設置

放送法

第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。

日本放送協会放送受信規約

(放送受信契約の成立)
第4条 放送受信契約は、受信機の設置の日に成立するものとする。

放送法と日本放送協会放送受信規約では、「受信機(設備)設置」が受信契約の要件とされています。

では、何を持って受信機(設備)の設置とされるのか?

具体的にアンテナがどうとかテレビがどうということではありません。

判例を見ればわかります。

判例による受信契約義務発生=受信機の設置=「視聴可能性」

東京高等裁判所 平成23年(ツ)第221号 放送受信料請求上告事件 平成24年2月29日

受信料債権は、現行法上、私人間の契約に基づく債権と構成されておりー中略ー受信料とは文字どおり受信(視聴可能性)の対価であり、受信と受信料に対価性があることは明白である。

受信料債権が何によって発生するかを判示した判決ですが、「電波を受信したこと」 でもなく「現実の視聴」でもなく「視聴可能性」との対価であると言っています。
※地方によっては異なる判断をする裁判所があるかもしれません。少なくとも関東圏内では東京高裁の判断が規範性を有します。

つまり、「NHKの放送を視聴できる可能性がある限りにおいて」、受信契約をする義務があるということです。したがって、たとえば一定の条件の元ではイラネッチケー(関東向け関西向け)を配置することで受信契約の義務が発生しないと考えられています。

したがって、ソニーの「テレビ」はそもそも放送電波を受信できないので、視聴可能性がゼロだから、受信設備の設置とは認められず、受信契約の締結義務はないということになります。

イラネッチケーについて詳しくは以下参照

アンテナやTVだけでは契約義務有りとは言えない

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「マンションにアンテナがあるから契約義務がある」

「BSアンテナがあり、TVがあるから必ずBS放送も受信義務がある」

これらは全て嘘です。

NHKの集金人と名乗る者などがこのような言葉で法律を振りかざしてくることがあるようですが、法的には契約する義務は全くないということになります。仮に視聴可能性が無いにもかかわらず、そのような事を言っている者があなたにNHK受信契約を迫ってきたならば、録音して詐欺未遂で告発しましょう。

普通に考えれば分かる話ですが、マンションに地上波とBSアンテナの両方があったとしても、TVなどの受信機がなにもなければ放送を視聴できる可能性は無いのですから、受信契約の義務はありません。

また、アンテナがあってTVなどの放送受信機はあったとしても、受信機には地上波チューナーのみがありBSチューナーが無い場合には、それも視聴可能性は無いということになります。

さらに、BSチューナーがあったとしても壁にある端子と受信機を繋ぐケーブルが無ければ、それもまた視聴可能性は無いということになります。TV視聴機能付きPCなどは、このような状態で使用している方も多いと思われます。

その他、状況によっては契約義務があるかの判別がつかない場合もありますので、この場合は集金人と名乗る者が契約義務があると言っても信用しない方がいいです。

まとめ

  1. ソニーが発売するテレビはチューナーがないため民放も映らない
  2. ただし、アプリケーションを導入すれば一部、番組が見られる
  3. 受信契約の法的義務は「視聴可能性」の有無で判断される
  4. アンテナや受信機の存在のみでは視聴可能性の有無は決まらない 

追記:ただ、訴訟の実際上は受信機の存在が認められれば視聴可能性が「推認される」可能性もあるので、そこは注意です。

その場合は視聴可能性が無いことの立証責任が国民側に課されることになります。

立花考志さんのNHKとの争いでTVがあっても受信契約の支払い義務があるとはならなかったものの中には、TVのチューナーを破壊したものがあります。その事案ではその動画が「証拠」になったと思われます。

なので堂々と「受信機があるけど視聴可能性はないから大丈夫」とNHK側に言うようなものではありません。

以上