「感染者以外はマスクをする必要が無い」
これって本当なんでしょうか?
ウイルス感染症以外に喉の乾燥・花粉症・PM2.5に対するマスク効果について書いてあるものについて調べました。
- ウイルス等の感染症拡散対策・予防としてのマスクの効果
- 花粉症対策にはマスクは有効と厚生労働省も
- 環境省はインナーマスクをするとかなり防げるらしいが
- 花粉などの捕集性能を謳ったマスクについて
- 黄砂PM2.5に対するマスクの効果
- 喉の潤い、乾燥対策にも有効
- まとめ:感染症予防に焦点が当たりすぎ
ウイルス等の感染症拡散対策・予防としてのマスクの効果
新型ウイルス マスクの予防効果ある? ない? | NHKニュース
ウイルスなどによる感染症予防、拡散防止策としてのマスクの効果としては、感染者からの拡散防止効果が一定程度認められます。
ただ、非感染者にとっての予防効果は、科学的に有意な結果は無いということになっています。
しかし、そこから「感染者以外はマスクをする必要が無い」と言われると、モヤモヤを感じる人が多いんだろうと思います。
私たちがマスクをする理由は何も感染症対策に限った話ではないのですから。
花粉症対策にはマスクは有効と厚生労働省も
マスクの着用も有用です。通常のマスクに湿ったガーゼを挟み込むだけ
でも効果があります。花粉症用のマスクでは、かえって息苦しい感じがす
ることもあるようです。
外出時の服装やマスク、メガネなどで花粉を防ぎ、帰宅した時には家の中に花粉を持ちこまないようにしましょう。
花粉症対策の用途としてのマスクは有効であるということが厚生労働省や環境省のページにあります。市井のお医者さんも「ある程度」の効果があると言っています。
※花粉症は感染症ではありません。
花粉症にマスクって効くの?医師おすすめの“効果的なフルーツ”も | 女子SPA!
正しいマスクの着け方は、花粉症対策にも有効
――花粉症の予防や対策として、もっとも効果的な方法を教えてください。
大谷義夫先生(以下、大谷)「花粉症は、目や鼻から花粉が入らなければある程度症状を抑えられるので、いちばんはマスクとゴーグルです。高性能マスクを正しく着用すれば、9割以上花粉をカットすることができるとされています。
高性能ではないものだとどうなのか?
これについて、マスクの内側(マスクと顔の間)と外側を浮遊する0.3マイクロメートル以上の微粒子を測定して「漏れ率」を算出した民間実験をした記事がありました。
(2ページ目)マスクでは風邪も花粉も防げない?買うだけお金の無駄 プリーツ型も立体型もダメ | ビジネスジャーナル
「プリーツ型」の場合は7銘柄が80%以上の漏れ率で、そのうち3銘柄は90%を超えていました。残りの2銘柄も65%を超える漏れ率
「立体型」はどうでしょうか。6銘柄のうち4銘柄が60%を超える漏れ率で、そのうち3銘柄は80%を超えていました。そして、残り2銘柄はそれぞれ約60%、約40%の漏れ率という結果でした。
市販のものであっても、立体型であれば「半減」くらいの効果が期待できそうです。
私の個人的な経験上も、マスクをしているからといってシーズン中に花粉症の症状が出ることは防ぐことはできませんが、ある程度の花粉吸引を防ぐ効果は実感しています。
環境省はインナーマスクをするとかなり防げるらしいが
ちなみに花粉症環境保健マニュアル 環境省では、「インナーマスク」をすると「花粉除去率」が99%らしいです。
しかし「花粉除去率」が何なのか、どの実験結果から引っ張ってきたのかがまったく書いていないため、本当に信じて良いのかわかりません。
実際の使用感で見極めればよいんじゃないでしょうか。
花粉などの捕集性能を謳ったマスクについて
花粉などの捕集をうたったマスク(発表情報)_国民生活センター
5.消費者へのアドバイス
1)マスク自体の花粉の捕集性能は、素材の違いにかかわらずいずれの銘柄でも高く、それらの性能を生かすには、マスクが顔にフィットしていることが重要である
2004年の報告ですが、花粉などの捕集性能を謳った市販マスクについて、そのような性能を謳ってないマスクと比べて捕集効果に差は見られないとの結果が出ています。
それよりもマスクが顔にフィットしているかが重要だと指摘しており、先述の「漏れ率」の実験とも整合性がありそうです。
黄砂PM2.5に対するマスクの効果
マスクを着用する事で、PM2.5の吸入を減少させることが出来ますが、インフルエンザや花粉症などの対策に用いる一般用マスクでは様々な性能のものが市販されていて、PM2.5への効果は様々です。一方、医療用や産業用の高性能な防じんマスク(N95※1やDS1※2以上の規格のもの)の場合は、微粒子捕集効果の高いフィルターを使っているため、PM2.5の吸入を減らす効果があります。
ただし、その際も顔の大きさに合ったものを選んで空気がもれないように着用しないと十分な効果が得られません。また、空気の流れが制限されるために運動すると息苦しくなります。
黄砂の影響が強いPM2.5に対するマスクの効果は、市販のものであっても無いよりはマシくらいの効果はありそうです。
着用してないマスクそれ自体のPM2.5の捕集能力については以下の論文があります。
マスクは防塵マスクと比べて性能は低いもののサブミクロンの粒子に対して95%以上の粒子捕集能力を持っていることが分かる。
PM2.5は粒子が小さいのでフィルタの間を抜けるというコメントは間違いである
なお、この論文でもマスクの捕集効果は医療機関が使うようなものでない限りあまり差はないということにも触れています。ちなみに捕集効果は構造の密度ではなく静電気力によるものだと書かれています。
喉の潤い、乾燥対策にも有効
睡眠時マスクによるかぜ症状の軽減効果 川本 将浩・猪原 秀典
経験学的に,マスクは上気道の保温保湿や周囲への感染予防に有意義であるので,清潔に注意して用いることが勧められている。
今野らは経皮的に頸部気管腔に刺入した微細熱電対の結果から,外気の寒冷乾燥の程度が強いほど,また鼻呼吸よりは口呼吸,安静呼吸よりは深呼吸の際にマスクの効果が大きいと報告している.しかし,その保温保湿効果が生態にもたらす作用については解明されておらず,マスクが臨床的にどの程度の効果があるのかを調査した報告は筆者の知る限りない.本研究の結果,日中だけでなく就寝時にもマスクを装着していたほうが,かぜ症状は早期に軽減することがわかった.
耳鼻咽喉科医による1つの研究結果としては、ウイルス感染予防ではなく、一般的なかぜ「症状」に対する軽減効果はある、という結果が出ているものがあります。
この論文の価値・重みについてはわかりませんが、少なくとも経験学的にマスクによる保湿効果があるということは認められていることが分かります。
まとめ:感染症予防に焦点が当たりすぎ
この時期(2020年1~2月)のマスメディアの記事やお医者さんのSNSアカウントの発信では、新型コロナウイルス等の感染症の感染拡大・予防のためにマスクは有効か?という文脈でのみ語られ、それが当然の前提として書かれています。
しかし、どうやら一般人の中には「感染症」についての効果とは思わず、凡そ漠然とした「マスクの効果」を考えているので、そうした発信に何だかモヤっとしているのだろうと思います。
実際、冒頭に引用したNHKニュースに対するはてなブックマークのコメントでは感染症予防効果についてのみ言及している発言に対して苛立ちを覚えている人が多数います。
これから花粉症の季節なのですし、一般的なかぜ「症状」との関連でもマスクの効果を語るべきなんじゃないでしょうか。
以上