事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

月刊WILL 2019年7月号:水間政憲の寄稿文への疑問

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月刊WILL2019年7月号の水間政憲氏の寄稿文について。

ツッコみ所満載なので指摘していきます。

月刊WILL2019年7月号の水間政憲の寄稿文

水間氏の寄稿文は74頁以降の

「悠仁様へのテロ未遂で急浮上!男系男子皇位継承者の存在を隠したのは誰だ!」

というものです。

今上天皇より濃い「天皇の血」? 

MONTHLY WILL 2019年 7月号 76頁

戦後GHQによって皇籍を剥奪された旧皇族十一宮家のうち、七宮家十家族に「男系男子」がおり、旧宮家の東久邇家に、今上天皇より濃い「天皇の血」を受け継いだ方が三人もいらっしゃる
ー中略ー
今上陛下、皇嗣殿下の従兄弟にあたる三名の祖母は明治天皇の聰子内親王のため、より濃い「天皇の血」を受け継いでいるといえるでしょう。

水間氏の言う「三人」とは東久邇家の信彦・眞彦・秀彦氏らです。

これは不敬であると同時に実質的に女系容認論です。

皇室の歴史破壊の不敬極まりない「血が濃い」という評価

水間氏が「血が濃い」と表現する意味を書くのは憚られますが大要以下のようです。

「旧皇族たる東久邇宮家の信彦・眞彦・秀彦らは、明治天皇の皇女である聰子内親王や、昭和天皇の第一皇女である成子内親王の子孫である。それに対して今上天皇は民間出身の女性と天皇との間に生まれた子であるから、血は比較的薄い」

皇室は奈良時代から天皇が民間(公家や華族だが皇族とは一線を画している)から后をもらい受けていた歴史があります。

皇位継承順位についても、民間の后を娶ったからといって左右されることは無かったはずです。基本的に直系優先・長系優先・近親優先でした。

そうした歴史すべてを破壊する言動です。

もちろん、皇族の中で「民間出身はやはり作法がなってない」のような、いじめのような妬みのようなものがまったく無かったかというとそうではないでしょう。

しかし、そのような状況と皇位継承順位は連動していませんでした。

皇女を通して「天皇の血が濃い」と表現することは実質的な女系論

明治天皇や昭和天皇の皇女を通して「天皇の血が濃い」と表現することは、要するに「女系論」を意味します。男性皇族が男系男子であるにもかかわらず、その女性配偶者が皇族か元民間人かを比べているのですから。

もちろん「皇女」による繋がりは、まったく無意味であるということはありません。

歴史上、皇女を迎え入れることで先代天皇との「距離」が離れるのを避けていたと思われる事例はありました。継体天皇が仁賢天皇の皇女である手白香皇女(たしらかのひめみこ)を后に迎え入れ、光格天皇が後桃園天皇の皇女である欣子内親王(よしこないしんのう)を娶ったように。

それをもって「女系にも意味がある」と表現する男系論者も居ますが、それは女系という連綿とした繋がりを意識するものではなく、接点としての皇女の存在が重要であったということを指すだけで十分であり、不用意な用語法だと思います。

東久邇宮家になぜこだわるのか

「天皇の血」にこだわるからなのか、水間氏は旧皇族の中でも東久邇宮家にだけ焦点を当てています。

これでは皇位継承権者・皇籍復帰をする者の候補が狭くなるだけです。

しかも、水間氏は「皇別摂家」も皇位継承権者であるような書きぶりなのです。

論旨が一貫しない皇別摂家の登場

MONTHLY WILL 2019年 7月号 76頁

また現在、旧皇族より皇位継承順位の高い皇別摂家の子孫が五十一名もいらっしゃることもわかっています。「皇別摂家」とは、五摂家のうち江戸時代に皇族が養子に入って相続した後の三家(近衛家・一条家・鷹司家)およびその男系子孫のことで、摂家を相続した皇族は三方です。

しかし、皇別摂家は皇族ではなく、民間人です。旧皇族ですらありません。

「君臣の別」と皇別摂家

皇室には「臣君の別」というルールが存在します。皇族と臣下は明確に分けましょうということです。皇別摂家をそのまま皇位継承権者に含めることはルール違反です。

皇別摂家と皇位継承順位

皇別摂家は皇族ではないのですから、歴史的にも、戦前の法体系上も、皇位継承権を有してはいません。したがって、なぜ皇別摂家の方が旧皇族の方がたよりも皇位継承順位が高いと言えるのか、不思議で仕方がありません。

もっとも、皇別摂家の者が皇籍復帰(これを皇籍復帰と言ってよいかはわからないが)する場合というのは相対的に決まる可能性はあります。皇位継承のために他に男系男子がいない場合、皇別摂家の者に目が向けられるかもしれません。

しかし、旧皇族の男系男子の方がたが存在している以上は、その者らの皇籍復帰が優先的に検討されるべきであって、皇位継承順位が皇別摂家の方が高いということには成り得ません。

壬生伯爵への養子へ出た秀彦氏(壬生基博氏)が「男系男子」に算入

水間氏の系図を見ると、東久邇秀彦氏とそのご子息が男系男子の勘定に入っています。

かっこ書きで(壬生基博)とあるように秀彦氏は壬生伯爵家に養子に出ています。

つまり、いわば皇別摂家のような立場にあるということです。

壬生基博氏にも男子の御子息がいらっしゃいますが、衛藤首相補佐官、百地教授、青山議員らは、壬生基博氏の系統は男系男子の人数に入れていません

それはもはや「旧皇族ですらなくなった」と評価されているからでしょう。

水間氏は殊更に皇別摂家を取り上げて、何か重要な指摘をしているかのように振る舞っていますが、それは識者らが最初から検討の対象外とすべきと考えていたからであって、現在の状況においてクローズアップすべき対象ではありません。

血の濃さと皇別摂家を持ち出すことは論旨が一貫していない

水間氏は一方では「天皇の血が濃い」ことが東久邇宮家の正統性の根拠であると言っている一方、皇別摂家を持ち出して「旧皇族よりも皇位継承順位が高い」と言っています。これは矛盾しています。

しかも、78頁ではホテルマン時代に旧皇族の方がたにサービスした経験から「その品格や振る舞いは我々一般人とは全く異なります」と、皇族としての振る舞いが重要であるという基準に立っています。これも皇別摂家という民間人を前面に出すことと整合性はありません。

また、皇族だからマナーが良くて国民に受け入れられる、という論法は、マナーが良ければだれでも良いということになりかねず、それは皇統の正統性とは無関係です。

水間氏の論旨は、このように一貫していません。

水間「悠仁殿下の又従兄弟の5名の男系男子」は古い情報

76、77頁では悠仁親王殿下の又従兄弟の5人の男系男子がいると書いています。

それは信彦・眞彦・秀彦氏らの息子たちですが、少なくともそのうちの3名は45歳、39歳、38歳です(壬生基博氏の息子の情報が不明確)。

現時点では、さらにその下の世代の子が4名居るということが判明しています。

現在の時点で又従兄弟の世代の方を持ち出す意義はありませんし、そもそも悠仁親王殿下と世系が同じであるか否かはまったく重要なことではありません。

安倍総理は旧皇族の皇籍復帰に否定的?

月刊WILL 2019年7月号 79頁

第二次安倍政権発足前、安倍首相は女性宮家創設に反対し、旧宮家の皇籍復掃を主張していました。しかし現段階で、安倍首相は旧皇族の皇籍復帰に否定的な考えを示しています

国会議事録を見る限り、安倍総理が旧皇族の皇籍復帰を主張していたことはわかりませんが、内々ではそう思っていたのでしょう。

他方、現段階で安倍総理が旧皇族の皇籍復帰に否定的というのは本当でしょうか?

安倍総理「GHQの決定を覆すということはまったく考えていない」

安倍総理が国会で旧皇族の皇籍復帰に触れたことは平成31年3月20日の大塚耕平議員の質疑においてです。

第198回国会 参議院財政金融委員会 第5号 平成31年3月20日 

○大塚耕平君 いや、私がお伺いしたいのは、総理は戦後政治の総決算ということを何度もおっしゃって、もう六年も総理を務めておられる。大変長期間お務めになっておられることに敬意を表したいと思います。
 ー中略ー
 同様に、このGHQの指示に基づいて十一宮家と二十六人の皇族の方が皇籍離脱をしたという、これをこのままにしておいて本当に戦後政治の総決算ができるというふうにお考えですかという質問をさせていただいております。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 皇籍を離脱された方々はもう既に、これは七十年前の出来事で、七十年以上前の出来事でございますから、今は言わば民間人としての生活を営んでおられるというふうに承知をしているわけでございます。それを私自身がまたそのGHQの決定を覆すということは全く考えてはいないわけでございます。 

安倍総理が旧皇族の皇籍復帰を全否定したとは断定できない

歴史的な事実としてはGHQの決定が直接皇籍離脱の効果を発生させたわけではないですし、平成17年の首相官邸の文書である【昭和22年10月の皇籍離脱について】 とも異なる見解であるということになります。

  • GHQが皇籍離脱を直接的に指令したという文書等は残っていない
  • しかし、事実上、GHQの指令が皇籍離脱を引き起こしたと言える
  • 安倍総理が覆さないとした「GHQの決定」は、単に元の皇室財産についての指令なのか、それとも皇籍離脱という結果も含めたものなのかは不明
  • いずれにしても、旧皇族の個人レベルでの皇籍復帰まで否定しているかは定かではない

国会質疑の安倍総理の発言をまとめると、このようになります。

産経新聞:安倍総理は「11宮家全部の復帰」を考えていないだけ

【新元号】安定的な皇位継承の確保を検討 男系継承を慎重に模索(1/2ページ) - 産経ニュース

(旧11宮家の皇籍離脱は)70年以上前の出来事で、皇籍を離脱された方々は民間人として生活を営んでいる。私自身が(連合国軍総司令部=GHQの)決定を覆していくことは全く考えていない

 安倍晋三首相は、3月20日の参院財政金融委員会でこう述べた。これが首相が旧宮家の皇族復帰に否定的な見解を示したと報じられたが、首相は周囲に本意をこう漏らす。

 「それは違う。私が言ったのは『旧宮家全部の復帰はない』ということだ

 また、首相が女性宮家創設に傾いたのではないかとの見方に関しても「意味がない」と否定している。

産経新聞のこの記事が事実であれば、安倍総理は旧皇族の皇籍復帰をまったく諦めたわけではないということになあります。

水間氏はこの報道の存在を知っていたのでしょうか?この報道について評価した上で論じてほしいところです。

「女性宮家創設=国体破壊」とは言い切れない

MONTHLY WILL 2019年 7月号 79頁

何としても女性宮家創設=国体破壊の謀略を阻止しなければなりません。

女性宮家創設は女系天皇に繋がりかねないため、みんな反対しています。

逆に言えば、女性宮家を創設しても大丈夫な場合があります。

皇族女子が旧皇族の男系男子と婚姻した場合のみ、女性宮家を創設するという場合。

(もちろん旧皇族の方は皇籍復帰する)

そうすれば、お生まれになる子は正真正銘の男系男子ですから、「女系」に繋がることにはならないのです。

にもかかわらず、旧皇族の男系男子について語っておきながら、女性宮家が創設されれば直ちに国体破壊になると断言するのは、厳密さを欠いているように見えます。

女性宮家」とは皇族女子が婚姻中であっても当主となる場合ですが、女性宮家の定義について、水間氏は民間男性と婚姻した場合のみを想定しているのかもしれません。

ただ、仮に民間男性との婚姻で女性宮家を認めるとしても、それだけでは女系継承がなされることはありませんから(悠仁親王殿下のお子様次第ということになる)、ただちに国体破壊と結びつけるのはやはり厳密に言えば間違いです。

注意喚起のための主張だとしても、ちょっと乱暴に過ぎるのではないでしょうか。

まとめ

  1. 「天皇の血」論は不敬かつ実質的な女系論
  2. 皇別摂家は民間人であり、皇位継承権はない
  3. 悠仁殿下の又従兄弟を出す必要がないし、情報が古い
  4. 安倍総理が旧皇族の復帰に否定的という情報の分析がなされていない
  5. 女性宮家創設=国体破壊というのは厳密さを欠く

水間氏が自身のブログで書き連ねる分においては、そこまで気にしませんが、WILLに掲載されたとあっては看過できない事態です。

勘違いが広まらないようにしてほしいものです。

以上