事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

ムンジェイン大統領「日本は言葉を変えた」というデマ:ホワイト国からインビジブル国へ

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ムンジェイン大統領が日本の優遇廃止措置について、3回目の公式声明を出しました。

これに対して世耕弘成氏が反論として自身の個人的見解をツイートしました。

韓国側の特徴的な工作が垣間見えるので指摘します。

ムンジェイン大統領「日本は言葉を変えた」

「日本経済により大きな被害」と警告 外交解決求める=文大統領 | 聯合ニュース

文大統領は「今回の日本の措置は相互依存、共栄で半世紀間蓄積してきた韓日経済協力の枠を破ること」と指摘し、「韓国政府が日本政府の輸出制限措置を厳重に受け止めるしかない理由」との認識を示した。

 さらに、「しかも、自国の産業被害を防ぐための通常の保護貿易措置とは方法と目的が違う」として、「日本は当初、強制徴用を巡る韓国大法院(最高裁)の判決を措置の理由に掲げたが、個人と企業の民事判決を通商問題に結びつけることについて国際社会の支持を得られず、韓国に戦略物資の密輸や対北制裁違反の疑惑があるためであるように言葉を変えた」と指摘。

  1. 日本は強制徴用を巡る訴訟結果を優遇廃止措置の理由に挙げた
  2. その後、国際社会の支持が得られなかった
  3. なので、途中で安全保障輸出管理レジームの問題であると言い出した
  4. つまり日本政府の立場は一貫せず、変遷している

ムンジェイン大統領はこういう事を言っているようです。

当然のことながら、反論があります。

世耕弘成氏の反論

まず、事実関係が違うと指摘。

その上で「国際機関のチェックを受けるような性質のものではない」という指摘。

この日本政府の立場をきちんと理解した上で各所が発信するべきです。

日本政府の立場は変遷しているのか?

韓国をホワイト国排除する日本の説明が不適切?信頼関係・徴用工問題を持ち出した意味 でも書きましたが、日本政府の各所の説明について見ていきましょう。

所管官庁である経済産業省の説明

大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて (METI/経済産業省)2019年7月1日

輸出管理制度は、国際的な信頼関係を土台として構築されていますが、関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したこともあり、輸出管理を適切に実施する観点から、下記のとおり、厳格な制度の運用を行うこととします。

7月1日の経産省の発表が、この件で日本政府が最初に発信した内容です。

最初に「信頼関係」 の話があり、その次に輸出管理を巡る不適切事案について触れています。この立てつけはGATT21条の要件事実を言っているのではないという事は明らか。

「国際機関のチェックを受けるような性質のものではない」というのは、こういうところからも読み取れますし、後の7月12日に「倉庫会議」で「事務説明会」の張り紙をしていたが英語で併記しなかったのは、世界にアピールするものではないという認識があるからでしょう。

そして、「徴用工」には絡めていないのが分かります。

内閣官房の説明

令和元年7月1日(月)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ

令和元年7月2日(火)午前 | 令和元年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ

1日は、記者から徴用工問題の制裁なのか?と言う問いに対して、西村官房副長官は上記経産省の説明通りに説明していました。

2日の菅官房長官は対韓輸出規制に関する質問を複数回受けています。まずは経産省の説明通りに説明し、3回目の質問「なぜG20後のタイミングなのか?」という問いに対して、信頼関係が損なわれた背景として朝鮮人戦時労働者問題(徴用工訴訟問題)についての韓国側の対応を挙げていました。

いわゆる徴用工については最初に説明していたというわけではありません。

安倍総理の説明

首相、対韓禁輸は「信頼関係上の措置見直した」 : 経済 : 読売新聞オンライン

安倍首相は1日の読売新聞のインタビューで、韓国への半導体材料の輸出管理強化について、「国と国との信頼関係の上に行ってきた措置を見直したということだ」と述べた。韓国との信頼関係が損なわれたことを理由に、管理強化に踏み切ったとの考えを示したものだ。「日本はすべての措置はWTO(世界貿易機関)ルールと整合的でなければならないという考え方だ。自由貿易とは関わりない」とも語り、今回の措置は国際貿易ルールに反しないとの立場を強調した。

安倍総理も最初の時点では徴用工について触れてませんでした。

安倍首相、韓国に「不適切事案」=輸出規制、正当性を主張 (時事通信社)

安倍晋三首相は7日のフジテレビ番組で、日本が韓国向け半導体材料の輸出管理を強化した理由について「(韓国側に)不適切な事案があった」と強調した。ただ、具体的な説明は避け、韓国が輸入品を北朝鮮に横流ししているとの見方に関しても「個別のことについて申し上げるのは差し控える」と述べた。

 首相は韓国に厳格な輸出管理を要求。元徴用工問題に触れ、「国と国との約束を守らないことが明確になった。貿易管理でも恐らくきちんと守れないと思うのは当然だ」と述べ、日本側の措置の正当性を主張した。

テレビ番組では徴用工問題に触れた上で「信頼関係」についての発言を行っています。

世耕大臣のツイート

これは7月3日です。その後、WTO理事会の会合が行われたため、そこでの法律論について触れたツイートもしています。

ここでは徴用工云々は言ってません。当たり前です。

WTOの法律論になった場合、日本はGATT21条の例外を主張していくことになりますが、この条文の要件事実に「信頼関係破壊」は無いのですから。

逆に言えば、「信頼関係云々」はWTOの法律論ではないということは明らかです。

日本政府は日韓間の問題として(WTOルールに整合的な)日本に裁量のある枠組みの中での日本の判断過程を示したに過ぎませんから、わざわざWTOルールに照らした発表をする必要が無いのです。

むしろWTOの法律論に持ち込みたいのは韓国側です。それを考慮すべきというのは正しいですが、韓国側の土俵に乗っかっただけではダメでしょう。

小括:日本政府の立場は変遷していない

このように、むしろ当初は徴用工訴訟問題について触れていなかったが、後に政治家の口から、信頼関係が破壊された背景として語られたという、逆の順番になっているのが分かるでしょう。

また、これは立場が変わったというよりも背景の説明を付加したという意味合いです。

ムンジェインの発言中、「強制徴用」は事実に反しますし(日本での原告は自ら応募してきた者、韓国でなぜか原告が追加されたが)、「その後、国際社会の支持が得られなかった」というのも根拠がありません。

韓国は「日本政府の立場は変遷した」という手法を好む

徴用工訴訟問題のWikipediaが嘘八百な件

徴用工訴訟問題に関する記述においても、「日本政府の個人請求権に対する考えは変遷している」として、まるで日本政府の主張は根拠薄弱であるかのように誘導しているものがあります。

しかし、これはまったくの捏造です。

Wikipediaの記述は朝鮮半島に親和性のある山本晴太弁護士の論文を大量に引用しており、その中での誤魔化しの部分が記述されています。

 

一般的に、こうした工作が行われているのだということは認識すべきでしょう。

上記の記事でも指摘していますが、まともに国会議事録や判決文を読めば、まったく立場が変遷しているとは言えないという事が明らかです。

今回のデマも放置していると、それが日本国内ですら「日本政府の立場は変遷している、ブレている」という言説がまき散らされてしまいます。

まとめ:ホワイト国からインビジブル国へ

日本は何も韓国を「ブラック国」扱いにするわけではありません。

原則の扱いに戻す、つまり無色透明(インビジブル)の扱いにするだけです。

通商分野の範囲を超えてインビジブルの扱いになるか否かは今後の韓国次第でしょう。

以上