事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

森法相「カルロスゴーンは無罪を証明すべき」⇒「主張」の言い間違えと弁解するが

森まさこ法相記者会見「無罪証明」

森まさこ法相が1月9日午前0時30分頃からの記者会見において「カルロスゴーンは
無罪を証明すべき」と発言したことについて。

報道に疑義が生じているので真偽を調べてみました。

法務省の文章には「無罪証明」は無し

法務省:森法務大臣コメント(カルロス・ゴーン被告人関係)ー令和2年1月9日(木)

ゴーン被告人においては,主張すべきことがあるのであれば,我が国の公正な刑事司法手続の中で主張を尽くし,公正な裁判所の判断を仰ぐことを強く望む。

法務省で公開された森法務大臣のコメントには「無罪証明」の文言はありません。

これはどういうことでしょうか?

同日にはもう一つのコメントがありますがそれは無視してください。

森法相がYoutubeに挙げた動画にも「無罪証明」は無し

森まさこ法相がYoutubeに挙げている動画でも、「無罪を証明」はありません。

ただ、上記ツイートでは「無罪を主張」と書かれています。

ツイートでは「無罪を証明」⇒「無罪を主張」

森まさこ法相のツイート無罪証明

実は、前項で紹介したツイートの前に「無罪を証明」と書かれたツイートがなされ、それが削除されて「無罪を主張」以外は同一文言のツイートが再度なされたという経緯があります。

では、「無罪証明」とは、ツイッターの文言が独り歩きしただけなのでしょうか?

そうではありません。

森まさこ法相「カルロスゴーンは無罪を証明すべき」記者会見で

ゴーン被告人に嫌疑がかかっているこれらの経済犯罪について潔白だと言うのならば、司法の場で正々堂々とつみを証明すべきであると思います。無罪を証明すべきであると思います。

森まさこ法相は「カルロスゴーンは無罪を証明すべき」と明確に発言しています。

ところが、報道では違った形で報じられていましたので「本当にこのような発言がされていたのか?」という疑義が生じていました。

FNNや日テレは動画を編集したが当然

FNNや日テレのニュース記事のページでは森法相の当該発言部分の動画がありました。

ただ、「無罪を証明」の直前部分でカット編集していました。

そのため【無罪を証明と言っているように見せかけているのではないか】と疑問を持つ人が多く、私もその一人でした。

しかし、先述の通り、カットしたのはその直前に「司法の場で正々堂々とつみを証明すべきである」と言い間違えていたためです。

その部分は報道には不必要なためにカット編集しただけであるということが分かります。

よって、報道機関を責めることはできません。

森まさこ法相のFacebookでも「無罪を証明すべき」

森まさこ法相のfacebook

森 まさこ - 先ほど、法務大臣として記者会見をいたしました。カルロス・ゴーン被告人は自身が潔白だというのであれば、司...魚拓はこちら

9日の1時54分に投稿されたフェイスブックの投稿でも以下書いていました。

先ほど、法務大臣として記者会見をいたしました。カルロス・ゴーン被告人は自身が潔白だというのであれば、司法の場で正々堂々を無罪を証明すべきであります。政府として、関係国、国際機関等とも連携しつつ、粘り強くあらゆる手を尽くして参ります。

※当該コメントは13時47分に「無罪を主張」に変更されました(facebookの編集履歴が閲覧可能なため)。当初ここには16時現在も変更なしと書いてましたが誤りでした。訂正します。

ツイートは再投稿しているにもかかわらずです。

よって、森法相が「無罪を証明すべき」という言い回しが法曹として・法相としてあるまじきものであるということを自覚することが無かったということが明らかになりました。

辞任すべきレベルの失言だと思います。

日本の刑事司法の無罪推定原則が疑われてしまいかねない

刑事裁判は「検察官が被告人の有罪を証明する」場であって、被告人が無罪を証明する場ではありません。検察官に有罪の挙証責任があるということです。これは無罪推定原則から導かれることです。

勘違いされやすいですが、被告人は無罪を「主張」して「無罪判決を得る」ための「立証活動」をしますが、「無罪を証明しなければならない」のではありません。

被告人は「検察官が有罪を証明できない」場合には無罪になる、という関係です。

別の言い方をすれば「真偽不明であれば無罪になる」のが刑事裁判です。これを「疑わしくは被告人の利益に」と言うことがあります。

「無罪を証明」だとすると、「真偽不明であれば有罪と推定する」ことを意味することになってしまいます。法律を勉強した人間なら、この言葉遣いがどれほど「ヤバい」ことなのか理解できるでしょう。

「無実を証明」なら一般用語として使っているように見えるのでまだわかる

日本の刑事司法を非難したカルロスゴーンの会見後に「無罪を証明」と発言することのヤバさ

森まさこ氏が東北大学法学部出身の弁護士であるからということだけでなく、この文脈でこれを言ってしまうのは、日本の刑事司法の無罪推定原則が世界から疑われてしまいます。

カルロスゴーンは日本の刑事司法を「人質司法」だと非難するなどの会見をしました。

世界が日本の刑事司法に注目している中での森法相の発言が如何に日本の国益を損なうのか。メディア戦略という観点からも大失敗です。

今の所、日本の大手メディアはこの点について問題視していませんが、もう他のメディアが非難することは明らかです。そして、その情報が海外に拡散されるおそれすらあります。

法務省が「無罪を証明」を掲載しなかったのは正しい

森法相が口走ったことをそのまま公式文書にするのは日本の国益を著しく損なうため、法務省が公式に掲載する文章としては「無罪を証明」の部分を削ったのは正しいでしょう。議事録も、実際の発言から修正したものがリリースされることがあります。正しい運用です。

もっとも、法務省が会見で用意した文章にそう書いてあったのか、森法相が思いつきで口走ったのかは定かではありません

しかし、前者であっても「法曹であれば言い直してまで発言することは無い」のであり、法務省官僚がこの言葉を問題視していなかったことになりますから、いずれにしても大問題であることには変わりありません。
森法相の個人の資質の問題にした方がダメージは小さいだろう

追記:「主張」を「証明」と間違えたと弁解

森法相は「主張」を「証明」と間違えたと弁明しています。

しかし、「つみを証明すべき」と発言した後に言い直して「無罪を証明すべき」と発言した経緯、ツイートやフェイスブックでも「無罪を証明」と書いていることからは、単に言い間違えたのではなく…

もういいでしょう。

わかりやすくまとめ

わかりやすくまとめると以下になります。

  1. 森法相が会見で「ゴーンは無罪を証明すべき」と発言したのは事実
  2. 森法相は「つみを証明すべき」と発言したのちに「言い直した」
  3. そのため、メディアは編集した動画を報道せざるを得なかった。
  4. 森法相はツイッターでは「無罪を証明」と書いたものを削除し「無罪を主張」としたものを再度ツイートした
  5. 法務省の公式では「無罪を証明」の部分は削除されている
  6. 森法相がUPしたYouTube動画は「無罪を証明」の部分をカットしている
  7. 森法相はFacebookでも「無罪を証明」と書いたが、それは9日16時の時点で削除していない

さて、なぜこのように検証をしているかというと、産経やNHKが報じていても、信用できないからです。どのメディアもタイトル詐欺や動画編集による発言の曲解・印象操作を行っているからです。

同じように報道に疑問をもっている方が多くいらっしゃったからです。

本当に疲れました。

以上

追記:やっぱり揚げ足を取られました。

「時代遅れな司法制度、廃止するのはあなた」ゴーン被告弁護士が声明 森法相発言に(毎日新聞) - Yahoo!ニュース