事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

解散命令が出された明覚寺の「組織的犯行」はどう認定されたのか:統一教会=家庭連合との異同

現時点ではもう無理だろう。

統一教会=家庭連合と解散命令

現在までにオウム真理教以外に宗教法人法上の解散命令が為されたのは、霊視商法を行っていた明覚寺だけです(法の華は破産手続開始決定が理由)。

統一教会=家庭連合に対して解散命令が出されるべき、解散命令請求をすべき、という論がありますが、これと比較してどうか?

なお、オウム真理教に対しては破防法上の団体それ自体の解散指定処分が検討されましたが、請求棄却となっています。

宗教法人明覚寺の解散命令の根拠となった詐欺事件

宗教法人明覚寺が解散命令を受けたのは和歌山地方裁判所決定平成14年1月24日(平成11年(チ)4号)によってです。最高裁まで争われましたが棄却されて解散となりました。

(2) 以下、本件において上記解散命令事由が認められるか検討する。

 前記2に認定した詐欺はいずれも相手方に属する満願寺もしくは龍智院を舞台として行われたものであるところ、その実行行為者及び件数が多数に及んでいることだけからみても、上記各詐欺が組織的に行われていたことが強く窺えるところである。

 さらに、一件記録によれば、

〈1〉 前記各詐欺行為は、被害者が満願寺のチラシを見るなどして相談に訪れたことがその端緒になっているところ、そのチラシは、満願寺が独自に作成したものではなく、相手方代表者たる西川義俊の指示ないし決裁を経て、相手方の本部において関連会社に発注して作成したものであること、

〈2〉 満願寺または龍智院へ相談に訪れた者の中には、金員を騙し取られたにとどまらず、行と称して、新たな詐欺の端緒となるビラ配り等をさせられた者もいること、

〈3〉 相手方では、教師特別錬成命令書が作成され、教師の目標数値が(騙取)金額をもって設定されていたこと、

〈4〉 各僧侶の給料額算定の基準となる僧侶の階級(時期によって多少の変動があるものの、20段階程度に分けられていた。)があるところ、この階級の昇降は、入信教師や導師の場合、どれだけの金額の金員を相談者から騙した取ったかにかかっており、各寺院を総括する住職の場合、当該寺院全体においてどれだけの金額の金員を相談者から騙し取ったかにかかっていたこと、

〈5〉 相手方代表者西川義俊が自ら、金員騙取に向けた欺罔文言を羅列したトーク集なるものを作成した上、これを全体会議に集まった教師や住職らに配付していたこと、

〈6〉 前記のとおり、満願寺において騙取にかかる金員の振込送金をを受ける場合には、「満願寺矢野敬二郎」名義の口座が用いられていたばかりか、相手方において西川義俊に次ぐ地位にあった矢野敬二郎が現に同口座を管理し、予定されていた金員の送金がない場合には、担当僧侶らに問い合わせるなどしていたこと、

〈7〉 前記2に認定した詐欺の実行行為者は、いずれも明覚寺の系列寺院において話術訓練等を受けていること、

 が認められる。

 これらの事実を総合すれば、前記2に認定した詐欺行為は、もはや相手方に属する僧侶等による個人的犯罪ということは到底できず、宗教法人たる相手方が主体となって行ったものというべきである。

 そして、その被害件数及び被害額が極めて多数・多額に及んでいることからして、著しく公共の福祉を害するものであることは明らかであるし、組織的に詐欺行為を行うことが宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為であることは多言を要しない。

原因となる事件は名古屋地方裁判所平成7年(わ)1912号、2121号、同8年(わ)126号事件とその控訴審である名古屋高等裁判所判決平成14年4月8日(平成11年(う)295号)。

そこでは被告人らと明覚寺管長の西川義俊との共謀が認められています。

統一教会=家庭連合の刑事事件:懲役刑(執行猶予付き)が出た新世事件

統一教会「がらみ」の刑事事件(不起訴事件も含む)は以下で書かれています。

統一教会 霊感商法の実態 全国霊感商法対策弁護士連絡会

ただ、統一教会の布教・教義が関係する勧誘や商行為についての刑事事件となると非常に限定されており(健康保険証の不正使用や住居侵入事案なども掲載されている)、そのほとんどが罰金刑です。

最も有名なのが、統一教会信者の組織における物品販売が特定商取引法違反であるとして法人に対して罰金刑、代表取締役と営業部長に懲役刑(執行猶予付き)と罰金刑が科された「新世事件」(東京地方裁判所判決平成21年11月10日)です。

そこで認められている「組織的犯行」は、有限会社新世という組織におけるものであり、統一教会が組織的に犯行に関与していただとか、共謀に及んでいただとかいった認定は為されていません。

「信仰と混然一体となっているマニュアル」も、有限会社新世という組織において統一教会信者に勧誘するために作成されたものと認定されているに過ぎません。
※全国霊感商法対策弁護士連絡会のHPや赤旗HP上の記述がどのように認識誘導的か…

統一教会=家庭連合は、民事でも使用者責任が問われる事案は多数ありますが、宗教法人本体の本人としての不法行為が認定されたのは家庭連合時代の2件程度です。

ちなみに、統一教会は宗教法人法6条2項違反による公益事業以外の事業の一年以内の期間の停止命令(法79条)すら為されていません。

統一教会に解散命令請求をすべきか、解散命令が出されるべきかについての私の認識は以下で書いています。

有罪判決が出た2009年、民主党政権は何をやっていたのか?

本当に「政治の力」(自民党政権)なるものがあったのなら、この時期はどう説明できるのか?有田芳生議員が議員の身分の時期に統一教会について解散命令を出すべきと質疑しているものはありませんでした。

「解散命令 著しく公共の福祉を害する」で国会議事録検索しても上掲の平成10年の前川答弁しか出てきませんが、その間、共産党も含めた政党は、何をやっていたんでしょうか?

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