事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

選挙の秘密:中学3年の夏休みの宿題が参院選の支持政党を答えた上で論じるものの問題点

中学3年生の夏休みの宿題に支持政党を答えさせる内容の設問があったという人が居ました。その問題点と解決方法を指摘します。

中学3年の夏休みの宿題

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上から2つ目の囲みの設問

あなたの支持政党はどこかを答え、選挙の結果を受け手、その正当は今回の選挙で有権者からどのような評価を受けたと考えるか説明しなさい。

この問いは大変問題のある設問です。

憲法15条4項「投票の秘密」の侵害に実質的に同じでは?

第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
○4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

憲法15条4項には「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」と規定されています。

もちろん、出題を受けたのは中学三年生なので18歳未満ですから、当然にして選挙権は持っておらず、今年7月の参院選には投票していません。

よって、投票の秘密の侵害という事にはなりません。

しかし、実質的に同視される事態ではないでしょうか?

「あなたの支持政党はどこかを答え」という設問が仮に18歳以上の大学生に対して大学側が問い、評価の一つとしたならば、紛うことなき選挙の秘密の侵害です。

なぜなら、支持政党を答えるということは、参議院比例代表においてどの政党(候補者名での投票をする場合もあるが)に投票したのかを問うことにほぼ等しいからです。

支持政党以外の党に投票する場合もあり得るが、通常は支持政党に入れるでしょう。

選挙権が無い者だからと言ってそのような性質の問いを投げかける事は憲法15条4項の精神に反するものではないでしょうか?

その意味で、たとえ選挙権を持たない者であっても「支持政党を答えない権利」があると言え、設問はその権利の侵害であると言えないでしょうか?

参院選の支持政党を表明することの意味

支持政党を表明することには一定のリスクがあるということは、一般社会の常識です。

特に学校組織においては特定の政党の支持者であるということが分かると不利益な扱いを受ける危険があると考えられます。教師が特定の政党の構成員である場合があるからです。社会科なんて特に注意ですよ。

共産党員が教師をやってるような場合がありますからね。

海外では共産主義(つまり共産党の結成も)が禁止されている国もあります。

その教師が実際に公平・公正に物事を扱うかどうかは関係ありません。

教師が「公平に扱う」などと言っていても、学校側の言うことなんて信用できませんからね。「アンケート結果は誰にも言いません」などと言いながら児童虐待をしている親に見せた学校もあったではないですか。

そういう機微な事項について、支持政党の回答を強制し、それを評価の考慮要素の一つにすることは、配慮が欠けていると思います。というか、そういう設問の文言にしている時点で、とてもではないですが信用できないでしょう。

「海外では学生のうちから政治について議論するんだ」みたいな意見を目にしますが、それは自発的にやってることであって、本件では学校側が回答を強制して評価の対象としていることが問題なので、まったく次元の異なる話です。

こういった事を考慮せずに「政治について考えさせる良い課題だ」とは言ってほしくないですね。

「大人の回答」の仕方:支持政党なし

「大人の回答」の仕方としては、「支持政党なし」と答える事が考えられます。

ここで、この設問は「支持政党が無い」という人も居るということを全く想定していないということにも気づかされます。

そういう人はどのように回答すれば良いのでしょうか?

宿題の提示の時点で何か説明があったのでしょうか?

仮に授業や宿題発表の際の説明で「支持政党を決めるように」と言われたなら、また別の問題が発生します。

この意味でも配慮に欠けた設問だと思います。

学校側に設問内容を変更させる

この宿題は、問2が支持政党を答えさせるものであるという点を除けば、とても有意義なものだと思います。

そのため、問2の表現を変更することで、生徒の人権を守りつつ、選挙制度や政治について理解を深めるという宿題の狙いを同時に達成することができると思います。

「あなたがある1つの政党の支持者になったと仮定して、その視点から論ぜよ」

このような設問にすれば、個人に支持政党を晒す要求ではないですし、設問の文言からも出題者が公平公正に扱ってくれるという事が予定されています。

現実的には、そのような設問として扱うことを学校側に認めさせることが、本件の問題の解決方法ではないでしょうか?

学校側が翻意しなければ、「支持政党なし」と答えた上で、自分である政党の支持者になったと仮定した場合の論述をすれば良いでしょう。

まとめ

  1. 「支持政党を答えよ」という宿題は実質的に憲法15条4項の「選挙の秘密」の精神に反している
  2. 「ある政党の支持者になったと仮定した論述」をさせるよう宿題の趣旨を変更するのが生徒の人権も守り、宿題の狙いも達成するための穏当な解決方法ではないか。
  3. 「支持政党なし」と答えて上記2番の視点で論述することを明記する方法もある

教師が意図的にやったものなのか、特に深く考えもせずこのような内容になってしまったのかは不明です(後者の可能性が高いと思います)。

選挙の秘密を直接侵害するものではないですが、その精神に反する設問であるという意味において、教育をする側として相応しくない設問だと言えるでしょう。

以上