事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

日本学術会議「性自認女性の男が女子大を受験進学できないのは学ぶ権利侵害」トランスジェンダー児童生徒進学問題

活動家の巣窟

日本学術会議「性自認女性の男が女子大を受験できないのは学ぶ権利侵害」

トランスジェンダーの受験、模索する女子大 「お茶の水」が門戸開いたが…(西日本新聞) - Yahoo!ニュース

「トランスジェンダーの学生が女子校・女子大に進学できないのは『学ぶ権利』の侵害に当たる」。日本学術会議による17年の提言後、同大を皮切りに奈良女子大(奈良市)、宮城学院女子大(仙台市)など少なくとも3校が続き、日本女子大(東京)が来年度からスタートさせる。検討中のところもあるが、約70校ある女子大では少数派だ。

気づいたのはこの記事。

日本学術会議の17年の提言では、「性自認女性の男が女子大を受験できないのは学ぶ権利侵害」という旨が書かれていました。

提言「性的マイノリティの権利保障をめざして(Ⅱ)―トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けてー」ポイント|日本学術会議

性的マイノリティの権利保障をめざして―婚姻・教育・労働を中心に―
平成29年(2017年)9月29日 日本学術会議 法学委員会 社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会

学術会議トランスジェンダー

一般に大学では、入学願書・在籍時の各種書類に戸籍抄本を提出させることはない。性別の判断根拠は、入学願書の氏名や高校調査書の記載事項に基づいているにすぎない。現状では、問合せがあったときに「戸籍上の性別」を受験・入学の条件にあげて回答しているようだが、トランスジェンダーについてのみ戸籍確認を要求するのは平等対応とは言えない。「文科省通知」にしたがって性自認に即した学校生活を保障されているにもかかわらず、女子校/男子校や女子大に進学できないとしたら、それは「学ぶ権利」の侵害になると言えよう。 

この記述はいろんな面で認識が歪んでいます。

文科省通知「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」

学術会議の提言中にある「文科省通知」とは、性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について 平成27年4月30日 27文科初児生第3号魚拓)です。

この通知は「平成15年、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が議員立法により制定」されたことを受けて「性同一性障害に係る児童生徒についてのきめ細かな対応の実施に当たっての具体的な配慮事項等を下記のとおりとりまとめました。」としており、「性同一性障害の生徒(乃至はそれが疑われる生徒)」を対象にしたものです。

内容は、法に基づく戸籍上の性別の変更等を行った者から卒業証明書等の発行を求められた場合には不利益にならないようにせよ、といった内容です。

性同一性障害者特例法には、性同一性障害の定義があります。

平成十五年法律第百十一号
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

(定義)
第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。
(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

学校に求め得る支援の例としては以下の表があります。

性同一性障害かその他の傾向かも判然としない場合も:その他の性的マイノリティとの違い

しかも、上掲文科省通知には以下のような記述があります。

医療機関による診断や助言は学校が専門的知見を得る重要な機会となるとともに、教職員や他の児童生徒・保護者等に対する説明材料ともなり得るものであり、また、児童生徒が性に違和感をもつことを打ち明けた場合であっても、当該児童生徒が適切な知識をもっているとは限らずそもそも性同一性障害なのかその他の傾向があるのかも判然としていない場合もあること等を踏まえ、学校が支援を行うに当たっては、医療機関と連携しつつ進めることが重要であること。

つまり、決して主観的な性自認のみをもって対応を決めているということではないということです。背後には「思春期の揺れ動く性自認」という認識があると予測されます。

現場で申告された場合にどのように扱われているのかは知りませんが、文科省通知のレベルではそうなっています。

他方で、以下の記述もありますが…

教職員としては、悩みや不安を抱える児童生徒の良き理解者となるよう努めることは当然であり、このような悩みや不安を受け止めることの必要性は、性同一性障害に係る児童生徒だけでなく、「性的マイノリティ」とされる児童生徒全般に共通するものであること。

「性同一性障害に係る」児童生徒のみならず「性的マイノリティとされる児童生徒全般」を対象にした記述があります。

が、これは悩みや不安を受け止めることの必要性を説いている部分のみであり、この通知全体は「性同一性障害に係る」児童生徒を対象にしています。

そもそも両者を分けているということは、それらの間には「違い」があるということが意識されているということです。その差は性同一性障害特例法に定める性同一性障害の定義に該当するかどうか、という点です。

ですから、たとえば医師の診断が無いのに卒業証明書をその者の自認する性別のものとして発行する、などということは、求められていません。

日本学術会議が歪めた文科省通知の理解と学ぶ権利の侵害という嘘:マイノリティ特権の創出

日本学術会議の提言を再掲

「文科省通知」にしたがって性自認に即した学校生活を保障されているにもかかわらず、女子校/男子校や女子大に進学できないとしたら、それは「学ぶ権利」の侵害になると言えよう。 

以上見て来たとおり、「文科省通知」は医師の協力を得て性同一性障害かどうかという点を慎重に見極めるようにしつつも、それが判明しない間でも当該児童生徒の性自認に一定の配慮を求めているのが分かりますが、そうした要素が無く突然自称された性自認にすべて対応すべきとは言っていません。

しかも「法に基づく戸籍上の性別の変更等を行った者」について卒業証明書等で配慮せよと言ってるのであり、学術会議が言うような「トランスジェンダーについてのみ戸籍確認を要求するのは平等対応とは言えない」という話には文科省通知からはつながらない。

「性自認に即した学校生活を保障」といっても、それは暫定的なものか、医師を含めた第三者が客観的に性同一性障害と認定或いはその疑いが拭えない場合に過ぎない。

文科省通知が進学先でも同一の扱いを求めるものではないのも明らかでしょう。

そして「学ぶ権利の侵害」というのも、いつもの嘘です。

性自認が女の男性は、他の男子高・大学を受験することは何ら妨げられていませんし、性自認が男の女性は、他の女子高・女子大を受験することは何ら妨げられていません。

これが学ぶ権利侵害なら「女子高・男子高・女子大」という区分があることそれ自体が学ぶ権利の許されざる侵害だとされなければなりません。

むしろ、他の標準的な男性・女性は、それぞれ女子高・女子大と男子高への受験が制限されているのですから、性自認が生物学的性と異なる者だけが、受験できる学校が増えるという特権を手にすることになります。

これが強要されるならば憲法14条の平等違反でしょう。

任命拒否問題でも「学問の自由の侵害」と嘯いていましたが、何ら研究内容に制限が加えられるものではありませんでした。

日本学術会議は性的マイノリティ関連の議論で、都合の悪い発言の趣旨を捏造していたこともありました。

ここで取り上げた文言以外にも夥しい問題点を指摘できますが、割愛します。

学術会議の提言にかかわる怪しい人物:困難女性支援法有識者やオープンレターズなど

この学術会議の提言にかかわる怪しい人物として、困難女性支援法有識者会議(咲いt連と解散済み)の座長だった戒能民江やオープンレターズの隠岐さや香などが居ます。(他にも居ますが割愛)

従前から、日本学術会議が活動家の巣窟になっているということは周知の事実でしたので驚きもありませんが、「こんなこともやっていたのか」という思いです。

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