日本学士院は日本学術会議の関係については注意が必要です。
日本学士院会員名簿は公開:学術会議の「OB組織」ではない
日本学術会議法
(組織)
第二条 日本学士院は、日本学士院会員(以下「会員」という。)で組織する。
2 会員の定員は、150人とする。(会員)
第三条 会員は、学術上功績顕著な科学者のうちから、日本学士院の定めるところにより、日本学士院において選定する。
2 会員は、終身とする。
日本学士院の会員の名簿は公開されています。
しかも、物故会員=鬼籍に入られた方の名簿も、すべて掲載されています。
これをみると、とてもではないですが、3年で105名が入れ替わる日本学術会議の「OB組織」とは言えません。もしもそうであれば、戦後だけでも75年で25期のメンバーが居るわけですが、2000人以上の名簿が無ければおかしい。
定員も決まっている上に終身制ですから、欠員が出ないと選ばれません。
日本学士院の会員は、研究業績が優れている方のみが選ばれるのであって、その時期も晩節になってからです。
したがって、それまでに日本学術会議の委員になっている可能性もあり、そこから多く選出されているとしても疑似相関になっている可能性があります。
OB組織というニュアンスはミスリーディングでした。学術会議を退いた方の中から学士院会員になるケースが多いということだと思います。
— 長島昭久 Akihisa NAGASHIMA, MP (@nagashima21) 2020年10月3日
日本学術会議OBと日本学士院の会員は構成が異なるため、先ほどのツイートは削除致します。確認せずに発信致しましたこと、お詫び致します。
— 細野豪志 Goshi Hosono (@hosono_54) 2020年10月3日
日本学士院は日本学術会議に付置されていたが独立
日本学士院会員は国家公務員法2条3項12号、日本学術会議会員は同12号の2に規定されている特別職国家公務員です。
ただし、日本学術会議は内閣府設置法40条3項で規定されている国家行政組織法上の内閣府の特別の組織たる行政機関ですが、日本学士院は文部科学省の特別の機関です。
文部科学省設置法
第三節 特別の機関
(設置)
第九条 本省に、日本学士院を置く。
日本学士院はかつては日本学術会議に付置されていましたが、昭和31年の法改正によって分離・独立しました。(それ以前の制度も変遷があった)。
日本学士院は日本学術会議の「OB組織」という認識になる者が出てくるのは、こういう組織構造・沿革も影響しているものと思われます。
もっとも、日本学術会議の委員経験者が日本学士院の会員になりやすいのではないか?という疑問については、実態を調べる必要があると思います。
もしもそういう実態があるならば、日本学士院の会員に終身年金が支給されていることが一気に問題視されることとなります。
日本維新の会の足立康史議員が10月7日の閉会中審査で質問する予定です。
3.日本学士院会員には終身年金が支給されているが、そうした形で一部の科学者を優遇することが学術の発展に寄与する理由如何。
— 足立康史 (@adachiyasushi) 2020年10月3日
お互いの構成員が構成員を選考する関係
附 則 (平成一六年四月一四日法律第二九号)
第四条 一部施行日から施行日の前日までの間、日本学術会議に、施行日以後最初に任命される会員(以下「新会員」という。)の候補者の選考及び推薦を行わせるため、日本学術会議会員候補者選考委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、政令で定める数を超えない範囲内の数の委員をもって組織する。
3 委員は、学識経験のある者のうちから、次に掲げる者と協議の上、日本学術会議の会長が任命する。
一 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第二十九条第一項第六号に掲げる総合科学技術会議の議員のうちから総合科学技術会議の議長が指名するもの
二 日本学士院の院長
(候補者の推薦)
第三条 日本学士院会員候補者の推薦をなし得る者は次のとおりとする。
一 学術機関(大学の各学部及び研究所を含む。)及び学会(学術機関及び学会を以下「学術団体」という。)
二 日本学士院会員
三 日本学術会議会員
2 前項の推薦資格者は、各学術団体又は各個人ごとに候補者一名を推薦することができる。
3 日本学士院会員と日本学術会議会員との二つの資格を有する者が候補者を推薦する場合には、日本学士院会員の資格をもってこれを行うものとする。
4 日本学士院会員は、その所属する分科の候補者に限り推薦することができる。
5 日本学術会議会員は、その所属する部に相当する分科の候補者に限り推薦することができる。
日本学術会議と日本学士院は、お互いの構成員が構成員を選考する関係にあります。
よって、「OB組織」とまではいかないまでも、日本学術会議の委員になればその人脈によって、終身年金がもらえる日本学士院の委員になる可能性が高くなる、そういう実態があるのではないか?という疑問が出てくるのは自然なことだと思います。
以上