事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

中国国内「新型肺炎は外国人も日本の公費負担」が大拡散:「武漢政府が負担」はほぼ無視

中国weibo新型肺炎は外国人も日本政府負担が話題

中国版ツイッターの微博=weiboで、日本政府が新型肺炎を指定感染症に指定し、外国人の場合でも費用は日本政府負担であるということが大拡散されています。

これに対して、武漢市や各省の政府が新型肺炎は政府負担であると言及したものはこれに比してほぼ拡散されていないと言えます。

中国国内「新型肺炎は外国人も日本の公費負担」が大拡散

フェニックスTVミャオ記者

中国国内「新型肺炎は外国人も日本の公費負担」が大拡散されるきっかけは、Phoenix TVの東京特派員であるリー・ミャオ記者がこのような投稿をしたことです。

1万以上の「いいね」が付いています

概要は「日本政府は新型肺炎を指定感染症に認定し、医療費は日本人のみならず外国人も政府負担になる方向だ」というものです。

そして午後には冒頭の投稿のように外国人の医療費も日本政府負担になるという記述で茂木外務大臣のインタビュー動画が流されており(添付動画内では茂木大臣は外国人医療費云々について言っていない)、これが13万以上も「いいね」がついてました。

27日のweiboは(少なくともアカウント作成したばかりの私の環境では)この投稿を引用した投稿で溢れかえっていました。

また、「政府負担」「治療費」などの単語で検索しても中国国内の情報ではなく日本政府の発表の方が多くシェアされています(これは端末環境関係ない)。

武漢市や各省政府も新型肺炎の治療費は「政府負担」と言っているが

武漢市市長が会見で治療費は「政府負担」

実は1月21日の時点で、武漢市の衛生健康委員会が記者会見をし、新型肺炎の治療費は「政府負担」であり、外来患者も対象とすると記者会見をしています。

人民日報のこの投稿では11万以上の「いいね」がつけられていますが、武漢日報など他の媒体が取り上げたものはほとんど拡散されていません。

記者会見の動画は以下

武汉把新型冠状病毒肺炎患者救治工作作为重中之重 中国新闻网 | 2020-01-22 08:17:01

また、同日に中国国家医療保障局も治療費は政府負担であると発表したとの日本メディアの報道を置いておきます⇒武漢の新型肺炎重症患者が「ただの風邪ではない」と気づいた症状を証言 | Business Insider Japan

中国国内の他の地方政府においても、治療費は政府負担である旨の公表をしているので、この措置は中国全土において行われていると言えるんじゃないでしょうか。

こうした情報よりも、日本政府による「外国人も政府負担」の情報の方が圧倒的に多く拡散されているというのは、理想論ではいかない何かを考えてしまいます。

診断のために日本に来るインセンティブは無い?

そのため、一部で「公費負担の対象に外国人も含まれるとしたことから中国から診断のために押し寄せてくる」ということを心配する人が居ます。

「日本医療へのタダ乗り」に対する懸念です。
※一般的な健康保険制度悪用問題とは別個の話です

これは中国国内で既に医療費が無料となっていることから、渡航費用も考えれば日本に来るインセンティブはほとんど無いと言えるでしょう。

ただ、中国の病院での診断や薬、診断後の扱いに不信感を持つ中国人も多い上に、病院のキャパシティが足りないことから、日本の医療を信頼している富裕層が来る可能性はあります。しかし…

  1. 現在は中国全土で旅行会社を介さない個人旅行以外は渡航禁止になっている
  2. 渡航時点で感染症が発覚すれば入国拒否の対象になり得る
  3. わざわざ来ても新型肺炎と診断されなければ意味が無い(医療ビザで来る場合は健康保険の対象外)
  4. 診断のためにわざわざビザを取得する手間(数次ビザ取得済みの場合を除く)をかけてまで来るとしても極めて少数と考えられる
  5. 4月1日からは健康保険加入者の扶養家族への適用は日本国内居住者に限られる

こういう要素からは、あまり気にする必要は無いのかなと思いますが、騒がれている様子を見ると、情報発信には注意しないとフリーライドされてしまいかねないなぁと思いました。

以上