事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

琉球新報仲宗根雅則「沖縄が味方につけるべきは中国、ロシア、北朝鮮」の記事が削除されていた

琉球新報の仲宗根雅則、沖縄が味方に付けるべきは中国ロシア北朝鮮

琉球新報の「沖縄が味方につけるべきは中国、ロシア、北朝鮮」と書かれた記事が削除されていたので記録に残します。

琉球新報仲宗根雅則「沖縄が味方につけるべきは中国、ロシア、北朝鮮」

【島人の目】苦難覚悟で沖縄独立も(魚拓)2019年3月31日

元URL:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-896730.html

辺野古移設反対が多数を占めた県民投票の結果を受けても、安倍政権が「基地負担を軽減するため辺野古に新基地を造る」と沖縄を愚弄(ぐろう)する言葉を吐き続けるなら、もはや島はさらなる苦難を覚悟で独立を志向したほうがいいのかもしれない。その場合、沖縄が味方に付けるべき相手は中国、ロシア、北朝鮮のうちの1国。または3国全て。

 「仲宗根雅則、在イタリア、TVディレクター」という署名がある記事で、【沖縄が味方に付けるべき相手は中国、ロシア、北朝鮮のうちの1国。または3国全て。】と書いていました。

これは中国共産党の浸透工作の影響とみて良いでしょう。

現時点ではこの記事は丸々削除されています。

2019年12月時点では存在していましたが、2020年5月には消されています

なぜ、削除されたんでしょうか?

この間のイベントとしては、チャイナの武漢から広がった新型コロナウイルスのパンデミックがありますが、それによって各国でのチャイナの工作の影響力が減少したと考えられます。

CSIS報告書でも沖縄メディアに対する間接的な影響力行使の実情が指摘されています。

CSIS報告書による沖縄のメディアへの中共の浸透工作

Moving to the malign influence spectrum, perhaps the most important target of Chinese influence through the news media is Okinawa. In both its 2015 and 2017 annualreports, Japan’s Public Security Intelligence Agency raised the issue of potential Chinese influence to divide public opinion in Okinawa. In particular, the 2017 report cited a CCP-affiliated Global Times opinion piece encouraging China to call Okinawa by its former name, “Ryukyu” (as Okinawa was historically an independent kingdom known as the Ryukyu Kingdom), given that “Okinawa” alludes to a tacit acceptance of Japanese sovereignty.56 Similarly, the agency’s 2015 report noted that the CCP-affiliated People’s Daily published several papers questioning Japan’s sovereignty over Okinawa, including in its international version, concluding that such Chinese actions concerning Okinawa require attention. “China is using indirect methods to influence Japan. There’s a covert route like influencing Okinawa movements through influencing Okinawan public opinion to push for Okinawan independence and remove U.S. forces there,” Yuichi Hosoya of Keio told us. “That’s indirect strategy. It’s sharp power. We also can see sharp power in Japan such as cyberattacks.”

CSIS報告書による沖縄のメディアへの中共の浸透工作が書かれている部分。

「チャイナは、間接的な方法で日本に影響力を行使しています。沖縄の世論に影響を与えて沖縄の独立や米軍の排除を推し進めるように沖縄にムーヴメントを起こすなど、隠れた方法を用いて居ます。」

もっとも、この報告書はOkinawa movements throughの後の文章が修正されていますので、その経緯について捕捉します。

慶応義塾大学の細谷雄一氏の修正

細谷雄一の研究室から:中国の影響力工作という深刻な問題

中国はこの20年ほどで、パブリック・ディプロマシーの予算を飛躍的に増加しています。それらの予算の多くが、アメリカの同盟国において、アメリカとの「分離(decoupling)」の促進が重要な意図であるということは、上記の報告書でも触れられていることでした。ですので、それをもとに、スチュワート氏に対して、「中国共産党は、日本の中でも沖縄を主戦場として、大幅に増加した予算を用いて、メディアや世論に対して影響力を浸透させようとしている」ということ、上記の大木記者等の取材をもとに、「琉球民族独立総合研究学会などの団体に、中国政府も注目しており、関心を持って接近して、水面下で一定の繋がりが見られる」ことをお話ししました。

これらの発言が、Devin Stewart氏の、CSISでの報告書、China's Influence in Japan: Everywhere Yet Nowhere in Particularで参照して頂き、またこの報告書は日本の新聞もいくつかが取り上げて報道して大きく注目されました。

中略

しかしながら、他方で、私の上記のような発言部分が、英語でインタビューを行ったために、私の英語力の不足により、うまくその意図がつたわらなかったのかもしれません。スチュワート氏は、次のように記しています。“China is using indirect methods to influence Japan. There’s a covert route like influencing Okinawa movements through financing and influencing Okinawan newspapers to push for Okinawan independence and remove U.S. forces there,” Yuichi Hosoya of Keio told us. “That’s indirect strategy. It’s sharp power. We also can see sharp power in Japan such as cyberattacks.”

"Indirect methods"を用いた"sharp power"を行使しているので、なかなか中国の活動は日本国内では見えにくいということだと思うのですが、この文章の中のfinancing and influencing Okinawan newspapersというところが、一部の日本の保守系メディアなどでも取り上げられてしまいました。というのも、以前から沖縄の新聞社には中国のお金が流れているのではないか、という疑念を指摘していたからです。私は、そのような事実があるとは思っておりませんし、確認もしていません。それはdirect methodであり、そのような事実があればスキャンダルとなり、大問題として警察庁や公安調査庁もだまっていないはずです。あくまでも見えにくい「間接的な戦略」であることから、「シャープ・パワー」であると考えています。また、「大きな予算を用いて」というところや、上記のような沖縄独立を志向する団体と中国共産党の幹部に一定の交流が見られるというところが、おそらくはうまく伝わらず、あたかも中国のお金が直接、沖縄の新聞に流れているというような印象を与える英語になってしまったのだろうと思います。自らの英語の表現力の不足を、あらためて後悔しています。

CSIS報告書の中で参照されている慶応義塾大学の細谷雄一氏から、記述内容への修正依頼があったのは、沖縄の新聞社に対して中国共産党=CCPによる直接的な関与、特に資金提供があったかのような書き方になっていたからです。

ただ、この修正は、CCPの浸透工作がまったくなかった、影響が無い、ということを意味しません。細谷教授は以下の記事も書いています。

細谷雄一の研究室から:Political WarfareとInfluence Operation

それでは今回問題となった、中国の日本(沖縄)での「影響力工作」についての活動ですが、すでに何度か述べたようにその実態の多くが「間接的」なものであり、また合法的であるゆえに、見えにくいのが実態です。

しかしながら、それについて客観的かつ冷静に分析した研究もいくつか見られます。

たとえば、東京大学東洋文化研究所の客員研究員であるRussel Hsiao氏は、2019年7月に東京大学東洋文化研究所でのセミナーで、CCP Influence Operations in Taiwan and Japanと題する報告をおこなっており、中国政治および米中関係の専門家として最も信頼されている松田康博教授と佐橋亮教授が討論者として議論をおこなっています。

このHsiao氏が書いている報告書、Russell Hsiao, "A Preliminary Survey of CCP Influence Operations in Japan"では、"The U.S. Defense Intelligence Agency’s China Military Power Report, released in January 2019, revealed the agency’s official assessment that the People’s Republic of China (PRC) is conducting “political warfare” against the United States and Taiwan—and among other countries, Japan"と書き始めています。すなわち、アメリカ政府の報告書では、日本でも中国が「political warfare」をおこなっているという見積もりをしているということです。そして、日本でおこなっている「工作」が、"A little understood but critically important means by which the CCP engages in influence operations is “united front work” (tongzhan gongzuo, 统战工作): a whole-of-society strategy that aims to influence, indoctrinate, and mobilize non-CCP persons and organizations to serve the Party’s objectives"ということになります。

また孔子学院についても、触れていて、"Similar to concerns within the United States over the PRC Embassy’s interference in Chinese student associations overseas, some analysts in Japan have also expressed concerned about the activities of Chinese students and scholars associations and their relationship with the PRC Embassy in Japan (Foreign Policy, March 7, 2018)."ということで、日本でも懸念を表明するような分析が見られるようなったと触れています。

そして沖縄についても、中国政府が沖縄関係者にアプローチするいくつかの具体例が示されています。その背景として、"Growing local opposition to U.S. military bases in Okinawa, and animosity towards the Japanese central government, have coincided with increased CCP attempts to engage with the island"と書かれており、沖縄における反米軍基地の拡大が、中国共産党にとって関与する余地を大きくしているという連関性を指摘しています。

そして結論で、中国は日本ではより慎重で間接的な方法を用いながらも、多様なチャンネルで影響力行使を続けることが記されています。すなわち、"While it may be true that Japan’s government and society are less affected by CCP influence operations than might be the case in some other countries, it is not for a lack of the CCP’s capability to conduct political warfare and related activities in Japan. As this preliminary survey shows, the CCP remains intent on influencing the Japanese government and its people through multiple means and channels." つまりは、他国よりも日本国民はそのような中国の「影響力工作」の影響を受けにくいが、それによってそのような活動が存在していないということではないと論じており、実際には多様なチャンネルにより影響力を行使するという中国共産党の意図が見られると指摘しています。

なお、CSIS報告書の性質としては、外国人が見た日本の状況、というもので、ソースが明示されており、政治界隈について詳しい者であれば既に知っている内容となっています。

ただ、「浸透工作」について、日本人はなじみが無いため、今回の報告書のリリースによって大きく報じられることとなりました。

ここでも、報告書を部分的に紹介したものを以前に書いています。

以上