事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

雫石町ペンション村の水道供給と水道法改正による「民営化」は無関係

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各TV番組が岩手県雫石町のペンション村の水道事情について報じています。

水道供給会社と住民 料金めぐり対立 懸念広がる 岩手 雫石町 | NHKニュース

TVでは「水道法改正によって民営化した場合にこういうことが起きる」という印象操作がなされていますが。

雫石町の事案と今般の水道法改正はまったく無関係です。

オールドメディアや野党議員に騙されないようにしましょう。恥かきますよ。

水道法上の専用水道

(事業の認可及び経営主体)
第六条 水道事業を経営しようとする者は、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
2 水道事業は、原則として市町村が経営するものとし、市町村以外の者は、給水しようとする区域をその区域に含む市町村の同意を得た場合に限り、水道事業を経営することができるものとする。

ただし、岩手県雫石町の問題の地域(長山)は水道法上の「水道事業」ではありません。

(用語の定義)
第三条 ー省略ー
2 この法律において「水道事業」とは、一般の需要に応じて、水道により水を供給する事業をいう。ただし、給水人口が百人以下である水道によるものを除く。

ー省略ー

6 この法律において「専用水道」とは、寄宿舎、社宅、療養所等における自家用の水道その他水道事業の用に供する水道以外の水道であつて、次の各号のいずれかに該当するものをいう。ただし、他の水道から供給を受ける水のみを水源とし、かつ、その水道施設のうち地中又は地表に施設されている部分の規模が政令で定める基準以下である水道を除く。
一 百人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの
二 その水道施設の一日最大給水量(一日に給水することができる最大の水量をいう。以下同じ。)が政令で定める基準を超えるもの

読売新聞産経新聞によると、当該地域の水道は井戸水からポンプでくみ上げるものであり「専用水道」として運営されているということです。 

ペンション村の居住人口は50人程度だということです。

つまり、当該地域は市町村が保有している資源である水資源について、民間企業が供給施設を作り供給するという運営を行っているということです。

雫石町ペンション村は最初から民間企業が運営していた

当該地域は雫石町の水道事業の対象外です。

最初から民間企業が水道供給を担ってきた場所です。

今般の水道法改正の話とは無関係です。

今般の水道法改正は『自治体がやろうと思えば』民間企業に対して水道供給を委託できるようにすることを狙いとしています。

雫石町の事案は市町村側から発信して民間企業に委託をした事案ではなく、最初から事業者(住民側)から発信して「民間運営」の許可を受けたというに過ぎません。

今回問題となる発言をしたのは仙台市に事務所を置く「イーテックジャパン」ですが、今年事業を引き継いだようで、これまで何代にもわたって民間企業がこの地域の水道の供給を行っていました。

つまり、雫石町の事案は水道法の話ではあるが、今般の水道法改正の話ではないということになります。

イーテックのやり方が酷いというのはその通りですが、特殊事例だということです。

これを安易に一般化して「民営化した場所の相当数がこうなる」と言うのはヒステリーでしかありません。

改正法で可能になるのは民営化というよりは官民連携(コンセッション=公設民営)手続の簡略化

水道設備の運営権と施設所有権は別物です。

いわゆる「民営化」は、施設所有権までも民間に譲渡するものを指して言われます。

民設民営」と表現されることがあります。

改正水道法が規定している内容(コンセッション=公設民営)では施設所有権のままなので、民間企業が施設を買うことはできません。

「外資に乗っ取られる~!」と騒いでいるのが如何におかしいことか。

「民営化」は9割が成功しているということです。

それから、コンセッション=公設民営という方式は、なにも今回の水道法改正で初めて可能になったわけではありません。

2011年のPFI法によって既に可能になっていたものを、手続を簡略化したというにとどまります。水道事業を完全に民間が所有・管理運営しているケースは現在でも存在します。

成立した水道法改正法はこちら

水道法改正が如何に捻じ曲げられて主張・報道されているかがわかります。

水道法改正と関連付ける印象操作

魚拓:http://archive.is/KTkWp

「水道法改正によってこのような事案が発生する」 と言いたいようですが、既に説明したように、元々自治体が水道事業を管理運営していた地域について民間に運営権のみを委託する場合とは無関係です。

雫石町の事案は水道法上の「水道事業」ではありません。

「でも、民間が運営してもこうなるってことでしょう?」

このような意見は「民営化」を全てを解決する魔法のように期待するフリをして騙されたと嘯くものです。

民営化は手段の一つに過ぎません。

それを自治体が選択して実効的に実施できるようにしたのが水道法改正です。

水道事業の広域化による運営効率化の可能性も拡げました。

さて、「民営化は失敗する」という主張がありますが、ほぼデマです。

「海外では再公営化が流れだ」というデマ

根本大臣会見概要(H30.12.7(金)

海外の再公営化事例180あるいは235と言われておりますが、都市で再公営化している、例えばそのうち半分ぐらいはフランス、アメリカ。フランスについては、例えば4,720のコンセッション方式で導入された事業のうち97%はそのまま継続してコンセッション方式でやられている。これはフランス水道協会の出典です。それからアメリカでも官民連携契約で約2,000件以上が官民連携契約をやっていますが、その93%が更新されていますから、世界で公営化の流れかどうかというのは、私はこの事実をもってそれは判断が分かれると思います。それから世界で一度民営化したのを公営化したという事案は、私は民営化、民間事業者にやってもらった時の契約の不備、これが一番大きいと思います。

「再公営化の事例が200件もある」という主張。

その母数を示している報道・或いは書籍はあるでしょうか? 

この点をぼやかす、或いは隠す記述は、煽動目的以外の何物でもありません。

まとめ

  1. 雫石町のペンション村の事案は水道法改正とは無関係
  2. 水道法改正は「民営化」ではなく公設民営=コンセッション方式
  3. コンセッション方式もPFI法によって既に行われている
  4. 「再公営化が世界的流れ」というのはデマ

「民営化」(コンセッション方式)は住民利益を図る手段の一つでしかありません。

今回の水道法改正によって、必ずコンセッション方式になって民間企業が運営するのではなく、あくまでその方式が望ましいと判断した自治体のみが実施します。

それによって失敗例が出てきたとしても、そのまま自治体が管理運営していた場合にはどうなっていたかが検討されなければなりませんし、そういう事例は過去は一部にとどまっています。

失敗例の大きな原因の多くは、自治体と民間企業の契約内容が杜撰であることに帰着します。住民はそのような契約を締結しないよう監視する必要があります。

ただ、民営化=即悪ドグマを信じるのはカルト宗教と変わりありません。

水道事業については野党議員とマスメディアが連携してプロパガンダをしているのでそれに乗っかってると恥をかきますよ。

以上