ニュースロンダリングと重要事実の隠蔽による認識誘導
- 衆議院法制局が「国会の関与が求められる」と言っていたという報道
- 8月18日の野党合同ヒアリングでの衆議院法制局の論点整理メモ
- 衆院法制局の橘氏「国会の合意調達の努力こそが肝要・まさしく与野党で合意された閉会中審査がそのような場の一つ」
衆議院法制局が「国会の関与が求められる」と言っていたという報道
安倍晋三元首相の国葬に関し、国会の関与がないのはおかしいとの批判がやみません。内閣の一存で決めたことに、自民党内からも疑問の声が出ています。
— 東京新聞編集局 (@tokyonewsroom) 2022年9月22日
衆院法制局と衆院憲法審査会事務局は、「国会関与が求められている」との見解を示しています。
東京新聞 TOKYO Web https://t.co/WyqjpKCUmV
衆議院法制局が「国会の関与が求められる」と言っていたという報道が東京新聞から9月23日に繰り出されました。
これ、8月18日に分かった話のニュースロンダリングですよ。
8月18日の野党合同ヒアリングでの衆議院法制局の論点整理メモ
本論で必要な部分は以下
Dropbox - 20220818 国対ヒアリング「国葬問題」(衆議院法制局).pdf - Simplify your life
「国の意思として」国葬(儀)を執り行うことについて、行政権の作用として、憲法の定める権限分配の下で内閣が行うとしても(憲法65条)、内閣の国会に対する連帯責任(66条3項)、国会の行政監視作用(62条)、それらを支える「国権の最高機関」性(41条)、「全国民を代表」する機関性(43条)などの趣旨に照らして、その意思決定過程に国会(与党及び野党)が「関与」することが求められている(あるいは、国家を挙げて対象者を葬送するという「国葬」の趣旨に照らして望ましい)ということが言えるのではないか。
8月18日の野党合同ヒアリングでの衆議院法制局の論点整理に書かれていたメモ内容。
これを9月23日に改めて報道するのは、ニュースロンダリングですね。
既に同じことはTVなどで流れていました。
#報道1930
— 伝左衛門 (@LwpeSjMlY59pRq9) 2022年9月2日
国葬について
衆議院法制は国会の関与が必要
内閣法制局は国葬儀についてであって、国葬ではない
????? pic.twitter.com/6HmObfPFvg
この話の前に「手続的な保障の問題に帰着していくのではないか」としていることや、「行政権の作用として、憲法の定める権限分配の下で内閣が行うとしても」という前提があることから、内閣の閣議決定に法的根拠があることは前提だということ。
さらに「行うとしても」ということからは、【国葬実施決定の後に実施までの間に国会が関与する】という意味であると読むことが可能。
これは、イギリスの国王の国葬に対する議会の関与を念頭にすると似ている。
英国国王(女王)の国葬は自動的に実施されることが決まっているが(臣下の場合には議会の承認が必要)、実施までに種々の手続が議会においてなされることも自動的に組み込まれており(慣例)、いわば「国会の同意」があると言い得るという奥深いものになっています。
では、この記述について衆議院法制局長官はどう説明していたか?
衆院法制局の橘氏「国会の合意調達の努力こそが肝要・まさしく与野党で合意された閉会中審査がそのような場の一つ」
衆議院法制局が論点整理をした参考資料は動画コメント欄からあります。
該当部分は30分20秒くらいから。
衆院法制局 橘長官
国葬にふさわしいかどうかの判断に当たって、過去の国葬儀の際に議論がありましたように、全国民を代表する国会の各党各会派間の合意調達の努力こそが肝要であり、そのための議論が必要だといったご主張が出て来ることには十分に理由のあることかと存じます。
まさしく、そのような場の一つが、与野党で合意された閉会中審査なのではないか、と拝察するところです。
橘氏は国会の各党各会派間の合意調達の努力の場の一つが「与野党で合意された閉会中審査」なのではないか、という見解であり、要するに以下の手続ということ。
これで言うところの②なわけですね。 https://t.co/Pg4v2GfiqY
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2022年9月23日
①内閣が国葬を決定
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2022年9月11日
②内閣が国葬を決定するが後に必ず国会で説明する
③内閣が国葬を決定するが事後に国会の承認を得る
④国葬決定の権限は内閣だが国会の事前承認が必要
⑤国葬決定は明文法規に基づく(手続は③④)
どれか。野党は②~④の立場の模様。
⑤だと自分らの立法不作為が問われるから。
説明資料でも、もともとかっこ書きで「関与」とあり、「国会の承認」とは書かれていないことからも、【内閣が国葬を決定乃至実施する手続の一環として国会が関与するのが望ましい】ということであり、「国葬が決定されるためには国会の承認が無ければならない」ということではないわけです。
で、既に国葬に関する閉会中審査は行われましたから、この意味での国会の関与はあったということに。臨時国会が8月にありましたが、橘長官は臨時国会については触れていなかったのが印象的です。閉会中審査で足りるのではないか?という見解だということ。
だから大きく報道されなかったし、その後の野党合同ヒアリングでもこの点はスルーされていったのもわかります。
この発言を隠して1カ月以上経過したあとに記事化する東京新聞は何をしたいのか。
有権者に対する認識誘導以外の何物でもないでしょう。
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