事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

弁護士に対する大量懲戒請求訴訟の結果:佐々木亮・北周士弁護士の場合

佐々木亮、北周士弁護士が受けていた大量の懲戒請求に対して、当該懲戒請求は不法行為であるとして両弁護士が提訴していた件で判決が出ました。

弁護士に対する大量懲戒請求訴訟の結果

「余命大量懲戒請求」事案で初の判決:金竜介弁護士に33万円 

弁護士に対する大量懲戒請求訴訟の結果:嶋崎量弁護士の場合 

嶋崎弁護士も金弁護士も佐々木・北弁護士と同様、あるブログの呼びかけを単に欲した大量懲戒請求の事案です。

いずれも33万円(損害賠償金額30万円+弁護士費用3万円)が認められました。

金弁護士は55万円の請求でしたが、嶋崎弁護士は33万円の請求金額の全額が認容されました。

佐々木亮・北周士弁護士の不当懲戒請求訴訟:弁護士費用は認定されず

「各自」30万円の意味についても解説がされていましたが、これは連帯債務ではなく、懲戒請求者6人それぞれが別個に30万円を各弁護士に支払うという意味です(総額360万円)。

さて、先述の弁護士と比べて、佐々木・北弁護士の場合には弁護士費用が認定されませんでした。弁護士に委任することは必要不可欠ではないという理由づけですが、嶋崎、金弁護士との違いがどうして発生したのか釈然としません。

嶋崎弁護士は横浜地裁ですが、金弁護士は佐々木・北弁護士と同じ東京地裁の判決ですので、裁判体が変われば異なる判断が出ることがあり得るのだというのが分かります。

「懲戒請求権」は個人の利益保護のためのものではない

昭和49(行ツ)52  日本弁護士連合会懲戒委員会の棄却決定及び同決定に対する異議申立に対する却下決定に対する取消請求

弁護士の懲戒制度は、弁護士会又は日本弁護士連合会(以下日弁連という。)の自主的な判断に基づいて、弁護士の綱紀、信用、品位等の保持をはかることを目的とするものであるが、弁護士法五八条所定の懲戒請求権及び同法六一条所定の異議申立権は、懲戒制度の右目的の適正な達成という公益的見地から特に認められたものであり、懲戒請求者個人の利益保護のためのものではない。

「弁護士による懲戒請求者への訴訟提起は懲戒請求権を軽視している! 」という言説が懲戒請求者側から発せられていますが、弁護士に対する「懲戒請求権」は、懲戒請求者個人の利益保護のためのものではありません。

その「請求権」は、公益のために行使されるべきものです。

にもかかわらず、大量の不当懲戒請求を行った者達は弁護士会・弁護士の事務負担を増やし、むやみに他人の時間を奪っています。

弁護士会も、弁護士法58条1項の「その事由の説明を添えて」の要件を充たしていないような「懲戒請求書と題する書面」に過ぎない怪文書を、スクリーニングをかけずに弁護士に送付して事務作業をわざわざ増やし、弁護士自治とは名ばかりになっています。懲戒請求権が個人の権利利益実現のためのものではない以上、そういうものは弾くべきでしょう。

懲戒請求者・弁護士会、双方とも懲戒請求制度の運用を誤っている点で、反省すべきだと思います。

以上