事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

「外資規制で東北新社が放送事業認定取消ならフジテレビやTBSも取消だろ」について

テレビの外資比率

「外資規制で東北新社が放送事業認定取消ならフジテレビとTBSも取消だろ」について

2021年3月現在の法令に基づいて記述します(過去のページは条文番号が異なっているため注意)。

東北新社、放送事業認定取り消しへ 外資20%規制に違反

東北新社、放送事業認定取り消しへ 外資20%規制に違反 - 産経ニュース

放送事業会社「東北新社」が、外国資本の出資比率が20%を上回り、放送法に違反しているとされた問題について、武田良太総務相は12日、衛星放送事業認定の取り消しに向けた手続きを進めると明らかにした。

東北新社が外資規制違反であるために放送事業認定取消しになることが報道されていますが、「外資20%規制」は、株式保有率をそのまま意味するものではありません。

外資20%規制は、議決権の比率

https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/law-others/05102801securities.pdf

前提として、株式会社は議決権制限株式の発行が認められています(会社法115条、ただし、発行済株式の総数の二分の一以下にしなければならない)。

その上で、外資規制20%は電波法に基づいて規定されていますが、これは保有株式率ベースではなく、その株式における議決権ベースです。

電波法 ※不要部分を削除・補足を追記して掲載

(欠格事由)
第五条 次の各号のいずれかに該当する者には、無線局の免許を与えない。

4 公衆によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信であつて、第二十六条第二項第五号イに掲げる周波数の電波を使用するものをする無線局については、第一項及び前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する者には、無線局の免許を与えない。

三 法人又は団体であつて、イに掲げる者により直接に占められる議決権の割合とこれらの者によりロに掲げる者を通じて間接に占められる議決権の割合として総務省令で定める割合とを合計した割合がその議決権の五分の一以上を占めるもの(前号に該当する場合を除く。)
イ 第一項第一号から第三号までに掲げる者(※外国の法人又は団体等)
 イに掲げる者により直接に占められる議決権の割合が総務省令で定める割合以上である法人又は団体

「総務省令」は、電波法施行規則第六条の三の二、三を参照。長いので省略。

これを整理したのが大和総研の以下の説明。上掲の図と連続しています。

「一定の割合」は、「議決権の割合の十分の一以上」=10%となりました。

上図で言えばAとBが両方とも10%以上の場合、ということになります。

欠格事由が生じる場合に株式の一部は議決権を有しないこととする旨の放送法の規定

さらに、計算上は外資規制に抵触することとなるときであっても、その不都合を回避するために、法令に抵触しないように、外国法人又は間接出資に係る日本法人が有する放送事業者の株式の一部は議決権を有しないこととする事ができる旨の規定があります(放送法116条)

※追記:「名義書換え拒否」の話がこれ。

「フジテレビやTBSも取消だろ」について

苫米地英人 氏が掲げているこのボードの画像がネットでは拡散されており、これを元に「外資規制で東北新社が放送事業認定取消ならフジテレビやTBSも取消だろ」と言っている者が居ます。

しかし、実態は、①議決権ベース+②外資株が超過の場合の一定株式は議決権を有しないこととする事ができる放送法の規定によって、違法ではないこととなっているようです。

なお、認可後に20%規制違反となる状態になっても、現在有効な免許の期限が切れるまでにその状態を是正すれば取消処分無しとできるとされています(電波法75条)。

ただ、東北新社の場合は、許認可の時点で規制違反だったようです(参考

ニュース「テレビ局は法律違反をしているのか? 外国人株式保有問題について調べてみた 」 : 企業法務ナビ

放送事業の「外資規制」にある矛盾:西正(1/2 ページ) - ITmedia NEWS

以上