事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

統計不正:統計職員削減と安倍政権「統計コスト3年で2割削減」閣議決定の関係

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統計職員削減と安倍政権下の「統計コスト3年で2割削減」閣議決定の関係。

簡単に事実関係とソースをまとめます。

統計コストを3年で2割削減の閣議決定

統計職員の削減は事実です。

ただ、それと安倍政権下の基本方針との関係はどうでしょうか? 

経済財政運営と改革の基本方針 2017 について

平成29年6月9日閣議決定の「経済財政運営と改革の基本方針 2017 について」

中長期にわたる改革の取組を確実に実施するため、必要となるリソースを計画的に確保するとともに、効率化の徹底等により官民の統計コストを3年間で2割削減する。

このように、「統計コストを3年で2割削減する」という方針は事実です。

では、統計職員が不足しているという事実を無視してこのようなことになってるのか?

この記述は「統計改革推進会議最終取りまとめ」を踏まえてなされています。

統計改革推進会議最終取りまとめ

統計改革推進会議最終取りまとめ

2ページ
各省分散型の統計作成体制の下、厳しい財政事情等を背景に、国・地方における人員を始めとした統計リソースが減少を続け、人材の育成が急務となっている一方で、プライバシー意識の高まり等により統計調査への協力確保がますます困難なものとなり、統計調査における報告者側からの負担軽減の要請も高まるなど、統計行政部門を取り巻く環境が厳しさを増している実情がある。

13ページ
必要なリソースを計画的に確保する。特に人材面では、官のみならず、民間や大学からの要員の確保も図る

このように、人的リソースを確保することは目指されています。

ただ、「リソースの確保」といっても意味内容は様々考えられます。

単純に人員を増加するのか、博士課程修了者の者など人材の質を高めるのか、適材適所の人員配置による最適化を行うのか、ということが問題になります。

合理化・最適化とリソース確保

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35ページ
長年にわたり統計の組織・人員がスリム化される一方、統計に対するニーズの高度化・多様化が進む中、国・地方の統計機構においては、新たな課題に取り組む人的リソースの余裕がなく、特定の職位運に過度の負担がかかるような状況もしょうじている。
このような状況を解消するため、以下の取り組みにより、リソースの再配分と最適配置を促進し、新たな課題への対応のインセンティブを強化するメリハリのある体制整備をおこなう。

その項目を読むと、主に目指されているのは「最適化」であり、人員の増加については一部の部分についてのみ対応する方針であることが読み取れます。

この中で統計人員の削減の大きな流れはどうなるのでしょうか?

この点についてはよくわかりませんでした。

次に「コスト」の中身について見ていきます。

削減するコストの中身

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https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/committee/20170329/170329honkaigi01.pdf

統計改革推進会議最終取りまとめが引用している行政手続部会取りまとめ~行政手続コストの削減に向けて~では『削減対象は「時間(事業者の作業時間)」とする。』とあります。

官庁側の作業時間の削減が明示的には書かれていません。

事業者の作業時間の削減が官庁側の作業時間の削減に直結するのか否かはよくわからないので、しかるべき方が評価すればいいと思います。

まとめ:統計職員大幅削減と安倍政権の関連性はない

少なくとも、「安倍内閣は人員の不足を放置している」「人員不足にもかかわらず人員を削減しようとしている」ということは、これらの基本方針からは言えません。

統計職員の減少は行政のスリム化の一環の中で発生していた問題です。

行政のスリム化の流れから統計職員は切り離すのか、それとは別個に人員を増やすのか、統計職員の減少それ自体は避けられないとしても負担を減らす工夫をするということになるのか。

統計手続の改善についての評価は今後の取り組み次第、ということになりそうです。

以上