ツイッターのツイートの内容の引用やスクショは規約や著作権法違反なのか?
一部で断定的な表現がなされているところがありますが、この話を誤解した主張が多々見受けられるので、改めて状況を整理しました。
※2021年12月29日追記:スクショが引用要件を満たさないとする事例が出てしまいました。判断内容に問題が相当あります。
- 原則は権利者=ツイ主の許諾
- 著作権法上の扱い
- ツイッター規約上の扱い
- API機能を使えば100%大丈夫なのか?
- ツイートのスクリーンショット(スクショ)転載の場合
- ツイッターのフェアユースポリシー
- 「法は些事に関せず」と「権利濫用」の法理
- ツイッターの規約が無効になる場合
- 鍵アカ(非公開)のツイートの転載は100%アウト?
- グレーゾーン・トラブルの事前回避のための説明
- まとめ:スクショ転載・引用が規約違反かは一応不明
原則は権利者=ツイ主の許諾
最初に分かりやすい利用例として、権利者の許諾を得て掲載する場合。
この場合は一部を除いてスクショをブログに掲載しても違法でもなんでもありません。
「一部」とは例えばツイートに画像が添付されててそれが著作権法違反の場合等です。
著作権法も、「引用」などの場合には「例外」として違法ではないという建てつけになっています。
だってそうですよね?権利者に許諾を取った方が最もトラブルにならないのですから。
ただし「無断転載禁止」とプロフィール等に書いてあっても、それはただちに法的拘束力を発生させるものであるとは言えません(違法認定の考慮要素の一つになる場合はあり得る)。
以下は権利者に許諾を取っていない場合の話になります。
著作権法上の扱い
著作物が自由に使える場合は? | 著作権って何? | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
権利者の許諾が無い場合でも、例外として権利者の権利が制限される場合があります。
代表的なのが「著作権法上の引用」ですが、この引用以外にも「時事問題に関する論説の転載等」「時事事件の報道のための利用」など、30以上の例外が規定されています。
細かい要件はここでは書きませんが、少なくとも「著作権法に違反するか?」という問題はここに定められている要件を充たせばクリアになります。
ただ、それとツイッター規約との関係はどうなっているのでしょうか?
ツイッター規約上の扱い
ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約またはdev.twitter.comに定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。
よく「ツイッターがAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)を使用するように言ってる」と紹介されるのはこの部分です。この文章の直前にパブリックAPI等が利用可能という旨が書かれているためです(長いので省略)。
以下のような埋込みツイートはTwitter社が提供するインターフェースに従っています。
巷で「API機能を使わなければダメ」が広まってますが、これは「API機能を使えばほぼ大丈夫」というのが正確で実はツイッター規約にAPI以外の使い方はダメとは書いてないんですよね。かなり安全を見た使い方
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) January 26, 2019
API使っててもブログに他人の一連ツイ10個貼り付けるだけとかはアウトになる可能性が高いです
したがって、APIによる埋め込み機能を使えばツイッター規約上の問題は原則としてクリアになると言えます。
API機能を使えば100%大丈夫なのか?
これは違います。
想像してください。たとえば他人のツイート(著作権があるものとする)の埋め込み10個だけで構成されて完結しているブログがあったとして、それは著作権法上はアウトの可能性が限りなく高い行為でしょう。
これが権利者が制限される例外にあたる場合はほぼ考えられませんからね。
このような利用方法はツイッター規約上は大丈夫と思われますが著作権法上はアウトの可能性が極めて高いと思われます。
「API機能を使えばブログに転載しても100%大丈夫」と言い切ることはできないと言ってよいでしょう。
ツイートのスクリーンショット(スクショ)転載の場合
ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約またはdev.twitter.comに定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。
「Twitterサービス、本規約またはdev.twitter.comに定める条件により認められる場合を除いて」
これを見ると、「APIによる埋め込み機能を利用する以外にも、ツイートの利用が可能な場合があり得る」ということになります。文言上、そうなります。
じゃあ「Twitterサービス」「本規約」「dev.twitter.com」に定める条件とは何か?
これがよくわからないんですよね。
だからこそ、「API機能を使えば間違いない」というところから「API機能を使わないスクショはアウトっぽい」と言われてたりしているのです。それがトラブルに遭いにくいと考えられる利用方法だからです。
「定める条件」が明示されているものが見つからない以上、API機能以外は避けるべきとなるのは致し方ないと思います。
ツイッターのフェアユースポリシー
※ここは予測をたぶんに含みます。断定的な理解は避けてください。
ところで、「フェアユースポリシー」があります。
著作物は、ある一定の利用について、著作権の権利者の許可を必要としない場合があります。米国では、この概念はフェアユース(公正使用)として知られています。一部の国には、フェアディーリングと呼ばれる類似した概念があります。
著作物の特定の利用がフェアユースにあたるかどうか、最終的に判断するのは裁判所です。裁判所は、フェアユースの議論を分析する際に、次の4つの要素を検討します。
ー省略ーフェアユースの判断はケースバイケースで行われ、フェアユースと認められるかどうかを判断する明確な基準はありません。著作物の特定の利用がフェアユースであるかどうか確信が持てない場合は、弁護士に相談することをお勧めします。Twitterは、あなたの利用がフェアユースと認められるかどうかを助言することはできません。
書き出しが唐突な感がありますが「ツイッターコンテンツはフェアユースに沿っていれば権利者の許諾なく利用可能な場合があり、その場合は規約違反ではない」と言っているとも読めます。
この記載がツイッターサービス内での利用に限定して理解するべき理由は見当たりませんから、例えば外部ブログにおいてツイートのスクショを転載するような場合もあてはまるのではないでしょうか。
ここでは「API機能をつかえ」というような記載はありません。前記の記載との関係は、これと矛盾しないように解釈するべき、ということになるのではないでしょうか。
すると、フェアユースに沿っている限りにおいて、ツイートのスクショを転載してもツイッターの規約違反にはならない・なりにくいのではないかと思います。
たとえば事件報道に利用する場合など、著作権法上の引用等の例外利用に該当するようなスクショの利用方法のはずなのに、ツイッター規約違反になる、ということは妥当とは思えませんから。
もっとも、フェアユースの基準はなく、ケースバイケースだとも言っています。
明示的に「無断転載禁止」と書かれているアカウントの場合には扱いに注意した方がいいでしょう。
参考ですが、グーグルマップの場合は明示的にスクショの転載を禁止しています。
この場合にスクショを転載すれば余ほどの理由が無い限りグーグル規約違反となるでしょう。それは著作権違反の判断に影響するのではないかと思われます。
「法は些事に関せず」と「権利濫用」の法理
De minimis - Wikipedia(法は些事に関せず)との法諺(法的なことわざ)があります。
あまりに軽微な違反をわざわざ裁判所が介入してまで取り上げることはしないという格言ですが、著作権法上の引用等の例外要件には合致しているはずなのにツイッター規約違反と認定するのはこの法諺の観点からもどうかと思います。
また著作権が争われる事例でも「権利者の権利濫用」と認定される場合もあります。
そう考えると、通常の場合には著作権法上の例外要件に合致していると思われるスクショのブログへの転載方法がツイッター規約違反だとして非難される場合は、果たして存在するのか?と私は思います。
※個人の見解です。
NGT48の暴行騒動をめぐって、メンバーやファンの不確実情報が大量に流れています。「名誉毀損なんだけど」と怒りをあらわにするメンバーもいますが、不確実情報をSNSで拡散させることにはどのような法的問題があるのでしょうか。https://t.co/xc9ZMzyxNy
— 弁護士ドットコムニュース (@bengo4topics) January 15, 2019
ツイッターの規約が無効になる場合
本規約のいずれかの規定が無効あるいは法的強制力がないと判断された場合、その規定は必要最小限の範囲で制限されるかまたは失効しますー省略ー
仮にツイッター社が「APIを利用しないスクショの転載はすべて規約違反」だと考えていたとします。そして、そう書いてあるという認定がなされるとします。
この場合にユーザーとしては「そのような規定は無効である」と主張することが考えられます。一般的な著作権法上の例外要件を充たした利用までも規約違反とするような規約はその限りで無効だと主張することはあり得るでしょう。
この主張を行う場面が現実的に来るのかどうかは別ですが。
鍵アカ(非公開)のツイートの転載は100%アウト?
「鍵アカ」という非公開設定のアカウントが行ったツイートの場合について。
一般的な考え方
こちらは検索でもヒットしない非公開設定なので、一般的にこのツイートのスクショを転載すると規約違反にも著作権法違反にもなり得ると言えるでしょう。
途中から鍵アカにしたという場合
引用後、「途中から鍵アカにした」という場合はどうでしょうか?
API埋め込みなら、表示が消える(或いはテキストのみ表示)はずです。この挙動は埋め込んだツイートが消されたりアカウントが削除された場合から推察したものです。
スクショの場合には鍵マークが表示されているかいないかが画像によって分かりますから、それである程度判断できます。やっかいなのは画像処理等で鍵マークかどうかが確認できない画像の場合ですが、ケースバイケースでしょう。
鍵アカのスクショも大丈夫な可能性
さらに言えば、事件報道の場合に鍵のついたツイートの画像を使用した場合にはどう扱われるでしょうか?ということを考えると、使用方法が適切であれば著作権法違反とされる場合はかなり限定されると思われます。
このように「鍵アカの転載」一般が全てアウトと言い切ってしまえるかというと、それは軽率だと言えるでしょう。
とはいえ、やはり原則はアウトである、という認識が正しいです。
グレーゾーン・トラブルの事前回避のための説明
『ツイッターのプロフィールに「無断転載禁止」などがある場合には引用したツイートの削除要請がなされる場合がある』などと説明しているところがあります(API埋め込みでも)。
このような説明は、ツイッター規約に違反しているだとか、著作権法に違反しているというものとは別個に、ツイートの著作権者から問題視されてトラブルになる可能性はあるので気を付けましょうという趣旨です。
コンテンツの削除要請は独自サーバーならブログ主やサーバー管理会社等に連絡が行きますし、ブログサービスを利用しているならブログサービスを提供している会社に連絡が行く場合があります。
もちろん、「無断転載禁止」と書いたからと言って、ただちに転載が違法になるという法的拘束力はありません。ツイッター規約上でも「著作権者=ツイ主の意思によって転載禁止とされたものを転載したら規約違反である」とは書いてません。
とはいえ、違法でなくとも規約違反でなくとも、著作権者はツイ主であることは変わりありません。著作権者からの削除要請については、応じない場合には応じない場合の不利益を考慮しつつ(単に違法・規約違反にとどまらない)、根拠をしっかりと組み立てて説明するべきでしょう。
まとめ:スクショ転載・引用が規約違反かは一応不明
このブログ記事を、ブログ管理者に対して、しつように削除させようとしている「第三者」がいます。その根拠は「ツイッター規約」でしたが、私自身、ツイッター社に照会し、今回のようなスクショの使い方は規約違反とはいえないことを確認しました。
— 小菅信子『原典でよむ 20世紀の平和思想』岩波書店 (@nobuko_kosuge) August 28, 2014
- APIの利用のみ許されると断定する者はツイッター規約上の「Twitterサービス、本規約またはdev.twitter.comに定める条件により認められる場合を除いて」という部分について説明していない
- スクショの転載がツイッター規約に違反しているかはおそらくケースバイケース
- 著作権違反でもツイッター規約違反でなくともトラブル回避のために推奨されている行動として書かれているものが見受けれられ、それは大切にすべき
ここまで断定的な表現を避けてきましたが、それは「一般的確定的な判断が示されたことが無いから」です。弁護士などの専門家も断定的な判断の提供は弁護士倫理違反に問われる危険があるので、この話題については深入りしていないのではないかと思います。
実際上も、世の報道やネット上の情報を見てると「許諾のないツイートのスクショ転載」が行われている例は多くあります。その全てが適切ではないでしょうが、全てが不適切と言うのはなんだかおかしい、という感覚は多くの人が共通して持っていると言えるでしょう。
以上