「#検察庁法改正案に抗議します」を含むツイートがTwitterトレンドに上がり、その数が膨大であるとして複数メディアで報道されていますが、大量スパムが原因で削除されていることと、Twitterトレンド欄の見方が正確に伝わっていないので整理します。
※追記:スパムが「削除」されたために数字が変わったのではなく、ワードがスパム判定されてトレンドから消え、別の類似ワードがトレンドに上がったという方が正しいので内容を一部修正しています。
- Twitterトレンド欄の「件数」は実数ではない
- 「#検察庁法改正案に抗議します」は数百万がスパムとして消された
- 実際は数万人による投稿か
- まとめ:「検察庁法改定に反対する者が数百万人」というのはフェイク
Twitterトレンド欄の「件数」は実数ではない
このブログでは何回かTwitterトレンドの仕組みについて解説してきましたがここでも改めて指摘すると、実はTwitterトレンド欄の「件数」は実数ではないのです。
「内閣支持50」のワードが4300ツイートとして12位くらいにトレンド入りしてるけど(設定によって見え方は違う)、実際にツイートしているのを見ると最大でも860程度しかないんですよね。 pic.twitter.com/D2SU3mS7aK
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年8月27日
#宇宙よりも遠い場所 というアニメも同様に調べたら210ツイートありました。これは話題のツイートのトップツイートですら50もリツイートされてなかったので、やはりリツイートはトレンド指標としては評価低めになるようです。 pic.twitter.com/iPT7Y0sRln
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2018年3月13日
Twitterトレンド欄の件数表示は、実際に当該文言を含んだツイートの数に加え、それがリツイートされた数や投稿の加速度など、色んな変数を掛け合わせたものです。
したがって、現実に当該文言を含むツイートの数自体は、トレンド欄に表示された件数よりも低くなります。
私の観測では、上述のようにツイートの実数の5倍以上になることもありました。
たとえば朝日新聞も以下報じています
検察庁法改正に抗議、ツイッターで470万超 著名人も(朝日新聞デジタル)
リツイートも含め、その数は10日夜までに470万件を超えた。
したがって、『「#検察庁法改正案に抗議します」を含む投稿が470万件以上なされた」というのは、厳密に言うとフェイクニュースです。
ただし、朝日新聞を含め「件」と表記してるメディアを殊更非難しようとは思いません。ツイッター上のトレンド欄の件数を指していると理解しましょう。それは間違いではないですから。(しかし、朝日新聞記事には別の問題点がある:朝日新聞が「検察庁法改正に抗議します」ツイート件数の記事を大幅改変し、一部有料化していた)
今の所、「人」という表記をしている大手メディアは無いようです。
「#検察庁法改正案に抗議します」は数百万がスパムとして消された
ところが、トレンド欄の件数はスパム投稿で水増しされていた数だということは報道されていません。
「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートは、そのほとんどがスパム投稿だったため、一度Twitter側によってトレンド集計から外されたようです。
※追記:『#検察庁法改正「法」案に抗議します』に変わっているという点について考慮し、次項までの記述を修正しています。
『#検察庁法改正「法」案に抗議します』のyahooリアルタイム検索の魚拓(11日0時30分頃)を見るとこの通りですが、Twitterのトレンドに上がっているのが分かります。
50万ツイートに、迫る勢いです。#検察庁法改正法案に抗議します#検察庁法改正に抗議します pic.twitter.com/AVPniOcXB0
— 天翔 (@lee_buckland7) 2020年5月10日
11日の朝の時点で、約50万件表示になっています。
で、元の「改正案」の方はどうやら10日深夜あたりからトレンドに上がっていないようなのですが、以下の数字を見る限り、トレンドに上がっていなければおかしいレベルでツイートが存在しているのが分かります(7日間スケールは2時間単位)
よって『#検察庁法改正案に抗議します』が「勢いを失ったために自然と」トレンドから外れたという主張は、成り立ちません。
Yahooリアルタイム検索の数字は、当該文言が存在しているツイートを見ており、そのツイートのリツイートを見ない数値です。そのため、これを見ても数百万もツイートが存在していないというのが分かると思います(9日の1000人以上ツイートされた時間帯から11日0時までの合計でもせいぜい40万)。
多くの端末環境でトレンドに上がって来たワードとして『#検察庁法改正案に抗議します』が消え、『#検察庁法改正法案に抗議します』が現れたという経緯からは、Twitter側が前者をスパム判定してトレンドから消した(ツイートの多くは削除されずそのまま)と理解する他は無いと言えます。
※追記終わり
実際は数万人による投稿か
更に言えば、「当該ハッシュタグを含むツイート」というのは、同一アカウントが複数回行ったとしてもその分が計上されます。
今回のハッシュタグは、同一人物が複数回投稿する例が見られますから、その分を割引いて考える必要があります。
さらに言えば、「#検察庁法改正案に抗議します」の動きに反対している者(必ずしも法案賛成者ではない)も当該ハッシュタグを含むツイートをしているので、そこも考慮しなければなりません。
そうすると、実際に「#検察庁法改正案に抗議します」の投稿をした人物は「数万人程度」であると考えられます。
まとめ:「検察庁法改定に反対する者が数百万人」というのはフェイク
- Twitterトレンド欄の件数表示は、実際のツイート数の数倍が相場(リツイートなども見ている)
- 同一人物の複数回投稿、当該ハッシュタグの賛同者以外による投稿も考慮すべき
- よって、この時点で『検察庁法改定に反対する者が数百万「人」』というのはフェイク
- 「#検察庁法改正案に抗議します」はスパム判定されてトレンドから排除された
- 「#検察庁法改正法案に抗議します」がトレンド入りするも、前者よりも少ないツイート数
- 以上からフェルミ推定すると、実際に法改正反対者が当該ハッシュタグをつけていたのは数万人と考えられる
「検察庁法改定に反対する者が数百万人」というのはフェイクですが、50万件表示でも十分すごいと思いますけどね。
以上