早稲田大学政治経済学術院の教員によるアカハラとセクハラ疑惑について
※令和6年5月17日追記:大学側と男子学生の和解が成立したようです。なお、依然として准教授は性交渉を認めず、学生との訴訟は続いているとあります。
早稲田大学政治経済学術院の女性准教授(当時)から性交渉を強要されたなどとして、男子学生が指導教員の女性と大学を訴えていた裁判で、大学との間で和解が成立したことを学生側が明らかにしました。https://t.co/0ItkiBLDdc…
— 弁護士ドットコムニュース (@bengo4topics) 2024年5月17日
- 早稲田大学政治経済学術院教員のアカハラ認定
- 停職懲戒処分で退職済みの元准教授は上田路子
- 大学はセクハラを認定せず、上田氏はアカハラも存在しないと主張
- まとめ:アカデミックハラスメント・セクシュアルハラスメントと無罪推定原則と実名、匿名報道
早稲田大学政治経済学術院教員のアカハラ認定
6月15日付で、本学政治経済学術院所属の教員を停職6ヵ月の懲戒処分といたしました。
なお、当該教員は一身上の都合により既に本学を退職しております。1. 理由
2016年9月から2018年3月までの期間に、多数回にわたり、当時、政治経済学部に所属していた学生1名に対し、教員として不都合な行為があり大学の名誉または信用を著しく傷つけるとともに、研究意欲および研究環境を著しく阻害する結果となる、教育上不適切な言動(アカデミック・ハラスメント)を行っていたこと。
2. 根拠規定
教員の表彰および懲戒に関する規程 第6条第3号
3. 本学の対応
本学でアカデミック・ハラスメント行為が行われたことは慚愧に堪えません。関係の皆様に深くお詫び申し上げます。
また、本学はこの事案を真摯に受け止め、ハラスメントに関する啓発活動をさらに徹底するとともに、改めて大学全体での教員研修を行うなど、再発防止に向けた取り組みを一層強化してまいります。
2022年6月17日
早稲田大学
早稲田大学政治経済学術院所属の教員において、政治経済学部所属の学生に対するアカデミックハラスメントがあったと認定されています。
懲戒処分で停職六か月となりましたが、現在は「一身上の都合」により退職しているとのことです。
停職懲戒処分で退職済みの元准教授は上田路子
教員は退職しているので、早稲田大学の政治経済学術院の教員一覧から最近の記載が変更された人が居ればその人である可能性があるために調べました。
教員紹介 – 早稲田大学 政治経済学部(6月20日時点魚拓)
2022年3月25日 15:04:04 UTC https://archive.ph/dAuNM
すると、今年の3月末から現時点までにHP上の記載から削除されたのは、上田路子准教授のみでした。後掲の文春記事にある女性准教授のプロフィールと一致します。
なお、4月1日には学内の学生向けに書かれた体裁の文書が流出したとする情報が出ています。内容は「無関係な教員に被害が出ているため、上田准教授の了解のもと、彼女に関する話であることを示し、報道されているような不法行為等は存在していなかったと主張されている」などが書かれています。
この内容の通りであれば、政治経済学術院が大学側に不信感を持っているということになります。
大学はセクハラを認定せず、上田氏はアカハラも存在しないと主張
早稲田大の男子学生、女性准教授と大学をアカハラ提訴「性交渉を強要された」 - 弁護士ドットコム2022年03月25日 18時58分
性交渉の強要を含むハラスメントを受けたとして、早稲田大学の男子学生(25)が3月25日、指導教員だった同大政治経済学術院の女性准教授と大学を相手取り、計750万円の損害賠償をもとめる訴訟を東京地裁に起こした。
早稲田大学が教員を懲戒処分、学生へのアカハラ「出張と私的な旅行で同じ部屋に泊まった」 - 弁護士ドットコム2022年06月17日 19時05分
2016年9月から2018年3月までの間、多数回にわたり、教育上不適切な言動があったという。具体的なアカハラの内容は以下のもの。
(1)海外への研究出張に学生を同行させ、一緒の部屋に宿泊した行為
(2)教員の自宅や私的な旅先に学生を同行させ、一緒の部屋に宿泊した行為
(3)教員の子どものお迎え、研究室の水やりや研究室に忘れたパソコンの自宅への運搬を依頼し実行させた行為
准教授の回答は…
「(台湾への同行は)A氏が希望したので許可した。民泊アパートは同じだったが同部屋ではない。自宅への宿泊は事実だが、A氏に強要したものでないので、ハラスメントには該当しないという認識。(性交渉の強要は)事実ではない。デートしたり手をつないだりといった恋人としての関係は一切ない。子供の送り迎えや夕食の用意は事実だが、強要したものではない」
大学はセクハラを認定せず、上田氏はアカハラも存在しないと主張しています。
なお、「一緒の部屋に宿泊した」(それ自体が争われていますが)だけでは性行為の存在は認定できず、大学側がこのように判断したのも仕方がないとは思います。
まとめ:アカデミックハラスメント・セクシュアルハラスメントと無罪推定原則と実名、匿名報道
- 早稲田大学政治経済学部(当時)の男子学生(現:早大院博士課程)の主張⇒セクハラに相当する事実もアカハラに相当する事実もあり、不法行為でもあるから損害賠償請求訴訟
- 大学側の認定⇒アカハラはあったがセクハラは認められなかった
- 上田氏の主張⇒不法行為の事実やアカハラもセクハラも存在しない
- 政治経済学術院は上田氏に同調的
まとめるとこのような状況です。
学生は刑事告訴をしているという記事は見当たりません。
当事者が不法行為やアカデミックハラスメント・セクシュアルハラスメントとなるような事実関係を全面的に争っているために、刑事事件ではないですが「無罪推定原則」が適用されるべき事案だろうと思います。
ただ、本件を未だに匿名報道にしているのはよくわかりません。
弁護士ドットコムに対して早稲田大学は「教員氏名については、二次ハラスメント発生防止の観点」から答えられないとしていますが、学生は民事訴訟を提起していますし、弁護士が開いた記者会見においてWEB会議システムで参加しているのだから、学生への二次ハラスメントをいまさら気にする必要があるのかどうか。
たとえ女性教員が匿名であっても「2016年9月から2018年3月の間に政治経済学部に所属しており女性准教授の研究室に居た男子学生で現在は博士課程に所属」という時点で、どうやったって当時を知る者に関してはどの人物かはわかってしまうでしょう。
また、本件は学生側がセクハラも訴えている事案で大学側はセクハラは認定していないのだから、この点については実名でも上田氏の名誉は低下しないはず。大学と上田氏との関係でアカハラの認定に争いがあるにせよ、上田氏は既に退職したので学生との関係上配慮する必要もなくなっており、匿名にする意義が失われたのではないか。
なお、東京大学の場合、違法行為やアカハラ・セクハラは認定されていないが規則違反として大澤昇平特認教授を懲戒解雇する際には詳細な認定の下に実名表記しています。
さて、大学ではありませんが、女性が男性からの性被害を訴えた際に大々的に海外にまで報道したメディアがありましたね。
草津町の事案ではアエラドットと北原みのりが積極的に「黒岩町長が黒」の論調で記事を生産していましたが、結局のところ除名処分は無効になったものの町民らによるリコールは成立し、新井祥子元議員の主張が不合理であった(しかも彼女から民事訴訟提起・刑事告訴ともになんら為されておらず、リコール無効訴訟のみだった)にもかかわらず、「レイプの町草津」などとハッシュタグ運動まで展開されました。
本件ではこういったことは無く、どのメディアも慎重姿勢ですが、「性的関係について男性が女性による被害を訴える事案だと途端に静かになる」、という批判がSNSでは見られます。
フェミニストら底辺をにらんだ言論ではなく、無罪推定原則の本筋に則って事案が扱われればそれでよいと思うのですが、本件をめぐる言説を注視していこうと思います。
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