事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

在日特権はあるのか?:「法務省が公式見解」の嘘と特別永住権の根拠

 「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」などという言説がありますが、間違いです。「在日特権の有無」についての考え方と特別永住権の根拠をまとめます。

「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」は嘘

在特会の言う「在日特権」あるの? 記者がお答えします:朝日新聞デジタル

「在日特権は無いと法務省が公式見解を出した」というのは、朝日新聞の取材に対して法務省の担当者が「特権とは思っていません」と話したことが「公式見解」と言われているだけです。理由は「歴史的な経緯と日本での定着性を踏まえた配慮」とのことですが、単なる一担当者のコメントに過ぎず、公式見解にはなりえません

さらにはこの発言を根拠に「公式見解」としてNHKの「クローズアップ現代」という番組で紹介したのが国谷裕子氏です。

これについては、朝日新聞の取材は政府担当者に「お伺い」をしてその回答をそのまま無検証で掲載しただけであり、特権があるかどうかの調査すらしていないという批判が当時から寄せられていました。

ちなみに、この記事は朝日新聞の紙媒体では存在していません。朝日新聞デジタルのみです(おそらくネット上では「在日特権」という用語は知られていたのでそれを否定したかったが、紙媒体だと新たに「在日特権」を知る者が出てくる危険があるため避けた可能性を感じます)。

こんな情報操作会社が聞いただけの根拠で「公式見解」と扱うのはおかしいので、政府答弁としてどうなっているか確認しましょう。

在日特権についての政府答弁

上記の朝日新聞の取材から半年後の質疑でまとまったものがありました。

189 参議院 法務委員会 12号 平成27年05月21日

○仁比聡平君 ー省略ー

この在特会はヘイトをあおるビラの中で、特別永住資格、平和条約国籍離脱者等入管特例法によって認められた資格である、もちろん、他の外国人にはこのような資格は与えられておらず、在日韓国人・朝鮮人を対象に与えられた特権と言える、紛れもない外国人でありながら、日本人とほぼ変わらぬ生活が保障されていると宣伝して、扇動して、この在日コリアンの排斥をあおっているわけですね。入管局長に伺いますが、在特会のこう言うような意味においての特権なのでしょうか。

○政府参考人(井上宏君)

特別永住者と申しますのは、日本国との平和条約の発効によりまして本人の意思に関わりなく日本の国籍を離脱した者で、終戦前から引き続き我が国に在留している者及びその子孫であって、我が国で出生し引き続き在留している者のことでございますが、日本の国籍を離脱することとなった歴史的経緯でございますとか我が国における定着性に鑑みて、いわゆる入管特例法におきまして一般の外国人とは異なる措置が特例として定められたもので、そのような法的な地位でございます。

○仁比聡平君 そうした趣旨で定められているのであるから、これは特権ではないですよね。局長、もう一回。

○政府参考人(井上宏君) この特例措置は、特別永住者の法的地位の安定を図るために法律により特に設けられたものでございまして、このような措置を根拠として日本社会から排斥するようなことは、これはあってはならないことだというふうに理解しております。

「在日 特権」「入管特例法」など で国会の会議録検索をかけてみれば分かりますが、所管官庁である法務省が「在日特権は無い」と公式見解を発したことは一度もありません。また、「在日特権はない」と閣議決定した答弁書も存在していません。

それは当たり前です。

なぜなら、そもそも「特権」という言葉には法的な定義、公的な定義がないからです。なので答えようがありません。したがって「特権はあるのか?」という問いを行政にしても元々無駄な行為だったのです。

特権なのか?特権ではないのか?という問題設定自体、単なる「言葉遊び」に過ぎません。本質的なことは、他の外国人或いは日本人と比して利益を得るような事はあるのかどうか?ということです。

それを特権と呼ぶことが妥当なのかどうかという日常的な価値判断の次元でのみ通用する話です。

小括:「特権」と呼ぶか否かは非本質的で不毛な議論

  1. 「特権」という語の法的公的定義は無い
  2. そのため「在日特権を政府が認めるか?」は最初から不毛な議論
  3. 「政府が在日特権を否定した公式見解がある」は事実と異なる
  4. 「特権ではないと思う」という一担当者の発言を朝日新聞の取材で述べただけ

言葉の表面だけ捉えて「それはあるか、ないのか」と言っても何も始まりません。

具体的な現実を語らなければ無意味です。

現在の特別永住権の根拠

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書

現在の特別永住者制度は、平成3年1月10日に日韓の外相間で交わされた【日韓外相覚書(日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書)】を受けて制定された【入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)】に基づいています。

日韓外相覚書は外務省のHPなどネット上にソースが見当たらなかったので調べたところ、【外務省公表集】に文章が掲載されていました。

日韓法的地位協定とは、1965年6月22日署名の【日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定】を指します。こちらは国立公文書館デジタルアーカイブで閲覧できます。

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書

日韓法的地位協定に基づく協議の結果に関する覚書 (一九九一年一月一〇日)

覚 書

 日本国政府及び大韓民国政府は、1965年6月22日に東京で署名された日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「法的地位協定」という)第2条1の規定に基づき、法的地位協定第1条の規定に従い日本国で永住することを許可されている者(以下「在日韓国人一世及び二世」という)の直系卑属として日本国で出生した大韓民国国民(以下「在日韓国人三世以下の子孫」という)の日本国における居住について、1988年12月23日の第1回公式協議以来累次にわたり協議を重ねてきた。

 また、大韓民国政府は、1990年5月24日の盧泰愚大統領と海部俊樹総理大臣との間で行われた首脳会談等累次の機会において、1990年4月30日の日韓外相定期協議の際に日本政府が明らかにした「対処方針」(以下「1990年4月30日の対処方針」という)の中で示された在日韓国人三世以下の子孫についての解決の方向性を、在日韓国人一世及び二世に対しても適用してほしいとの要望を表明し、日本国政府は、第15回日韓定期閣僚会議等の場において、かかる要望に対しても適切な対応を行うことを表明した。

 1991年1月9日及び10日の海部俊樹日本国内閣総理大臣の大韓民国訪問の際、日本側は、在日韓国人の有する歴史的経緯及び定住性を考慮し、これらの在日韓国人が日本国でより安定した生活を営むことができるようにすることが重要であるという認識に立ち、かつ、これまでの協議の結果を踏まえ、日本国政府として今後本件については下記の方針で対処する旨を表明した。なお、双方は、これをもって法的地位協定第2条の1の規定に基づく協議を終了させ今後は本協議の開始に伴い開催を見合わせていた両国外交当局間の局長レベルの協議を年1回程度を目途に再開し、在日韓国人の法的地位及び待遇について両政府間で協議すべき事項のある場合は、同協議の場で取り上げていくことを確認した。

1.入管法関係の各事項については、1990年4月30日の対処方針を踏まえ、在日韓国人三世以下の子孫に対し日本政府として次の措置をとるため、所要の改正法案を今通常国会に提出するよう最大限努力する。この場合、(2)及び(3)については、在日韓国人一世及び二世に対しても在日韓国人三世以下の子孫と同様の措置を講ずることとする。
(1) 簡素化した手続きで覊束的に永住を認める。
(2) 退去強制事由は、内乱・外患の罪、国交・外交上の利益に係る罪及びこれに準ずる重大な犯罪に限定する。
(3) 再入国許可については、出国期間を最大限5年とする。

2.外国人登録法関係の各事項については、1990年4月30日の対処方針を踏まえ、次の措置をとることとする。
(1) 指紋押捺については指紋押捺に代わる手段を出来る限り早期に開発し、これによって在日韓国人三世以下の子孫はもとより、在日韓国人一世及び二世についても指紋押捺を行わないこととする。このため、今後2年以内に指紋押捺に代わる措置を実施することができるよう所要の改正法案を次期通常国会に提出することに最大限努力する。指紋押捺に代わる手段については、写真、署名及び外国人登録に家族事項を加味することを中心に検討する。
(2) 外国人登録証の携帯制度については、運用の在り方も含め適切な解決策について引き続き検討する。同制度の運用については、今後とも、在日韓国人の立場に配慮した、常識的かつ弾力的な運用をより徹底するよう努力する。

3.教育問題については次の方向で対処する。
(1) 日本社会において韓国語等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する。
(2) 日本人と同様の教育機会を確保するため、保護者に対し就学案内を発給することについて、全国的な指導を行うこととする。

4.公立学校の教員への採用については、その途をひらき、日本人と同じ一般の教員採用試験の受験を認めるよう各都道府県を指導する。この場合において、公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解を前提としつつ、身分の安定や待遇についても配慮する。

5.地方公務員への採用については、公務員任用に関する国籍による合理的な差異を踏まえた日本国政府の法的見解を前提としつつ、採用機会の拡大が図られるよう地方公共団体を指導していく。

なお、地方自治体選挙権については、大韓民国政府より要望が表明された。

(署名)             (署名)

中山太郎            李 相 玉

日本国外務大臣        大韓民国外務部長官

                                                   1991年1月10日 ソウル

日韓外相覚書についての各所の報道

当時、海部俊樹総理大臣も訪韓しており、大統領夫妻主催の晩餐会に参加していました。各社の報道は在日朝鮮人の処遇について協議すると報道しており、上記覚書の内容の通り入管関係、外国人登録関係、公務員採用、教員採用、朝鮮人教育について進展があるものと報道されていました。

ただし、朝日新聞は指紋押捺の廃止予想のみ事前報道で取り上げており、割いている紙面の量や見出しの大きさは他社に比して小さなものでした。

どの新聞も平成3年1月10日の夕刊に覚書の全文ないしは要旨を掲載していました。読売新聞が全文掲載であり、朝日・毎日・日経は要旨でした。 

「在日特権」と言われるものの中身について

「特権に定義はない」とは言いましたが、世の中で「在日特権」と言われているものは複数の性質のものが入り混じっています。それについて一応の整理を行っているのが「在日特権と犯罪」の著者である坂東忠信さんです。

坂東さんによると、「在日特権」と呼ばれているものは以下の種類があると言います。

  1. 在日朝鮮民族固有の「特権」
  2. 一般外国人には無い「特別永住権者」としての「優遇」
  3. 日本人にはありえない外国人としての「メリット」と「裏ワザ」
  4. 民族団体の組織力で勝ち取った生活保護受給資格とその扶助

1番は法定の要件を充たしていないのに行われていた朝鮮総連関係施設の固定資産税免除や、朝鮮学校の用地使用に関して事実上、格安の譲渡または貸与がなされていたという事実があります。固定資産税については平成27年に総務省が課税状況を公表して以降、全額免除は無くなりました。

それ以外の項目について、通名を使用することで犯罪者が過去の清算を図ったり扶養控除では架空の被扶養者の申請が可能で、実質税金をプラスマイナス0にできるというものが指摘されています。

詳細は坂東さんの著作を見て頂ければと思いますが、ネットにソースがあるものとして特別永住権者としての優遇について触れていきます。

特別永住権者としての優遇

2番目の特別永住権者としての優遇の例は、退去強制事由が非常に限られているために実質的に強制送還がないこと、 身分証明書の携帯義務が無い事、滞在資格が世襲制などがあります。

また、次に示すように、国籍を変えても身分が血統で保障されているということがあります。

参議院議員有田芳生君提出「特別永住者」に関する質問に対する答弁書】では「いま、日本に特別永住者は何人いますか。具体的な人数を国籍別にお示し下さい。」という質問に対して以下の回答がありました。

法務省の在留外国人統計(平成二十六年六月末現在)によれば、国籍・地域別の特別永住者の数は、スリランカが二人、中国が千七百五十九人、台湾が六百四十八人、インドが五人、インドネシアが八人、イランが九人、イスラエルが二人、韓国・朝鮮が三十六万四人、ラオスが一人、マレーシアが十一人、ネパールが四人、パキスタンが三人、フィリピンが四十六人、シンガポールが三人、タイが十人、ベルギーが四人、ブルガリアが一人、デンマークが三人、フィンランドが二人、フランスが六十七人、ドイツが十四人、ギリシャが八人、ハンガリーが二人、アイルランドが六人、イタリアが十二人、オランダが十三人、ポーランドが二人、ルーマニアが二人、ロシアが八人、スペインが三人、スウェーデンが九人、スイスが十八人、英国が八十一人、ウクライナが一人、スロバキアが二人、コンゴ民主共和国が一人、ガーナが一人、モロッコが三人、ナイジェリアが十五人、エジプトが二人、カナダが百五人、コスタリカが二人、ジャマイカが一人、メキシコが七人、米国が七百二十六人、アルゼンチンが二人、ブラジルが二十八人、ペルーが四人、オーストラリアが百五人、ニュージーランドが三十一人及び無国籍が八十七人である。

特別永住者とは第二次大戦前から引き続き日本に在留し、1951年のサンフランシスコ講和条約の発効に際して日本国籍を離脱した者です。入管特例法により「その子孫」が含まれます。

上記の国籍の中には1951年時点で存在していない国が含まれています(12か国ありますが数例を赤字表記)。つまり、在日韓国・朝鮮人(+αで台湾人・支那人)が外国人と婚姻してその子孫が国籍を変えても、特別永住者の地位を失わない場合があり、しかも相続できるのです。さらに無国籍者も含まれるという事実は衝撃的です。

「特権」の国語辞書的な意味として、このような権利・地位は他に例がなく、「特権」と言っても全く差支えが無いと言えるでしょう。

まとめ

特別永住資格そのもの=歴史的背景から日本国籍離脱者にも永住資格を認めることは、日韓両国の外相覚書とそれを受けた入管特例法という法令に基づくものであり、特権と呼ぶのはどうかと思います。

しかし、特別永住資格があることから派生する具体的な取扱いの差異について論じる際に、特権という言葉を使ってはならないとは思いません。

特別永住資格そのものと、そこから派生した利益の両者を分け、議論の場においては「特権か否か?」という不毛な問題設定は避けるべきでしょう。

以上

来日在日外国人の犯罪統計:中国韓国朝鮮人の犯罪は多いのか

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【外国人犯罪ではどの国籍が多いのか?】

この話題では常に「支那人(中国人)、韓国朝鮮人」が非難の対象とされてきました。

では、実のところどうなのか?というと統計情報はちゃんと公開されているのですが、検索することすら面倒なので探せていないということが多いと思います。実際、データはバラバラに存在してるので面倒です。

そこで、ここではまず統計情報の所在をまとめた上で、外国人の犯罪率についてどうなのかについて整理していきます。

結論だけ知りたいと言う方は「2:来日外国人犯罪:中国韓国は多いのか」から見て頂ければと思います。性犯罪に限定した日韓の比較は以下記事でまとめてあります。

1:統計情報の所在

支那人(中国人)韓国人の検挙人員が多いのか少ないのかを検証するには、『来日』と『在日』の犯罪統計が必要です。『来日』の場合は日本への渡航者数、『在日』の場合は日本国内での居住者数の統計が必要です。

それぞれのデータは所在がバラバラなので、統計情報の在り処をここでまとめます。

外国人全体の犯罪統計は法務省の犯罪白書

最初に犯罪の統計と言って思い浮かぶのはこれだと思います。

外国人全体の犯罪統計は法務省の犯罪白書に掲載されています。

犯罪白書では『外国人の検挙件数・人員』『来日外国人の検挙件数・人員』『来日外国人の罪名別構成比』が掲載されています。

ただし、『来日外国人の国籍別検挙件数・人員』や『在日外国人の検挙件数・人員』は掲載されていません。それは別のところにあります。

来日外国人の国籍別検挙状況は警察庁の警察白書

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来日外国人の国籍別検挙状況は警察庁の警察白書に掲載されています。

来日外国人の主な国籍別検挙状況の推移について、直リンクは存在しないので、エクセルファイルはこちらからどうぞ。こちらは刑法犯と特別刑法犯を併せた総検挙人員です。

また、平成28年までは国際犯罪対策に関する統計等として警察白書とは別個に「来日外国人犯罪の検挙状況」がUPされていましたが、現在は更新されていないようです。この統計が外国人犯罪統計としては網羅的であり、統計結果の分析も行われています。

在日外国人の国籍別検挙状況は元警視庁の坂東忠信氏

在日』外国人の犯罪統計は公的機関からはオープンな状態では存在していません。

しかし、公的な統計が存在していないかというとそうではなく、元警視庁の坂東忠信氏が非公式統計情報を整理して著作「在日特権と犯罪」で公開しています。 

ツイッター上でも@Japangardで活動しており、上記著作にある資料のごく一部について、ネット上のデマを消火する限度で公開しています。

なお、元データについては現在は「在日外国人犯罪検挙状況」資料 ダウンロード専用ページ - 坂東学校で公開しています。数字のデータだけなので、円グラフなどはありません。

坂東さんの著作を読めば円グラフ等で情報がさらに整理されているので、統計の理解の仕方が分かるでしょう。また、著作には統計情報だけでなく、いわゆる「在日特権」は存在するのかどうかについても検証しています。

訪日外国人の渡航者数は日本政府観光局

観光庁ではなく、JNTO(国際観光振興機構)に訪日外国人渡航者の統計資料があります。観光庁からもリンクが貼られています。

たとえば2018年の国籍別訪日外客数の月別数と累計数はこちらで確認できます。

注意すべきは、訪日外客数は「延べ人数」であるということ。入国手続をした回数毎に1人がカウントされるので、1人が複数回日本に入国すれば複数人とカウントされます。

在日外国人(在留外国人)の国籍別居住者数

在留外国人統計は法務省の所管です。データの所在はe-statです。たとえば2017年の統計はこちらです。

こちらのデータの見方ですが、在留外国人数と総在留外国人数の2つの統計があります。用語の意味の違いについてはこちらで解説されています(下記画像)。

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こちらを考慮しながら外国人全体の犯罪から来日外国人の犯罪統計を差引したりしてデータを抽出していくのはかなり面倒そうです。

したがって、在日外国人の犯罪統計については坂東さんの著作を参考にしていきます。

2:来日外国人犯罪:中国韓国は多いのか

来日外国人の国籍別検挙統計

https://drive.google.com/file/d/12v7-O687wnOM-LVnxwI-AfFnMSDLftI6/view

警察庁の警察白書は主な国籍のみ載っています。

この表は検挙件数が多い順に並んでおり、平成29年はベトナムが1位。中国は2位、ブラジルが3位、韓国は4位となっています。検挙人員で見ると中国が1位、ベトナムが2位、3位フィリピン、4位韓国となっています。

これは意外な結果かと思いますが、平成24年の統計を見ると、中国が検挙件数・人員ともに圧倒的1位であり、2位は韓国です。翌年から傾向が変わり韓国の順位が下がりますが、それまでは1位中国、2位韓国という順番だったということは事実です。

なお、「中国」には香港と台湾は含みません。

安田峰俊「実害と無関係」、古谷経衡「観念上の陰謀論」は本当か?

文春の古谷安田対談

引用元:"ゲイのネトウヨ”は『杉田水脈発言』をどう受け止めている? 安田峰俊×古谷経衡が語るネトウヨ最新事情

ということで、たとえば安田峰俊氏の『ネット右翼の排外主義が中国人と韓国人だけに向けられるのは「実害」とは無関係』という主張や古谷経衡氏の『観念上の陰謀論』という主張は根拠がないということになります。

直近1年だけの統計に限っても中国韓国は上位ですし、長年統計のワンツーフィニッシュをしていたわけですからね。

ただ、確かにベトナム、ブラジル、フィリピンに対するよりは中国韓国に対する「風当たり」は統計の数値に比して強いのは事実です。

実態が分からないという不安感

上記ツイートの引用記事中で八幡和郎氏が主張するように「中国人や韓国人の浸透を警戒しているのかもしれない背景には、実態が分からないからということがある」というのは一つの要因でしょう。

「在日」中国・韓国人の犯罪はどうなのか?という統計がオフィシャルには公開されていないことがそうさせている面もあります。

また、中国・韓国人は日本人と容姿が似通っている上に、反日教育が行われているということから、日本人が警戒するのは「危機管理上」自然な事です。

来日外国人の検挙率

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来日外国人犯罪の検挙状況」を見て平成17年からの変化を見ていくと以下のような傾向がわかります。

  1. 訪日外国人の数は全体で約4倍、各国少なくとも2倍以上に増えている。
  2. 全体の検挙人員数は平成22年まで減少したがそれ以降はほぼ横ばい
  3. 各国の検挙人員数は減少している
  4. ベトナムだけ検挙人員数が増えている

訪日外国人の数は4倍以上になっているのに全体の検挙人員数が減少もしくは横ばいというのは不思議です。理由は分かりませんが、警察が外国人検挙に割けるリソースが足りず、検挙人員・件数は伸び悩んでいるのではないか、という予想は一つあり得ると思います。

ベトナムだけが増えているのも不思議ですが、

平成27年中の主要5か国の刑法犯検挙状況を見ると、中国が、窃盗の減少により検挙件数・人員共に前年より減少しているが、ベトナムは窃盗の増加により検挙件数・人員が増加している。

このような傾向があるようです。想像以上にブラジル、ベトナム、フィリピンの犯罪が無視できない数存在しているということに気づきます。

なお、「北朝鮮籍」の統計は存在していないのか、非常に少ないためなのか、個別のデータは見つかりません。

では、「在日」中国・韓国朝鮮人の犯罪は多いのでしょうか?

3:在日中国・韓国朝鮮人の犯罪統計

坂東忠信氏の「在日特権と犯罪」から一部だけ抜粋します。

平成27年(2015年)の「在日」外国人犯罪の検挙人員は6228人。

そのうち韓国・朝鮮が2920人、中国人1477人、ブラジル人463人、フィリピン485人、ベトナム126人です。

来日と比べて在日の方が検挙人員が明らかに増えているのは韓国・朝鮮人のみということがわかります。

平成29年になってベトナム人が増えているかは分かりませんが、「在日」の統計を加えると韓国・朝鮮、中国が検挙人員・件数のトップ2になるということは疑いの無い事実でしょう。

来日は韓国のみで、在日は韓国に加えて朝鮮籍を入れているのがおかしいと言うこともできそうですが、もともと北朝鮮人の検挙人員は無視できるほど小さかったのに(或いは存在しない)、それを加えただけで大きく影響するというのは本来はおかしいのですよね。平成27年の来日外国人の「その他」の検挙人員は186人でしたからね。

その他、過去10年間に日本人を殺した「来日」外国人は、中国45%、フィリピン17%、韓国朝鮮7%、イギリスとナイジェリアとネパールが5%となっているのに対して、過去10年間に日本人を殺した「在日」外国人が、韓国朝鮮79%、中国9%、フィリピンとブラジルが5%となっています。

このように、「在日」外国人の検挙人員を加えると、数字上、中国韓国朝鮮人の検挙人員が飛躍的に増大するという事実があります。ただし、坂東氏の以下の指摘が重要です。

在日特権と犯罪164頁

なぜこのように「在日」枠に大きな偏りが発生するのか?確かに韓国朝鮮人は来日・在日ともに、他国出身者に比べて強盗や強姦、暴行・傷害などの粗暴犯傾向がありますが、各国とも罪種が異なるだけで、これをもって「他の外国人より犯罪傾向が強い」とは言えません。日本に滞在する韓国朝鮮民族の人工の70.3%は特別永住者。彼らは万引き一件で滞在延長が許可されなくなってしまう一般外国人と違い、何人殺しても死刑になるまで実質的に強制送還されないため、犯罪者が濾過されないのです。

特別永住者という「特別な制度」があるせいで、犯罪統計上、見かけの数字を大きくしているのではないか、という坂東氏の予測です。 

まとめ

  1. 来日外国人犯罪では平成29年にはベトナム人が検挙件数の1位
  2. 来日外国人犯罪では平成29年の検挙人員では中国が1位
  3. 来日外国人犯罪では平成24年までは中国1位、韓国2位という構図だった
  4. 在日外国人犯罪は中国、韓国(と朝鮮)人の検挙人員・件数がトップ2
  5. 在日来日を併せた統計では中国、韓国(と朝鮮)人の検挙人員・件数がトップ2
  6. 韓国朝鮮人に関しては、特別永住制度による強制送還の不発が数字の高騰の原因と推測されている

根拠の無い外国人への評価や個別の誹謗中傷は辞めるべきでしょうし、同時に危機管理上の警戒行動としての情報共有は必要でしょう。

以上

「名護市議会で渡具知武豊市長に代わり政府役人が答弁」:大城敬人(ヨシタミ)議員発言の実際

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名護市議選が9月9日に控えているので、相変わらずネット上では対立陣営に対する攻撃が行われています。今回取り上げるのは今年の名護市長選で当選した渡具知武豊市長に対する誤解です。

「政府役人が派遣されて渡具知武豊市長の代わりに答弁」

ツイッター上での発信源は以下の2つです。

@_rxj4_2018によるこのツイートが最初の出所

魚拓:http://archive.is/Ka1q3

元々は名護市の大城ヨシタミ議員の市議会報告がソースとのことですが、このツイート画像を使いつつ、とぐち市長から菅官房長官にあてた要望書の写真と併せて拡散したのが以下のツイート。

魚拓:http://archive.is/G22oY

騒がれている内容を整理すると

  1. 渡具知市長が菅官房長官に政府からの人材派遣要請をした
  2. 渡具知武豊市長に代わって政府役人が議会で答弁している

これが「地方自治に反する」と騒がれていますが、どうなんでしょう?

政府からの職員は総務省から1名「派遣」

◎石川達義総務部長 

次に、質問の事項2、要旨(3)、⑦の人材派遣要請についてお答えいたします。国からの職員派遣につきましては、他の議員の一般質問でもお答えしたところでございますけれども、総務省から職員を1人派遣していただくよう、現在調整を図っているところでございます。その目的としましては、要請に掲げた項目を含めた公約実現に取り組むということでございます。

 「総務省から職員を1名派遣していただくよう、現在調整を図っているところ」

3月19日の議事録ではこのようになっています。

地域政策部長に松田健司氏が着任

名護市渡具知市長に代わって政府役人が答弁のデマ

名護市広報「市民のひろば」5月号に4月1日付の人事異動情報が載っています。
魚拓:Wayback Machine

総務省から松田健司氏が地域政策部長に着任しているのがわかります。

沖縄タイムスや琉球新報では副市長や政策調整官として「派遣」されるのではないかと言われていましたが、違いました。

任用の形式について名護市の総務部に確認したところ、総務省を退職して名護市職員として採用したとのことで、現在の身分は名護市の公務員のみということでした。

つまり、形式的には通常の職員の任用と同じ形での採用とのことです。総務省職員を名護市の部局に配置するという形での「派遣」ではないとのことでした。

部長級なので、地域政策に関係する内容の質疑が行われた場合に答弁に立つということは通常予定されていることです。

役人派遣が地方自治に反すると直ちに言えるのか?

地方自治法 第百六十二条

副知事及び副市町村長は、普通地方公共団体の長が議会の同意を得てこれを選任する。

これは一例ですが、地方自治法にあるようにたとえば市長権限で外部の人間を副市長として据えるということは認められていますし、特別顧問という形で自治体に役職を持っている外部の人間はたくさんいます。

役人を政府から「派遣」されるからといって、地方自治に反するとは直ちに言えないということは明らかです。

政府側から自治体に人事異動がなされるという例は決して多くは無いですが、たまにそのような人事が為されています。

そして、「派遣」された者が答弁をしているとしても、今回の場合、それは名護市の職員として発言しているということであって「政府の立場で名護市議会で答弁」しているわけではないということです。

もちろん、たとえ正式な手続きを踏んでいても市長の周囲の人間がほとんど外部からの人間だというのであれば「実質的に地方自治が損なわれているのではないか?」という問題提起が可能でしょうが、あくまでも「派遣」されたのは1人だけなので、そのような危険はまったくありません。

大城ヨシタミ議員が「地方自治が害される」と問題視する兆候は3月の定例会からうかがい知れます。

名護市議会の大城敬人(ヨシタミ)議員の議事録

名護市議:渡具知武豊市長に代わって政府役人が答弁というデマ

この時点ではまだ政府からの人事異動は為されていませんが、大城議員が問題視している内容の一端は名護市議会平成30年第190回名護市定例会-03月19日-09号を見れば窺い知れます。名護市議事録検索はこちら

大城ヨシタミ議員が市長に答弁を要求している場面において石川達義総務部長が答弁に立ったので「市長が答弁に立っていない」「市長の代わりに役人が答弁に立っている」と言っているのですが、大城ヨシタミ議員はよく質問の最後に「市長にお聞きします」というような質問の仕方をしています。果たして聞く意味があるのか首をかしげざるを得ない内容が多いです。

議事録を読んでいると、市長は法的な定義などが絡むような細かい質問については市の役人に役割分担をしているというような感じがします。

また、3月時点の話ですが、渡具知武豊市長の発言回数ですが、検索可能です。

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この数字は発言数そのものではないですが、渡具知市長が答弁に立っている回数はふつうにあります。

この時点でも大城議員は「市長が答弁に立たない」と言っているのですから、総務省の者が着任した後も変わらないでしょう。

 

仮に大城議員が言うような「ほとんど答弁に立っていない」という状態が客観的にみてあったとすればその可能性は著しく低いでしょう。あくまでも地域政策に関わる内容のみであり、役割分担の結果だと思います。

通常、9月に6月以降の定例会の議事録がUPされるので確認できるでしょう。

国と地方公共団体の人材交流

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内閣官房の国と地方公共団体との間の人事交流の実施状況を見ると、平成29年10月1日現在における国から地方公共団体への出向者は1794人、地方公共団体から国への受入数2750人とあります。

人事交流の方針については内閣人事局のページにまとめてあります。

まとめ

  1. 政府から名護市地域政策部長として着任した者が1名居る
  2. 着任した者の身分は『名護市職員』であり、他の職員と同様の通常の任用方法
  3. とぐち市長に代わって着任者が答弁に立った事実はおそらくある
  4. しかし、それは役割分担として通常あり得る範囲のもの
  5. 「外部の者」を職員として任用することが法令等で認められている例がある
  6. よって、政府から来た者が答弁に立つことが地方自治に反するとは言えない
  7. 「渡具知市長が答弁に立たない」というのは質問者が無駄に市長に答弁を求めているからという側面が大きい

渡具知市長が当選した名護市長選挙が行われた当時、渡具知氏や渡具知陣営に対する様々な誹謗中傷やデマが横行しました。今回もそのような現象が起きているなぁと思います。

名護市長選に絡んだごみ分別問題についてのフェイクニュースについては以下参照

以上

オウム真理教にはなぜ破壊活動防止法が適用されなかったのか

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オウム真理教には、破壊活動防止法が適用されなかったので解散指定処分がされませんでした。代わりに無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律が適用されて観察処分がなされ、後継団体についても現在までその状態が更新されています。

なぜオウム真理教には破防法が適用されなかったのか、各所は破防法適用についてどのように動いていたのかを簡単にまとめます。

公安調査庁が破防法適用請求(解散指定処分請求)

オウム真理教の一連の事件が終息しつつあった1996年(平成8年)7月11日、公安調査庁は破壊活動防止法に基づき教団の解散指定処分請求を公安審査委員会に行いました。

これは破壊活動防止法においては解散指定処分(7条)は公安調査庁の請求があった場合にのみ行う(11条)のですが、処分を行うのは公安審査委員会であるとされており、公安調査庁の請求の審査を行う(22条)と定められているからです。

この辺りの経緯は公安調査庁のHP過去の魚拓)でも詳しく書かれています。

宗教法人法上の解散事由には該当し、宗教法人は解散済み

公安調査庁の請求の前に、オウム真理教は宗教法人法81条の解散事由に該当するとして、検察官及びオウム真理教の所轄官庁たる東京都知事鈴木俊一が解散命令を請求しました。

この顛末は【平成8年1月30日 最高裁平成8(ク)8 宗教法人解散命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告】において解散命令の決定がなされ、宗教法人としてのオウム真理教は解散され、税法上の優遇措置は受けられなくなりました。

ただし、解散されたのは「宗教法人オウム真理教」であり、一団体としてのオウム真理教は存続しているため、破防法が適用されるかが注目されていたのです。

オウム真理教への破防法適用を反対していた団体等

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公安調査庁の破防法適用請求に対して、各界から反対意見が相次ぎました。

容易に確認できるものとしては、自由法曹団日本弁護士連合会(日弁連)の一部弁護士らがその筆頭でしょう。※適用棄却決定後の日弁連の声明はこちら

また、反天皇制問題連絡会、立川自衛隊監視テント村、アジア太平洋資料センター、国連・憲法問題研究会、明治大学駿台文学会などの連名による 破防法の適用に反対する声明(サイトは市民の意見30の会・東京)も出されています。

これらの反対声明は「人権」「民主主義」「法治国家」などのお題目を掲げてなされました。具体的な構成要件の検討を加えた上での反対意見を目にすることはありません。

結局、法務省直下の公安審査委員会が破防法適用棄却決定を行い、オウム真理教の解散指定処分はされませんでした。

では、なぜ公安審査委員会は破防法を適用しなかったのでしょうか?

公安審査委員会は「暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれ」を認めず

公安審査委員会は1997年(平成9年)1月31日「団体の危険性が消失したとはいえないが,今後ある程度近接した時期に,暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあるとまでは認められない」として解散指定処分請求を棄却しました。

これは破防法7条の構成要件該当性判断を行っています。

第七条 公安審査委員会は、左に掲げる団体が継続又は反覆して将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあると認めるに足りる十分な理由があり、且つ、第五条第一項の処分によつては、そのおそれを有効に除去することができないと認められるときは、当該団体に対して、解散の指定を行うことができる。
省略
二 団体の活動として第四条第一項第二号イからリまでに掲げる暴力主義的破壊活動を行い、若しくはその実行に着手してこれを遂げず、又は人を教唆し、若しくはこれを実行させる目的をもつて人をせヽ んヽ動して、これを行わせた団体
省略

破防法4条の規定も一応確認のため必要部分のみ示します。

第四条 この法律で「暴力主義的破壊活動」とは、次に掲げる行為をいう。

省略
二 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる行為の一をなすこと。
省略
ヘ 刑法第百九十九条(殺人)に規定する行為

要件を整理すると

  1. 団体性(7条)
  2. 政治目的(4条二号柱書)
  3. 暴力主義的破壊活動(4条に定める刑法が規定する行為)
  4. 明白性(明らかなおそれ)(7条)

公安審査委員会の決定は「武器としてのサリンの効果を試すとともに、松本市への進出の障害と考えた裁判官や地域住民を排除・抹殺するために行った」と認定し、破防法適用の要件のうちの2つである「団体性」と「政治目的」を満たすとしました。
※暴力主義的破壊活動が行われたことは明らかだったため最初から争点ではない(が、一応は検討、認定している)。

その上で、地下鉄サリン事件以降の強制捜査や宗教法人格のはく奪、破産手続きなどによって、「教団は人的・物的・資金的能力を弱体化させつつ、隔離された閉鎖集団から社会内に分散した宗教生活団体に移行している」と述べ、状況の変化を評価において考慮しました。

最終的に「公安調査庁提出の証拠では、近接した時期に暴力主義的破壊活動に及ぶ明らかなおそれがあると認めるに足りるだけの十分な理由があると認めることはできない」と結論づけました。

この「明らかなおそれ」というのは他の分野でも要件として登場することがありますが、これが認められる場面は相当限られてきます。要件レベルでかなりの困難があったということです。

さらに、明白性判断において状況の変化が考慮される点も問題視されました。

破壊活動防止法の問題、そして無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律へ

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第145回国会予算委員会第二分科会第1号平成十一年二月十七日では、破防法の問題点とその後の方向性について端的に言い表している質疑があります。

○堀込分科員 
 決定文を見ますと、人的、物的、資金的能力、これが縮小、弱体化しつつあり云々、こうあるわけでありまして、つまり、危険性が低下した、将来の危険性が薄らいでいる、こういうことを理由にしながら棄却決定をした、こういうことなのだろうと思います。しかし、実態は、棄却決定後、人的、物的、資金的能力を増大させているのは、先ほど答弁にあったとおりであります。
 私は、破防法の欠点というものが、そういう意味ではやはりこの過程の中で明らかになっているのだろうと思うわけであります。つまり、摘発が進まないと危険性は低下しないわけでありますが、証拠を集められないという事情が一方にあって、摘発が進むと今度は危険性が薄まってくるという矛盾があるわけでありまして、なかなか請求決定するにはその条件を満たすに難しいといいますか、そういう事情が働くのだろうというふうに思うわけであります。それで、どうしても、そういう意味では集団的な組織犯罪に対して機敏に対応できる法整備というものが必要なのだろう、こういうふうに考えるわけであります。
 私は、破防法を読んでみて、今度勉強してみて、問題点は、第一には、手続の簡素化、迅速化、あるいは、規制処分が六カ月以内の活動制限と解散指定の二つしかありませんから、保護観察処分的なものを入れるとかいう検討が必要なのだろうと思います。二つ目に、政治目的という問題、やはり無思想のテロ集団にこれでは対応できないという現代社会の犯罪に対する問題点を抱えておるのだろうというふうに思います。三つ目に、問題になりました将来の危険性、この規定はやはり緩和ないしは削除するというような検討がなされるべきだろうというふうに私自身は考えておるわけでありますが、現行破防法の組織犯罪に対する有効性についてどのような認識をお持ちなのか、伺っておきたいと思います。

中段の指摘は重要だと思います。

公安審査会の理屈で言えば、摘発が進まないと危険性は高いままだが証拠が集められない、しかし、摘発が進むと証拠が集まっても危険性は薄まってくるということになってしまいます。

法務省の公安審査委員会はオウム真理教に破防法を適用させないための理屈を使っているとしか思えません。

質疑の後半部分の「保護観察処分的なもの」というのはまさに「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」における「観察処分」につながっていきますし、同法には「政治目的を持った団体」という要件が課されていません。

そして、同法には観察処分の要件として危険性はありますが、「明白性」はなくなっています。

(観察処分)
第五条 公安審査委員会は、その団体の役職員又は構成員が当該団体の活動として無差別大量殺人行為を行った団体が、次の各号に掲げる事項のいずれかに該当し、その活動状況を継続して明らかにする必要があると認められる場合には、当該団体に対し、三年を超えない期間を定めて、公安調査庁長官の観察に付する処分を行うことができる。
一 当該無差別大量殺人行為の首謀者が当該団体の活動に影響力を有していること。
二 当該無差別大量殺人行為に関与した者の全部又は一部が当該団体の役職員又は構成員であること。
三 当該無差別大量殺人行為が行われた時に当該団体の役員(団体の意思決定に関与し得る者であって、当該団体の事務に従事するものをいう。以下同じ。)であった者の全部又は一部が当該団体の役員であること。
四 当該団体が殺人を明示的に又は暗示的に勧める綱領を保持していること。
五 前各号に掲げるもののほか、当該団体に無差別大量殺人行為に及ぶ危険性があると認めるに足りる事実があること

破防法が適用できなかった結果、新法で手当てをし、公安調査庁が後継団体であるアレフ等の観察をしているということですが、解散指定処分を出せない現状で果たして良いのでしょうか。破防法においてもこの明白性要件を削除するべきだと思います。

まとめ

外国の主な団体規制、解散適用組織等

外国の主な情報・団体規制機関の所属組織等:解散処分適用団体:https://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku/houmu616.html

クリックで拡大。またはURL部分から政府のページに飛びます。

  1. オウム真理教は宗教法人としては解散命令がなされた
  2. しかし、一団体としてのオウム真理教は破防法による解散指定処分ができなかった
  3. 破防法の解散指定処分は明白性要件が厳し過ぎた
  4. 公安審査委員会の採った理屈が明白性要件の否定方向に働くものだった
  5. 現在は「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」における「観察処分」が公安調査庁によって後継団体に対して行われている

「破防法適用団体」と「破防法に基づく調査対象団体」は意味が違うので注意、以下にまとめてあります。

以上

「安倍総理が小山佐市に選挙妨害依頼」というデマ:裁判所の判決文に見る火炎瓶を投げ付けた犯人の主張

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魚拓:http://archive.is/yZ1yC

安倍総理に対してまたもデマによる誹謗中傷が為されています。

発信源は過去に安倍総理宅へ火炎瓶を投げ入れて懲役刑を受けた小山佐市、彼に取材した山岡俊介、山岡の論を載せているリテラ、溝口敦などです。ツイッター上では"#ケチって火炎瓶"などというタグがつけられてトレンド入りまでしました。

これは刑事裁判で既に決着がついている話であり、事情も判決文からも読み取れますが、その判決文の理解を誤解させる言説がネット上に蔓延しているので、ここで改めて整理していきます。

「安倍総理が下関市長選の選挙妨害依頼」というデマ

デマの概要は以下のようにまとめられます。

  1. 平成11年、安倍総理陣営が下関市長選の対立候補の選挙妨害依頼をした
  2. 対立候補が怪文書を配布されるなどの選挙妨害を受けた
  3. 安倍総理の秘書が妨害依頼した小山佐市に対して報酬300万円を渡した

この件についてはネット上で「裁判記録でも認定されている」と言われていますが、そんなことはないので公開されている判決文を見ていきましょう。

安倍総理が火炎瓶を投げられた事件の判決文

平成19年3月9福岡地裁小倉支部判決に事件の概要があります。

これがネット上で「裁判記録」と言われているものですが単なる「判決文」です。

裁判記録と言うと起訴状や証拠の標目など事件の捜査から公判、判決に至るまでの審理経過が分かるものなので、そういうものを見ているわけではないということです。

刑事事件の事件記録を閲覧できる者は当事者など限られているので、ネット上で「裁判記録によると」と言っているのは、単に上記の判決文を指して言っているだけです。

小山佐市=被告人Bの行為

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人B=小山佐市は、指定暴力団の組長らに依頼して、安倍総理宅に火炎瓶を投げ付けさせたことが共謀共同正犯とされています。火炎瓶投げ付けは数回行われました。

では、なぜ被告人B=小山はこのような行為をしたのか?

その動機も含めて判決文には記載があります。

「ケチって火炎瓶」の「根拠」と誤解されている部分

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人B=小山は「自分が下関市長選挙でG議員=安倍晋三と対立するX候補を当選させないように活動した」と主張して、それを理由にG議員の秘書であるWに対して金員の支払いを要求し、実際に300万円の提供を受けたという事実があります。

しかし被告人B=小山は上記の行為が恐喝であるとして起訴猶予処分を受けています。
※起訴猶予とは「犯罪事実があるのは明らかであるが諸般の事情を考慮して起訴まではしないという検察の処分」です。前科はつきませんが、前歴はつきます。

要するに「安倍総理の秘書から300万円の金員が小山に渡された」というのは事実だが、それは恐喝によるものだったということです。被告人B=小山が本当にX議員の選挙妨害をしたかは分かりませんが、300万円が選挙妨害に対する報酬であるとの因果関係があるとは認定されていません。

恐喝で通報されたことに対する逆恨みで火炎瓶を投げつけたと言うことです。

これが山岡らによると「選挙妨害の依頼をしていて、その報酬として300万円を渡した」と歪めて伝えられているのです。

さらに、以下の文が「裁判所が認めた」と言われている「根拠」とされています。

裁判所が事実認定した内容「小山は信用できない」

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人Bは,…下関市長選でX候補をG議員側から頼まれて当選させないよう活動したのに,G議員の秘書にはめられて警察に逮捕された,決まっていた仕事も流れてしまった,その点の補償もさせる,許せんなどと恨み言を言っていた

これは「被告人Bがそのように言っていました」という事実認定をしているだけで、その言っている内容が事実であると事実認定したものではありません

この文章は、なぜ被告人B=小山がG議員=安倍晋三に対して怨恨を持つに至ったのかの経緯を示しているので、小山が言っている内容がどうであれ、何を言っていたかということは重要なので判決文で触れているというだけに過ぎません。

この後に被告人B=小山の発言の信用性を裁判所が評価を下している部分があります。

安倍火炎瓶選挙妨害依頼と言うデマ

被告人Bの供述は…その細部を子細に検討するまでもなく、信用性が認められない

裁判所がここまで言い切っています。

つまり、裁判所は被告人B=小山の供述内容は信用できないと認定しているのです。

山岡俊介はこのような被告人B=小山の発言を信用し、検証もせずそのまま垂れ流しているということです。

山本太郎が国会で小山の発言を事実として発言

第196回国会内閣委員会第28号平成三十年七月十七日において山本太郎議員が小山の「下関市長選でX候補をG議員側から頼まれて当選させないよう活動した」という発言部分について、判決文にあるから事実であるという前提で発言しています。

これに対して安倍総理は

私が関わりがあるということでは全くなくて、私は一切の関わりを断ってきた

と明確に否定しています。

この件で本当に安倍事務所側が依頼していたというなら、被告人B=小山が恐喝で逮捕されたときの捜査で贈収賄で秘書も起訴されていたでしょう。

山岡俊介が「新証拠」と主張する「確認書」

魚拓:http://archive.is/yaUKx

この【願書】と書かれたものは単なる面談依頼であり、それだけでは何らも意味しません。

魚拓:http://archive.is/KfD0S

「確認書」と題されている書面の日付は平成11年5月17日となっています。

下関市長選挙が行われたのは、同年の4月です。

仮に選挙妨害の依頼をしていたとすればその前にもろもろの「確認」をするはずなのに、後の段階の書類しかないということは疑問です。

また、当時警察や弁護士にもこの書類を出さずに今更出してきたのは意味不明ですし、内容もなぜわざわざ確認書という形式をとったのか首をかしげざるを得ないものです。

「竹田力」の署名と印影がありますが、これだけでは文書が本物かどうかは決まりませんし、仮に本物としても安倍総理が関与していたかどうかはまた更に遠い話です。

追記:竹田秘書が選挙妨害依頼の念書にサイン?

「竹田力秘書が選挙妨害依頼を匂わす文言がある念書にサインしたと認めている」という取材記事や、取材時の音声データが存在していると言われています。

ただ、取材したという記事中にあっても『竹田氏は「中身は見ずにサインした」と言っている』とあります。相手は恐喝で300万円を出させる者ですから、サインの経緯はどうだったのかは気になるところです。

「中身は見なかった」という説明には納得できないという主張がありますが、逆にそこまでの「証拠」がありながら今まで沈黙していたのはなぜか?告発できなかったのはなぜか?竹田氏へのインタビューは12年以上前の事柄について竹田氏が高齢になってからのものであり、取材結果自体の信憑性も問題になります。

まとめ:火炎瓶投擲犯を信用するのだろうか?

  1. 安倍総理の秘書が火炎瓶を投付けた被告人B=小山に300万円を渡したのは事実
  2. しかし、それは恐喝によるものだった
  3. 「裁判所が下関市長選で安倍総理側が被告人B=小山に選挙妨害依頼したことを認定した」というのはデマであり、被告人B=小山がそう発言しているだけに過ぎない。
  4. むしろ、裁判所は被告人B=小山の供述は信用性が無いと明言する部分がある
  5. 「安倍総理が選挙妨害を依頼した」と言っている発信源は、被告人B=小山
  6. 被告人B=小山自身が暴力団に報酬をもって安倍総理宅に火炎瓶投下を依頼していた

モリカケ冤罪キャンペーンであれだけ騒いだマスメディアがまったくこの件にノータッチなのは、このような人物の発言を信用するわけにはいかないという矜持(?)があるからでしょう。

以上

朝日新聞が慰安婦訂正記事の検索回避設定は「削除漏れ」と苦しい回答:サイト検索では未だ出てこず

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朝日新聞が慰安婦報道に関して間違いを訂正した記事の英語訳を書くも、検索回避のためのメタタグを設定していたということが明らかになりました。

これに対して朝日新聞が苦しい回答をしていますので紹介します。

メタタグについて検証した先駆者様たち

ぼやきくっくり | 朝日の英語版慰安婦検証記事は人目につかない場所に埋めてある

私の方でもまとめています。

朝日新聞:慰安婦訂正記事の検索回避は削除漏れ

朝日新聞の慰安婦問題にからむ英語版記事2本がインターネットで検索できないような設定になっていたことが分かった。朝日新聞広報部は産経新聞の取材に対し、「記事を最終確認するため社内のみで閲覧できる状態で配信し、確認を終えてから検索可能な状態にした。その際に2本のタグ設定解除の作業が漏れてしまった」と説明し、24日までに設定を解除した。

「2本の設定解除の作業が漏れてしまった」

嘘ですね。

この2本とは以下のものです。

Testimony about 'forcible taking away of women on Jeju Island': Judged to be fabrication because supporting evidence not found
魚拓:http://archive.is/Ug2ln
日本語版:「済州島で連行」証言 裏付け得られず虚偽と判断
日本語版魚拓:http://archive.is/MvW6D

 

Confusion with 'volunteer corps': Insufficient research at that time led to comfort women and volunteer corps seen as the same
魚拓:http://archive.is/ZbCku
日本語版:「挺身隊」との混同 当時は研究が乏しく同一視
日本語版魚拓:http://archive.is/iEfVh

 

これらの記事は「慰安婦問題を考える」という記事群の中の一部です。

Thinking about the comfort women issue 
魚拓:http://archive.is/rX3Pe
日本語版:慰安婦問題を考える
日本語版魚拓:http://archive.is/kznzs

この記事群のうち、訂正記事はこの2つの記事だけです。

こんな都合のいい「削除漏れ」はあるのでしょうか?

削除忘れという回答が信用できない証拠

以下略ちゃん@ikaryakuchan の記事によれば、朝日新聞デジタルの一般記事における「訂正・お詫び」ページにおいても、すべて検索避けのメタタグ(noindex,nofollow,noarchive)が設定されていたということです。

これも削除漏れなんでしょうか?

最初から訂正する記事は検索回避のメタタグを設定する方針が社内にあったという以外に考えられません。

なお、訂正された元記事のページでは、タイトル部分に「訂正あり」などの文言が付加されており、検索避けのメタタグはありませんでした。

検索回避のメタタグを削除しても…

こちらでは"noindex,nofollow,noarchive"以外にも、「期限を過ぎたら検索にかからない設定」も存在していることを検証しています。つまり、"noindex,nofollow,noarchive"を削除しただけではグーグルのクローラが巡回しない可能性があり、朝日新聞が自主的にクローラの巡回を促さない限りは検索結果に表示されない可能性があるということが指摘されています。

この設定のせいで、朝日新聞デジタルのサイト内検索では、2014年に書かれた慰安婦問題を考えるという特集ページは日本語でもヒットしません。

一般記事も試してみましたが、やはり1年以上前の記事はサイト内検索でもヒットしませんでした。

福島原発の「吉田調書」だけは別扱い

魚拓:https://web.archive.org/web/20180825010813/http://www.asahi.com/special/yoshida_report/list/

URLを見ると、"http://www.asahi.com/special/yoshida_report/list/

"となっており、朝日新聞日本語版の通常のURLの下部に特別なページとして作成されています。こちらは2014年のページなのに、グーグル検索でヒットします。

御存じの通り、福島原発の吉田昌邦所長の吉田調書の内容を捏造した事件の訂正は、吉田清治の証言が偽証だとした日と同じタイミングでなされています。

吉田調書の扱いは特別扱いで、日本国に甚大な被害を与えた吉田証言については特別ページも作らずに一般ページと同じ扱いにしている時点で、朝日が吉田証言だけは多くの人の目に留まってほしくないと思いそのように仕組んだということは明らかでしょう。

なお、グーグル検索ではヒットするのに、朝日新聞デジタルのサイト内検索ではヒットしません。これも何か設定が組まれているのでしょうか?

慰安婦訂正記事の英訳版の現在:サイト内検索は未だ

ためしに2018年8月25日の午前11時40分頃に「Testimony about 'forcible taking away of women on Jeju Island': Judged to be fabrication because supporting evidence not found」で検索をかけると、1位に表示されました(人によって見え方が違う可能性があります)。

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ただし、朝日新聞デジタルのサイト内検索では未だにヒットしません。

以上