事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

関東大震災時の朝鮮人殺傷人数:6000人虐殺説の嘘

現代史資料(6)関東大震災と朝鮮人

関東大震災時の朝鮮人殺傷人数について。

この件については事実認定のフェイクと事実の評価のフェイクが現実社会のソースでもネット上のウェブサイトでも渦巻いているので、注意が必要です。

なるべく検証可能なソースをつけて調べた結果を整理していきます。

内閣府中央防災会議の関東大震災の報告書

内閣府中央防災会議のページに「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書1923 関東大震災【第2編】」があります。こちらの第四章第2節に朝鮮人被害者に関する調査の結果が記載されています。この調査報告は朝鮮人の犯罪についての記述はありません。当該調査は複数人の委員によって行われていますが、第四章第2節は鈴木淳委員が担当しています。

朝鮮人犯罪については以下参照。

関東大震災時の朝鮮人の被害者について

朝鮮人に対する殺傷事件や流言蜚語についても調査結果があり、「起訴事件になったものの中での殺人の被害者となった朝鮮人は233人」であるという司法省の記録(「刑事事犯調査書」)があります。

当然、真実の犠牲者の中には起訴事件にならなかったもの、捜査が進まなかったものも含まれると思われますが、これとかけ離れた死傷者数を言う見解(たとえば6000人)は、官憲の協力を得られず事後的なものであり、また後述する人口動態からして、信憑性は無いと言えます。

流言蜚語については警察が把握したものを中心に検証していますが、マスメディアが報道したものについてはほとんど検証を加えていない点に注意です。

内閣府中央防災会議の報告書では、朝鮮人を自警団による暴行や混乱から護るためにむしろ政府・警察が朝鮮人を保護しようとしていたことが分かります。ただ、同時に警察による殺傷についても書かれています。

この殺傷の引き金・或いは増長の原因となった事象は、政府の要因を否定することはできませんが、新聞社の側、特に東京日日新聞の寄与度は重いということは以下で指摘しています。

司法省の統計は信用できるか?

司法省の「刑事事犯調査書」を収録している「現代史資料(6)関東大震災と朝鮮人 みすず書房」の編者である姜徳相(カンドクサン)は、中公新書から「関東大震災」を出しており、その中で司法省の統計(233人とある部分)が信用できないとして以下述べています。

しかし、こうした数字が信用できないことは、総督府がとった次の措置からみてもあきらかである。総督府は総督府の官憲が「精密に調査した結果」、朝鮮人の被害人員は八三二名とし、その調査にもとづき「震災の為に死亡したり行方不明となった鮮人の遺族に対しては一人に付二百円宛の弔慰金を贈り地方官をして懇に遺族を慰問せしめ、その人員は八百三十名で弔慰金総額十六万六千円である」としている。ー中略ー弔慰金をうけることは被害者の身元が確実に判明したことを意味しよう。

総督府調査で832名、弔慰金が200円であったことについては後述する内閣府の報告書でも触れられており、事実です。しかし、以下の分析は的外れです。

司法省調査の二三三名を総督府が調査するとどうして八三二名に増加するのかー中略ーいまいちど司法省や内務省の調査した被害者はニ三三名中二三名しか氏名が確認できず、残余の二〇〇名以上が「氏名不詳鮮人」「とか「約一五名」など大雑把にしか記録できなかった…

数字の違いは、司法省と朝鮮総督府が出した統計が異なる性質のものであるために発生しています。「被害人員」となっているところが重要です。次項で詳述します。 

朝鮮総督府による朝鮮人被害人員832人の認定方法は?

関東地方震災時に於ける朝鮮人問題 朝鮮総督官房外事課

関東地方震災時に於ける朝鮮人問題 朝鮮総督官房外事課:現代史史料(6)より

被害人員とされる832名がどのように認定されたのか。

「現代史資料(6)関東大震災と朝鮮人 みすず書房」に収録されている【関東地方震災時に於ける朝鮮人問題 朝鮮総督官房外事課】の資料に記載があります。

462頁

自警団に殺害された鮮人の数は混乱の際であり死体は一般の死体と共に火葬に附せられたから死因も弁別せず従って的確なる数を得ること困難であるが朝鮮地方官憲で精細に調査した結果に依れば圧死者焼死者被殺者及行方不明となった鮮人は総体で八百三十二名である、鮮人の居住場所と焼死者の多かった事実に徴し自警団に殺害された者はその二三割を超過することはあるまいと推定せられるのである。

要するに、司法省は【殺人が特定の者によって行われたのが明らかな起訴事件】において殺人の被害者となった朝鮮人が二三三名としているのに対して、朝鮮総督府は【震災によって死亡した者+何者かに殺害された者+行方不明者で身元(遺族の所在)が明らかになった者】が八三二名としているのです。そして、この中で殺害された者は3割を超えることはないと推定しており、そうすると司法省の数字とほぼ同数となります。

朝鮮人殺傷832人は「行方不明者含む」は殺害隠蔽?

ただし、前掲内閣府中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書1923 関東大震災【第2編】第4章第2節殺傷事件の発生」によると、政府による遺族に対する弔慰金に関して以下の指摘があります。

日本人の死者、行方不明者へ一律で配布されたのが御下賜金の1人16円であったことと対比すれば、200円という金額は政府が朝鮮人の被災を特異なものと捉えられていたことを示している

意味深な記述が最後にありますね。

これは暗に「832名の内訳は全員殺害された者であり、名目上カムフラージュするために行方不明者も含んでいることにしている」ということを示唆しています。さて、どう理解するべきでしょうか?

御下賜金」とは、いわば天皇からの義援金です。詳しく書かれた論文はこちら

罹災の申告者に対して死者・行方不明者(の遺族)には一律16円という金額設定がなされました。これは低額な金額ですが、御下賜金の総額は1000万円であり、その分配対象は死亡者だけではなく「家屋全焼」「半焼」「負傷者」も含んでいた(全焼は12円、半焼・負傷者は4円)のが理由です。

関東一円に存在する数十万人の日本人罹災者に対して広く救済をするためにはどうしても1件あたりの金額を抑える必要があったのです。832名だけの朝鮮人への補償とはわけが違います。

それにしても朝鮮人に対する一人あたり200円というのは多額ですが、これは「予算の出所が違う」というのが大きいでしょう。朝鮮人への200円は被災していない朝鮮総督府から出ていますが、御下賜金は被災した日本政府が配分しています。

御下賜金以外の現金支給の存在は確認できません。それは、関東一円が被災しており、日本政府は個人の生活再建のみならず都市の復興のためにも予算を使わざるを得なかったという事情が大きいのではないでしょうか。日本政府と朝鮮総督府の震災補償に対する考えが違っていたとしてもおかしなことではありません。

また、弔慰金配分に際しては官憲が直接遺族方に慰問していることから「厚遇である」と評してその「特異性」を強調する向きもあります。しかし、当時併合したばかりの朝鮮の遺族が、自分から弔慰金の交付を受ける手続をして役所に足を運ぶことは期待できません。弔慰金の趣旨についても理解できないでしょうから、説明ができる者、つまり官憲が行くのは当たり前だと言えます。

こういう事情からは、「日本人への御下賜金は死亡者に対して16円に過ぎないのに、朝鮮人への弔慰金は200円であることから異常であり、832名の真の内訳は殺害者数であることを示唆する」という鈴木淳委員の推論は拙速に過ぎるといえるでしょう。

むしろ、そうであるからこそ「疑惑」を明示せず、仄めかすだけにとどまったのではないでしょうか?朝鮮総督官房外事課の史料における「二三割を超過することはあるまいと推定せられる」という記述を無視していることからも、私には鈴木淳委員が、日本政府と朝鮮総督府を「政府」として同一視させようと誘導しているように見えます。

司法省の資料についての姜徳相の「虐殺」分析の価値

以上みてきたように、司法省の資料による「233人」が犯人の特定(犯行を行ったという犯人性があるという意味)を必要とし、被害者の特定(身元が分かる程度に)を必要としないのに対して、朝鮮総督府の「832人」は犯人の特定を不要とし、被害者の特定を必要とするものである上に、震災による死亡者や行方不明者も含めています。

死者のうち、犯人が特定できるものと被害者が特定できるものという性質の違いがあるだけです。

そして、朝鮮総督府の832人が殺害人数のみであるという推測も説得力に欠けます。

したがって「朝鮮総督府の数字が司法省の数字よりも増えているのは異常であり、司法省の数字が全て信用できない」とする根拠には欠けます。姜徳相氏は司法省と朝鮮総督府の統計情報の性質の違いを考慮に入れて論じているわけではありません。

姜徳相氏が編纂した本は政府の公式資料を多数含む史料として非常に優れており、この調査を軸として後続の研究がなされ、次第に政府側の報告書に本来あるべき記述が欠けていることなどが明らかにされてきました。

しかし、姜徳相氏が自身の著作において流言蜚語と朝鮮人の殺害事象を『日本人と朝鮮人の「支配ー被支配」関係』の文脈で捉えようとしている結果、上記のような説得的でない政府批判、資料検討をしているのは残念だと思います。朝鮮人殺傷人数に限らず、説得的な資料批判は他の研究論文を参考にすべきでしょう。

朝日新聞社の調査による朝鮮人殺害被害者数:432人

朝日新聞社史

朝日新聞社史

朝日新聞社史によると、朝日新聞も調査していたといい、殺害された朝鮮人の関東一円の合計数は432人だったとしています。これは刑事事件になっているかどうかや身元が判明しているかどうかの限定が無い、純粋な被殺者数です。

司法省の「刑事事犯調査書」の起訴事件233人、朝鮮総督府の震災による死者と行方不明者含めた身元判明者832人との関係から妥当な範囲の数値だと言えます。

朝鮮人被殺者数の代表的な民間調査は姜徳相氏「関東大震災・虐殺の記憶」の巻末の表にまとめられていますが、この中に朝日新聞調査は含まれていません。

「6000人虐殺説」の民間調査

「朝鮮人6000人が虐殺された」という主張の元ネタは、いくつかの民間調査です。

  1. 独立新聞調査(金承学(キムスンハク)調査):6661人(姜徳相氏の著作より。ただし、計算違いと思われるため工藤美代子氏は6419人と記述)
  2. 吉野作造調査:2613人
  3. 同胞慰問班調査員・崔承万(チェスンマン)説:2607人

これらは調査自体の信用性、調査に対する評価の姿勢、当時の朝鮮人人口、の観点から、とても信用できないものであるといえます。

前掲内閣府中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書1923 関東大震災」では、これらの民間調査の数字を紹介しているものの、その信憑性については直接検討していません。

一方、朝鮮人殺傷について東京日日新聞(現:毎日新聞)の寄与度は高いとした研究論文(たとえば大畑裕司/三上俊治「関東大震災下の『朝鮮人』報道と論調」(上)(下)『東京大学新聞研究所紀要』第35号・第36号,1986・87年)においても、これらの民間調査の数字の信用性を検討せず採用しています。

「疑い」の観点から朝鮮人殺傷について記述する研究・出版が無いことが6000人説が跋扈してきた原因でしょう。この点、工藤美代子氏の「関東大震災 朝鮮人虐殺の真実」では上記の民間調査について疑問点を一通り指摘しています。

「6000人虐殺説」はなぜ信憑性が無いのか?

調査自体の信用性、調査に対する評価の姿勢、当時の朝鮮人人口の視点を示します。

調査の内実についての評価は「関東大震災 朝鮮人虐殺の真実 工藤美代子」を参考にしていますが、調査結果自体は姜徳相氏編著の「現代史資料(6)関東大震災と朝鮮人 みすず書房」、姜徳相氏著作の「関東大震災・虐殺の記憶」にも掲載されています。

6000人説の中心的資料である独立新聞調査について

  1. 内訳として「屍体を発見できなかった同胞」数が2889人であるが、本来行方不明者として扱うべきものである
  2. 「屍体を発見した」とされる1274人も、殺害されたのか震災による死体なのかの判断は極めて困難。
  3. 1923年11月25日(震災から約2か月半後)に近県から集まった追加調査として2256人が追加されたが、最後の遺体処理が行われたのは十月中旬であり、なぜこれらが「殺害」と判断できたのか非常に疑わしい

この調査は記述からして、単なる死者・行方不明者を「被殺者」に含めている可能性が極めて高いものです。

同胞慰問班調査員・崔承万説について

  1. 「被殺人数」として「48人または80人」など、「または」という予想を含む形で記述し、その最大人数を合計している。
  2. 「神奈川鉄橋 500人」「東京亀戸署 87人または320人」「浅草公園内 3人または200人」など、雑駁でいいかげんな数え方をしていること
  3. 崔はさらに被害者は5000人以上だろうと追加で推定しているが、その推論過程が「東京神奈川に3万人⇒震災後各所に収容された生存者7580名を引くと22420名となる。確実な調査は出来ないので、少なく見積もって4分の1としても、5600余名となるので、罹災朝鮮同胞慰問班では虐殺された人は5000名と意見を集約した」というもの

こちらは独立新聞よりも酷く、そもそもきちんとした調査をしていたのかどうか、というレベルで怪しい代物です。司法省の調査を批判する者であれば、なぜこれについて疑義を差し挟まないのか、理解に苦しみます。

吉野作造調査について

  1. 調査そのものが崔承万のものとほぼ一緒
  2. 吉野の聞き取り調査で唯一違うところは、埼玉県本庄の被殺人数が崔は80人だが、吉野は86人となっている点のみ。それ以外の数字は崔の調査と同じ

以上みてきたとおり、6000人説が依拠する調査結果はすべて「朝鮮人による調査」であったということです。そこにバイアスがあると考えるのは数字がおかしいことから自然でしょう。

姜徳相その他の後継研究による評価の杜撰さ

上記の記事で示したように、姜徳相その他の研究者は、司法省が発表した「震災時の朝鮮人による犯罪」の信憑性について、犯人とされる者に氏名不詳者が多いことなどをもって、朝鮮人犯罪の一部は無いのではないかという分析が多くなされていることを指摘しました。

であるならば、なぜ同様の精度をもって「朝鮮人被殺者数」の調査結果も精査しないのか?その態度の一貫性の無さに首をかしげざるを得ません。

上述の通り、「6000人説」の調査は明確に殺害された者を把握しているとは言い難く、単なる「震災による死亡者」「行方不明者」も算定している可能性が極めて高い代物です。

姜徳相氏の著作を読んでいれば分かることですが、常に日本政府を敵視し、日本人と朝鮮人の関係を差別ー被差別の関係で理解しようとしています。そのような前提でいるから、バイアスのかかった分析をしているのです。

ところが、この点を精査する言説は工藤美代子氏の著作以外にはまったく見ることがありません。

「事実認定」の次に「事実の評価」の問題があり、それが正当であるかどうかも重要であるにもかかわらず、研究者界隈はサボっていたということです。アカデミックぐるみの東京日日新聞隠蔽「工作」と並んで、これは恥ずべきことです。

関東一円の朝鮮人の人口動態から

震災当時の関東一円の朝鮮人人口については推定値しかわかりませんが、概ね1万人~2万人に落ち着いています。数字にばらつきがあるのは、当時の資料の多くが敗戦後に焼却されたり、公式統計に違いがあったり、昼間の在関東人口の計算が異なったり、政府が把握できない不法滞在者が相当数居たであろうという推測が間に挟まるからです。

なお、ここでも6000人説を提唱する者は、司法省の「233人」を否定したような熱意でもって関東の人口を推測しているのではなく、結構多めに見積もるという態度であることが多いのが不思議です。

ここでは最もあり得ると思われる関東1万4000人説をベースに考えていきます。
※工藤美代子氏は厳しく見ており昼間の在関東人口は9800人(公式統計から算出しており不法滞在者は勘案していないようである)という数字を基礎にしています。

そこから、震災時に警察が朝鮮人を保護した人員(6797人)は絶対に殺害人数に追加されることは無いので、差し引きます。

すると、約7000人が残りますが、6000人説であれば「震災による焼死者圧死者等・行方不明となった者・警察が保護した以外の生存者」の人数が約1000人ということになります。ほぼ全滅です。

よって、6000人説は歯牙にもかけられない程度に在り得ないものということです。
(なお、工藤美代子の9800人想定とその後の計算によると、仮に独立新聞や崔承万調査が正しいとすると警察が保護した者以外の者は全員殺害されたことになり矛盾するため、6000人説どころか2600人説も成り立たないことになる)

実際の朝鮮人被殺者数は何人か

それでは実際に殺害された人数は何人か?

ここで、保護された6797人とは別の約7000人の内訳としてあり得る項目を改めて挙げていきましょう。

  1. 殺人の被害者
  2. 震災による焼死者圧死者等
  3. 行方不明となった者
  4. 警察が保護した以外の生存者 

関東大震災によって関東全体の全人口約1000万人のうち約10万5000人が死亡・行方不明となったというのが近年の調査結果です。死者は下町界隈で特に多く、全体の80%とされています。朝鮮人の多くは下町に住んでいましたから、単純な人口比よりも遥かに多くの方々が死亡したと考えられています。

ところで、震災の翌々年の大正14年(1925年)には関東の朝鮮人人口が約2万人であるという統計があります(田村紀之「内務省警保局調査による朝鮮人人口(工)一一一総人口・男女別人口と経済学』第46号,1981年)60-66ページ)。

朝鮮併合以降、日本に移住する朝鮮人は右肩上がりでしたから、人口の伸び率を考慮する必要があり、注意が必要です。ここでは不法滞在者も居る想定ですので、実際には2万人よりも多くなっていたと考えられます。

右肩上がりだった朝鮮人人口の傾向を加味したとしても、震災から2年で震災の被害が甚大だった関東において、1923年から1925年の間に、いったいどれだけ人口が増えたでしょうか?

ここは推測の域を出ません。

まとめ:ありえない数字を持ち出すな

関東大震災の朝鮮人殺傷については、「朝鮮人虐殺」を糾弾する目的で研究している者が多く(事実、この分野は朝鮮人研究者が多い)、 分析に思想的傾向があるのは否めません。ネット上でも、一定の思想をベースに持って史料を評価している言説が目立ちます。

他方で、いわゆる「保守側」からこの件について研究・分析を試みる者は非常に少ないです。それを知ってか知らずか、朝鮮人の被殺者数は過大に見積もられていますし(言うまでもなく朝鮮人の誇大主張傾向がある)、その逆で過小に記載しているウェブサイトが存在し、「朝鮮人の殺傷は無かった」というデマを拡散する者も居るというのが実態です。

内閣の調査報告では報告担当者の大雑把な予測としてではありますが、朝鮮人の被害者は1000人程度ではないかという記載があります。しかし、それは「832人」全員が殺害された人数であるという前提のようです。その推測は拙速に過ぎるということは先に示しました。

客観的な状況からは、朝日新聞調査の被殺者数432人(刑事事件になったかは問わない)から(行方不明者と震災による死者を含めた)832人の間が、朝鮮人被殺者数のあり得る数字であると考えられます。

以上

山下貴司の保守思想とエドマンド・バーク

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内閣改造で法務大臣になった山下貴司氏。

彼の保守思想と憲法改正についての見解について「正論」平成29年3月号の寄稿を参考にまとめました。

山下貴司の保守の精神

保守とは「国として保つべきものをしっかり守る。一方、守るためには改革を厭わない」という姿勢だと思います。日本という国、そこに暮らす日本人が大切にしてきたふるさと、家族、地域との絆。それらをしっかりと守っていく。

ここで、保守すべき対象はNationとしての日本国という側面に留まらず、ふるさと、家族や地域社会でもあると言っています。

私は、「海岸線で形作られた日本国」に対して真に愛国心があるかと問われれば、怪しいと答えざるを得ません。しかし、生まれ育った故郷に対して言えば、間違いなくそういった心情はあります。

さらに言えば、山下氏は「日本人が大切にしてきた」と歴史の連続性を前提にしています。私たちが行っている何気ない行動や習慣は、先祖が行い良いものであると認識されたからこそ続いてきたのであり、そうしたものはまず第一に大切にしましょうということです。

エドマンド・バークの保守のための改革

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正論2017年3月号

では、それらは変える必要は無いのか?続いて以下のように主張します。

しかし、社会情勢や国際情勢の変化に対応しなければ国を保てないこともある。そのための改革は逃げずに実行する。その意味でエドマンド・バークの「保守のための改革」論に共感を覚えます。「変えるために変える」とか、逆に「何が何でも変えない」では国として大切なものを失います。私が議員立法に熱心なのもそのためです。

エドマンド・バークは「保守主義の父」と呼ばれます(本人は「保守主義」という語を使ったわけではない)。彼が主張した「保守のための改革」とは何でしょうか?バークの代表作である「フランス革命の省察」の全編を通してその精神を感じることができますが、敢えて該当部分を示すとすれば以下でしょう。

フランス革命の省察 エドマンド・バーク 半澤孝麿訳 みすず書房

29頁
何らかの変更の手段を持たない国家には、自らを保守する手段がありません。そうした手段を欠いては、その国家が最も大切に維持したいと欲している憲法上の部分を喪失する危険すら冒すことになり兼ねません。

313頁

私は変更をもまた排する者ではありません。しかしたとえ変更を加えるとしても、それは保守するためでなければなりません。大きな苦痛があれば、私は何か対策を講じなければなりませんが、いざ実行の段には、我々の祖先の実例に倣わねばなりません。私は、修繕をする場合にはできる限り建物の場合のような方法を取る積りです。賢明な注意、綿密周到さ、気質的というよりはむしろ善悪判断を弁えた小心さ、これらが、最も断固たる行為をする際に我々の祖先が則った指導原理の中にはありました。彼らはあの光ーーつまり、フランス人の紳士諸君が自分たちはそれに大いに与っていると我々に吹聴するあの光ーーに照らされてはいなかったために、人間とは無知で誤り易いものである、という強い印象の下に行動した者でした。そして、彼らをそのように可謬の存在として作り給うた神は、彼らがその行為において自らの性質に従順であったことを嘉し給うたのです。もしも我々が彼らの運命に価したいと欲し、また彼らの遺産を維持したいと欲するならば、彼らの注意深さを模倣しようではありませんか。

ここで、「祖先の実例に倣う」とは、「先例と全く同じように踏襲する」という意味では無いということに気づくでしょう。

人間は誤り易い存在である。だからこそ、完璧に作られたものはありえず、常に変更の必要が生じるということは在り得る。ただし、何らかの変更の際に第一に大切にするべきものは、「先達が守り、残そうとしてきたものは何か?」を認識するということ。それを踏まえた上で変更をするべきであり、祖先も行ってきた「そのような態度」を持って行動していこう。

エドマンド・バークの主張した「保守のための改革」は、このような精神であり、山下貴司氏もまた、そのような精神を発見したバークの思想に共感を覚えているということです。

 

守るための改革:憲法改正に向けた議論をするべき

憲法改正についても触れています。

戦後70年を経て、国内外の諸情勢が激変する中で、ほとんどの主要国は憲法改正を経験しています。それは「守るための改革」をしたのではないでしょうか。

間違えてはならないのは、憲法を変えるかどうかを最終的に決めるのは国民投票だり、国会は憲法改正を発議する場に過ぎない。内閣には提案権すらありません。国民の正しい判断を仰ぐためにも、国会が「この国を保つために、今の憲法に何が足りないのか」を率直に語り合うべきです。議論すらしないとか、ましてや野党が「安倍内閣の下では話し合わない」と主張することは法理論的に間違っている。

2017年5月に安倍総理が改憲の議論を呼び掛けた際、信じられないことに「安倍晋三の改憲議論の呼びかけは憲法違反だ」という主張が共産党界隈を中心に為されました。

彼らは「憲法99条の憲法尊重擁護義務違反だ」「憲法は権力を縛るものであるから権力者からの改憲議論は許されない」と叫び喚いていました。

山下氏は、こうした見解にも真っ向から反論します

憲法とは「この国のかたち」を憲法制定者たる国民が世代を超えて引き継ぐために創るものだと考えています。「憲法は権力者を縛るためにある」とだけ考える議論は一面的に過ぎますし、ましてや、一方的にレッテルを貼る議論や、論拠も検討せずに「憲法学者が言っているから正しいのだ」という、ある意味「権威主義」的な議論には賛成できない。その点は憲法審査会でもしっかり反論しています。

安倍総理の改憲議論に対する否定論は、私も反論しています。

憲法審査会における山下貴司:押し付け憲法なのか?

上記の憲法審査会でも反論している、という部分は、もちろんあります。

192 衆議院 憲法審査会 2号 平成28年11月17日

○山下委員 ー省略ー
 私は、この憲法制定経緯、本日議論するわけでございますが、無用な、かつ不毛なレッテル張りにくみするつもりはございません。ただし、その制定経過、事実に関して目を背けることは、やはり国民の憲法論議に対して不誠実ではなかろうかというふうに考えております。
 その憲法の制定経緯、これは本日お配りされております資料の二十三ページ、憲法制定の経過に関する小委員会の報告書の下線部にまとめられているところであろうかと思います。
 すなわち、「原案が英文で日本政府に交付されたという否定しえない事実、さらにたとえ日本の意思で受諾されたとはいえ、手足を縛られたに等しいポツダム宣言受諾に引き続く占領下においてこの憲法が制定されたということは、明らかなのである」。一方、「全部が全部押しつけられ、強制されたといい切ることができるかといえば、当時の広範な国際環境ないし日本国内における世論なども十分分析、評価する必要もあり、さらに制定の段階において、いわゆる日本国民の意思も部分的に織り込まれたうえで、制定された憲法であるということも否定することはできないであろう。
 我々は、こういった事実も踏まえてやはり議論していく必要があるのであろう。こういった制定経緯を正しく国民と共有することは、七十年の歳月を経た憲法の改正の要否、解釈の要否、変更の要否を考えるに当たっても重要でありますし、無用なレッテル張りを避けるという意味でも重要であるというふうに私は考えております。 

現行の日本国憲法は「押し付けられたものである」という意見があります。

それは一面においては厳然たる事実であるというのは間違いではありません。

しかし、そのように言い切ってしまえるものなのだろうか?GHQ草案に抵抗した当時の日本政府の艱難辛苦を想えば、とてもそうは言えないであろう、というのは、私も同様です。 

竹田恒泰氏も、「押し付け憲法」という用語には反対しています。 

山下貴司氏の説明能力

あらためて言及する必要はないですが、彼の話の分かりやすさがわかる一例として、テロ等準備罪についての解説を紹介します。

山下貴司が尊敬する保守政治家、そして注目する仲間

締めくくりに、彼が尊敬する人物について触れます。

尊敬する保守政治家は、郷土の大先輩である犬養毅元首相、保守合同を成し遂げた三木武吉、ウィンストン・チャーチルです。いずれも国にとって大切なものは何かを見据え、それを守るためには身命を賭してでも闘った政治家です。

注目する保守のホープは自民党の三人。大学の同級生で政府の中枢を担った古川禎久さんと柴山昌彦さん、そして…

古川禎久氏は法務大臣政務官、環境大臣政務官、財務副大臣を歴任しています。柴山昌彦氏は今回の内閣改造で文部科学大臣になりました。

そして…の後には誰が続くか?あなたのその目で確かめてみてください。

以上

内閣改造で元検察官の山下貴司が法務相に:憲法改正へ安倍総理は本気か

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内閣改造で石破派の山下貴司が法務大臣に就任しました。

山下貴司氏の経歴と過去の発言、他人からの評価について調べました。

安倍総理は、憲法改正に本気ですね。

山下貴司の経歴

政界進出前は大きく3つの仕事をしていたと言えるでしょう。

参考:衆議院議員山下たかし公式サイト

首相官邸:第3次安倍第3次改造内閣 大臣政務官名簿

捜査・公判検事

山下貴司氏は、東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後、検事(検察官)に任官しています。

捜査・公判検事は、一般的な検察官の仕事のイメージである事件捜査・刑事裁判を担当するものです。東京地検特捜部にも複数回勤務経験があります。

ここまでなら、「普通の検事」です。

同じ検察官出身である山尾しおり(現:菅野しおり)はここの職域のみ経験しています。

政府の法律家

一言で言い表す適当な言葉が見つからないのですが、政府の法律家として公式サイトでは以下のように説明されています。

国際捜査や知的財産権にかかわる条約交渉、法務省関連の法律の改正などを担当したほか、農林水産省所管法令の審査も担当。農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS 法)や農地法の改正では、食の安全や農地利用の促進の流れを作るお手伝いをしました。

2010年に退官する前には法務省刑事局国際課国際刑事企画官として勤務していたということで、法律に従って刑事手続を行うというにとどまらない活躍をしていたということになります。

法務省で勤務する者の中でも法律の改正等にかかわるということは、実質的には「立法」に近い仕事をするということです。法的に深い知見が必要とされるポジションですので、単に「検察官経験者です」という人と比べて高い能力があると言っても過言ではないでしょう(捜査や公判も重要なのは変わりないですが)

元検察官の郷原信郎や若狭勝も法務省や公正取引委員会で勤務経験がありますが、彼らよりも幅広い領域で実績を残していると言えます。

なお、フルブライト奨学生として米国コロンビア大学ロースクールを卒業しています。

外交官

平成14年7月から平成17年8月には外交官(一等書記官兼法律顧問)として在ワシントン日本大使館に勤務。

従軍慰安婦訴訟や戦時捕虜訴訟で勝訴しています。

外交官となる検察官は少数、しかもアメリカですから、エリート中のエリートです。

法務相就任までの政界進出後の実績

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http://yamashita-takashi.jp/pdf/newsletter_08.pdf

平成24年の衆議院選挙で初当選した山下氏ですが、お世辞でもなんでもなく、ウルトラマンです。議員立法で8本の法律の起案をし、成立させたというのは文句なしの実績です。成立した法律についての解説書も出版しています。

山下貴司の評価

「黜陟幽明(ちゅっちょくゆうめい)」とは、功績に応じて人の評価をして登用することです。丸山穂高氏がここまで言うのですから、相当なものなんでしょう。

三原純子氏も心酔しているかのようです。

山下氏は慶應義塾大学法学部でゼミを担当していた時期もありますから、その関係で彼を知っている者も非常に期待しているようです。

特定の法案の成立を待ち望んでいた人たちにとっては、かなり評価が高そうです。

山下法相の過去の発言等

「正しい政治と歴史の知識だ。そのためには小中高校で偏りのない教育をやらなければならない。『アンチ巨人』ではないが、『アンチ政府』の立場を取ることが知識人の証しだというような教育をやれば、純粋な子供たちは将来の選択を誤ってしまう。中立・公平な教育をやっていく必要がある。それがあって初めて正しいモノの見方ができる」

政府や政治に対して斜に構えるような教育をしている人もいる。『将来を決める者としての教育』を実施することが必要だ」 

石破派に属する山下氏

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ツイッターアカウントも持っており、自民党総裁選の期間は石破茂の応援ツイート一色です。ただ、メインはフェイスブックで投稿しているので、最近の状況についてはそちらで発信していました。

石破派の議員の1人として、本気で石破茂を応援していたことがうかがえるツイートです。

政治家の目線で見ると、ここまで「義理を果たす」(本心ではあるだろうが)人間であれば、内閣に登用しても方針通りに行動してくれるだろうと期待するんじゃないでしょうか?

石破4条件については、確かに閣議で決めたものであるのは事実ですし、実際上は挙証責任が規制省庁側に課せられているという運用なので、実は嘘を言っていることにはならないのではないか?と思います。
参考

なお、菅義偉(すが・よしひで)官房長官にも近いとされているので、安倍内閣との親和性は高いのではないでしょうか。

山下貴司を法務大臣に起用した安倍総理は改憲に本気か?

憲法改正をするということは、法務大臣の国会答弁が重要であり、法的素養抜群の山下氏が最適任であることは間違いないでしょう。

ただ、如何に実務家として実績を積んできたとはいえ、山下氏はまだ3回生です。

あの小泉進次郎ですら4回生であり、大臣職の就任は未だないのですから、実績以上の政治的な思惑が無ければ抜擢はしないでしょう。報道の中には「石破派から重用して党内融和」などと書いているものもありますが、そんなものではないハズです。

まとめ:内閣改造でどうなる

山下氏は「石破派」であるというだけで、かなり懐疑的に見られていますが、逆に期待値がそれほど高くないのが幸いするのでしょうか?

マスメディアも叩きにくいと思います。

実務家としての能力と大臣としての能力は別なので、今後の発言次第であるとは思います。

以上

裁判所が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

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朝鮮学校無償化訴訟で大阪高裁の判決が出た結果、朝鮮学校が敗訴しました。

一連の訴訟の中で、各裁判所は朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係が朝鮮学校の教育・運営に「不当な支配」を及ぼしていると認定しています。

ここではどのような事実関係が認定されているのかを整理します。

朝鮮学校無償化訴訟の全体像

こちらでも書いていますが、訴訟が各地でなされています。

朝鮮総聯は破防法に基づく調査対象団体

朝鮮総聯は、破壊活動防止法に基づく調査対象団体です。

公安調査庁の【内外情勢の回顧と展望】には、朝鮮総聯の活動の調査結果が報告されています。※破壊活動防止法が「適用された」ではないことに注意。

要するに、日本共産党やオウム真理教(その後継団体であるアレフやひかりの環など)などと同じ扱いであるということです。

朝鮮学校無償化訴訟の展開

朝鮮学校無償化訴訟は、主要都市の朝鮮学校関係者によって為されています。

時系列順にいうと、広島(平成25年(行ウ)第27号)、大阪(平成25年(行ウ)第14号)、東京(平成26年(ワ)第3662号)、名古屋(平成25年(ワ)第267号、平成25年(ワ)第5590号)の地方裁判所の判決が出ています。

既に判決が出ている東京、名古屋、広島では朝鮮学校側の敗訴となっています。2018年9月27日に大阪高裁で朝鮮学校側が逆転敗訴しましたが、高等裁判所レベルで判決が出たのは初めてのことです。

東京と名古屋は朝鮮学校の元生徒らが原告、広島と大阪は朝鮮学校の運営法人が原告です。

福岡でも同種の訴訟が行われており、福岡は2019年3月14日に判決が出るようです。

東京地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

東京地裁判決はエビデンス毎に項目が分かれており、把握しやすいです。

公安調査庁による【内外情勢の回顧と展望】から

  1. 朝鮮総聯が「高校無償化」に関して朝鮮人学校生徒への適用を実現すべく朝鮮人学校の教職員・父兄・生徒らを動員して各地で街頭宣伝活動を行った
  2. 平成23年7月に「総聯の新たな全盛期を開くための中央熟誠者大会」において朝鮮人学校への生徒勧誘活動に取り組み、来年度の学生数増加が確定
  3. 朝鮮総聯は「多数の在日韓国・朝鮮人と関わりを有する朝鮮人学校を『活動の拠点』と位置づけ
  4. 朝鮮総聯は,我が国政府の『高校無償化』措置に関し,朝鮮総聯中央に『対策委員会』を設置
  5. 朝鮮総聯は,(中略)北朝鮮建国60周年に際しては,幹部活動家,若手活動家,商工人など各階層別の代表団を総勢数百人規模で北朝鮮に派遣し,(中略)これら代表団の一部は,朝鮮労働党幹部から,思想教育の徹底などを図るよう指導を受けた

国会答弁から

  1. 平成22年11月17日の参議院予算委員会において公安調査庁長官が「朝鮮総聯の影響は,朝鮮人学校の教育内容,人事,財政に及んでいること,このように承知しております。」と答弁
  2. 平成24年11月7日の衆議院文部科学委員会において警察庁長官官房審議官が「朝鮮総聯は,朝鮮高級学校等の朝鮮人学校と密接な関係にあり,同校の教育を重要視し,教育内容,人事及び財政に影響を及ぼしているものと認識しております。」と答弁

朝鮮総聯のホームページから

  1. 「朝鮮総聯と在日同胞は,幼稚園から初級学校,中級学校,高級学校,大学校にいたる120余校の各級学校を日本各地に設立して,在日同胞子女に民主主義的民族教育を実施している。」,「朝鮮総聯は,日本の都道府県ごとに47の地方本部をおいている。」,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」,「朝鮮総聯の地方本部は,当該地域を区分して支部をおいている。」,「地域の集団的指導機関である支部常任委員会は委員長,副委員長,専門部署役員,管下の団体責任者,学校長などによって構成される。」などの記載がされている
  2. 「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載

この時点で、公安調査庁の資料や国会答弁で示された事実は、すべての朝鮮高級学校(朝鮮学校の高校レベルに位置する学校)に共通するものと評価しても不合理ではないとしています。

裁判所認定の事実

広島地方裁判所平成19年4月27日判決で認定された事実も引用されています。

事案:C信用組合(以下「C」という。)の学校法人D(以下「D」という。)等に対する貸金債権を譲り受けたとする者が貸金の支払等を求めた事案についての判決。

  1. Dの実印が「朝鮮学校」の日常の管理運営を行っていた「教育会」の金庫で保管されていたこと
  2. CとDは,朝鮮総聯E県本部の強力な指導の下にある傘下組織のようになっており,両者一体となって学校移転のためのプロジェクトを進めていたこと
  3. Dが学校法人の形態をとったのは,日本社会において行政の補助や助成を受けられる地位を確保するためであり,学校の日常的な管理運営は学校単位で設けられている「教育会」が行っていたものであると学園関係者が認識していたこと
  4. 平成4年4月及び5月に,Dが学校の移転・建設のために設立した組織名義の預金口座から,朝鮮総聯E県本部への融通金ないしその関連で合計5000万円が出金されたこと

などが認定されています。

新聞等の報道があったという事実

  1. 平成22年2月11日の産経新聞において,北朝鮮が過去半世紀以上にわたり日本国内の「朝鮮学校」に対して合計460億円の資金提供を行っていた旨の報道がされた
  2. 平成22年2月21日の産経新聞において,「朝鮮学校」において学費納入時に朝鮮総聯傘下団体の活動費を同時に徴収していた旨報道された
  3. 平成22年3月11日の産経新聞において,「朝鮮学校」で使用されている教科書には故金正日氏の決裁が必要である旨報道された
  4. 平成22年9月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の生徒のうち朝鮮総聯の幹部等の子供は学費が免除されており,朝鮮高級学校の場合には,朝鮮総聯が学費と同程度の額を教育手当として出すこととされており,同手当は,生徒や保護者が受け取らず,学校側の会計上で学費と相殺する形で処理されている旨報道された
  5. 平成23年10月26日の産経新聞において,「朝鮮学校」の校舎や敷地が朝鮮総聯の関連する金融機関の債務の担保となっており,そのうち高級学校を含む13校の校舎及び敷地が,同金融機関の破たんを受けて,仮差押えがされている旨報道された
  6. 平成23年11月1日の産経新聞において,朝鮮総聯が朝鮮学園の理事会議事録を偽造した旨報道された
  7. 平成23年11月18日の産経新聞において,「朝鮮学校」への自治体からの補助金が朝鮮総聯に流用されている疑いがある旨報道された
  8. 平成24年10月17日の産経新聞において,朝鮮総聯が高級学校を含む関係団体等に対して,故金日成氏及び故金正日氏の肖像画を新しい肖像画に交換するよう指示し,同肖像画は朝鮮総聯中央宣伝広報局が一括して準備し,費用は対象機関が負担する旨報道された

これ見ると、産経新聞以外は報道したのか?と思ってしまいますが、証拠として提出された記事がそれだけだったというに過ぎないのでしょうか?

また、国外の新聞報道も引用されています。

  1. 在日本大韓民国民団発行の「民団新聞」(平成22年3月17日)には,朝鮮高級学校の「高校3年」では全科目週30時間のうち7時間が民族教育に値しない思想教育もしくはそれに準じることに割り当てられており,そのような問題は「朝鮮学校の上部団体が朝鮮総連であり,人事や配置まで朝鮮総連の指示を受けるという『垂直支配』に起因している」との記載がされている
  2. 在日本大韓民国民団発行「民団新聞」(平成23年1月1日)には,NPO法人の代表が「総連の新たな内部文書」を公開し,「朝鮮学校は金日成-金正日親子へ『忠誠の電文』を送るという思想・政治運動を学校ぐるみで展開している」と批判したとの記事が掲載されている
  3. 北朝鮮の「労働新聞」(平成24年4月4日)には,「総連は,我が共和国の堂々たる海外同胞組織であり,在日朝鮮学校は,総連組織が運営する合法的な民族教育機関である。」との記載がある
  4. 在日本朝鮮人総聯合会中央常任委員会発行の「朝鮮総聯」(平成3年2月1日)には,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の指導のもとに,教育会が責任をもって進めている。」との記載がある

これらの事実のすべてが存在していると東京地裁が明確に認定したわけではありませんが、これらの疑いを払拭するのに十分な確証を得ることができないとしています。

各種団体からの申入書の記載

  1. 北朝鮮による拉致被害者家族会連絡会及び北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会作成が作成した、平成22年8月25日付け「朝鮮学校への国庫補助に反対する要請文」
    ⇒「朝鮮学校の生徒らは,学内で組織運営されている『在日本朝鮮青年同盟(朝青)という政治組織に全員加盟して,北朝鮮の金正日政権を支える政治活動に参加」「総連は世論喚起のデモや集会に朝鮮学校生徒を『朝青』組織を通じて大々的に動員」「朝鮮学校は純粋な教育機関ではなく,拉致被害者をいまだに返さない朝鮮労働党の日本での工作活動拠点なのです。」などの記載
  2. 在日本大韓民国民団中央本部が作成した、平成22年7月27日付け「朝鮮学校『高校無償化』に関する申し入れ書」
    ⇒「朝鮮学校は運営面においても教科内容の面においても,また教育全般面においても朝鮮総連の指導を通じ北朝鮮政府の完全なコントロール下にあり,日本社会一般の常識をはるかに越えるような教育,指導が行われています。」「就学支援金が(中略)本来の趣旨から外れて実際には朝鮮総連への迂回支援につながることを本団は憂慮する」との記載

これらの事実についても、そのすべてが存在していると東京地裁が明確に認定したわけではありませんが、これらの疑いを払拭するのに十分な確証を得ることができないとしています。

名古屋地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

名古屋地裁判決は、朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係がある事を確定した上で、それが「不当な支配」にあたるかどうかを段階的に記述しています。

また、「不当な支配」の疑いについて、原告による反論が示されていますが、すべて疑いを払拭するに足りないと判断されています。

「不当な支配」と言えるための合理的疑念

名古屋地裁はまず、以下を指摘しています。

愛知朝鮮高校が,北朝鮮から財政上の援助を受け,朝鮮総聯との間で密接な人的関係を有するということのみをもって,朝鮮総聯や北朝鮮から「不当な支配」を受けていると合理的に疑うべき事情が存在するとはいえない。

その上で、以下の判断枠組みを示して検討しています。

朝鮮総聯や北朝鮮が愛知朝鮮高校に対して及ぼす影響が,外国本国や在日民族団体が在日外国人学校に対して行う一般的関与を超える介入であり,人間の内面的価値に関する文化的な営みとして,党派的な政治的観念や利害によって支配されるべきものではない教育本来の目的をゆがめるようなものに至っている合理的疑念があるかを,さらに検討する必要がある。

「不当な支配」の合理的疑念の事実:学校の運営

  1. 朝鮮総聯のホームページには,平成24年3月まで,「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との記載が存在していた
  2. 準学校法人が学校の運営費のために行う借入金は,評議員会に諮問した上で,理事会において決すべき事項であるところ,平成23年時点で愛知朝鮮学園がRCCに対して負っていた約14億円の借入債務は,学校運営費のための借入金であるとの説明がされているにもかかわらず,その多くが教育会名義での借入れとなっている。
  3. しかも,支援室からの確認に対し,愛知朝鮮高校は,上記借入債務について,理事会・評議員会の意思決定の有無を確認できない旨の回答をしているほか,借入れの詳細が分かる書類も学園内には存在しない旨を回答するなど,理事会・評議員会において意思決定を自律的に行っている準学校法人とは考え難い回答をしている。
  4. そして,上記借入れが行われたのは平成9年から13年頃のことではあるが,愛知朝鮮学園は,現在の理事会の開催状況についても,理事会開催を裏付ける書類(出欠票や欠席者の委任状等)は特に存在しないと回答している上,役員名簿と理事会等の出席者が一部合致していないことも確認されており,平成24年3月時点で前記のとおりのホームページの記載もあった

「不当な支配」の合理的疑念の事実:教育内容について

  1. 朝鮮高校が使用している教科書は,平成22年以前まで朝鮮総聯中央常任委員会に置かれた「教科書編纂委員会」によって編纂されており,総聯中央副議長が責任者になるなど,朝鮮総聯の意向を色濃く反映した教科書編纂がされていたことがうかがわれる。
  2. その後,教科書の編纂者は「学友書房 教科書編纂委員会」と改められたが,学友書房も朝鮮総聯の事業体である上,学友書房が朝鮮総聯中央の指導の下で教科書編纂を行っていた
  3. 朝鮮高校で使用されている教科書には,北朝鮮の最高指導者を絶対視し,これを賛美・礼賛する表現が多数見られる
  4. 朝鮮総聯は,朝鮮学校において,北朝鮮の最高指導者を崇拝し,その考えや言葉を絶対視するような教育を行うべきことを,教職同等を通じて,校長や教員に繰り返し指導している
  5. 朝青は,青年期の在日朝鮮人によって構成される朝鮮総聯の傘下団体であるところ,愛知朝鮮高校においては,生徒全員が朝青に加盟し、朝青の各種活動に参加している
  6. 公安調査庁の平成22年1月の「内外情勢の回顧と展望」では「朝鮮総聯は,朝鮮人学校での民族教育を『愛族愛国運動』の生命線と位置付けており,学年に応じた授業や課外活動を通して,北朝鮮・朝鮮総聯に貢献し得る人材の育成に取り組んでいる。」「朝鮮総聯は・・・教職員や初級部4年生以上の生徒をそれぞれ朝鮮総聯の傘下団体である在日朝鮮人教職員同盟(教職同)や在日本朝鮮青年同盟(朝青)に所属させ,折に触れ金総書記の『偉大性』を紹介する課外活動を行うなどの思想教育を行っている。」と記載されている。
  7. 東京都における調査時において,朝青のホームページに掲載されていた「朝青規約」には,朝青の目的,義務,組織について,以下のとおり規定されていた
    1条 朝青は,朝鮮民主主義人民共和国政府の政策を高く奉じ,在日本朝鮮人総聯合会の綱領を固守し,総聯の諸般の決定執行において先頭に立つ。朝青は,自己の全ての事業を総聯の指導の下に進める。
    5条 朝青員の義務は次のとおりである。
     ① 朝青員は,共和国政府の路線と政策,それを具現した総聯の決定を深く学習し,それを先頭に立って擁護貫徹し,広く解説宣伝しなければならない。
     ③ 朝青員は,祖国を熱烈に愛し,主体社会主義祖国を内外反動らの策動から堅実に擁護するために献身しなければならない。
     ⑭ 朝青員は,内外の敵の策動から総聯組織を堅固に守らなければならない。
    38条 朝鮮高級学校(中略)内には,朝鮮中央委員会の批准を受けて,朝青朝高委員会を組織する。朝青朝高委員会は,学内の朝青事業に責任を負い,該当地方県本部団体に直属する。

これらの疑念に対して、原告側が反論しています。

原告側の反論

事実関係そのものについての反論とそれについての判断だけをピックアップします。

  1. 「朝鮮学校の管理運営は,朝鮮総聯の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている」との朝鮮総聯のホームページの記載は誤っていたことから,その後に訂正されている
    ⇒訂正は事実だが疑念払拭できず
  2. 教育会は,日本の学校でいうとPTAのようなものであり,寄付金の声掛けなど学校に対する支援を行っているにすぎず,愛知朝鮮学園の運営は理事会により行われている
    ⇒PTAが何億円にものぼる学校運営費を金融機関から借り入れるとは考え難いし、なぜ朝鮮総聯中央責任副議長が出席して「指導」を行うのかも不可解
  3. 教科書は,朝鮮学校の教員らの意見も反映して改訂を繰り返している
    ⇒教員によって自主編纂していると認めることは困難
  4. 朝青は,地域の在日同胞青年たちのコミュニケーションを図ったり,様々な催しをしたりする団体であるところ,朝鮮高校内の朝青は生徒会のような活動をしており,高校の朝青活動と高校外の朝青活動は相互に関係がない上,朝青が朝鮮総聯から指示を受けることはない
    ⇒朝青の機関紙において、朝青の課業の筆頭項目が「青年同盟を金日成-金正日主義化」することとされていること(「金日成-金正日主義化」とは,金日成主席と金正日総書記の思想を指針として運動を推進することを意味する。)からして,採用し難い。
  5. 教職同についても,朝鮮総聯からその活動等について指示を受けることはない
    ⇒朝鮮新報や公安調査庁の調査結果から証言は信用できない

結局、これらの反論はすべて、信用できないか、事実があったとしても疑念が払拭できないとしています。

広島地裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

広島地裁の判決文でも、東京地裁が引用した広島地方裁判所平成19年4月27日判決、その控訴審である広島高等裁判所平成20年12月26日判決で認定した事実を引用しています。

  1. 原告法人(朝鮮学校)は,朝鮮総聯本部の強力な指導の下にあること
  2. 原告法人が設立した組織である委員会があるが,同委員会の事務局長は,朝鮮総聯G県本部からの要請により,同委員会が管理していた口座から,朝鮮総聯G県本部への融通金として,あるいは,融通金に関連して合計5000万円を出金した

上記各判決書の記載からは,朝鮮総聯の強力な指導の下にある者の中には,原告法人の理事長が含まれ,それら指導の下にある者は,朝鮮総聯の指導によって朝鮮総聯のために原告法人の名義や資産を流用した過去があり,そのような事態が今後起こり得ると考えることに理由がないとは言い難い。

さらに朝鮮総聯のホームページの記載を取り上げます。

  1. 朝鮮総聯の平成23年11月9日頃のホームページには,「朝鮮総連の協力のもとに,教育会が責任をもって進めている。教育会は,中央,都道府県,学校単位で,専任,学父兄を中心に組織されている。教育会は同胞学父兄の愛国心と熱意を呼び起こし,学校運営に必要な財政をまかない,学校の施設や設備,環境をととのえている」との記載がある
  2. 平成25年5月2日付のホームページには,「地方本部は,中央本部の決定と方針にしたがって管轄地域の諸般の活動を企画,組織,推進し,管下の階層別団体,事業体,学校を指導する。」との記載があったことが認められる。

そうして、以下のように評価しています。

「平成20年12月26日以降,本件不指定処分がなされた平成25年2月20日までの間、朝鮮総聯において,朝鮮学校に対する強力な指導を変更したり,見直しをしたりしたなどの報道は見当たらず,一方,原告法人理事長の陳述書には,朝鮮総聯による不当な支配はなく,朝鮮総聯との協力関係は続くとの記載があるにとどまるため,朝鮮総聯の強力な指導に何らの変化もなく,再び指示がでるのではないかと考えたとしても理由がないとも言い難い。」

これに対する原告法人(朝鮮学校)の反論がありますが、採用できない、或いは判断する必要がないとされました。

大阪高裁が認定した朝鮮学校と朝鮮総聯・北朝鮮との関係

こちらについては確認次第UP予定です。

 

以上

沖縄県知事選での玉城デニー側の違法行為疑惑まとめ

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出典:産経新聞https://www.sankei.com/politics/news/180902/plt1809020015-n1.html(春名中撮影)

玉城デニー陣営或いは応援者の違法行為と違法疑惑をまとめます。

告示日前に選挙運動用ポスターの掲示?

これは誰が貼ったものか分からないので、公職選挙法違反とは断定できませんが、このような事実はあったということです。

玉城デニー氏を応援する者が行ったと言う推定は働くでしょう。

公務員たる市議が特定候補者を応援するTシャツを着用して公共空間に

※この部分は違法の内容を誤って記載していたので修正しています。
一般職の公務員は特定候補を応援する如何なる態様の行為も禁止されています。

ただ、特別職の公務員は一般職とは異なります。市議は特別職です。

しかし、特別職であっても、規制されている選挙運動等があります。

公職選挙法

第百四十三条 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号、第四号の二及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
一 選挙事務所を表示するために、その場所において使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
二 第百四十一条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶に取り付けて使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
三 公職の候補者が使用するたすき、胸章及び腕章の類
四 演説会場においてその演説会の開催中使用するポスター、立札、ちようちん及び看板の類
四の二 屋内の演説会場内においてその演説会の開催中掲示する映写等の類
四の三 個人演説会告知用ポスター(衆議院小選挙区選出議員、参議院選挙区選出議員又は都道府県知事の選挙の場合に限る。)
五 前各号に掲げるものを除くほか、選挙運動のために使用するポスター(参議院比例代表選出議員の選挙にあつては、公職の候補者たる参議院名簿登載者が使用するものに限る。)

中略

16 公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下この項において「公職の候補者等」という。)の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示する文書図画及び第百九十九条の五第一項に規定する後援団体(以下この項において「後援団体」という。)の政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する文書図画で、次に掲げるもの以外のものを掲示する行為は、第一項の禁止行為に該当するものとみなす
一 立札及び看板の類で、公職の候補者等一人につき又は同一の公職の候補者等に係る後援団体のすべてを通じて政令で定める総数の範囲内で、かつ、当該公職の候補者等又は当該後援団体が政治活動のために使用する事務所ごとにその場所において通じて二を限り、掲示されるもの
二 ポスターで、当該ポスターを掲示するためのベニヤ板、プラスチック板その他これらに類するものを用いて掲示されるもの以外のもの(公職の候補者等若しくは後援団体の政治活動のために使用する事務所若しくは連絡所を表示し、又は後援団体の構成員であることを表示するために掲示されるもの及び第十九項各号の区分による当該選挙ごとの一定期間内に当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)内に掲示されるものを除く。)
三 政治活動のためにする演説会、講演会、研修会その他これらに類する集会(以下この号において「演説会等」という。)の会場において当該演説会等の開催中使用されるもの
四 第十四章の三の規定により使用することができるもの

※文書図画について
公職選挙法における文書図画とは、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示をいい、その記載が象形による場合を図画といい、文字又はこれに代わるべき符号による場合を文書というものとされています。

よって、特定選挙における候補者名の入ったTシャツを着用して公共空間に出る行為は「掲示」にあたるとして禁止対象となります。

なお、143条に当たらないと解する場合でも、さらに禁止を免れる行為が制限されています。

文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
第百四十六条 何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。
2 前項の規定の適用については、選挙運動の期間中、公職の候補者の氏名、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者の推薦届出者その他選挙運動に従事する者若しくは公職の候補者と同一戸籍内に在る者の氏名を表示した年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これに類似する挨拶状を当該公職の候補者の選挙区(選挙区がないときはその区域)内に頒布し又は掲示する行為は、第百四十二条又は第百四十三条の禁止を免れる行為とみなす。

したがって、いずれにしても、候補者名の入ったTシャツを着用して公共空間に出る行為は規制対象となります。

 

証紙の貼付が無い選挙運動用ビラ

選挙運動用ビラに関するQ&Aでは【選挙運動用ビラの表面には必ず頒布責任者の氏名・住所、印刷者の氏名(法人名)・住所(所在地)を記載し、かつ選挙管理委員会が交付する証紙の貼付が必要です】とあります。

よって、このポスターは違法です。

公立学校の教員への候補者名入りビラ配布行為

上記記事でまとめていますが、ある公立学校の職員会議において、玉城デニー後援会からのものと書かれているビラが配布されました。

内容は、玉城デニーに関するビラを配布する人員を募集するものです。 

もちろんこのような行為も「候補者の名を記載した文書」なので規制対象です。

小泉進次郎による佐喜眞淳候補の応援演説を妨害

これは小泉進次郎の機転によって、笑いに変りました。

該当部分は動画の1分30秒以降です。

未成年者を選挙運動に利用

 アウトです。

3台以上の街宣車を同時に走らせる?

選挙カーとは、演説等のために上に人が登れる構造のものです。

街宣車(選挙カー)については公職選挙法141条以下に規定があり、県知事選挙の場合は公職の候補者一人につき1台とされています。

選挙カーの使用方法について過去に選挙管理委員会に確認した結果は以下です。

  1. 公選法上、候補者個人が使用できる街宣車は1台のみの使用となっている
  2. しかし、団体として申請して許可を得れば、確認団体の車両として追加で1台の使用が可能である
  3. 確認団体の車両として事前にナンバーの届出をするのではなく、使用車両に標札を掲示して使用すれば良いこととなっている
  4. よって、車両を乗り換えて標札を掲示して使用することは公選法上問題はない

確認団体とは、所定の要件を充たすことによって選挙運動期間中に特定の政治活動を行うことを認められた公職選法上の政党その他の政治団体です。

また、「拡声機」についても自動車毎に割り当てられたものが使用可能です。
(会場において別個用意したものを利用する場合はOK)

つまり、同時に3台以上の拡声機をつけた選挙カーを候補者(とその応援団体)が走らせていた場合には公選法違反となるということです。

市の担当課を名乗ってデニー陣営のビラを配布

これについては現時点では「何者かが行った」ことしか判明していません。

当然、公務員による特定候補の当選を目的とした行為なので違法です。

違法ではないがフェイク情報であるもの

魚拓:http://archive.is/thiD9

参議院議員の伊波洋一は新都心公園で行われた集会で「8000人が参加」と書いています。

しかし、新都心公園の広さは7.56haですが、地図上で7.74haの末吉公園と比べると分かるように、施設がある区域はせいぜい3haくらいです。
沖縄県公園管理課魚拓はこちら

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http://www.city.naha.okinawa.jp/cms/kakuka/kouen/kouenhaichizu(H23-3).pdf

そのうち、集会が行われたのがどこかは不明ですが、多目的広場のAB両面や円形部分の面積はせいぜい0.5ha程度でしょう。新都心公園の野外ステージは0.254haで1300人収容とありますから(これが多目的広場や円形部分を指すのかは不明)、2500人よりも多くなることはないはずです。

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したがって、「8000人」というのは明確にフェイクです。

まとめ:これだけではない玉城デニー側の違法行為

ざっと取り上げたものだけでも、これだけの違法行為や違法疑惑、フェイクがありました。沖縄の現地で観察していれば、もっと沢山の違法行為を目にするのだろうと思います。

その他、玉城デニー氏に直接関係しないものの、彼の庇護者である小沢一郎による土地取得が看過できない背景があるとして問題視されています。

玉城氏本人の大麻吸引は否定されていますが、政治資金収支報告書の記載漏れは修正申告をしたものの、刑事告発されています。

「公職選挙法特区」などと呼ばれないよう、沖縄の選挙も正常化して欲しいものです。

以上

沖縄県知事選:玉城デニー候補が沖縄を「一国二制度」にすると発言:雨傘革命と香港の末路

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沖縄県知事選に出馬している玉城デニー候補が沖縄を「一国二制度」にすると発言したことが物議を醸しています。

「一国二制度」という言葉の成り立ちと、この制度が敷かれた香港の末路について整理しました。

玉城デニー氏の国会での発言

196回衆議院内閣委員会17号平成30年05月17日

○玉城委員 最後に総理に要望を申しつけたいと思います。
 沖縄を一国二制度にして関税をゼロにし、消費税をゼロにする、そのぐらい大胆な、これからの沖縄の将来を見越した、そういう提案もぜひ行っていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わります。
 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

動画

いっそ沖縄に一国二制度というツイート 

同内容のツイートもしています。

魚拓:http://archive.is/Hkhnv

このツイートに対してチャイナの影響を心配するリプライがつきましたが、それに対して反論しています。

魚拓:http://archive.is/bSbLY

玉城氏が一般人のリプライに対してリプライをつけるというのは非常に珍しいことです。

ところで、玉城氏は「一国二制度は比喩的表現で用いた」趣旨の発言をしていますが、そういう気持ちで内閣総理大臣に「要望を申しつけ」たんでしょうか?

言葉を軽々しく使っていないでしょうか?

一国二制度は支那の言葉

一国二制度という言葉は支那(中華人民共和国)がマカオと香港の返還と台湾の統一を目指して使用したものです。

また、有本香氏によれば、以下のような背景を持つ言葉でもあると言うことです。

【有本香の以毒制毒】沖縄知事選に衝撃… 玉城氏発した「一国二制度」という言葉の恐ろしさ

この言葉を沖縄に最初に使ったのは「誰か」という点だ。答えは次の文章にある。

「『自立・独立』『一国二制度』『東アジア』『歴史』『自然』の5つのキーワードが、沖縄の真の自立と発展を実現するための道しるべになると考えている。つまり、沖縄において『自立・独立』型経済を作り上げるためには、『一国二制度』を取り入れ、『東アジア』の拠点の一つとなるように…」

 これは、今はなき民主党という政党が2005年8月に出した「民主党沖縄ビジョン【改訂】」の中の一文だ。玉城氏はここから引いたと考えられる。

言葉の持つ背景だけでも、その「嫌な予感」を感じざるを得ません。

税制の話なら、わざわざ「一国二制度」という言葉を持ち出す意味がわかりません。

元々、日本では使われてこなかった言葉ですし、支那の言葉が有名なのは自明なのに意味内容が異なる言葉として使っているなら著しく不注意ではないでしょうか?

実際の一国二制度の末路:香港の「雨傘革命」

「雨傘革命」で検索すると分かりますが、2014年に大学生がデモをしたことを思い出す人も多いかと思います。このデモはまさに「一国二制度」に伴う不合理に不満を持った者が起こしたものです。

簡単な把握は上記記事で良いですが、一国二制度の問題はハフィントンポストの記事がまとまっています。

「雨傘運動」で何が変わったか:「香港第一才子」インタビュー

香港は香港基本法に基づき、1997年以来、1人1票の民主選挙の導入に向けて準備を進め、2017年に実現することになっていました。
ー中略ー

 香港には1200人からなる選挙委員会が現在もあり、法律やエンジニア、医療などの業界代表が入っています。中国が公布した香港の選挙方法は、候補者になるにはこの1200人の半分の支持が必要だとしました。

しかし、香港の各業界の代表たちはすでに中国によってコントロールされています。たとえば漁業や農業の団体からも何人かの代表を出していますが、彼らは中国の言いなりです。実際にいま香港で農漁業はないに等しいほど小さな産業なのですが、選挙委員会には60人から70人の委員が送り込まれています。選挙委員会の半数以上はなんでも中国の言うことを聞く親中国の人たちで、中国が選挙委員会をコントロールできるようになっています。

 ですから、中国に反対する人、不満を言う人は、行政長官の候補者になれない仕組みなのです。民主派が候補を送り込みたくても「愛港、愛国(香港を愛し、中国を愛する)」の人物ではないから認められない、と言われます。

一国二制度によって、香港住民のイニシアティブが奪われているのだということがわかります。

2014年6月10日に公表された中国国務院新聞弁公室の白書では、香港特別行政区における一国二制度について「香港固有のものではなく、全て中央政府から与えられたものである」と明文で定義されました。

つまり、「一国二制度」とはあくまで支那共産党による香港支配のために設けられた制度であるということです。

結局、雨傘革命という抗議のデモやハンガーストライキは、警察によって強制排除されて終了しました。

香港「普通選挙」白紙に 17年長官選、議会が政府案否決 :日本経済新聞

2015年には、普通選挙が白紙になりました。少なくとも2020年までは、普通選挙は行われないことになりました。

玉城デニーの「一国二制度」は沖縄県知事にふさわしいか

民主党や玉城氏は本来の「一国二制度」の意味を知っていたのでしょうか?これでは沖縄の自立どころか、中央政府によって主導権を奪われることを容認するかのようです。

もちろん、玉城氏のツイートからも分かるように、そのような意図で「一国二制度」という語を使ってはいないということが分かります。しかし、元々の意味と異なる意味で用いるというのは甚だ誤解を生じさせるものであると思います。

そして、本来の意味と香港の現状も把握せずに「ノリ」で安倍総理に対して国会の場で「一国二制度」という言葉を使っていたということになり、公的な立場にある人間としてどうなのかと思います。

「ノリ」がいいのは元DJの気質だからでしょうか。

「一国二制度」という語を発信したとき、支那共産党はどのように受け止めるでしょうか?

沖縄の自立を訴えるのであれば、一国の首長としての言葉の遣い方、振る舞いをしなければならないでしょう。当然にして外国に対する発信も、誤解を与えないようにしなければなりません。

以上