事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

百田尚樹新刊「日本国紀」がおもしろそう:作者からの願い

11月15日発売予定だった百田尚樹氏の新著「日本国紀 幻冬舎」

発売一カ月前にしてアマゾン総合で1位という偉業を成し遂げました。

編集者である有本香氏によれば異例のことだそうです。

私も既に予約購入しましたが、どんな内容なのかが気になります。

編著者の発言から垣間見える日本国紀(にほんこくき)の断片的な情報をまとめ、作者からの願いも紹介します。

読書後に気付いた本書の「攻撃力」については以下

百田尚樹新刊「日本国紀」は11月12日に発売前倒し

発売前倒しというのも驚きですが、未発売の書籍が3日以上総合1位というのも凄まじいものがあります。

実は13日に早まったとする百田氏のツイートもありますが、それよりもさらに1日早まったということですね。

「新聞やテレビでの告知をしていない」

これがどれだけすごいのか、正直ピンときませんが、業界内では「偉業」のようです。

日本国紀の内容とは

もちろん発売前なので中身は読んでません。

しかし、百田氏や有本氏がツイートやDHC虎ノ門ユースで発言していることから、内容の一端はつかめると思います。

過去の発信を見ると「全500頁」「図表や挿絵、写真等は一切なし」ということで、いわゆる「かたい」本です。

なお、「日本国紀」にタイトルが決定する前は「日本史」という文言で執筆状況を発信していました。

「なぜ日本の歴史の本にこのことが書いていないのか?」という内容がたくさんあるようです。ユダヤ難民5000人を救った陸軍将校の樋口季一郎についても触れられているのでしょうか?

犬のお伊勢参り

DHC虎ノ門ニュース10月16日の放送では「犬のお伊勢参り」が紹介されていました。

日本国でしかありえない風習があったというお話です。

日本は江戸時代に参勤交代の影響もあって既に街道整備が行われており、女性が京都から江戸まで一人旅が出来ていた、ということが前提としてあります。

そのような中「一生に一度はお伊勢参りする」というのが当時の江戸庶民の悲願でした。(イスラム教徒のメッカ巡礼みたいな感じですかね?)

しかし、老人や足を悪くしてしまって動けない人も居ました。

そのような人が、自分の飼い犬に路銀と札をつけてお伊勢参りさせることがあったというのです。これが犬のお伊勢参りです。

道行く人が犬を見つけると「偉いね~この犬は、私のお金も入れとくね」などと言って、どんどんお金が貯まるという、わらしべ長者もびっくりな展開がリアルにあったとのこと。

しかも、そういう人が多いので犬が歩けなくなるくらにお金を渡されるということもあったようで、「軽い銀に変えとくね」と両替する人が出現したこともあるみたいです。

現代でも無人の野菜販売所に金銭が無造作に置かれているのを目にする事がありますが、こういう歴史があったのですから納得です。

そして、犬が伊勢参りを果たせば誰かが犬を連れて帰ってくるというのです(親切ってレベルじゃない)

なお、豚の伊勢参りもあったとのこと(犬もそうだけど、どうやって目的地に向かってるんでしょ?)

西洋ではキリスト教の価値観に基づいて風習が醸成されているので、動物は人間と異なる生き物であるとして峻別しています。

日本人は家畜ですら家族同然に扱う価値観を持っているということが分かるエピソードですね。

こういったエピソードは枚挙にいとまがないようで、記録がいくらでも見つかるそうです。現に「犬の伊勢参り」でいくつもの書籍がヒットします。 

李舜臣の活躍と亀甲船の存在は嘘?

りしゅんしん」で入力すれば一発変換、スマホでも予測変換で出てくる李舜臣

日本の旭日旗の掲揚を認めなかった韓国の観艦式において掲げられた李舜臣の旗。

李舜臣に関して、今の日本の教科書には李舜臣の銅像や肖像画などが書かれ、「露梁海戦で日本軍を全滅させた」「亀甲船と呼ばれる看板を鉄で覆った船で持って日本軍を撃退した「何度も日本軍を打ち破った。」と書かれています。

しかし

これらは全部嘘である。李舜臣はまったく活躍していない

亀甲船の歴史的史料は一切存在しない

と、百田氏は言います。文禄の役・慶長の役について日本国紀でも李舜臣について記述があるようです。

李舜臣は文禄の役の際に輸送船団(主要戦力ではない船)を襲って撃退しましたが、その後、日本軍が護衛船をつけてからは一切勝っていないとのこと。

秀吉死去後の撤退戦は詳細な史料は残っていませんが、日本軍と明と李氏朝鮮の連合軍の死亡者については記録が残っており、明と李氏朝鮮の主だった武将(司令官クラス)はかなりの数が死んでいる(李舜臣含む)のに対して、日本軍はほとんど死んでいないということです。

亀甲船については造船技術的にもあり得ないとのこと。

これを裏付けるように支那の視点の歴史史料があるそうで、 「明史」(清の時代に書かれた歴史書)には以下の記述があるとしています

豊臣秀吉による朝鮮出兵が開始されて以来7年、明は10万の将兵を喪失し、100万の兵糧(武器と食糧)を浪費するも、明と朝鮮に勝算は無く、ただ秀吉が死去するなり乱禍は終息した

清朝の時代だからこそ第三者の視点で冷静に分析されているのだろうと思います。

李舜臣関係は入試でも高い頻度で出題されているようですので、これが正しい歴史だということなら、かなり異常な状況であるということになります。 

非難ありきの「検閲者」出現の可能性

おそらく、日本国紀発売後は『この内容は間違っている!』『隣国への配慮が無い!』『戦禍で苦しんだ人を無視している!』などといったような非難ありきの論評が横行するのではないかと思います。

歴史学からの指摘はともかくとして、著書の内容を切り取って非難する輩が出てくる可能性は高いと思われるので、購入して一読しておけば惑わされずに済みそうです。

私も「切り取り」の類を発見したら検証しようと思います。

まとめ:最終章は最後に読むこと

作者の百田氏は「最終章は最後に読むように」、とお奨めしています。

たしかに私もあとがきを最初に読み、興味のある項目を掻い摘んで読むということをすることがあります。

一般的には、興味がある時代やコラムをざっと見ておくという読書方法も否定されるべきではないでしょう。

ただ、作者がここまで言っているのを事前に知ってしまったからには、最初からじっくりと読み進めていこうと思います。

以上

日本第一党への差別:未来のデモを非難するマイノリティ・リポートばりの神奈川新聞

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10月12日、神奈川新聞が10月14日に予定していた日本第一党のデモ行為に対して「ヘイト」と評価しました。

未来の行為に対して「ヘイト」と評するこの記事は大問題です。

そして、この評価が不当であるということにも触れていきます。

神奈川新聞による未来のデモに対する「ヘイト」の評価

神奈川新聞の記事の文責者は石橋学。

このデモが告知される前にはこんなことを言っています。

魚拓:http://archive.is/f1DBG

日本第一党の街宣でヘイトスピーチが行われなかったことはありません。

とんでもない人権侵害発言ですね。

マイノリティ・リポートばりの未来の行動検閲です。

公人たる井上さくら市議が表現の自由の事前規制擬き

 日本第一党がデモを行うというだけでこの反応。

「〇〇は過去に違法行為をやったから、今回もそうであるに違いない」

このような推論こそが人類が克服しようとする差別そのものであるということに気付かないのでしょうか?

日本第一党と違法行為

たしかに、日本第一党はその前身である「在日特権を許さない市民の会」の時代に、朝鮮学校に対する業務妨害と侮辱が裁判所に認定されています。それは以下の記事で触れています。

しかし、だからと言って、「デモを行う際に毎回そうであるに違いない」と断定することは、過去の行為(前科など)に基づく悪性評価による推論であり、刑事訴訟法の実体認定では許されない推論とされています。

同時に、この推論は実質的に表現の自由や集会の自由の事前規制ですし、特定の団体に対してのみそのような扱いをするのは差別に当たります。

たとえば日本共産党は何回も騒擾事件を起こしていますが、だからといって日本共産党が多数衆合することをそれだけで禁止するべきであるとは絶対になりません。

大量殺人事件を起こしたオウム真理教の後継団体であるアレフや光の環が団体として活動しているからといって、それだけで非難する理由にはなりません。

オウム真理教ですら公安調査庁が「調査」をしているだけなのに、日本第一党がデモ行為をするときには「ヘイトに違いない」として、デモ活動を行う前から禁止を要請するのは意味不明です。

日本第一党の10月14日デモの趣旨

「反移民デー」と題するものであったとしても、デモの前に日本第一党の発信を見ていれば、デモの趣旨は「移民政策」に反対するという政策論に過ぎないということが分かります。

そして、実際に行われたデモ行為も、少なくとも主要な内容は移民政策についての反対意見の表明にとどまります。

平成30年10月14日反移民デー街頭演説 | 日本第一党愛媛県本部公式ブログ

決して「移民は出ていけ」などという主張が主目的ではないということが分かります。

どうしてデモを実際に行う前に「ヘイトである」と決めつけることができるのでしょうか?

もちろん、団体の中には過激な者がおり、移民や外国人に対して「出ていけ」などという発言をした者も居るかもしれません(しかし14日のデモに関してそのような証拠は確認できない)。

しかし、そうであったとしても、それは個人の問題であり、団体としてのデモの主張の趣旨は移民政策についての反対意見に過ぎません。

どうやら、「日本第一党がやった」ことにしたい者が、ヘイトの事実をでっち上げようとしている事もあるようですね。

リアルマイノリティ・リポート

映画マイノリティ・リポートは、予知能力者による殺人予知によって、何らの行為をしていない者を逮捕拘禁するというシステムが存在する架空の物語です。

そのような思想検閲もどきが、現実の日本社会で既に行われているということに寒気がします。

日本第一党は名誉毀損で訴訟提起しないのでしょうか?

それとも、現実にヘイトに当たり得る行為をしているから、強気に出れないのでしょうか?(これは分かりません。少なくとも主張の趣旨は違う、と明確に言っておきます)

いずれにしても、単に「反移民デー」と題する未来の行為に対して、「ヘイト」と評価するのは、論評の域を超えています。

以上

安倍総理「増税表明」報道の2重の印象操作

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消費増税、予定通り来年10月実施…首相表明へ : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

10月14日(日曜日)の読売新聞に「安倍総理が2019年の消費税増税を決定」するかのような内容の記事を書きました。

これは2重の印象操作があるので指摘しておきます。

消費税10%への増税は法律によって既定路線

消費増税をする方向であるということは法律で決まってます。

法律第六十八号(平二四・八・二二)社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律

こちらの法律に消費税を10%に上げる日にちが書かれているのです。

増税を「延期」「凍結」の判断をしたといいますが、単に政治判断をするのではなくて、この法律に書いてある日付を改正することで可能になっているのです。

法律が成立した日付を見れば分かるように、これは民主党政権時代に制定されています。

更に遡ると、麻生政権時代の「所得税法等の一部を改正する法律」の附則に消費増税の足掛かりが書かれ、それに沿っていわゆる「三党合意」が為されたために、この法律が出来上がりました。

安倍総理が「増税を決定」という印象操作

以上より、法律に消費税を増税するということと、増税の日付が書かれているのですから、 増税するという大きなベクトルは法律によって定められているのです。

これは時の政権が誰であっても同様です。

よって、安倍総理が「増税を決定する」という表現は、実態を正確に表現していません。

安倍総理が「決定」をするのは「法律に定められている日にち通りに増税をすること」や「増税の日にちを延期すること」であって、「政治判断・閣議決定によってはじめて増税が決定される」というわけではありません。

安倍総理は未だ増税の最終決定をしていない

もう一つの印象操作について。

安倍総理は法律の予定通り増税することを最終決定したわけではありません。

菅官房長官は、記者からの質問に対して、最終的な決定ではないという旨の発言をしています。

この日の閣議決定は、2019年10月に消費税率を10%に引き上げることで経済悪化をさせないよう軽減税率等の施策の策定を進めるよう指示した、ということにとどまります。

冒頭の読売新聞の報道は飛ばし記事ですね。

「財務省が増税気運を高めるために読売に書かせたのではないか」という推測が至るところでなされています。

増税見送りの可能性がまだあるということはいろんな人が指摘しています。

ただ、当該法律は「増税するベクトル」にあるので、「増税廃止」や「減税」をするためには当該法律を改正・廃止する手続を取らなければなりません。

消費増税の前提:「日本は財政破たんする」は嘘?

ちょうど、近い時期にIMFがレポートをだしていました

これによると、「日本の公的部門のネット資産対GDP比はほぼゼロ」という結論になっています。

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出典:99%の日本人がわかっていない国債の真実109p 高橋洋一 あさ出版

財務省は、日本政府の子会社とも言える日銀のバランスシートを考えずに政府の負債のみを取り上げています。特に「借金が1000兆円~」というのは、資産を見ていません。

しかし、日銀のバランスシートと見えない資産と言われる徴税権を足すと下型の図のようになるという説明がされています。高橋洋一さんによれば、IMFのレポートはこの理解とほぼ同様であるということです。

財務省はさらに、ネット上で国家を家庭に置き換えた虚偽情報を宣伝していました。

財務省の動画では資産の無い家庭を前提にするかのような内容で「借金が膨大」であるという危機感を煽っていました。

消費税の増税は「社会保障のための安定財源の確保」が目的で、財政破たんのおそれがあるから行う必要があるんだ、というロジックだったのですが、このロジックが最初から捏造だったのですから、消費増税の根拠は無いわけです。
(もちろん、「借金をいくらしても大丈夫」とか、なんでも国債を発行すれば良い、ということではありません。バランスシートが崩れたら問題です)

高橋さんの主張を理解するには国債の性質についての理解が不可欠ですので興味があれば著書を見ればいいでしょう。

国債を買うための口座を作るときに個人口座では銀行では嫌な顔をされるとか、証券会社では国債以外の金融資産への投資や投資信託を強行に迫られるとか、実際に国債を買う場面を想定した内容も書かれています。

「増税ハルマゲドン」もまた害悪

田中秀臣さんが指摘している、「マイナーな論点」 だが重要な指摘。

「増税したら日本経済は終わる」などという「増税ハルマゲドン」論者が居るみたいですね。

田中さんは増税ハルマゲドン論者に対しては「事実上、金融政策を否定するに等しい」と言っています。

経済学がわからなくても、8%に増税されたのに日経平均株価は上がり、雇用改善がされているという現状を見れば、「消費増税即悪ドグマ」がどれだけ間違っているのかは経験則で分かるでしょう。

私も消費税10%への増税には反対ですが、「消費増税をしたら全てがダメだ」という短絡的な理解に走らないようにするということも大切だと思います。

特に、増税する大きなベクトルは、法律がある以上動かし難いのですから、そういう前提の下では「消費増税するタイミング」として今が適切か、という議論が建設的なんだろうと思います。

以上

日本獣医師会の消された理事会会議報告PDF

日本獣医師会の理事会会議報告はPDFでネット上で見れます。

理事会 | 主要会議・委員会の開催状況 | 公益社団法人 日本獣医師会

しかし、「石破4条件」が騒がれ出してからはなぜか平成27年度以降の会議報告が消されています。

現在は平成26年度第四回会議報告までを見る事ができます。

しかし、ネット上では会議報告のPDFが落ちているので、ここにまとめます。

日本獣医師会の消された理事会議会報告

平 成 27 年 度 第 1 回 理 事 会

平 成 27 年 度 第 2 回 理 事 会

平 成 27 年 度 第 3 回 理 事 会

平 成 27 年 度 第 4 回 理 事 会

平 成 27 年 度 第 5 回 理 事 会

平 成 27 年 度 第 6 回 理 事 会

平成 27 年度 全国獣医師会事務・事業推進会議

平 成 28 年 度 第 4 回 理 事 会

第 73 回 通常総会

平 成 28 年 度 全国獣医師会会長会議

他は集めきれませんでした。

会長短信「春夏秋冬」 | 日本獣医師会とは | 公益社団法人 日本獣医師会魚拓はこちら

それから、この短信は消されてませんが、今治市が特区認定されたことについて驚きのコメントをしていることがわかります。

追記

平成25 年6 月27日(木)第 70 回通常総会

平成26年6月27日平 成 26 年 度 第 2 回 理 事 会

 

重要な獣医師会の会議報告PDF

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http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06908/a2.pdf

平 成 27 年 度 第 2 回 理 事 会
⇒蔵内会長、北村委員長が政治力を使って各大臣に折衝をし、石破が4条件の存在を証明しない限り認可はできないという認識を持っていること、「石破大臣と折衝をし,一つ大きな壁を作っていただいている状況である」という文言があることについてはこちら。

平成 27 年度 全国獣医師会事務・事業推進会議
⇒『石破担当大臣と相談をした結果,最終的に,「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました』という文言はこちら。

平 成 28 年 度 第 4 回 理 事 会
⇒「練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした」という部分はこちら。

石破4条件についての解説記事

人的関係含め、大枠を理解するには産経の記事が便利です。石破茂本人や各人に取材しているなど裏取りを試みているのは流石マスメディア。

大師100さんの記事。超詳細に経緯が書かれており、他の記事も必見です。

おそらく、このサイトが最も国家戦略特区の獣医学部認可について詳細に解説していると思います。 

上記エントリはまさに国会審議が進んでいる中で挙証責任が文科省にあるということを端的に伝えるために書いた記事です。

こちらは自民党総裁選後に「石破4条件」と呼ぶ必要が無くなったので、その意味するところを噛み砕いて説明することを試みた記事。告示45号と国家戦略特区基本方針との関係、石破四条件の位置づけについても整理しています。安倍内閣4条件と言っても差し支えないということにつき山下貴司法務大臣の見解を添えています。

まとめ:なぜ日本獣医師会は会議報告を消したのか?

4条件は閣議決定されたんですから、安倍内閣4条件と言っていいんですよ。

なぜ会議報告を消すんですかね?

それとも、もっと別のヤバそうな情報が乗っかってるんですかね?

消せば増えますよ。

以上

挙証責任論から振り返る石破4条件:実は岩盤規制突破に貢献(笑)

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石破4条件とは何だったのか?

半世紀にもわたって獣医学部新設がなされなかったのは【平成15年文科省告示45号】が原因です。

この岩盤規制を突破する効果を持つのが「4条件」だったのです。

え?逆じゃないか?

いえいえ、石破茂と文科省と獣医師会は「規制を突破させないための4条件」と思っていたが、実は逆だったんですよ(笑)

先駆者「大師100」様:@Daishi_hundred

石破4条件については相当早い段階で「大師100」様が詳細にまとめていました。
※私が存在を知ったのは2018年10月16日です。今回改めて検索していたら見つかりました。

その後の議論の推移も、このブログを見れば詳細に書いてあります。

私がこれから書く内容は、別の角度から論評するものであると言えるでしょう。

諸悪の根源:文科省告示45号

【大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準】 魚拓:http://archive.is/9DVVo

医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。

この【文科省告示45号】の1条2号(加計学園申請時に適用された最新のものでは1条4号がこれに該当)が獣医学部設置認可申請を阻んできた違法行政です。

これは要するに、獣医学部の設置認可申請は、その中身を審査するまでもなく「門前払いする」という規定です。法的な根拠はおそらくありません。

この告示が作られる前までも、長年に渡って新たな獣医学部の設置認可が拒まれてきており、その方針に沿って行政が動いていたのです。

内閣府は、文科省が一向にこの告示を改めないため、新たな告示と閣議決定で回避するようにしました。

最新の国家戦略特別区域法26条に基づく内閣府・文科省が出した告示では、平成15年文科省告示45号の獣医学部の設置を認めないとする規定は適用しない(平成29年と30年は1校限り、という条件で)としました。

これにより、国家戦略特区に指定されているところの申請者は門前払いはできなくなり、実質的な認可の審査をすることができるようになりました。

この「中身の審査」において基準となるのが石破4条件です。

石破4条件とは

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石破4条件とは獣医師養成系大学・学部の新設に関する以下の条件を指します。

  1. 現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し
  2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり
  3. 既存の大学・学部では対応が困難な場合には
  4. 近年の獣医師の需要の動向も考慮し

この記述は平成27年6月30日 日本再興戦略改訂2015-未来への投資・生産性革命-の中の、本文第二部の121頁「獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討」にあります。

この内容は閣議決定されていますので、内閣の行動を拘束します。

つまり、国家戦略特区における獣医学部の認可判断において、この4条件が適用されるということです。

4条件の(不存在の)挙証責任は文科省にある

しかし、この4条件の挙証責任は申請者である今治市・加計学園ではなく、文科省にあるということは周知の通りです。

なぜなら、4条件が閣議決定されるよりも前に、国家戦略特区の基本方針が閣議決定されており、4条件は基本方針を下敷きにして解釈・適用される性質のものだからです。

平成26年2月25日閣議決定の国家戦略特別区域基本方針(平成29年7月7日改正前のもの)には以下の記述があります。

23頁

(新たな規制の特例措置の実現手続)
新たな規制の特例措置の実現に向けた規制所管府省庁との調整は、諮問会議の実施する調査審議の中で、当該規制所管府省庁の長の出席を求めた上で実施する。その調整に当たり、規制所管府省庁がこれらの規制・制度改革が困難と判断する場合には当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を適切に行うこととする。

「当該規制所管府省庁において正当な理由の説明を行う」

この部分が、4条件=「4条件に示された事情が不存在であること」の挙証責任が文科省に課せられているということの根拠です。

4条件の文脈と申請者側の立証

そもそも、もう一度、4条件が記載された文書を読んでみましょう

文章構造から判断すると、これは規制を強化する目的で設けられたものとは考えられません。

(3)新たに講ずべき具体的施策
 (ⅱ)残された集中取組期間における国家戦略特区の加速的推進
  (b)更なる規制改革事項等の実現
   (医療イノベーションの推進、持続可能な社会保障システムの構築)
    ⑭獣医師養成系大学・学部の新設に関する検討

このような構造の中で、規制改革を進めるという文脈の下に4条件が記述されていました。決して規制を強化する目的ではありません。

4条件はクリアされていたか?

とはいえ、まったく申請者が4条件をクリアすることを示さなくても良いということにはなりません。

この場合、申請者(今治市・加計学園)が一定の事実を示せば、あとは規制省庁(文科省)が規制・制度改革が困難である「正当な理由」を説明する義務が発生することになるということです。

実際に国家戦略特区ワーキンググループ委員の原英史が4条件をクリアしていることを証言しています。具体的な審査をしていない、などということはありません。それを言ったら、岡山理科大学獣医学部以外に認可されたものについても、同じことをいわなければなりません。

193 衆議院 文部科学委員会内閣委員会連合審査会 1号 平成29年07月10日

○原参考人 ー省略ー いわゆる四条件について、私は特区のワーキンググループの委員としてかかわってきた立場での認識を手短に申し上げたいと思いますが、まず一点目、既存の獣医師養成でない構想の具体化について、今治市の提案では、新たな分野での人材の育成、また感染症の発生拡大などの危機管理時に学術支援拠点として機能させるといった具体的な構想が示されていました。
二点目、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要について、今治市の提案に加え、その後、京都府からもライフサイエンス研究や水際対策強化に係る提案があり、より具体的な需要は明確にあったと認識をしておりました。また、製薬業界から、創薬の最先端分野で獣医師のニーズが拡大しているが十分に確保できていないといった声があることも認識をしておりました。
三点目、既存の大学、学部では困難かについてですが、ライフサイエンス研究、水際対策強化などの新たなニーズについては、既存の大学、学部だけでは応え切れておらず、だからこそ新たな需要が生じていると認識をしておりました。
 また、文部科学省に設置された専門家会議が平成二十三年にまとめた意見でありますが、既存の獣医学部の教育内容について、非常に厳しい指摘がなされています。口蹄疫や鳥インフルエンザ、BSEの発生など、獣医療が多様化、高度化する中で、新たな分野への対応が十分とれていない、また、最低限共通的に教育すべき内容を十分に教育できていない大学がある、獣医師として求められる実践的な力を育む教育、これは実習などですが、に課題がある、大学ごとの分析として獣医師養成課程の規模の小さい大学に課題が多いといった指摘がなされていたわけであります。
 その後の改善はもちろんなされていると思いますが、残念ながら、これまでの経緯として、既存の大学、学部が必ずしも最先端の課題に応えていなかった、それどころか、基礎的な要請にさえ応えていなかったこともあったというように認識をしております。
四点目、近年の獣医師の需要の動向も考慮という点であります。産業動物獣医師の確保に困っている地域が現実にあるということは、これまでも認識は共有されていたと思います。それから、新たな分野でのニーズも含めて、需給管理の観点からどうしても新設禁止を維持すべきということであれば、その根拠となる見通しを示していただきたいということを、平成二十六年以降、これは私ども特区のワーキンググループで文部科学省さんに繰り返しお願いをしてきたわけですが、結果として、これは示されませんでした。
 以上から、いわゆる四条件は満たされていると考えておりました。

門前払いはできなくなりましたが、認可の審査を規制省庁が行う必要があります。

しかし、文科省はそれを主体的に行っていません。

そうやって「主務官庁は審査していない」という詭弁でもって、認可申請を無効にする狙いだったのでしょう。

しかし、国家戦略特別区域法の基本方針では、規制省庁に「正当な理由」の説明を求めることで挙証責任を転換していますから、国家戦略特区諮問会議とのやりとりの中で審査がなされたと考えることになります。

基本方針は国家戦略特別区域法という、国民の信託を受けた国会を通して成立した法律に基づいています。

一方、告示45号は、憲法上認められている職業の自由を侵害する規制を文科省が勝手に決めたものであり、法律上の根拠はありません。

したがって、どちらが根拠のある対応であるかは明らかです。

石破茂が4条件成立に大きく寄与したソース

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もちろん、4条件は閣議決定されたものであり、石破茂個人が勝手に決めたものではありません。

しかし、石破4条件と言われているのは、石破茂がその成立に大きな寄与をしたからです。

平成27年度第2回理事会平成27年6月22日

日本獣医師政治連盟の活動報告
(1)北村日本獣医師政治連盟委員長から次のとおり説明がなされた.
ー省略ー
内閣府では,4 月末から 6 月 5 日までの間,成長戦略特区の公募をしていたが,愛媛県今治市に新設を望む岡山の学校法人が文部科学大臣にも説明をし,内閣府に申請したという.藏内会長は麻生財務大臣,下村文部科学大臣へ,担当である石破大臣へは私が折衝を続けている.内閣府では,方針の最終案を公表していないが,藏内会長の強い政治力等により,財務省の担当主計官が文部科学省担当官へ対応のあり方を指摘した.石破大臣は,ライフサイエンスなどは獣医師が新たに対応すべき分野なのか,その需要があるのか,これら基礎データが示されなければ検討できないとしている.しかし,新設希望側は,5~ 10 年間の計画でデータを作り上げることも視野に置きながら,藏内会長は麻生大臣,下村大臣に,私は石破大臣と折衝をし,一つ大きな壁を作っていただいている状況である.

平成27年度全国獣医師会事務・事業推進会議平成27年7月10日(金)

3 日本獣医師政治連盟活動報告

省略

石破担当大臣と相談をした結果,最終的に,「既存の大学・学部で対応が困難な場合」という文言を入れていただきました.

平成27年度第4回理事会平成27年9月10日(木)

なお,昨日,藏内会長とともに石破茂地方創生大臣と 2 時間にわたり意見交換をする機会を得た.その際,大臣から今回の成長戦略における大学,学部の新設の条件については,大変苦慮したが,練りに練って誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした旨お聞きした.

現在、獣医師会の理事会会議録は、なぜか平成26年度のものまでしか現在はUPされていません。

よっぽど後ろ暗いものがあったのでしょうね。

石破茂の主観としては4条件は規制強化のためのもの

石破茂は平成27年9月9日の発言(「練りに練って…の部分」)について否定しています。

しかし、そうであったとしても、①彼が4条件成立に関与したこと、②4条件の存在を立証しなければ獣医学部の新設はできないと理解していたこと、③他に4条件成立を主導した者の指摘は存在しないことは明らかですから、参入を困難にするという意図を持って4条件成立に向けて行為していたのは間違いありません。

190 衆議院 地方創生に関する特別委員会 13号 平成28年04月26日

○石破国務大臣

(前略)今文科省からお答えを申し上げましたように、平成二十七年六月三十日に閣議決定がございます。「日本再興戦略」改訂二〇一五というものでございます。そこは今文科省が申し上げたとおりの内容ということになっておりまして、これをきちんと満たしたかどうかということはやはりきちんと検証されてしかるべきであろうというふうに思っております。
 閣議決定でございますので、この趣旨は極めて重いものでありますから、実際にそれでも必要だということになれば、それはそれを拒むものではございません。この閣議決定の意味をよく理解しながら私どもは今後進めてまいりたいと思っております。

一連の発言からは、石破茂が4条件の存在を立証しなければ獣医学部の新設はできないと理解していたことは明らかです

石破茂らの主観と現実の運用

文科省、獣医師会、石破茂。

この三者は国家戦略特区の基本方針を無視していたために、4条件の(不存在の)挙証責任が文科省にあるということに気付かなかったのでしょう。

石破らの主観としては、4条件はそれらの事情が存在することの挙証責任が申請者側にある、という認識だった。

しかし、現実には4条件に示される事情が不存在であることの挙証責任が規制省庁にあった。

この食い違いが加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部の設置認可にかかわる騒動の原因でした。

このように、石破派である現法務大臣の山下貴司議員も、4条件は「内閣全体で(岩盤規制に)穴を開けた」ものであると明言しています。

これは自民党総裁選の最中のツイートですが、単に石破茂を擁護するなどという目的に出たものではなく、現実の4条件の運用を端的に示したものであると言えます。

まとめ:実は岩盤規制突破に貢献していた4条件

  1. 「石破4条件」そのものが悪い
  2. 「石破4条件」の存在の挙証責任を申請者(今治市)に負わせる理解が悪い

上記のうち、2番が正確な理解です。

そして、石破茂・文科省・獣医師会は、規制強化をしたつもりで、その真逆の効果になってしまっていたことに気付かなかった、という大変お恥ずかしい話だったのです(笑)

振り返ってみると、まさに「挙証責任論」こそがこの問題を解く本質だったと言えます。元検察官や弁護士グループが騒ぎ立てたところで、国家戦略特区の基本方針を意図的に無視しているので全く説得力に欠けます。

文科省告示45号は生きています。

このままでは国家戦略特区指定を受けなければ、平成31年以降は認可申請が受けつけられないことになります。その都度新たな告示を出すのも面倒です。

文科省はいいかげんに平成15年告示45号の問題部分を廃止していただきたいと思います。

以上

加計学園に愛媛県が求める「説明責任」は本来の説明責任とは別種類である

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加計学園は説明責任を果たせ」

このような報道がなされており、マスメディアの読者・視聴者もそう思っている者が居ます。

だがちょっと待ってほしい。

その「説明責任」、意味分かって使っていますか?

国民主権に由来する国家の説明責任

上記で詳しく書いてますが、元々の「説明責任」は国家・政府の側に対する国民の要求に対応する言葉です。

政府の説明責任は、憲法が国民主権の立場であることから導かれる政府の責任であると言われます。

まず、国家は国民に対して情報を公開する「必要」があります。

なぜなら、国民は国家統治のために選挙で国会議員を選びますが、このときに行政が行ってきた諸活動や内閣の政策を判断できる情報が公開されなければ、候補者の誰が国会議員としてふさわしいのかの判断ができないからです。

国民の信を得て職にあたっている国会議員によって構成される「議院」(議員ではない)の国政調査権(憲法62条)も、この国民主権を確保・行使するためにあると言う事ができます。

では、政府が国民に情報を開示する必要があるとしてもその「根拠」はどこから導かれるのか?

現在の通説と政府見解は、国民と政府の関係を信託関係と捉え、国民から主権行使の信託を受けた政府が信託上の義務として説明責任を負うと考えられています。

これはアメリカの政治信託理論を参考にしているとも言われます。

行政法学者の塩野宏氏の見解(第136回国会内閣委員会第7号平成八年五月十六日)が参考になります。

これが一般的な見解であることの傍証として、「説明責任 国民主権」で国会議事録で検索をかけるとそれなりにヒットします。
ちなみに、内閣の国会に対する政治責任を定めた憲法66条3項が説明責任の根拠になるという説もあるようですが、「説明責任 憲法66条」で国会議事録に検索をかけてもヒットは0でした。文言上も、説明責任を導くにはほど遠いと思います。間違いと言い切るのはやや危険だと思いますが、おそらくあまり受け入れられていない説か、議論の途中で淘汰された見解かと思われます。

情報公開法に規定される説明責任の根拠

こうした議論を踏まえて制定されたのが情報公開法1条の目的規定です。

第一条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

このように「政府の有するその諸活動」が対象となっています。

注意すべきは、国会での追及の際に必ずしも情報公開法が適用されるのではないということ。議院の国政調査権に基づく証人喚問等の発動は議決で可能というだけであり、それ以外に法的な要件があるというものではありません。
※資料提出要求等では簡便な手続きで行われている慣習がある点につき、参議院委員会先例録281を参照。

そして、「国民の的確な理解と批判の下」とありますが、これは目的でもあり、「前提」でもあると考えるべきでしょう。前提とはすなわち、いいかげんな根拠や必要性の説明だけで、何でもかんでも情報を公開しなければならないということにはならないということです。

情報公開請求は国民主権の根幹をなす選挙・投票に資するのであるから、それ自体「国民の政治参加」の一環であると考えられます。情報公開請求の根拠を導いたのが政治信託理論であったとすれば、一度は信託によって国民主権の行使を政府に投げたものを一部自己の側に引き戻すのが情報公開請求と捉えることが可能です。そのような「国民の政治参加」である以上、その行為もまた(一定程度は)的確でなければならないとするのは法理論上も肯定できると思われます。

地方自治の本旨に由来する地方自治体の説明責任

法体系上、地方自治体は政府・国家とは別個の主体として規定されています。

地方自治体の説明責任についても各自治体の情報公開条例に規定があります。

宮城県情報公開条例

(目的)
第1条 この条例は,地方自治の本旨にのっとり,県民の知る権利を尊重し,行政文書の開示を請求する権利及び県の保有する情報の公開の総合的な推進に関して必要な事項を定めることにより,県政運営の透明性の一層の向上を図り,もって県の有するその諸活動を説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による県政の監視と参加の充実を推進し,及び県政に対する県民の理解と信頼を確保し,公正で開かれた県政の発展に寄与することを目的とする。

地方自治体に説明を求める場合、それは「地方自治の本旨」が根拠となります。

条文の書きぶりも、なんとなく情報公開法と似ているというのが分かると思います。

政府の説明責任の「地方自治体バージョン」と言えるでしょう。

こちらも「県民による県政の監視と参加の充実」とあるように、県民が「監視」「参加」をすることに資するために情報公開条例があるということです。

この「監視」「参加」がいいかげんなものであっていいはずがありません。

なお、宮城県は注釈も公開しています。

岡山理科大学獣医学部を運営する加計学園の「説明責任」

加計学園は政府や国家機関ではありません。

単なる「一私人」(民間法人)です。

したがって、上述で指摘したような意味での説明責任を負うハズがありません。

ただし、「説明責任」と表現することが間違いであるわけではありません。

加計学園が愛媛県との関係で言われている説明責任とは、『加計学園は国家戦略特区申請にあたって愛媛県に協力してもらった関係にある。そのような関係の中で、渡辺常務が愛媛県の担当者に話した内容が誤解を招くものだったので、なぜそういう事を言ったのか動機を明確にしてよ』という素朴な意味での説明責任に過ぎないのです。

基本的には赤の他人にお金の使い方を説明する必要も根拠も無いですが(税の申告等の場合には別の話)、配偶者に対しては使途を説明する責任はある、といったような日常的な感覚で言うところの説明責任とほぼ一緒と言えるでしょう。

税金が投入されているから直ちに説明責任があるのか?

「獣医学部の設置認可は省庁、つまり国民の税金によって行われるし、国家戦略特区認定は国民の代表たる内閣総理大臣が決定する事項だから、国民主権の話だ!」

⇒『加計学園は省庁でもなければ内閣総理大臣でもありません、以上』

「岡山理科大学獣医学部には愛媛県の協力があって設立した支那、今治市から補助金が出ている、つまり住民の税金が投入されているから、地方自治の話だ!」

⇒「加計学園は愛媛県でもなければ今治市でもありません、以上」

これで終わる話です。

『「省庁や内閣総理大臣、自治体が関係して受益を受けたある主体」という属性を持つ者であれば私人であっても国民主権や地方自治に基づく説明責任があるはずだ』

こんなことを言うと、おそらくおよそ世の中の私人全員が記者会見を開いて国民全体との関係で説明する責任があるということになりますね。

たとえば、「子ども手当」によって得たお金の使い道や、その金額の子ども手当を得る根拠となっている情報を赤の他人が「地方自治の話だから俺にも説明しろ!」などと言うのはおかしな話です。

これは自治体からその家庭に対して「あなたが申告した子ども手当の基本情報に疑義があるので説明してください」と言うのは正当です。これは地方自治の話でもなんでもありません。素朴な意味での説明責任です。

同じように、愛媛県から加計学園に対して要求されている「説明責任」は、そのような二者間の関係で成立している説明責任に過ぎません。

それを国会議員や全国民が殊更に取り上げて問題視することはまったく理解不能です。

そして、先にも書きましたが、いいかげんな根拠で説明を求めるというのは、日常的な感覚からしてもおかしいということは常識でしょう。

加計学園の説明責任は「安倍総理との面会」ではない

少し前の報道状況では「首相案件」という言葉がクローズアップされていましたが、「なぜ愛媛県の担当者が首相案件という言葉を使ったメモが残っているのか?」という疑問が6月の加計学園の記者会見で明らかになりました。

それは「渡辺常務が安倍総理の名前を出したから」になります。

だからこそ加計学園に説明責任が生じています。

加計学園が愛媛県に果たすべき説明責任とは何か?

これをしっかりと枠づけているメディアはあったでしょうか?

【加計学園の渡辺常務が、安倍総理の名前を持ち出して総理の意向が背後にあると匂わせることで国家戦略特区認可申請、獣医学部設置認可申請を通すことを有利に進めようとしたことの動機・理由は何なのか?】

これが加計学園が愛媛県に負っている説明責任です。

決して「安倍総理との面会について」ではありません。

そもそも面会の事実があったとしても認可過程の違法事実ではありません。

文科省の違法行政が「総理の意向」の原因か

大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取扱い等に係る基準】 
魚拓:http://archive.is/9DVVo

この【文科省告示45号1条2号】が獣医学部設置認可申請を阻んできた違法行政です。※最新のものでは1条4号がこれに該当。


医師、歯科医師、獣医師、教員及び船舶職員の養成に係る大学等の設置又は収容定員増でないこと。

これは要するに、獣医学部の設置認可申請は、その中身を審査するまでもなく門前払いするという規定です。

長年に渡って設置認可が拒まれてきており、更に平成15年にこの告示が作られ、告示に沿って行政が動いていたため、愛媛県側も腰が重かったという現実があります。個人的な推測になりますが、渡辺常務が安倍総理の意向を匂わせた背景には、「そうまでしないと行政が動かない」現実があったのだろうと思われます。※これは告示45号による認可行政という事実に基づく推測です。

文科省告示45号と国家戦略特区の挙証責任

国家戦略特区があることによって、申請を受け付けることが可能になり、さらに認可の可否判断にあたっては挙証責任が省庁側に転換されました。

「挙証責任が省庁側に転換された」 というとなんだか分かりませんが

要するに省庁の側が合理的な理由を示さなければ、申請を認可することになるのがデフォルトの対応になるということです。

もちろん、申請者側も要件を満たすことを説明しますが、それは挙証責任が最初から申請者に課されているという意味ではありません。
参考

まとめ:「説明責任」を混同して告示45号を誤魔化すな

「説明責任」 には国家主権に基づくもの、地方自治に基づくもの、素朴な意味でのものがあることを示しました。

これらを混同させて、さも加計学園に法的な義務があるかのように言及している者はまったく信用できません。

そして、「加計学園問題」といわれているものの元凶は文部科学省告示45号とそれを放置してきた歴代行政にあるのであって、決して「安倍政権」のみの問題ではありません。

石破茂も、「石破4条件」と言われていましたが、まったく「ラスボス」でもなんでもありません。

国会には岩盤規制と既得権益の問題に焦点を当てた質疑を求めたいですね。

以上