事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

AbemaTVのフェイク:「柴山文科相と高校生」の政治話報道に事実誤認

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AbemaTVの番組とその内容を記事化したAbemaTIMESに事実誤認があります。

「柴山文科相と高校生」の政治話報道に関して、最も重要なツイートが省かれて論評されているというフェイクと言ってよい状況です。

AbemaTV 柴山大臣、高校生の政治話に「適切ですか?」で再び批判

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柴山大臣、高校生の政治話に「適切ですか?」で再び批判 西田亮介氏「権威者の過剰な反応好ましくない」

 その柴山大臣が再び批判を受ける事態になっている。きっかけは高校教員を名乗る人と高校生による、民間試験制度の問題点についてのTwitter上のコメントだ。

 「今回の民間試験制度の問題点を生徒、保護者の前でクソミソに言って、文科省そして現政権に嫌悪感を持つように洗脳していきます!」(高校教員、現在アカウントは削除)
 「私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたりしていたのできちんと自分で考えて投票してくれると信じています。もちろん今の政権の問題はたくさん話しました。笑」(高校生)

 柴山大臣はこの両方をリツイートし、「そのような行為は適切でしょうか?」「こうした行為は適切でしょうか?」とコメント。

この記事と番組は重要な事実を省いています。

たしかに柴山大臣がリツイートした高校教員を名乗る者のツイートは上記のものです。

しかし、柴山大臣がリツイートした高校生のツイートは、高校教員を名乗る人物への返信であり、しかもそれは上記画像のツイート内容ではありません。

「次の選挙で安倍政権に投票しないよう周囲の高校生に宣伝」

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現在は高校教員を自称する者はアカウントが削除されていますが、魚拓もあります。

魚拓: https://web.archive.org/web/20190909045301/https://twitter.com/NI84USx7ecHjMU7/status/1170113361075265537

柴山大臣のツイートの意味を理解するのに必須なツイートが省かれているのです。

自称高校教員のツイートに呼応した未来の場面を問題視している

柴山大臣の非公式RTのうち、高校生の昼食の時間での政治談議を問題視しているかのような印象になっていますが、そういう趣旨ではありません。

これは@に自称高校教員と高校生の両方が含まれて居ます。非公式RTなので自動ではなく意図的に高校教員の@も含めているのが分かります。

高校教員のツイートに呼応した形で未来の時点でそのような行為を行うことについて、客観的な視点から見たらどうなのか?と問いかけをしているのです。

それは現時点での選挙運動の判断をしているのではなく、「次の選挙」という未来の場面での選挙運動について言及しています。

高校生のツイート単独を問題視しているのではなく、高校教員のツイートと併せて文脈において判断しているということは大臣記者会見でも言及していました。

アベマの記事ではこのような文脈が分からなくなってしまっています。

柴山昌彦文部科学大臣記者会見録(令和元年9月10日):文部科学省

なお、基本的に政権側に批判的なツイートが連続した中でのツイートだったということも重要で、柴山大臣のツイートに対する最初のリプライから問題となったツイートまでは以下でまとめています。

「これは政治活動だ」とか「落選運動だから問題ない」などと思う人は以下を参照。

AbemaTV の記事の問題点

柴山大臣、高校生の政治話に「適切ですか?」で再び批判 西田亮介氏「権威者の過剰な反応好ましくない」

柴山大臣の投稿について、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「自身に向けて書き込まれたわけでもない投稿に突如大臣がコメントするという行為はある意味過剰だと思う。大臣という存在は明らかに権威性を帯びているもので、特定の書き込みを自分の主張を述べるために晒していくのは好ましくない」と指摘。

「自身に向けて書き込まれたわけでもない投稿」は事実誤認です。

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柴山大臣のツイートのリプライ欄で高校教員と名乗る者への返信をしていたので、@に大臣も入っていました。

このような場合に柴山大臣を@から外すことも可能なので、通常は大臣にも向けたツイートである(会話自体を見せつける目的で@を外さない者も居る)と受け取るのが常識です。

西田亮介氏は「メディア論」が専門のようですが、こうした事実を知らされずにコメントを求められていたならば被害者でしょう。番組の落ち度ではないでしょうか。

「選挙運動は特定の選挙運動期間中に」はミスリーディング

柴山大臣、高校生の政治話に「適切ですか?」で再び批判 西田亮介氏「権威者の過剰な反応好ましくない」

一方、公職選挙法を元に説明したことについては「適切ではない。選挙運動は、特定の選挙運動期間中に特定の候補者への投票を呼びかけるといった行為のこと。具体的に政治の話をしたり、特定の法律について議論するだけでは選挙運動には当たらない」との見方を示す。

「選挙運動は特定の選挙運動期間中に」というのはミスリーディングです。

選挙期間中ではない選挙運動として事前運動が禁止されてるのであって、選挙期間外であればすべて政治活動になるということはありません。

現実にこのような理解に基づいてデマを拡散する者が発生していました。

実際上、選挙期間外に選挙運動として検挙される例があるかということと、概念上の話は別個のものです。

そして、上述の通り、現時点での「選挙運動」性の判断をしているのではなく、高校教員の呼びかけに呼応した形での「次の選挙」という未来の場面での「選挙運動」性の話をしているので、「選挙運動期間外だから」などという指摘は的外れです。

まとめ:AbemaTV・TIMESは事実誤認に基づく報道

魚拓: https://web.archive.org/web/20190909045301/https://twitter.com/NI84USx7ecHjMU7/status/1170113361075265537

柴山大臣にリツイートされた高校生のツイートは、このツイートに対する返信であったという文脈を考慮せずにこの問題を論じている者は、すべて事実確認を怠り事実誤認に基づく発信をしているということを恥じるべきでしょう。

このツイートは少なくとも昨日の昼までは残っていたので長時間存在していましたから、確認できないというのは言い訳になりません。

私は当該高校生やツイッターユーザーらが大臣のツイートを見て「高校生の政治談議を問題視してる」と思っても仕方がないと思います。それは大臣の発信の仕方の問題で、不親切だと思います。

しかし、メディアがそのような読み方をするのは許されないでしょう。

以上

9月17日:第2回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の開催とアンケート

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第2回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の開催日程が公開されました。

申し込み方法は事前申請制です。前から変更されているので注意。

第2回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の開催について

「第2回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」の開催について - 愛知県

1 日時
2019年9月17日(火曜日)午後1時30分から午後4時まで(開場:午後1時)
2 場所
愛知県庁 本庁舎2階 講堂
3 公開
(1) 会議は、公開で行います。
(2) 本会議の様子は、YouTubeライブで配信します。
 【URL】
https://www.youtube.com/channel/UCm2uaQFoTYIXvED-T5xYTQw

1) 定員
  30名
(2) 申込方法
  別紙1「検証委員会傍聴申込書」に必要事項を記載の上、「5 申込み先」に記載の宛先に件名を「9月17日傍聴申込み」とし、9月12日(木曜日)
 午後5時までに電子メールでお申し込みください。

電話による申し込みはできないようです。

注意書きもありました。

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第1回あいちトリエンナーレのあり方検証委員会の開催について

前回はこっそり開催されており告知ページもなぜか削除されていました。

あいちトリエンナーレのあり方検証委員会のアンケート

【あいちトリエンナーレのあり方検証委員会】アンケート調査を実施します - 愛知県

あいちトリエンナーレ2019の企画の1つ、「表現の不自由展・その後」について、展示の趣旨や作品の選定、展示が中止になった経緯等について、県内・県外を問わず個人の方にご意見いただき、今後の参考といたします。

外部からのアンケートも募るようです。

アンケートの前に、以下のページで大村知事と河村市長の見解が掲載されている文書があるので読むと良いと思います。

あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」について - 愛知県

罵倒語などは決して書かずに、論理立てて主張していけばいいと思います。

以上

小泉進次郎報道の誤報:時事通信・テレ東「入閣は見送られる」NHK他「初入閣へ」

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魚拓:https://web.archive.org/save/https://twitter.com/jijicom/status/1171321957561712640

安倍内閣の閣僚人事の変更で小泉進次郎が初入閣するかが騒がれています。

報道が真逆になっているのが面白いので記録に残します。

時事通信・テレ東「小泉進次郎の初入閣は見送られる」

総務・高市、経済再生・西村氏=衛藤氏は1億総活躍-田中・菅原・武田氏が初入閣へ:時事ドットコム魚拓

一方、焦点の一つだった小泉進次郎衆院議員(38)の初入閣は見送られる。

おや、これはどういったことでしょう?

他は別の報道をしているようです。

NHK、共同、産経、FNN…他のメディアは「初入閣へ」

内閣改造 小泉進次郎氏の入閣固まる 初入閣 | NHKニュース魚拓

11日の内閣改造で、安倍総理大臣は自民党の小泉進次郎衆議院議員を入閣させる意向を固めました。小泉氏は自民党の若手のホープで当選4回での初入閣となります。

今の所、「初入閣」の報道が優勢のようです。

まだ確報を打ってないところもあるようです。

とはいえ、NHKが確報を打ってるのは大きいですね。

まとめ:小泉進次郎報道の誤報はどちらか

進次郎が入閣しようがしまいがどうでもいいですが、これだけ報道が食い違っているのも珍しいのではないでしょうか?

いずれかが誤報を打ってしまったという事になります。

時事通信の冒頭のツイートでは記事へのリンクになっていないのが気になります。

どっちが正しいのでしょ?

追記:時事通信「初入閣が内定」

実に2時間半後に結論を変えてきました。 

こちらの記事も、小泉進次郎の部分の文言を削除しました。

なお、訂正・謝罪はありません。

経産菅原、経済再生に西村氏=総務高市、厚労加藤氏で再入閣-衛藤氏は1億総活躍:時事ドットコム

※テレ東のYoutube動画も消されたようです。

以上

【デマ注意】「公示日前は選挙運動はありえず全て政治活動」というデマがある件

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「選挙の公示日以降でないと選挙運動にはならず、全て政治活動になる」

このようなデマがネット上で観測されました。

信じたら恥をかくので注意しましょう。

「公示日前は選挙運動はありえず全て政治活動」というデマ

魚拓:https://web.archive.org/save/https://twitter.com/IceAgedBeef/status/1171181716934803457

このアカウントが貼っているリンクは四万十市の選挙運動・政治活動Q&Aというページですが、選挙運動については以下のように記述されています。

Q1 選挙運動はいつからできるの?Q1 選挙運動はいつからできるの?A1  選挙運動は、公(告)示日に立候補の届出が受理された時から投票日の前日までに限りすることができます。 この期間中も、選挙運動用自動車などの連呼行為や街頭演説は午前8時から午後8時までとされています。 それ以外の期間の選挙運動は禁止されています。

公示日後に選挙運動が「できる」、「それ以前は禁止されている」、と書いてあるだけで、「公示日前は選挙運動ではない」などとは言っていません。 

「事前運動」は公示日前の「選挙運動」

「事前運動」と「選挙運動」がまったく別々のものであるかのように読み取る人が居るようですが、選挙運動の定義を見てみましょう。公職選挙法の条文には書いてませんが、判例があります。

総務省|現行の選挙運動の規制

【選挙運動とは】
 判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

判例の文言も見てみましょう。

最高裁判決 昭和38年10月22日 昭和38(あ)984

最高裁判決 昭和63年2月23日 昭和60(あ)608

選挙運動とは、特定の選挙の施行が予測せられ或は確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定して居るときは固より、その立候補が予測せられるときにおいても、その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若くは得しめる目的を以つて、直接または間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若くは誘導その他諸般の行為をなすこと

「公示日の前後」で切り分けているのではないというのが分かります。

公職選挙法では「事前運動」の文言がありますが、ここで掲げられている「事前運動」というのは選挙運動の規定が対象になっています。

公職選挙法

事前運動、教育者の地位利用、戸別訪問等の制限違反)
第二百三十九条 次の各号の一に該当する者は、一年以下の禁錮こ又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第百二十九条第百三十七条第百三十七条の二又は第百三十七条の三の規定に違反して選挙運動をした者

以下略

要するに(というか至極当然のことですが)、公示日前に行われる選挙運動を「事前運動」と呼んでいるだけであって、「事前運動であれば選挙運動ではない」などという概念関係にあるわけではないということです。

もちろん、選挙がまったく予想されない時期の活動は政治活動とされる可能性が極めて高いとは言えますが、冒頭のアカウントのような理解は完全に誤りです。

まとめ:共産党の屁理屈か

「立候補しなければ事前運動とみなされない」というのは共産党の屁理屈です。

これと同様に「立候補が受理されて公示後でなければすべて政治活動」というのはどうも、共産党が発信源の可能性、或いは共産党の発信を誤解した可能性があります。これは判例上、「立候補が予測せられるとき」も規制対象とされていることから間違いです。

実際上、該当する例があるかどうかという話と、概念上の話は別の問題です。

こういう屁理屈に振り回されないようにしましょう。

以上

「柴山昌彦文科相が政治活動と選挙運動の違いを理解していない」というデマ

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この件で「柴山昌彦文科相が政治活動と選挙運動の違いを理解していない」

というデマがあるので気を付けましょう。

ツイートの事実経過を見てないからこういうデマに引っかかるんですよ。

柴山昌彦文科相が高校生の政治話に難癖?

この記事で事実経過をまとめていますが完結に文脈を示すと以下のようになってます。

この高校教員と自称する者と高校3年生の会話があった後に以下の非公式RTをしたという経緯があります。

柴山大臣の非公式RTのうち、特に後者が高校生をも名宛人に含んでいるために、高校生の昼食の時間での政治談議を問題視しているかのような印象になっていますが、そういう趣旨ではありません。

この点については先述の記事で述べているのでここでは触れません。

これらのツイートの中で、選挙運動の話になる決定的な部分があります。

政治活動と選挙運動の違いを理解していないというデマ

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「せめて、次の選挙ではこの政策を進めている安倍政権に絶対投票しないように周囲の高校生の皆さんにご宣伝ください」

総務省|現行の選挙運動の規制

【選挙運動とは】
 判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

はい、「次の選挙」「安倍政権に投票しないように」というのは明らかに次回の国政選挙を指しており、次回の衆議院議員選挙という特定の選挙の場面を想定していますから、特定性に欠けることはありません。

現時点での選挙運動の判断をしているのではなく、「次の選挙」という未来の場面での選挙運動について言及しています。

ところで「安倍政権に投票しないように」は「落選運動」の可能性があります。

落選運動」については何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみ
を図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている
(大判昭5.9.23刑集9・678等)とされています。

ただし、裏を返せば、それによって誰かを当選させる意図が見えた場合には選挙運動になるということです。

「落選運動だから選挙運動ではない」とはただちに言えるものではないので、柴山大臣が「選挙運動」について言及したことが間違いだとは言えません。

学校の政治的中立性からは落選運動の呼びかけもどうなのか?

更には学校という場の政治的中立性の観点からも手放しで是認できるとは思えません。

文科省からは以下の通達が出ています。

教職員等の選挙運動の禁止等について:文部科学省

公務員は、全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではなく、その政治的中立性を確保するとともに、行政の公正な運営の確保を図る必要があることは言うまでもありません。

特に、教育公務員(校長、教頭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、常勤及び再任用短時間勤務講師、実習助手、寄宿舎指導員)については、教育の政治的中立性の原則に基づき、学校において特定の政党の指示又は反対のために政治的活動をすることは禁止され、さらに選挙運動等の政治的行為の制限等についても公職選挙法及び教育公務員特例法に特別の定めがなされているところです。

高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知):文部科学省

第3 高等学校等の生徒の政治的活動等

他方で、1)学校は、教育基本法第14条第2項に基づき、政治的中立性を確保することが求められていること、2)高等学校等は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第50条及び第51条並びに学習指導要領に定める目的・目標等を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること、3)高等学校等の校長は、各学校の設置目的を達成するために必要な事項について、必要かつ合理的な範囲内で、在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされていることなどに鑑みると、高等学校等の生徒による政治的活動等は、無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解される。

この通達自体が憲法違反であるという主張をするのもありでしょうが、教員による政治活動のみならず、18歳の高校生を利用して学校内の生徒らに対して自己の政治的主張を浸透させようとする教員の存在を想定すれば、不合理な通達ではないと思います。

したがって、「選挙運動ではない落選運動」であったとしても、教育基本法や学校教育法の理念・趣旨に照らせば、それを学校内で行うよう要請することは慎むべきと考えるべきでしょう。

世の18歳高校生のみなさんも、政治的中立性が求められる公的施設である学校内で選挙運動ではない落選運動を展開することについて是認するべきなのか否かは考えるべきだと思います。

ここは議論が分かれると思います。

まとめ

この話は柴山大臣にツイートされた高校生側からすれば驚いただろうし、私も柴山大臣のツイートはあまりにも不親切であり不用意だと思います。

「弁護士なのに政治活動と選挙運動の区別がついてないぞ」などとツイートの文脈と事実関係を踏まえない言説がありますが、相当程度は柴山大臣の発信方法が原因でしょう。

以上

「柴山文科相が高校生の政治話に疑問」というフェイク:学校・教員の政治的中立性

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柴山昌彦文部科学大臣がツイッターで、高校生のアカウントが昼食の時間に政治の話をしたことを書いたツイートに対して「こうした行為は適切でしょうか?」と言及しました。

これがメディアに取り上げられて非難されていますが、文脈を切り取ったフェイクが横行しているので気を付けましょう。

柴山大臣の指摘は重要な問題提起を含んでいます。

柴山文科相が高校生の政治話に疑問

非公式RTで、しかも冒頭の文言をはしょっているので元のツイートを示します。

女性自身などではこのツイートだけが取り上げられていますが、実は文脈を見ると違った視点になることが分かります。

柴山文科大臣 Twitterで高校生の政治話に疑問呈し非難殺到 (女性自身[光文社女性週刊誌])

高校教員「安倍政権に絶対投票しないように周囲の高校生の皆さんにご宣伝ください」への返信

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このツイートのリプライで高校教員を自称する者と高校3年生が会話していました。

魚拓: https://web.archive.org/web/20190909045301/https://twitter.com/NI84USx7ecHjMU7/status/1170113361075265537

魚拓:

https://web.archive.org/web/20190909031535/https:/twitter.com/d_ok3a/status/1170294640374767616

つまり、「特定の政党の落選運動をしてください」という高校教員からの呼びかけに「はい。本当に」という文言を使ってる流れで「通っている高校では昼食の時間に~」と言ってるのです。

単に18歳の高校生が学校において昼食の時間に政治的な話題を話すことについて咎めているのではありません。それ自体は何ら問題ないどころか奨励すべきことでしょう。

では、なぜ柴山大臣が問題視しているのか?

それは【学校という場の政治的中立性】を確保する必要があるからです。

選挙権のある18歳高校生に関する文科省通達「学外で」なら容認

教職員等の選挙運動の禁止等について:文部科学省

元々学校の政治的中立性は「教員」の選挙運動の禁止等が専ら問題になっており、通達で禁止・制限されてきました。

「未成年」は選挙運動そのものが禁止されています。

公職選挙法
(年齢満十八年未満の者の選挙運動の禁止)

第百三十七条の二 年齢満十八年未満の者は、選挙運動をすることができない。
2 何人も、年齢満十八年未満の者を使用して選挙運動をすることができない。ただし、選挙運動のための労務に使用する場合は、この限りでない。

そして、18歳選挙権が認められたタイミングで以下のような通達がありました。

高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知):文部科学省

第3 高等学校等の生徒の政治的活動等

省略

他方で、1)学校は、教育基本法第14条第2項に基づき、政治的中立性を確保することが求められていること、2)高等学校等は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第50条及び第51条並びに学習指導要領に定める目的・目標等を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること、3)高等学校等の校長は、各学校の設置目的を達成するために必要な事項について、必要かつ合理的な範囲内で、在学する生徒を規律する包括的な権能を有するとされていることなどに鑑みると、高等学校等の生徒による政治的活動等は、無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けるものと解される。

 

以下省略

こうして、放課後や休日等であっても、18歳高校生が学内で選挙運動や政治活動をすることは禁止ないし制限されることが明示されました。

18歳高校生を利用した選挙運動の呼びかけに呼応した問題

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さて、改めてこのやりとりの問題点を指摘します。

「安倍政権に絶対投票しないように宣伝する」というのは政治活動ないし落選運動たる選挙運動となる可能性があります。

それを教員(を名乗る者)が選挙権のある高校生に呼びかけ、高校生の側が呼応したようにも見える(本人は「受験勉強への~に対するものだったと指摘」)、という状況です。

これが一般的に認められたらどうなるでしょうか?

仮に教員が(学校外・休日等に)密かに18歳高校生に対して自身の政治的信条を教授し、その高校生が学校内において選挙運動をするよう促したとします。

すると、政治的中立性が保たれるべき学校において、17歳以下の選挙運動が禁止されている者に対してまで影響力を行使することになり、高校生を介して教員が自身の政治的信条を伝播させることが可能になる。

これは、学校・教員に政治的中立性を求める法の潜脱となると言えるでしょう。

教員に限らず、【18歳高校生を利用した政治活動・選挙運動をどう予防するか】という観点からは看過できない事案です。

再掲

柴山大臣は「@」を高校生だけでなく高校教員にもつけていますから、両名とのやりとりの関係でどう考えるかを両名に問いかけていると考えられます。

高校教員「生徒・保護者を洗脳します!」

実際に、この教員を名乗る者は「洗脳していきます!」と高らかに宣言しています。

魚拓:https://web.archive.org/web/20190909023522/https:/twitter.com/NI84USx7ecHjMU7/status/1170312476245680128

柴山大臣のこちらのツイートが、メディア等ではまったく無視されており、単に「高校生の政治話を弾圧した!」という論調なのは、本当にレベルが低いと思います。

柴山文科相は不親切かつ不用意

柴山大臣の高校生に対するツイートは上記の高校生視点からは、他愛もない昼休みの政治的な議論について咎められたように感じたとしてもやむを得ないでしょう。

柴山大臣は、ここで指摘したような文科省の通達の問題意識を提示することなく高校生に対してツイートしたんですから、かなり不親切だと思います。

内容的にもアドバンストなものであり、一般人が直ぐに理解できる訳がない。

しかもツイッターの機能ではなく、いわゆる「非公式リツイート」をしているものですから、第三者が文脈を追えなくなり、誤解されやすい状況を自ら作っていると言えます。

発信の仕方はもう少し考えて頂きたいものです。

以上