事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

暇空茜の都への監査請求を各社が報道:時事・産経・共同・毎日・東京・朝日・読売の記事を比較

比較すると見えてくる

暇空茜の都への監査請求の結果が公表

12月29日には暇空氏への通知書である程度判明していたことですが、1月4日の午後に東京都監査事務局のHPで住民監査請求への監査報告書が公表されました。

結論としては本件精算には不当な点が認められたとしており、結果の簡略的なまとめとしては以下のようになります。

  1. 暇空氏の請求のうち、「税理士、社労士報酬を本件委託料に含めるべきではない」とする請求の一部に理由があるとした
  2. 他方で、監査委員からは
    ⅰ)委託事業の経費として計上するに当たり不適切な点があるもの
    ⅱ)委託事業の経費として計上するに当たり妥当性が疑われるもの
    これらが認められるものとして人件費、法定福利費、領収書、事業実績額の内訳の記載、履行確認、給食費、宿泊支援費などが指摘された
  3. 監査委員によって監査対象とされた都福祉保健局に対しては、2月28日までに、経費の実績額を再調査及び特定し、客観的に検証可能なものとすること、調査の結果問題があれば過年度の事業も精査し、返還請求等の適切な措置を講じることが勧告された
  4. その他都福祉保健局に対して本件委託の会計処理に関する意見が付された

監査請求が認められたのはこの20年で2件のみ

前回は舛添都知事が公用車でコンサートに行った件で、6年ぶりの出来事です。

監査結果がおかしい、といった点は措いておいて、報道各社がどう報じているのか見ていきます。

共同通信「主張の大半は「妥当ではない」と退ける監査結果」

東京都に経費再調査を求める 女性支援事業の監査結果
2023/01/04 Published 2023/01/04 20:51 (JST) Updated 2023/01/04 21:24 (JST)共同通信
魚拓

東京都監査事務局は4日、都の若年被害女性等支援事業を受託している一般社団法人「Colabo(コラボ)」に委託料の不正受給があるとした住民監査請求について、主張の大半は「妥当ではない」と退ける監査結果を公表した。一方、コラボの経費精算に一部不当な点があるとして都に再調査を指示。不適切な委託料があれば返還請求するよう求めた。

 都はコラボに2018年度から同事業を委託。昨年11月、21年度に支出した委託料2600万円について「不正受給がある」との住民監査請求があり、都監査委員が調査していた。

 監査結果は妥当性が疑われる食事代などが一部計上されていると指摘した。

共同の速報記事はあまり精度も質も高くないのですが、全国の地方紙で配信記事が掲載されるので影響力は甚大です。

「主張の大半は「妥当ではない」と退ける監査結果」などと書いてますが、まず、監査が通ったことそれ自体が異例の出来事なわけです。

たとえば民事訴訟で多数の請求が為された場合、例えば名誉毀損・侮辱・著作権侵害・著作者人格権侵害・憲法上の権利の侵害などは別の請求として扱われるわけですが、これらのうち、一つの請求でも認められたら、相手方は「違法」な行為をしたとされるわけです。

そういう結果について「主張の大半は認容されないとする判決が出た」なんて書きますか?という話。

そして前述の通り、暇空氏の請求以外に、監査委員が指摘した事項があり、しかもそれが多岐に渡っているのですから、共同通信の記事は、あの報告書の報じ方としては違和感しかありません。

東京新聞は共同の記事内容にColabo側への取材結果のみ追加

後半部分だけ引用します。

「Colabo」めぐる住民監査請求 経費精算が一部不当 東京都に再調査指示 監査委員 請求の大半は退ける 2023年1月4日 18時23分 東京新聞

◆コラボ「見直しや改善が必要であれば適切に対処する」
 コラボの代理人弁護団は4日、監査結果を受け声明を出した。領収書について、虐待などから逃げる女性の安全確保のため記載を必要最低限にすることがあったと説明。食事代など一部経費の妥当性を巡っては「見直しや改善が必要であれば適切に対処する」とした。
 また監査結果に関する交流サイト(SNS)での誹謗中傷に対し、法的措置を取る予定だとしている。(共同)

まず東京新聞は元記事を見ればわかる通り共同通信から記事内容を引っ張っています。

タイトルも変えており「請求の大半は退ける」という謎の文言が付加されてます。

ただ、それは記事の前半部分だけで、ここで引用したColabo側の主張部分は、共同通信のWEB上での記事には存在していません。東京新聞オリジナルです。

にもかかわらず末尾に「(共同)」とあるのはどういうことなのか?

東京都に経費再調査を求める 女性支援事業の監査結果|47NEWS(よんななニュース):47都道府県52参加新聞社と共同通信のニュース・情報・速報を束ねた総合サイト魚拓

47newsにも、当該記述は存在していません。

で、記事をUPした時刻が奇妙なのですが、東京新聞は18時台なのに、共同通信の記事では20時台になっています。どうやって東京新聞の方が引用関係になるのか?と思ったので、共同通信のページソースを見てみました。

本当は15時台にできてて配信先には見せていたとかそういうことなんだろうと。

時事通信

委託事業で不適切経費 若年女性の支援巡り―東京都監査委員 2023年01月04日17時55分 時事通信魚拓

 東京都監査委員は4日、都が一般社団法人「Colabo(コラボ)」に委託した若年女性の支援事業について、不適切な経費計上があったとする監査結果を公表した。都福祉保健局に対し、実際に事業に必要な経費を調査、特定した上で、過払いがあった場合は同法人に返還請求するよう勧告した。

対象となったのは、性暴力や虐待などに遭った女性らに対し、居場所の提供や夜間の見回りといった支援を行う2021年度の事業。都は2600万円で同法人に委託した。
 都民からの住民監査請求を受け監査した結果、委託事業分以外の税理士報酬も経費に計上するなど不適切な点があったほか、高額なホテル代やレストラン代など妥当性が疑われる項目があったとした。
 同法人は「改善が必要となる可能性のある事項については真摯(しんし)に対処する」などとするコメントを公表した。

「不適切な経費計上があったとする監査結果を公表した。」と書いてますよね。

これが当たり前です。後に紹介する他の報道機関も同様です。勧告内容も間違いはありません。

産経新聞

経費再調査求める勧告 「Colabo」巡る請求一部認める 都監査委2023/1/4 18:15 産経新聞魚拓

性暴力や虐待などの被害を受けた若年女性らを支援する東京都の事業を受託した一般社団法人「Colabo」(仁藤夢乃代表)の会計報告に不正があったなどとする住民監査請求に対し、都監査委員は4日、会計の一部に不当な点があると認め、都に経費の実績額の再調査を指示。委託料の過払いがあった場合の返還請求など適切な措置を講じるよう勧告したと発表した。

監査結果は、領収書のない不適切な経費や、1回当たりの支出が比較的高額で、妥当性が疑われる食事代や宿泊代が一部計上されていると指摘した。

監査請求では、事業で使う車両のガソリン代、会議費なども過大申告されているなどとしていたが、都監査委は、不正があったとする請求の大半については、「請求人の主張は妥当でない」として認めなかった。

法人側の代理人弁護団は「不正な経費の利用を行ってきたとは考えていないが、都に対しては必要な説明を行い、見直しや改善が必要ということであれば指導に従い、適切に対処する」とのコメントを公表した。

当たり障りない内容だと思います。

読売新聞「2月末までに」という重要なデッドラインを示す

性暴力被害の女性支援で都が2600万円委託…「コラボ」の不適切会計、監査委員が指摘 2023/01/05 08:03 読売新聞魚拓

東京都監査委員は、性暴力被害に遭った女性らの支援事業を都から受託している一般社団法人「Colabo(コラボ)」(新宿区)の会計報告に不適切な点があるとして、都に対し、2月末までに経費の実態を再調査するよう勧告した。再調査で問題のある支出が見つかった際には、返還を請求することも都に求めた。

勧告は昨年12月28日付。監査結果によると、コラボは2021年度、女性に対する支援事業を2600万円で都から委託されたが、都に提出した書類に領収書が添付されていない事例が見つかるなどしたという。

 監査結果の公表を受け、コラボは「詳細を確認の上、都の指導に従い適切に対処する」とするコメントを出した。

大手紙の中で最も後発の5日朝に報じた読売新聞。

「2月末までに」という重要なデッドラインを示しています。

不適切⇒勧告⇒再調査⇒問題があった場合の措置という報じ方もまとまってます。

朝日新聞記事は報道としてパーフェクトな内容では?

都監査委員、再調査を勧告 都事業受託した女性支援団体の会計 2023年1月4日 22時05分朝日新聞魚拓

虐待や性暴力を受けるなどした女性を支援する東京都の委託事業をめぐり、都監査委員が、受託団体の経費計上に不適切な点があるなどとして都に2月末までの再調査を勧告した。4日、明らかにした。都への住民監査請求で「請求人の主張に理由がある」と認められたのは2016年8月以来

都によると、受託団体は一般社団法人「Colabo」。監査結果の通知は先月28日付。監査結果によると、監査請求は、宿泊の費用の過大計上や、受託に関係なく生じる税理士らの報酬を委託料に含めた点などが不適切とし、委託料返還などを求めたもの。

 監査委員は21年度の事業費について調べた。宿泊支援費については、帳簿記録を調べると実際の費用を経費に計上していると確認できたとして、「(請求人の指摘は)妥当でない」と主張を退けた。また、車両関連費、旅費交通費、会議費、医療費などに関する指摘もあったが、「妥当でない」とした。

 一方、税理士らの報酬の全額計上は「適切でない」と指摘し、「請求人の主張の一部には理由がある」と認めた。請求者の指摘以外に、不適切な領収書の提出や、妥当性が疑われる比較的高額なレストランでの食事代やホテル宿泊代があったなどとした。

 こうした結果を踏まえ、事業を所管する都福祉保健局に対し、事業実績額の正確な報告や、宿泊費などの適切な報告を法人にさせるよう意見を付した

 法人側は4日、文書を公表し、「女性やスタッフの安全確保のために領収書の記載は必要最低限とすることが多くある」とし、食事代については「大人数での食事代」「支援対象の女性のお祝い事をするため」などと説明した。都に丁寧な説明や改善が必要な事項について「真摯(しんし)に対処する」とした。

 都監査事務局によると、都への住民監査請求で「請求人の主張に理由がある」と認められたのは2016年に、舛添要一前知事が公用車を私的に利用したとして、経費の返還請求を勧告して以来という。

対象事業と対象団体の概要、都への監査請求の過去の例、監査の対象年度(これは暇空氏の請求から)、請求人による請求の内容とそれが認容されたかどうか、それとは別の監査結果で不適切とされた内容、勧告の内容、意見を付した内容、重要なデッドラインの言及、結果を受けた受託団体側の主張、細かいが監査結果の通知日…

報道記事としてはパーフェクトな内容じゃないでしょうか。

毎日新聞は暇空の請求がまるで全て妥当ではないとされたように書いている

「女性等支援事業」経費再調査を勧告 都監査委、委託費返還請求受け 毎日新聞 2023/1/4 19:01(最終更新 1/4 20:50)魚拓

東京都監査委員は4日、性暴力や虐待の被害に遭った若年女性らを支援する「若年被害女性等支援事業」について、事業に使われた経費を再調査するよう都に勧告したと発表した。事業を受託する一般社団法人「Colabo(コラボ)」による不正受給があるとして、委託費の返還などを求める住民監査請求が出されていた。監査委員は2月末までに経費の使途を検証し、過払いがあれば返還請求などの措置を講じるよう求めた。

 一方で、請求人が主張した、ホテル宿泊費▽車両関連費▽旅費交通費▽医療費――などの水増しや不正請求については、「(主張は)妥当でない」と結論づけた。

事業は、女子高校生が男性客を接待する「JKビジネス」やアダルトビデオ(AV)出演を強要された被害者、家出少女らの自立推進が目的。公的機関と民間団体が連携し、夜間の見回りや声かけ活動の「アウトリーチ」で被害を未然に防ぎ、一時的な居場所を確保する。2021年度に国が事業化し、都は前身のモデル事業が始まった18年度からコラボなどに委託。監査対象となった21年度の委託費は2600万円だった。

 監査結果は22年12月28日付。領収書に示されていない支出や、アウトリーチの実態把握ができない報告などについて、「不適切な点がある」と判断。また、高額なレストランでの食事代やホテル宿泊代は必要経費としての「妥当性が疑われる」と指摘した。

 都育成支援課は「勧告に従って速やかに対応する」とした。

 コラボの弁護団は声明を発表。監査結果については「都に対し改めて丁寧な説明をし、改善が必要であれば真摯(しんし)に対処して、よりよい事業遂行を目指したい」とした。また、「これまで受けた非難攻撃の大半は監査委員によって事実ではないことが確認され、退けられた」との見解も示した。【宇多川はるか】

請求人(=暇空氏)の請求がまるで全て妥当ではないとされたように書かれてますが、おかしいですよね。「結論づけた」という表現も、この手の文章で「妥当ではない」という妙な書き方(「請求には理由が無い」とかなら分かる)がされていることからすれば違和感があります。

他方で、国や都の枠組みの提示、委託の期間、委託費の規模などに触れているのは面白いです。監査結果の理解にはあまり関係しませんが、背景事情として押さえておきたいところです。

都育成支援課(福祉保健局)のコメントがあるのも独自性があるなと。

ただ、Colaboの「非難攻撃の大半は監査委員によって事実ではないことが確認され」という部分は、違うでしょう。それを紹介するのは不用意にもほどがある。

※追記※

毎日新聞は5日付けでも同じ記者による似たような記事が出ています。

Colabo委託事業、支出の一部「不適切」 都監査委が再調査勧告 毎日新聞 2023/1/5 08:48(最終更新 1/5 08:48)魚拓

東京都監査委員は4日、性暴力や虐待の被害に遭った若年女性らを支援する「若年被害女性等支援事業」について、経費を再調査するよう都に勧告したと発表した。事業を受託する一般社団法人「Colabo(コラボ)」による不正受給があるとして、委託費の返還などを求める住民監査請求が出ていた。監査委は2月末までに経費の使途を検証し、措置を講じるよう求めた。

“不正請求”の主張「妥当ではない」
 一方で、請求人が主張した、ホテル宿泊費などの水増しや不正請求については、「(主張は)妥当でない」と結論づけた。

事業は家出少女らの自立推進が目的。公的機関と民間団体が連携し、夜間の見回りや声かけ活動で被害を未然に防ぎ、一時的な居場所を確保する。都は18年度からコラボなどに委託。監査対象となった21年度の委託費は2600万円だった。

 監査結果は22年12月28日付。領収書に示されていない支出や、活動の実態把握ができない報告などについて、「不適切な点がある」と判断。高額なレストランでの食事代などは必要経費としての「妥当性が疑われる」と指摘した。

 都育成支援課は「勧告に従って速やかに対応する」とした。コラボの弁護団は「改善が必要であれば真摯(しんし)に対処して、よりよい事業遂行を目指したい」とした。【宇多川はるか】

  • 暇空氏の請求が全て排斥されたかのような書き方⇒変わらず
  • Colabo側の発言で「これまで受けた非難攻撃の大半は監査委員によって事実ではないことが確認され、退けられた」という、事実と異なる記述⇒無くなる

「非難攻撃の大半は監査委員によって事実ではないことが確認され」というColabo側の認識、紹介しちゃダメだと気づいたんでしょうね。

・暇空氏の監査外の主張の全部が俎上にのってないが、そのように見せているかのような発言
・本件の事情の下で監査請求を「非難攻撃」とするのは、住民の正当な権利行使を腐していることに他ならない
 ⇒公開されている情報から当然に疑問視される内容も相当数含まれていた
 ⇒Colaboは法律上の公告義務がある貸借対照表の公告をしていなかった
 ⇒Colaboの会計に関して暇空氏が従前、都への情報開示請求をしていたが、不開示とされる情報が余りにも多く、客観的に不当なものも相当数含まれていた(貸借対照表すら不開示)

 ・監査委員は暇空氏の主張の妥当性を排斥しただけで、その点に係る全ての事実認定をしているわけではない。監査委員が暇空氏の主張を排斥した根拠はColabo側の出している帳簿書類等に依拠して作られた表3に基づいている。

なお、暇空氏にTwitterDM取材したが暇空氏の主張は掲載されず。

※※追記終わり※※

まとめ:住民監査請求の報道内容の格付けチェックの結果

ちなみに、Colaboによる暇空氏への提訴記者会見を報じた(私人対私人なのに異例)ところでは、あとは神奈川新聞が本件を報じています

※追記※

NHK、日経新聞はWEBで報じていないようです。

BuzzFeedJapanも報じました。

なお、紙面ではこのような状況のようです。

※※追記終わり※※

※追記※

報道各社がColabo側の認識のみ報じて暇空氏の認識は報じていないことについて。

請求人と監査請求の間接的な対象となったColabo側、どちらの認識が報じられるべきかは、後者の方が優先度が高いと思います。「疑いをかけられた側」ですから、弁明の機会を与えるのは公平だと思います。

しかし、その観点から言えば毎日新聞の最初の記事のように暇空氏側にも疑いをかけるような内容(Colaboの認識)があるにもかかわらず暇空氏の認識が紹介されないのはおかしい。

訴訟提起された被告にコメントを取るのも同じ観点からでしょう。にもかかわらず、一般的に訴状到達前に被告側のコメントとして「訴状を見ていないので言及を差し控える」というものしか掲載しないことが往々にしてあるのはおかしいし、Colaboによる暇空氏への提訴記者会見に関連して訴状が暇空氏に到達してないのにコメントを取りに行って掲載するだけで、その後の主張を掲載しないというのも不公平・不均衡であると言えます(※媒体における話題の優先度等、必ずしも廉潔な行動がとれない場合があるというのは当然であり、批判されるべきものの絶対に掲載せよと求めるものではない)。

※※追記終わり※※

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