事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

GIGAZINEの倉庫破壊事件の続報:持ち去りは器物損壊では

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GIGAZINEが所有していると主張している倉庫が破壊されている件について続報。

この件について感想を書きます。

GIAGAZINE倉庫に3回目の解体工事予告

続・ある日突然自分の建物を他人がショベルカーで破壊しても「建造物損壊」にはならないのか? - GIGAZINE

3回目の解体工事予告があっても警察が動かないようです。

公権力による介入がなされるべきか?については前回の記事「GIGAZINEの建造物損壊事件は司法のバグなのか?」に書きました。

今回は2回目の破壊前の「侵入・持ち出し」行為への警察の対応が気になりました。 

2回目の破壊前の侵入・持ち出しは住居等侵入や窃盗ではない?

さらに、2回目の日新プランニング株式会社がGIGAZINE第一倉庫を「誤って」破壊し始めた件について、実は前日の夜中の間に「表札」「登記簿のコピー」などを「GIGAZINE第一倉庫の中」へ侵入して持ち去る様子を監視カメラでの撮影に成功していたので、そのことについても聞いてみました。

警察との問答の中で、「住居侵入」や「窃盗」にはならないという説明があります。

これは、正しいです。

住居等侵入罪は「住居」や「人の看取する建造物」への立ち入りを禁止するものです。

「住居」とは人が寝起きする用途で利用されている場所を意味しますが、今回のは「倉庫」であり、人が中に居ることは想定されていません。

また、どうやら鍵もかかっておらず、ロープ等で侵入を規制していたわけでもなく、塀も無い状態ですから、「人の看守する」にはあたりません。

ですから、刑法130条の住居侵入罪にはあたらないでしょう。

次に、窃盗罪になるためには「不法領得の意思」=権利者排除意思+利用処分意思が必要ですが、「登記簿のコピーや表札を持ち去る」という行為には「経済的用法に従って利用処分する意思」が欠けてると言えるでしょう。

その前に本件では「占有」が認められるかもかなり怪しいと言わざるを得ません。

器物損壊罪や軽犯罪法はどうか?

ただし、「登記簿のコピーや表札を持ち去る」行為は刑法261条の器物損壊罪に当たるでしょう。「損壊」は物の効用を害する行為ですから、たとえば商用ポスターをはがして持っていったりした場合も該当します(物が無くなれば使用することはできなくなってしまう)。

似たような状況は自宅の郵便入れに他人宛ての郵便物が届いて壊したなどの場合が想定されます。

ラミネート加工までしている登記簿のコピーには財物性はあるんじゃないでしょうか?

そうすると、少なくとも構成要件には該当してるでしょう。

構成要件には違法性推定機能があるのですから、その時点で「犯罪の相当な嫌疑」はあるでしょう。

なお、住居等侵入罪には当たらなくとも、軽犯罪法1条32号には「入ることを禁じた場所」に「正当な理由がなくて入」ることが禁止されていますから、観念的には軽犯罪法に抵触し得る行為と言えるでしょう(土地の権利関係の争いがどう関係するかは不明。また、本件で「入ることを禁じた」と言えるかはよくわからない)。

なので、警察官がまったく動こうとしなかったのは解せません。

検察に告訴するんじゃなかろうか

GIGAZINE顧問弁護士も既に指摘しているように、検察への告訴が考えられます。

こうして検討してみると、警察の現場判断では動きにくい事案だなぁと思います。

やはり法的な切り分けができている捜査機関たる検察から警察に指示を出してもらわないと、ダメなような気がします。

おそらくは警察のメンツのために告訴は未だしていないのでしょうが、そうも言ってられないのではないでしょうか?

以上