事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

被告逆転勝訴:ツイートのスクショが著作権法上の引用要件を満たす事例:知財高裁判決令和5年4月13日令和4(ネ)10060

めでたしめでたし(*^ω^*) 

知財高裁判決令和5年4月13日令和4(ネ)10060

東京地方裁判所令和3年12月10日判決言渡 令和3年(ワ)第15819号

こちらで被告のツイートのスクショは著作権法上の引用要件を満たさないとして敗訴していました。以下がそれに対する批評。

が、知財高裁では逆転勝訴していたことが明らかになりました。

知的財産高等裁判所令和5年4月13日判決 令和4(ネ)第10060号

スクショがTwitter規約違反かは直ちには公正な慣行の内容とはならない

キ 原判決12頁9行目冒頭に「(ア) 」を加え、同頁18行目~19行目の「そうすると」から同頁23行目末尾までを削除し、同頁24行目冒頭から同13頁12行目末尾までを次のとおり改める。

 「しかし、そもそも本件規約は本来的にはツイッター社とユーザーとの間の約定であって、その内容が直ちに著作権法上の引用に当たるか否かの判断において検討されるべき公正な慣行の内容となるものではない。また、他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする行為が本件規約違反に当たることも認めるに足りない

 他方で、批評に当たり、その対象とするツイートを示す手段として、引用リツイート機能を利用することはできるが、当該機能を用いた場合、元のツイートが変更されたり削除されたりすると、当該機能を用いたツイートにおいて表示される内容にも変更等が生じ、当該批評の趣旨を正しく把握したりその妥当性等を検討したりすることができなくなるおそれがあるのに対し、元のツイートのスクリーンショットを添付してツイートする場合には、そのようなおそれを避けることができるものと解される。そして、弁論の全趣旨によると、現にそのように他のツイートのスクリーンショットを添付してツイートするという行為は、ツイッター上で多数行われているものと認められる。

 以上の諸点を踏まえると、スクリーンショットの添付という引用の方法も、著作権法32条1項にいう公正な慣行に当たり得るというべきである。

  1. スクショがTwitter規約違反かは直ちには公正な慣行の内容とはならない
  2. スクショがTwitter規約違反だと認めることもできない

本件知財高裁判決は、このように判示し、東京地裁の手法とは全く異なる方法で本件を判断しました。

上掲引用文の中段の懸念は、地裁判決を見た者含め私も指摘していました。

なお、以下の被控訴人=一審原告の主張も退けられています。

 また、被控訴人は、スクリーンショットの添付という方法による場合、著作権者の意思にかかわらず著作物が永遠にネット上に残ることとなり、著作権者のコントロールが及ばなくなるという不都合がある旨を主張するが、そのような不都合があることから直ちに上記方法が一律に前記公正な慣行に当たらないとまでみることは、相当でないというべきである。

スクリーンショットによる引用は明確に区分されており相当な範囲内

(ウ)  その上で、訂正して引用した原判決の第4の2(1)アで認定判断した原告投稿1の内容、同(2)アで認定した本件投稿1の内容や原告投稿1との関係等によると、本件投稿1は、Yが、本件投稿者1及び本件投稿者1と交流のあるネット関係者間で知られている人物(「A」なる人物)を訴えている者であることを前提として、更に多数の者に関する発信者情報開示請求をしていることを知らせ、このような行動をしているYを紹介して批評する目的で行われたもので、それに当たり、批判に関係する原告投稿1のスクリーンショットが添付されたものであると認める余地があるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区分されており、また、その引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿1の範囲は、相当な範囲内にあるということができる。

 また、訂正して引用した原判決の第4の2(1)イ~エで認定判断した原告投稿2~4の内容及びその性質並びに同(2)アで認定した本件投稿2~4の内容や原告投稿2~4との関係等によると、本件投稿2~4は、本件投稿者2を含むツイッターのユーザーを高圧的な表現で罵倒する原告投稿2、他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿3及び他のツイッターのユーザーを嘲笑する原告投稿4を受けて、これらに対する批評の目的で行われたものと認められ、それに当たり、批評の対象とする原稿投稿2~4のスクリーンショットが添付されたものであるところ、その添付の態様に照らし、引用をする本文と引用される部分(スクリーンショット)は明確に区別されており、また、それらの引用の趣旨に照らし、引用された原告投稿2~4の範囲は、それぞれ相当な範囲内にあるということができる。

 以上の点を考慮すると、本件各投稿における原告各投稿のスクリーンショットの添付は、いずれも著作権法32条1項の引用に当たるか、又は引用に当たる可能性があり、原告各投稿に係るYの著作権を侵害することが明らかであると認めるに十分とはいえないというべきである。」 

ここも地裁判断と異なる部分です。

まぁ、地裁判断が異常だったんですけれども。

具体的にどういう投稿内容だったのかは地裁判決文の別紙に添付され、前掲リンクのPDFで見れます

また、本件の被告のスクショは、原告が高圧的な表現で他のユーザーを罵倒したりしている様子を捉えたものである、という点が指摘されていますが、これもスクショによる引用の相当性判断に影響を与えたということです。

この点については私も以下で論じていました。

ツイートのスクリーンショットが著作権法上の引用要件を満たさない事例:東京地裁判決 - 事実を整える

なお、被控訴人は知財高裁では名誉毀損の主張もしていましたが、退けられています。

知的財産高等裁判所 令和4年11月2日判決 令和4(ネ)10044と同じ判断基準

  1. スクショがTwitter規約違反かは直ちには公正な慣行の内容とはならない
  2. スクショがTwitter規約違反だと認めることもできない

実は、この判断は既に別件訴訟についての昨年の知財高裁で為されていました。

知的財産高等裁判所 令和4年11月2日判決 令和4(ネ)10044 原審:東京地方裁判所  令和3(ワ)6266

これにて整合性が取れた判断となったということです。

まとめ:ツイートのスクショが著作権法違反か否かは従来通り引用要件を満たしているかどうかで決まる

まとめると、ツイートのスクショが著作権法違反か否かは従来通り引用要件を満たしているかどうかで決まる、ということです。

それにあたって、現時点でスクショがTwitter規約違反だと認めることはできないし、仮に今後規約変更などで違反となるにしても、それは直ちには著作権法の「引用」要件における公正な慣行の内容とはならない、ということが判示されました。

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