事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

ウイグル等に関する「対中非難決議」を振り返る:自民党と公明党の認識

参議院でウイグルに関する決議(「対中非難決議」)が為される動きがあります。

その前に、今年2月に衆議院での決議が為されるに至るまでの昨年の言論状況を整理する必要があると感じます。

時系列

アメリカ側のジェノサイド認定の動きは無視できないため大雑把な時系列を載せます。

  1. 令和3年1月19日:アメリカのポンぺオ国務長官が共産チャイナによるウイグル民族に対するジェノサイドを初認定
    ※バイデン政権に切り替わる数時間前のタイミングのため軽視された
    ※が、後任のブリンケン国務長官もポンぺオ発言の認識を踏襲すると即日発言
  2. 令和3年1月26日:毎日新聞Webで"外務省の担当者は26日の自民党外交部会で「日本として『ジェノサイド』とは認めていない」との認識を示した"と報道
    これを受けて「政府はジェノサイド認定しろ」「国会はウイグルに関する対中非難決議を出せ」という論調がしばらくネットで席巻するようになった
  3. 令和3年1月29日、茂木外務大臣(当時)会見時に記者から問われ、「表現ぶりはそれぞれあると思うが、わが国としても新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻に懸念している。自由、基本的人権の尊重、法の支配が中国においても保障されることが重要だ」と発言
    これにより茂木大臣へのバッシングも増えることに
  4. 令和3年6月:ウイグル等に関する対中非難決議が不発に終わる。
    この前あたりからにわかに「公明党が非難決議に反対している」という言説が広まっていたが、現実の動きとして明示的な反対の事実は無かった
  5. 令和3年12月:修文案がネットで広がる
  6. 令和4年2月1日:「新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案」が衆議院で可決、修文案の通りの内容
  7. 令和4年10月現在、参議院では同様の決議は為されていない。

公明党の動きと自民党の林幹雄議員に関しては報道が先走った面があると言えるので最初に触れていきます。

「公明党が反対」の事実は無し

  1. 公明党全体としては表現には慎重であったが決議自体は党内に推進派も居た
  2. 公明党からの明示的な反対の意思表示の事実は無い
  3. 自民党内において、従前から共産チャイナに対して「配慮」をしていた公明党を意識したことも相俟って文面が勝手に決まっていった
  4. 他党との手続が上手く取れていなかった

最初にハッキリと書いておきたいのが、「公明党が反対」の事実は無い、ということ。

この辺りの事情が詳細に書かれているのが"ウイグルを応援する全国地方議員の会"の副会長 兼 幹事長である小坪慎也(行橋市議会議員)氏の一連の投稿です。

https://samurai20.jp/2022/10/estrangement2-1/

ここに現れてる認識は公明党側の言い分と齟齬がありませんし…

同時に、他の自民党側からも同じ説明が為されています。

たとえば令和3年7月22日に投稿された動画で長尾たかし議員が語っている内容では、「公明党が反対し、自民党がそれに配慮したのか?」と問われたのに対して『反対は無いです。「慎重に」議論が為された』と指摘しています。

直後に「二幹二国協議では了としている、今ボールは公明党にあり、慎重に議論をしてお預かり頂いているという状態」と発言し、公明党の側には「公明党は反対していない、自民党の方に問題がある」という指摘があることについて問われ、「お互いの二幹二国なり責任者同士でちゃんとやり取りしてほしいです」とも発言していることからも、何らかの手続上の問題が生じていることは伺い知ることができます。

「自民党でも公明党内でも反対した議員は一人も居ない」ということは月刊正論2021年8月号でも長尾議員が発言しています。ちなみに、国会閉会直前の時期で時間的にも厳しかったといった事も語られています。

さらに、令和3年10月31日投開票の衆院選の公明党マニフェストにも

「現在、中国における人権や基本的自由の尊重について、国際社会から具体的な懸念が示されており、公明党としてもその懸念を共有しているところです。人権や基本的自由は、いかなる政治体制においても尊重されるべきものです。中国は透明性をもって説明し、国際社会に対する責任を果たすべきであると考えます。」

と書かれています。

重点政策 | 第49回衆議院選挙 特設サイト | 公明党

公明党 2021衆院選マニフェスト政策集

公明党 2021衆院選マニフェスト政策集

また、全国の地方議会でウイグル問題で意見書採択をした議会は80を超えていることからも、党全体しては決議自体に対して反対していないと言う根拠にはできるでしょう。

ウイグル問題で意見書採択した地方議会が80を超えたことを歓迎し、ご尽力いただいた議員の方々に感謝する | 日本ウイグル協会

こうしてみると、同時期に検討がされた非難決議である令和3年6月8日の衆院本会議で可決されたミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議(第二〇四回国会、決議第三号)と、令和3年6月11日 参議院本会議ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議 (いずれも全会一致)との違いがなぜ生まれたのかという点も見えて来るんだろうと思います。

「チャイナに関することだから」ということが影響したことが全否定はされないのかもしれませんが、より本質的な説明の仕方があるだろうと言えます。

そのような意味で、令和3年6月17日に書いた対中非難決議ができないのは自民党が原因 - 事実を整えるで書いた以下の記述部分

「対中非難決議ができないのは野党や中国とズブズブの公明党が反対しているからだ」

これを否定する気はありませんが、それ以前の問題があります。

結局、【自民党が反対している】のが原因です。

ここは少し公明党に対して不用意な表現であったことは否めません。

この認識をより正確なものにしたいというのが本エントリ執筆の動機の一つでした。

また、この話は以下のようにも捉えなおせます。

  1. 非難決議の各時期における不発の原因⇒手続の不備が原因の一つ
  2. 非難決議への賛成反対の事実⇒自民も公明も「反対」はしていない。
  3. 非難決議の内容と表現⇒自民党内で勝手に決まっていった
  4. 公明党の影響について
    ①決議の時期がずれたことについて⇒自民党側の手続の不備を背景の一つとし、それと併せて公明党側への配慮があったと考えられる
    ②決議の内容・修文について⇒チャイナに対する公明党の従前態度が背景にあり、手続上の問題も相俟って自民党内部で公明党側に対する忖度がなされていたと考えられる

他方で、自民党の青山繁晴議員のように「(非難決議がなされなかったのは)公明党が原因」(「公明党が反対した」とは言っていない。「態度を明確に示さなかった」という表現)という認識があります。

【ぼくらの国会・第170回】ニュースの尻尾「あえて真相暴露 対中非難決議」 - YouTube

私の昨年6月記事で「結局、【自民党が反対している】のが原因」と書いたのは、「ある理想から見た非難決議の内容への影響=そのような内容の決議が為されない原因」という捉え方でした。

日本政府による事実認定を回避している上にチャイナの名指しが無いなんておかしいだろうと。
(昨年6月記事後に生起した事実として現に公明の衆院マニフェストでは「中国」と明記されているのに)

青山議員のような論法を取るのであれば、(ここで論じられてない様々な要素も含めて)長年政権与党の多数派を輩出している自民党に原因がある、と言っても大要外れではない、ということになってしまうでしょうと。

林幹雄幹事長代理が「対中非難決議」を潰した?

さて、以下の記事との関係も触れておきましょう。

【有本香の以読制毒】誰が「対中非難決議」を潰したか? 全野党は承認も自民党内に「あんまり興味ないんだ」と言い放つ人物 (2/3ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト 2021.6.18

自民党関係者と支持者らは「公明党が潰した」という。しかし、ほぼすべての事情を知る筆者はそうは思わない。政界きっての「親中派」とされる自民党の二階俊博幹事長と、その「懐刀」と言われる林幹雄幹事長代理は結局、「対中非難決議」の文案に「承認」のサインをしなかったという。ミャンマーの国軍を非難する決議にはすんなりサインをしたにもかかわらずだ。

~省略~

下村氏の説明を聴いた二階氏が承認のサインをしようとペンを手に取ろうとしたその瞬間、「ちょっと待ってください」と止めたのが、林氏だった。二階氏の中国詣でにも随行している人だ。林氏は来月に迫った東京都議選で、いかに公明党と連携するかを語りながら承認を渋り、最後の最後、「こういうの(ウイグル問題)、あんまり興味ないんだ」と言い放ったという。

「公明党というより自民党側に原因があるというべきだろう」

こういった認識はこの文面の限りで私と一致していたし、当時もこの記事を読んでいたわけですが、一方で名指しされてる林幹雄(はやしもとお)幹事長代理の「文案に承認のサインをしなかった」理由については種々のものがあり得ると想定していたために判断は留保していました。

林議員本人は「決議に反対していない、進めるべきだと思っている」と発言。

前掲夕刊フジの記事を受けて自由民主党幹事長室から有本氏に「通知書」が送付され、その内容について有本氏が再度夕刊フジに記事を書いていました。

【有本香の以読制毒】対中非難決議見送り問題 自民党幹事長室からの「通知書」 評価を「短絡的」というなら、改めて説明を求めたい (2/3ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト2021.6.25

「林幹事長代理が『こういうの(ウイグル問題)、あんまり興味ないんだ』と発言した事実はありません」

~省略~

「また、貴殿自身も本件記事に書いてあるように、来月に迫った東京都議選で、いかに公明党と連携するかということも踏まえ、二幹二国で協議して対応を決めるものであり、林幹事長代理らが潰したとの貴殿の評価は短絡的と言わざるを得ません」

まず、この記事に現れている内容が通知書のすべてであれば、林幹雄議員が「ペンを止めた」事実は否定していないことに。

次に、「都議選において公明党と連携する観点」からそのような対応が為された、ということも、否定していない。青山繁晴議員のような認識が出て来るのはこの辺りからなのかもしれません。

ただ、「非難決議自体を潰した」という「評価」は適切ではない、ということが書かれています。自民党の或いは自民公明両党間の正式な手続を踏んで決めるべき、という扱いが為されたというだけだと。

この辺りは前掲の月刊正論令和3年8月号の長尾たかし議員の寄稿でも書かれています。

下村先生、古屋先生から「明日、外交部会にはかるので、党として決めたということは、その方向で進んでいいですね」と幹事長と代理に念を押されていました。そしたら幹事長と代理も「それはいい。どうぞやってください」と。

「潰した」という評価が正当である実態があれば、この展開にはなっていないだろう。

自民党としては「時期が延期or調整された」というあたりの認識なのでしょうか?

しかも、長尾議員の寄稿では幹事長周りの判断について「その立場の役員としては、職責上当然のこと」とも書かれています。記事のタイトルや文章の配列から周囲の記述を読むと別の意味に取れるかもしれませんが、敢えてこの部分だけ切り出しておきます。

長尾議員の寄稿と併せて読み、細かい内容に留保をつけつつ穏当な理解を心がけると、チャイナが絡んだことで自民党側が公明党側の反応をシミュレートした上で過剰な忖度を働かせていたために起きた不幸があった、という雰囲気が浮かび上がってきます。

さらにその背景には自民党側の手続的な不備が関係していたのだろうということが小坪議員の一連のエントリで補強される、というあたりが、ここで掲載した公開情報から推論できるものではないかと思われます。

次に、「対中非難決議」の話は「ジェノサイド認定」に関する認識のズレが誤解・不幸を生んでる面が大きいので触れます。

ジェノサイド条約批准とジェノサイド認定

毎日新聞の令和3年1月26日の記事内容に事実誤認はないとされています。

が、その表現については「日本政府によるウイグルの現状に対する認識はジェノサイドと言えるものではないと判断していると外務省職員が言っている」と読者が受け取るものでした。

他方で、純粋な文面からは「判断を加えた結果、ジェノサイドとは認定できない」と言ったのではなく「現状、ジェノサイド認定はしていない」というだけとの理解も可能。

結局、従前の日本政府の見解やその後に示された見解は、そういう意味でした。

具体的には「新疆ウイグル自治区に関しては、重大な人権侵害が行われている、そうした報告が数多く出されており、我が国としても、同自治区の人権状況については深刻に懸念をしています。」といったものが継続しています。類似の表現は外務大臣会見や国会における総理大臣・外務大臣の答弁で確認できます。

その上で、ジェノサイド条約を批准することとジェノサイドと認定することは別

第204回国会 衆議院 外務委員会 第2号 令和3年3月10日

○茂木国務大臣 まず、我が国がICCのローマ規程加盟国であるということは委員も御案内のとおりでありまして、また、ジェノサイド条約と、ジェノサイドの認定というか、全ての件について日本が認定するかどうかは別にしまして、別の議論だということは先ほど赤堀氏の方からお答えをさせていただいたところでありますが。

ジェノサイド条約を批准しない理由は結局は【国益を害するから】です。

戦勝国が敗戦国(枢軸国)を裁くためのものであり、時効が無いなど国内法体系の整備も必要で負荷が高く、共産チャイナに逆に利用されかねず、チャイナへの制裁に実効性がなく、喫緊のウイグル人の救済に寄与するまでに時間がかかり過ぎる、といった問題があるからです。

ウイグルに関する「対中非難決議」の背景として必要な話だから触れましたが、本稿では詳しく書きません。少し調べれば出てくる話です。

令和3年2月9日には朝日新聞記者から「日本政府もジェノサイド条約に批准しないのか」といった罠も撒かれていました。

では、「ジェノサイド認定をなぜしないのか?」については、もういろんなところで言われている話ですが、衆議院における決議案を読むと一定の推測ができるので次項で触れます。

新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議と事実認定

新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議

新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議案(第二〇八回国会、決議第一号)衆議院

近年、国際社会から、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている。人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない。

この事態に対し、一方的に民主主義を否定されるなど、弾圧を受けていると訴える人々からは、国際社会に支援を求める多くの声が上がっており、また、その支援を打ち出す法律を制定する国も出てくるなど、国際社会においてもこれに応えようとする動きが広がっている。そして、日米首脳会談、G7等においても、人権状況への深刻な懸念が共有されたところである。

このような状況において、人権の尊重を掲げる我が国も、日本の人権外交を導く実質的かつ強固な政治レベルの文書を採択し、確固たる立場からの建設的なコミットメントが求められている。

本院は、深刻な人権状況に象徴される力による現状の変更を国際社会に対する脅威と認識するとともに、深刻な人権状況について、国際社会が納得するような形で説明責任を果たすよう、強く求める。

政府においても、このような認識の下に、それぞれの民族等の文化・伝統・自治を尊重しつつ、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値観を踏まえ、まず、この深刻な人権状況の全容を把握するため、事実関係に関する情報収集を行うべきである。それとともに、国際社会と連携して深刻な人権状況を監視し、救済するための包括的な施策を実施すべきである。

右決議する。

この決議内容は長尾議員が12月にネット上に流した修文案とほぼ同じです。
※「ミャンマー」が無くなっていることで「対中非難」の要素が明確になったと言える。

長尾たかし議員によるウイグルに関する対中非難決議案の修文解説

この赤ペンによってどのように修正されたかという説明がなされている画像は長尾たかし議員によるものだということを本人が動画で話しています。

が、「骨抜き修文案」それ自体は、どこで誰が作ったかは不明とされています。

修正の無い文章については令和3年5月には島田洋一氏が投稿していた他、6月15日に青山繁晴議員ブログで既に公開されていました。

ウイグル人、チベット人、南モンゴル人、香港市民、そしてミャンマー国民への、弾圧や大虐殺への非難決議はまず自由民主党で決議しました|青山繁晴の道すがらエッセイ/On the Road

「事実関係の徹底した調査を行うべきである」が修正され「事実関係に関する情報収集を行うべきである」になっている。

「調査」となると政府機関が公的に人間を派遣して調べる、ということに。

「情報収集」だと、他者から情報を得て取りまとめるということに。似たようなのが公安調査庁HPにおける「アゾフ」に関する記述の扱いがあると言えるでしょう。

「ウイグル等に関する事実認定を日本政府は行えるのか?」

中国のウイグル弾圧「ジェノサイド」認定に日本はなぜ慎重なのか | 毎日新聞など、もはやいろんなところで言われてる話ですが(しかし公的には明言されない)、こういう問題が前提としてあるのではないかと疑わざるを得ません。

民間の証言や写真など他者の情報を得ることはできても、政府として事実認定できる状況には無いのでは?それは「証拠が持ち込まれてない、政府が認識してない」ということではなく(公的にはそういう扱いなのかもしれないが)、政府自らの手で調査していない・できないから、ということではないか。

ミャンマーの軍事クーデターに対する非難決議の場合、「軍事クーデターがあった」ということは調査するまでもない確定事実だからこそ明言できた。

対ロシアの非難決議も「ウクライナへの侵略」は調査するまでも無い確定事実。

が、「ウイグル等に関する人権状況」はそうではないということが、これまでの状況からは示唆されてしまう。だから「ジェノサイド認定」もできないのではないか。

そもそも独自で情報の裏がとれないなら、チャイナ側が状況改善したかどうかを確認できない、そのため、チャイナ側との対話の際に武器にならない。だから認定する意味がない…と。

…実際の所は明らかにされないでしょう。

いちいち「日本には調査能力がありません」なんて言う方がバカげている。

ポンペオ・ブリンケン国務長官によるアメリカのチャイナジェノサイド認定

最後に補足的な資料を置いておきます。

ポンペオ国務長官によるアメリカのチャイナのジェノサイド認定は以下の声明です。

Determination of the Secretary of State on Atrocities in Xinjiang PRESS STATEMENT MICHAEL R. POMPEO, SECRETARY OF STATE JANUARY 19, 2021

For the past four years, this Administration has exposed the nature of the Chinese Communist Party and called it what it is: a Marxist-Leninist regime that exerts power over the long-suffering Chinese people through brainwashing and brute force. We have paid particular attention to the CCP’s treatment of the Uyghur people, a Muslim minority group that resides largely in the Xinjiang Uyghur Autonomous Region in Western China. While the CCP has always exhibited a profound hostility to all people of faith, we have watched with growing alarm the Party’s increasingly repressive treatment of the Uyghurs and other ethnic and religious minority groups.

Since the Allied forces exposed the horrors of Nazi concentration camps, the refrain “Never again” has become the civilized world’s rallying cry against these horrors. Just because an atrocity is perpetrated in a manner that is different than what we have observed in the past, does not make it any less an atrocity. Today, I thus make the following determinations:

1. After careful examination of the available facts, I have determined that since at least March 2017, the People’s Republic of China (PRC), under the direction and control of the Chinese Communist Party (CCP), has committed crimes against humanity against the predominantly Muslim Uyghurs and other members of ethnic and religious minority groups in Xinjiang. These crimes are ongoing and include: the arbitrary imprisonmentor other severe deprivation of physical liberty of more than one million civilians, forced sterilization, torture of a large number of those arbitrarily detained, forced labor, and the imposition of draconian restrictions on freedom of religion or belief, freedom of expression, and freedom of movement. The Nuremberg Tribunals at the end of World War II prosecuted perpetrators for crimes against humanity, the same crimes being perpetrated in Xinjiang.
2. In addition, after careful examination of the available facts, I have determined that the PRC, under the direction and control of the CCP, has committed genocide against the predominantly Muslim Uyghurs and other ethnic and religious minority groups in Xinjiang. I believe this genocide is ongoing, and that we are witnessing the systematic attempt to destroy Uyghurs by the Chinese party-state. The governing authorities of the second most economically, militarily, and politically powerful country on earth have made clear that they are engaged in the forced assimilation and eventual erasure of a vulnerable ethnic and religious minority group, even as they simultaneously assert their country as a global leader and attempt to remold the international system in their image.

この認識はブリンケン国務長官も就任直後に踏襲すると明言しています。

これはポンぺオ=前政権の認識を引き継いだということ以上に、「バイデン陣営」の従前からの理解を示したという側面があります。

「中国のジェノサイド認定はポンぺオが煽動してただけだ」のような発言は識者らからも発せられてましたが、こうした米国内の事情からすると極めて奇妙に映ります。

中国のウイグル弾圧「ジェノサイド」認定に日本はなぜ慎重なのか | 毎日新聞2021/3/12 13:00(最終更新 3/12 13:00)

ポンペオ国務長官(当時)は退任を目前に控えた今年1月19日、中国政府が新疆ウイグル自治区で行っている行為を「ジェノサイド」と認定し、「私たちはウイグル人を破壊するための組織的な企てを目撃している」と断言した。

ただ、ポンペオ氏は中国政府のどのような行為が「ジェノサイド」なのかや、ジェノサイド条約にどう関わるかを説明したわけではない。退任直前という表明のタイミングから、「人権状況の改善に本腰を入れる姿勢を示したというより、政治姿勢をアピールするための声明ではないか」との臆測も広がった。だが、ポンペオ氏の後任のブリンケン国務長官は「ウイグル人にジェノサイドが行われたという私の見解に変化はない」と明言した。国際法上の犯罪である「ジェノサイド」を持ち出して対中圧力を強める手法は、バイデン政権誕生後も引き継がれることになった。

上掲の毎日新聞記事にあるように、ポンぺオ声明の時点では確かにジェノサイドとしての内訳は言及がありませんでした。

が、その後の3月30日に出された2020年度の国別の「人権への取組報告書」ではジェノサイド条約上のジェノサイド要件との関係には触れていないものの、具体的な内容が書かれていると言えるものがあります。

全年度:Country Reports on Human Rights Practices - United States Department of State

2020年度:2020 Country Reports on Human Rights Practices BUREAU OF DEMOCRACY, HUMAN RIGHTS, AND LABOR MARCH 30, 2021

チャイナに関して:2020 Country Reports on Human Rights Practices: China (Includes Hong Kong, Macau, and Tibet)

Genocide and crimes against humanity occurred during the year against the predominantly Muslim Uyghurs and other ethnic and religious minority groups in Xinjiang. These crimes were continuing and include: the arbitrary imprisonment or other severe deprivation of physical liberty of more than one million civilians; forced sterilization, coerced abortions, and more restrictive application of China’s birth control policies; rape; torture of a large number of those arbitrarily detained; forced labor; and the imposition of draconian restrictions on freedom of religion or belief, freedom of expression, and freedom of movement.

なお、ジェノサイド認定に関連して新疆ウイグル地区での「強制労働」の事実について「人身売買報告書」が言及されることがありますが、この報告書では2021年度からジェノサイドという言葉は使われているものの、日本に対しても厳しい指摘があるので取り扱いに注意が必要なものです。

2021 Trafficking in Persons Report - United States Department of State

China - United States Department of State

もっとも、「日本政府が人身売買に組織的に関与していると書かれている」などという、報告書に書いてないデマがSNSで振りまかれていたりします。

「人権状況への懸念」はバイデン大統領が習近平国家主席とオンライン会談をした際に示されています。

Readout of President Biden’s Virtual Meeting with President Xi Jinping of the People’s Republic of China - The White House NOVEMBER 16, 2021

President Biden raised concerns about the PRC’s practices in Xinjiang, Tibet, and Hong Kong, as well as human rights more broadly. He was clear about the need to protect American workers and industries from the PRC’s unfair trade and economic practices. He also discussed the importance of a free and open Indo-Pacific, and communicated the continued determination of the United States to uphold our commitments in the region. President Biden reiterated the importance of freedom of navigation and safe overflight to the region’s prosperity. On Taiwan, President Biden underscored that the United States remains committed to the “one China” policy, guided by the Taiwan Relations Act, the three Joint Communiques, and the Six Assurances, and that the United States strongly opposes unilateral efforts to change the status quo or undermine peace and stability across the Taiwan Strait.

日本国の国益を損ねずに、しかし国際社会と協調して共産チャイナへの圧力を強めることができるかどうか。参院での「対中非難決議」の成否に関して、我々有権者の理解度も同時に問われていると言えるでしょう。

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