事実を整える

Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

外務省が日韓交渉記録を公表:徴用工問題「支払は韓国政府」で合意

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「韓国側文書に見る日韓国交正常化交渉(その4)」・季刊「戦争責任研究」第57号66-75P」 李洋秀氏翻訳

7月29日、外務省が日韓交渉記録を公表し、徴用工問題について支払は韓国政府が行うことで合意したことが伺えるものが記者団への説明会で配布されたようです。
※上記画像は違います

併せてこの問題についての誤解に関しても触れていきます。

外務省が日韓交渉記録を公表

徴用工問題「支払いは韓国政府」で合意 外務省、日韓協定交渉の資料公表 - 産経ニュース 徴用工問題「支払いは韓国政府」で合意 外務省、日韓協定交渉の資料公表(産経新聞) - Yahoo!ニュース 外務省が日韓交渉記録公表 徴用工「解決済み裏付け」 | 共同通信

対日請求要綱は8項目で構成され、その中に「被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する」と記載されている。要綱と併せて公表された交渉議事録によると、1961(昭和36)年5月の交渉で日本側代表が「個人に対して支払ってほしいということか」と尋ねると、韓国側は「国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲でとる」と回答した。

重要部分は日本に対して請求された項目には「被徴用韓人(戦時中は当然日本人)の未収金(賃金の不払い分)、補償金及びその他の請求権(慰謝料も含めた請求すべてを指す)が含まれて居たということと、韓国人への支払いは韓国政府が国内措置として行うとされたことです。

外務省のHPではまだこの件がUPされておらず、交渉記録は元徴用工訴訟問題に関する記者団への説明会で配布されただけのようです。

今回公表されたという交渉記録と同じ内容を示している文書は、実は既に別の所で見ることができます。

第5次日韓全面会談予備会談の一般請求権小委員会第13回会合

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日韓会談における対日請求権の具体的討議の分析 吉澤文寿

六衛府さんの上記サイトで画像が添付されているのですが、韓国側の公開文書の日本語訳において、今回公表された内容を肯定する交渉内容が確認できます。

元の出典は「韓国側文書に見る日韓国交正常化交渉(その4)」・季刊「戦争責任研究」第57号66-75P」 李洋秀氏によって原文を日本語に翻訳したものだそうです。

日韓会談における対日請求権の具体的討議の分析 吉澤文寿では、「対日請求8項目」が掲載されています。

5項では「韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓国人の未収金、補償金及び其他請求権」について要求されている事が分かります。

よく「未収金は合意したが…」と言われますが、「徴用工に対しては補償金その他請求権」についても韓国側が要求しており、それに関しては日本が3億円の経済援助という名目で包括的に勘案され、韓国側が国内問題として処理する合意がなされたと言うことです。多くの場所でこの点が誤解・誤魔化されています。

また、韓国大法院の判決についても誤った理解が拡散されています。

韓国大法院が認めたのは単なる慰謝料ではない

韓国大法院が認めたのは単なる慰謝料ではありません。

「日本政府の朝鮮半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の日本企業に対する慰謝料請求権」

  1. 日韓併合が不法な植民地支配である
  2. 侵略戦争の遂行に直結した反人道的不法行為によるものである

このような前提で発生した慰謝料であって、単なる不法行為によって生じた慰謝料請求権ではありません。

「単なる慰謝料請求権」として扱ったならば、それは日本側に請求できないということを大法院も分かっていたのでしょうから、「不法な植民地支配による反人道的不法行為」などという特殊類型を創作したのです。

そのような慰謝料請求権について日韓交渉において検討される事はありませんでした。

なぜなら、そんな類型の慰謝料請求権がこの世に存在し得るということは日韓両国とも認識しえなかったからです。現代から遡って過去の交渉内容を変更する類の話です。

日韓請求権協定の韓国政府による公式解説書

韓国政府の「解説書」入手!やっぱりおかしい大法院判決 - FNN.jpプライムオンライン

「被徴用者の未収金と補償金、恩給等に関する請求、韓国人の対日本政府と日本国民に対する各種請求等はすべて完全かつ最終的に消滅する事になる。」 (解説84ページ)

1965年に韓国政府が発行した日韓請求権協定の公式解説書。

ここでも「被徴用者含む韓国人の日本政府・日本国民に対するあらゆる請求はすべて完全かつ最終的に消滅する」と書かれていたということです。

まとめ:日本政府外務省は交渉記録をUPしたらどうか

現時点ですが、「公表された」とは言いながらも、報道にあるような日韓交渉記録はホームページ上でUPされているわけではありません。単に記者に配布されただけ。

後にメディアが画像付で報じるでしょうが、おそらく恣意的解釈や誤解を招く表現をして読者の印象操作を行うメディアが出てきますから、誰もが検証可能な状態にしてほしいと思います。

情報開示請求かければもらえるのだろうか?

以上