「WHOが(テドロスが)新型コロナウイルスは空気感染と認めた」
という指摘があるので検証しました。
結論から言えばテドロスの言い間違え(不適切表現)です。
WHOのPress briefingsで発言を確認していきます。
- WHOが新型コロナウイルスは空気感染すると認めた?
- テドロスが言い間違えを修正
- イギリス政府の新型コロナウイルスの分類
- WHOのSARS-COV-2の感染経路説明は飛沫感染=droplets,respiratry dropletsで変わらず
- エアロゾル伝播=空気感染するかは不明
- まとめ:テドロスが無能なだけ
WHOが新型コロナウイルスは空気感染すると認めた?
問題のシーンは2月11日の記者会見動画の38分30秒あたりから。
トランスクリプトがWHOのページにあるので以下引用します。
Coronavirus press conference 11 February, 2020:魚拓
Of course Ebola and this are not the same. Ebola is lousy. This is airborne, corona is airborne, it's more contagious and you have seen how it went into 24 countries although it's a small number of cases. In terms of potential to wreak havoc the corona is very different from Ebola; corona has more potency, virulence. We take it more seriously but still the position should be instead of speculation really to focus at the source, to do everything at the source, slow the spread, stop the spread, invest more in containment and based on the situation move into other strategies if necessary.
この部分では、要するに「コロナウイルスは空中伝播する。エボラよりも危険で毒性が強い」と明言しているのが分かります。
この部分が「WHOが新型コロナウイルスは空気感染すると認めた」と言われているものです。
テドロスが言い間違えを修正
しかし、動画の44分33秒くらいからテドロス本人から急遽訂正が入りました。
Coronavirus press conference 11 February, 2020:魚拓
TAG Okay. Sorry, I used the military word, airborne. It meant to spread via droplets or respiratory transmission. Please take it that way; not the military language. Thank you.
要するに「飛沫感染するという意味で使いたかった」という趣旨の発言です。
実は、接触感染との対比での「空中伝播」として"airborne"という単語が用いられ、新型コロナウイルスもその限りで"airborne"の側に分類されるケースがあります。
イギリス政府の新型コロナウイルスの分類
イギリス政府は新型コロナウイルスをSARSやMERSなどの飛沫感染が主な感染経路であるウイルスと一緒に"airborne HCIDs"に含めています。
これは、"contact HCIDs"との対比概念で、接触感染に加えて別の感染経路を持つものをそこに分類しているのです。
テドロス氏が"airborne"と発言したのも、飛沫感染しないエボラウイルス(接触感染が感染経路)との対比する限りでその感染経路と感染力の強さを指摘したのであり、致命率が高いという意味で言っていたのではありません(これまでのWHOの態度全体と文脈から)。
「エボラよりも危険で毒性が強い」というのは、そういう意味と解釈されます。
この人、発音を聞いても分かる通り、英語が下手で語彙力も無いので誤解の無いような適切な表現ができないんだと思います。
WHOのSARS-COV-2の感染経路説明は飛沫感染=droplets,respiratry dropletsで変わらず
How does the virus spread?
The new coronavirus is a respiratory virus which spreads primarily through contact with an infected person through respiratory droplets generated when a person, for example, coughs or sneezes, or through droplets of saliva or discharge from the nose. It is important that everyone practice good respiratory hygiene. For example, sneeze or cough into a flexed elbow, or use a tissue and discard it immediately into a closed bin. It is also very important for people to wash their hands regularly with either alcohol-based hand rub or soap and water.
テドロス発言が言い間違え(不適切な表現)に過ぎなかったことの傍証です。
WHOのSARS-COV-2(新型コロナウイルス)に関するQAページの説明では、"respiratory droplets"と"droplets"と書かれています。
前者は咳やくしゃみの場合を指し、後者は唾や痰を指しているようです。
なので、両方合わせて日本語でいうところの飛沫を意味します。
エアロゾル伝播=空気感染するかは不明
※WHOでは「エアロゾル」と「飛沫核」を別個の分類にはしていないようです。
※日本におけるエアロゾル伝播(≠エアロゾル感染)については各界で用法が定まっていません。以下参照
エアロゾル、飛沫、飛沫核の関係(修正版)
— Y Tambe (@y_tambe) 2020年2月10日
すでにRT/いいね付けてくれた方にはすみませんが、前のやつは念のために消します。すみません。 pic.twitter.com/cNDLEXdsAZ
さらにざっくりと pic.twitter.com/7IV5GiCuu6
— Y Tambe (@y_tambe) 2020年2月10日
関連:エアロゾル感染は空気感染=飛沫核感染と別:飛沫感染と何が違うのか - 事実を整える
Q&A on coronavirusesページの下部にエアロゾル伝播についてのQAもありますが、新型コロナウイルスの感染経路としては今後のデータを確認する必要がある、という表現にとどまっています(2月16日時点)。
したがって、「WHOが新型コロナウイルスは空気感染と認めた」というのは現時点では当てはまりません。
まとめ:テドロスが無能なだけ
後に発言(語彙)を修正しています。
— Tomo (@Tomo20309138) 2020年2月16日
Press Conferenceは全て見て、そして【スクリプト】も確認しましょう。
この人は言い間違えが多いので特に注意です。
Coronavirus press conference 11 February, 2020
リンク:https://t.co/8UbciVIQf3
- 「新型コロナウイルスは空気感染」「コロナはエボラより毒性が強い」とテドロスが発言したのは事実
- しかし、10分後に飛沫感染という意味だと訂正
- 接触感染が主な感染経路であるエボラウイルスとの比較上での発言
- 「コロナはエボラより毒性が強い」とは感染経路に飛沫感染が追加されていることを意味し、致命率が高いということを意味しない
- まとめるとテドロスが無能なだけ
英語圏の新型コロナウイルスの情報を追っていると、どうも日本側と言葉の意味合い・用法にズレがあるようです("airborne"や"aerosol"は要注意)。
なので、日本国内での目線で解釈してしまわないように海外の複数文献に目を通して文脈判断できる人でないと発信するのは誤解を拡散することでしかないなと思います。
ほとんどのマスメディアがこの件を取り上げて騒いでいないのも、こういった解釈が出来ているからです。
以上