はいはい論文のソースは確認しましょう。
- Go Toトラベル利用者が新型コロナウイルス示唆症状を多く経験 の論文
- 陽性者ではなく、風邪でもあり得る「新型コロナ示唆症状」が対象の研究
- 研究者らも科学者としてどうなの?
- 論文タイトル:Association between Participation in Government Subsidy Program for Domestic Travel and Symptoms Indicative of the COVID-19 Infection(GO TOトラベルの利用経験と新型コロナウイルス感染症を示唆する症状との関連について)
Go Toトラベル利用者が新型コロナウイルス示唆症状を多く経験 の論文
Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに – 医療政策学×医療経済学
本研究の限界点
本研究の限界としては、① Go To トラベルの利用が直接的に新型コロナ症状の増加につながったという因果関係は断定できない、② Go To トラベルの利用と新型コロナ症状の発生率との間の時系列的関係が不明、③ 新型コロナ症状を持つ人が、必ずしも新型コロナに感染しているわけではない、④ 新型コロナ症状を持つ人が、その原因としてGo To トラベルの利用を思い出しやすい可能性(思い出しバイアス)等が挙げられます。
本成果は、12月4日付けで、プレプリントサーバーmedRxivに公開されています(査読前原稿)。
- GoToトラベル利用が直接新型コロナ症状の増加した因果関係は断定できず
- GoTo利用と新コロ症状の発生率との時系列的関係が不明
- 新コロ症状者が必ずしも新コロに感染してる訳ではない
- 新コロ症状者がその原因としてGoTo利用を思い出しやすい可能性(思い出しバイアス)等
これを当の研究者らが書いています。
プレプリントなので、内容が形式的に整っているというお墨付きもありません。
特に3番が重要で、ニュースを見ただけでこの可能性に気づかないといけません。
陽性者ではなく、風邪でもあり得る「新型コロナ示唆症状」が対象の研究
この東大研究者らの論文は、「新型コロナを示唆する5つの症状」として
- 発熱
- 咽頭痛
- 咳
- 頭痛
- 嗅覚/味覚異常
を経験していた人の割合と、Go Toトラベル利用者との関連を調べています。
これって、普通の風邪症状や他のウイルス感染症でもあり得るものですよね?
それに、Go To トラベル利用者は「比較的アクティブに動いてる人たち」なわけです。
アクティブに動けば感染症を貰ってくる可能性は上がる、ということが一般的に言えるわけで、そういった症状があるからと言ってただちに新型コロナ感染症に罹っているわけではないということは、当の研究者らも自覚しているわけです。
それをメディアは触れずに拡散しているのはもうノイズの拡散ですよ。
研究者らも科学者としてどうなの?
Go Toトラベル利用者の方が、新型コロナウイルス感染症を示唆する症状をより多く経験していることが明らかに – 医療政策学×医療経済学
<研究者のコメント>
今回の結果は、以下の2通りの解釈が可能です。
① Go To トラベル利用によって新型コロナ感染のリスクが増加した可能性
② 新型コロナの感染リスクの高い人の方がより積極的にGo To トラベルを利用している可能性
このページの文責者であり、論文著者の一人でもある津川友介氏は、このように記述しているわけですが、先述の研究の限界からは、これ以外の可能性もあるわけです。
今回私達の研究チームは今年の8-9月に行われた約28,000人を対象としたアンケート調査(JACSIS研究)で得られたデータを解析しました。
— 津川 友介 (@yusuke_tsugawa) 2020年12月6日
宮脇敦士先生(東京大学)、田淵貴大大先生(大阪国際がんセンター)、遠又靖丈先生(神奈川県立保健福祉大学)との共同研究です。
しかし、ツイートではそういった可能性について全く触れずに拡散していることから、意図的に世論を誘導しようとしている疑惑すら立ちます。
当然、以下の指摘が来ています。
この研究で「GoTo」キャンペーン参加者の方が感染が多かったということにはならない。巣ごもり状態の方が感染しないのは当たり前であり、ロックダウンの方が社会的に正しい政策に違いないという結論は欧米での多くの失敗を考察できていない。https://t.co/nBrkny37OA
— T.Yamasaki(SFSS食の安全と安心) #Masks4all (@NPOSFSS_event) 2020年12月7日
論文タイトル:Association between Participation in Government Subsidy Program for Domestic Travel and Symptoms Indicative of the COVID-19 Infection(GO TOトラベルの利用経験と新型コロナウイルス感染症を示唆する症状との関連について)
著 者:Atsushi Miyawaki, Takahiro Tabuchi, Yasutake Tomata, Yusuke Tsugawa.
プリプリントサイト: MedRxiv
プレプリントの段階に過ぎない「論文」の情報が拡散されるというのは、新型コロナ感染拡大の初期からずっと続いていました。
「論文が出た」だけで飛びつくのは危険ですし、論文の内容が一応正しくても、その体系的な位置づけが理解できないと、エビデンスレベルの判断を誤るので、こういったものは医者と言うよりも医学者の専門的な意見が出るまでは要注意なのです。
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