事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。リンク切れに備えて魚拓を活用しています。

天皇の男系継承は「女性が男を産むことを強いられる」ものだから女系天皇を認めるべきか

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11月5日のモーニングショーにおける菅野朋子氏が「女性・女系天皇を認めない現状では女性は男を産むことを強いられることになる」という指摘がありました。

これについて【#モーニングショー 菅野朋子「女性・女系天皇を認めないのは男を産むことの強制」⇒竹田恒泰「皇室は宮家全体で負担軽減】において一応の指摘をしましたが新ためて考察しました。

モーニングショー 菅野朋子「女性・女系天皇を認めないと男を産むことを強いられている」

菅野朋子氏の主張は「女性・女系天皇を認めないことがどれだけ女性にとって苦痛か。現状では女性が天皇になれないということだけではなく、女性に男子を産むことを強いられることになっている。」というものです。

ここでは特に「女性に男子を産むことを強いられる」点について考えます。

竹田恒泰氏はその負担があることからは逃げずに、宮家全体で「軽減」するために歴史上の先例のある旧皇族の皇籍復帰を主張しましたが、菅野氏に言わせれば「そういう事ではない」とのことでした。

その意味内容は番組内では詳しく語られなかったので、仮定的に論じていきます。

「女性が男を産むように言われる負担」とは

これはどういう意味でしょうか?

仮に男が生まれなかった場合の女性に対する非難」ということであれば、それは科学的に誤りであるということを常識にすれば足ります。

子の性決定はY染色体遺伝子のSRY遺伝子

子の性決定の因子・SRY遺伝子

ほ乳類の性決定遺伝子Sryの発現制御メカニズムの解明に成功 -人間の性分化疾患の原因解明に期待- — 京都大学

哺乳類においては子の性決定はY染色体遺伝子のSRY遺伝子が担っています。

つまり、男性の精子の側が性決定の因子であり、女性側は関係ありません。

ですから、子の性別が男ではなかったことについて女性側を非難するのは(倫理・道徳的にも)科学的にも間違っているということです。

仮に子の性別に「責任」があると観念するならばそれは男性側にあるということです。

実際に女性側を非難しているのは誰か?

現実に出産する女性側を「非難」しているとして、それは姑の関係にあるような人や、週刊誌メディアが面白半分に騒ぎ立てる場合だけだと思うのです。

確かに皇室に男児が生まれないことを残念に思う人が居ますが、それは女性側を責める気持ちでそう感じているわけではないハズです。

ですから、菅野氏が指摘するような「女性側の負担」が仮に「女性に責任があるという非難」であれば、それはもともと存在しないか、科学的常識を広めれば足り、2600年の間1度も例がなかった「女系継承」(雑系にすること)をする必要はないということになると思います。

ただ、「女性側のプレッシャー」についてツイッター上で検討していたら、次項のような指摘がありました。

「男を産むまで妊娠出産を繰り返す事を期待される」という先の見えないプレッシャー

これは男性側には決して存在しないプレッシャーです。

実際に周囲の人間がこのように期待するのか、女性側がプレッシャーに思うのかどうかは別にして、あり得る負担だと思いますので考えていきます。

「男が生まれるまで妊娠出産を繰り返す事を期待」はあり得るのか

現実的に、妊娠出産をした女性に対して男が生まれるまで妊娠出産を繰り返すように言うことはあり得ません。

女性の出産適齢期が過ぎてしまい、或いはリスクが高くなったり、女性の側が意欲を無くせば、それ以上何かを言うことはなくなるでしょう。

ただ、そうなる前までは、皇室の場合には男が生まれなければ可能な限り出産に臨んでほしいと陰ながら期待する人は大勢いると思います。

「皇室に嫁ぐ女性はその覚悟で来ているはずだから」?

「皇室に嫁ぐ女性はその覚悟で来ているはずだから」

という主張もありますが、出産後に母体がどうなるかは不確定であって、本人の意思ではどうしようもなくなる事も多々あるハズです。

それを「女性側の覚悟」の話にするというのは、私は間違っていると思います。

女系・雑系を認めることで新たに発生するプレッシャー

天皇が男系継承である以上、「男を産むことを女性に期待する」ということは決して消えないのであり、それが存在しないと誤魔化すことはできないと思います。

だからこそ、旧皇族の皇籍復帰でその意味での負担を「軽減・分散」する案があります(複数の宮家の女性のうち、誰かに男児が生まれれば良い)。

そして、この負担を「ゼロ」にするために女系・雑系を認めたらどうなるか?

新たな負担が発生することになるのではないでしょうか。

女系の長子優先は早期婚姻・出産のプレッシャーにならないか

子の性別はコントロールできませんから、男系の現在は宮家のどこかで産まれれば良い体制になっています。自分の子(或いは孫)に皇位継承権がなくとも問題ないのです。

他方、女系(雑系)なら子を産みさえすれば子に皇位継承権があることになります。

そして、皇位継承順位は(直系・傍系の違いはあれど)長子優先となるでしょう。
※男子優先の長子優先という案もあるがその場合にはここで問題にしている女性へのプレッシャーは変わらないと思われる

なので、ある時期に早く産んだ方が皇位継承順位が高くなると分かったら、関係女性らに対する「早期婚姻・早期出産プレッシャー」は凄まじいものになるのではないでしょうか?

妊娠する女性に対して、女性にとって重い負担となる「男子が生まれてほしいと期待する」人が居るような世界を措定するならば、【自分のところの子供が天皇になってほしい】と思って女性に負担をかける人間も居ると思われるからです。

「男を産むよう期待されるプレッシャー」をゼロにするために男系継承の仕組みを廃絶しても、こういう「新たなプレッシャー」が生じるだけではないでしょうか?

ここまで女性個人にフォーカスしてきましたが以降は皇室全体に目を広げていきます。

「女系」も認める欧州の王室

モーニングショーでは外国の王室を引き合いに出して日本の皇室との違いを比べていましたが、こういった紹介のされかたがメディアでされる際には、いつも重要な点が抜け落ちています。

側室制度がなく公妾制度があった欧州王室

欧州の王室で男系にこだわらなかったのは(「女系」で継承されてきたのではない)、側室制度が無いことが影響していると思われます。

いずれが先の関係なのかは不明ですが、乳幼児の死亡率が高い時代にあって側室制度がなければ男系のみによる継承は不可能だったのでしょう。

他方で、女系継承も認めていたその前提には、ローマ帝国以来、欧州全体の王室が家族のように連帯していた、ということが関係しているでしょう。

ただ、側室を設けなかったといっても、「公妾制度」がありました。

側室制度との違いは、生まれた子供に王位継承権が無いということです。妾の子は親から爵位を授かって一貴族になっていきました。

外国にも王位継承権者がいるヨーロッパの王室

男系にこだわらず女系継承も認めると(雑系)、外国の王室に王位継承権者が居ることになります。しかも際限がないから王位継承権者が数千人に上る所もあります。

実際に現在のイギリスの王位継承者は約5000人もいます。

そのなかには他国の王も含まれます。

日本のように必ず共通の祖先を持っている=男系で繋がっている者たちと、そうではない者たちとでは、どちらが王位簒奪の危機が高いでしょうか?

姻戚関係を口実に他国を侵略した例

欧州では、ローマ帝国以来欧州全体の王室が家族のようになっていたと書きました。

しかし、そういった姻戚関係がむしろ王位継承権争いを引き起こした例が多くあり、歴史上【王朝の交代】が何度も起きてしまっています。

有名な例が【百年戦争】です。

14世紀、フランス王シャルル4世が没しましたが、継承者が居ませんでした。

そこで、イギリス王エドワード3世は自分の母がフランス王家の出身であることを理由にフランスの王位を要求しました

これをフランスが認めなかったことが百年戦争の発端です。

また、王室が外国の家に合法的に乗っ取られた例があります。

ハプスブルク家のフィリップ王子とスぺイン王女フアナの子のカール5世(スペイン名はカルロス1世)は、当時のスペイン王に男子の後継ぎが居なかったために、1519年、王位をフアナから受け継ぎました。

ハプスブルク家は同様にオーストリア・ナポリ・ハンガリー・ボヘミア・トスカーナなどの王国の王族の姻戚となっていき、これらの領域を含む地帯が【神聖ローマ帝国】とされ、ハプスブルク家が帝位を独占していきました。

女系継承を認めるということは、こういう事態を潜在的に発生させるということでもあるということです。

「現代では起こりえない」

と言う人も居るかもしれませんが、近代国家ではない国が近隣に少なくとも3つ程度あるじゃないですか。むしろ皇室制度そのものを解体する勢いの国が。

『平均台の片足立ちバランスが不安定だから両足で立てばいい』みたいな話

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誤解を恐れずに言えば、男系継承は「不安定」な制度です。

しかし、「不安定」なのは分かりきって敢えてやってるものを、安定するからと言ってやめるのは本末転倒ではないでしょうか?

たとえるならば、体操の平均台の「片足立ちバランス」において、『不安定だから両足で立てばいいじゃないか』などと言うようなものでしょう。

しかも、「不安定」なのは一時的なもので、その訓練をすることによって日常でも優れた身体の姿勢制御能力が身についたり、免疫能力が上がって健康になったりします。

皇統も、一見すると不安定な男系による継承を選択したからこそ、むしろ世界で唯一、1つの血筋の系統が2600年以上続いてきたのではないでしょうか?

皇室という【公的な存在の極限】のものを考える際に、「女性個人の負担」という側面でのみ考えることは果たして適切なのでしょうか?

以上