愛知県が「電凸」音声を公開していたものと第2回検証委員会の会議の動画を削除したことについて、愛知県側の主張する理由が完全に虚偽なので指摘します。
「電凸」音声削除の理由が変遷
あいちトリエンナーレ電凸、抗議の音声が愛知県サイトから削除される | ハフポスト:魚拓はこちら。
【訂正】当初の記事では、音声7本と、会議の様子の動画の今後のアップロードについて「再度アップの可能性も」「またアップされると思う」と記載していましたが、30日午後時点の愛知県文化芸術課への再取材の結果、現時点で今後のアップの可能性は不明とのことから、本文を修正しました。(2019/09/30 16:35)
午前中にハフポストが取材した時点では「電凸」音声を再度アップするとのことでしたが、午後、表現の不自由展の再開へ向けた和解をした後に再取材したら、今後のアップの「可能性は不明」ということでした。
愛知県庁に電話したご報告。
— aaatozzz (@aaatozzz3) September 30, 2019
音声の公開を誰がどう決めたのか?分かりません
公開していた音声を削除した理由?分かりません
公開する旨のガイダンスもなかったのに公開したのか?
9月26日からガイダンスが変わって場合によって公開のガイダンスが流れるらしい(未確認)
大村知事や上山氏に振り回されてる愛知県の職員がかわいそうです。
完全に虚偽の理由:役割を終えたから
トリエンナーレの「電凸」音声、愛知県のサイトから削除…県「一定の役割を終えた」 - 弁護士ドットコム:魚拓はこちら。
県民総務課によると、この一部の電話音声は、9月16日開催の第2回検証委員会で流されていた。その様子は、検証という目的から、インターネット中継されており、その収録動画はYouTubeにアップ、県のウェブサイト上にリンクされていた。音声のみも9月27日からアップされていた。
現在、「表現の不自由展・その後」は、芸術祭実行委と企画展実行委との間で和解があり、展示再開の方向で大きく動いている。同課によると、「こうした一連の流れの中で、(検証という)一定の役割は終えた」として、9月30日にアップされていた動画などをいったん削除したという。
弁護士ドットコムの取材では再開についての言質は取っていません。
しかし、「(表現の不自由展が再開の方向に向かったので)一定の役割を終えた」からいったん削除した、というのは虚偽の説明でしょう。
(そもそもどういう役割として公開されたのかがハッキリとしないが)
なぜなら、音声動画は30日の午前9時半の時点で既に消えており、その段階では名古屋地裁での表現の不自由展側との和解は行われていなかったからです。
その時点では和解するか否かは確定していないのであって、「一定の役割を終えた」と言うことはできないのが時系列から明らかです。
また、表現の不自由展側との和解が確定したからといって、なぜ県民からの抗議電話の公開の意義に影響すると言えるのか、その論理展開が支離滅裂です。
さらに、(いったん)消された動画には第2回の検証委員会の会議の様子の動画があり、この中で「電凸」音声を流していたシーンがあったのですが、それ以外は今後も検証委員会の様子を残しておく価値はあるはずですから、なぜこれについてまでも再アップの予定がハッキリしていないのか首を傾げざるを得ません。
結局のところ、公開した音声を「電凸」であり「犯罪行為である」などと大村知事や上山副座長がレッテル貼りをしていることが不適切極まりない行為であるという指摘が相次いだために、和解にかこつけて理由づけをして削除したというのが実態でしょう。
個人情報保護法、通信の秘密に反するのか?
なお、音声の公開そのものを個人情報保護法違反や憲法上の通信の秘密を侵害したものであるという声がありますが、通信の秘密は通信当事者ではない第三者たる公権力が通信内容を強制的に知得する行為を禁止するものであって、今回のように愛知県側が通信当事者である場面では適用されません。
個人情報保護法上の「特定の個人を識別することができるもの」として今回の音声が該当するかは争う余地はあるとはいえ、本件の音声では会話内容や口調、声の特徴などから(身近な人であっても)個人を識別できると同定できないのではないかと思います。
名誉毀損の事案だが同定可能性が認められた石に泳ぐ魚事件では超特殊事情があった。
さらに、単なる通話音声だけでは個人情報保護法施行令に定められている個人識別符号としての「発声の際の声帯の振動、声門の開閉、声道の形状とその変化」にも該当しません。
参考1:総務省|行政機関・独立行政法人等における個人情報の保護|<3 個人情報の該当性>
映像から特定の個人を識別することができる場合には、個人情報に当たりますが、識別できない場合には当たりません。テープに記録された音声情報も同様です。
「音声だから」というだけで個人情報(個人識別情報)であるわけではないというのがここから伺えます。
以上