選択的夫婦別姓制度や同性婚の前に、既に重大な制度への攻撃が行われている。
- 長崎県大村市議会の同性カップル住民票続柄問題の高濱議員質疑
- 光山千絵議員による9月定例会の質疑:住民票交付や記者会見実施の経緯
- 内閣府男女共同参画局総務課調査室「いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱い」
- 住民基本台帳法の趣旨と同性パートナーについては同居人とするとした法務省の国会答弁
- 大村市「事実婚にまつわる社会保障制度まで認める判断ではない・総務省の不作為が混乱の元」
- 地方自治法に基づく是正の要求等が実施された具体例と訴訟まで行われた実際の例
長崎県大村市議会の同性カップル住民票続柄問題の高濱議員質疑
長崎県大村市において同性パートナーシップ宣誓者の住民票の続柄に異性事実婚の外観を有する「夫(未届)」という記載が為された問題について、12月5日、大村市議会で高濱広司議員による質疑がありました。動画3h36mあたりから住民票の本題について。
******
高濱議員 わかりました。本年ですね、6月13日の議会全員協議会に提出された説明資料にはですね、住民基本台帳事務処理要領の一部が書いてありました。読み上げます。内縁の夫婦は法律上の夫婦ではないが、準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取り扱いを受けているので夫(未届)・妻(未届)と記載するとあります。全員協議会のときにですね、私なら取消に行かせたと発言しましたけれども、結局ですね、この事務処理要領の記載は、各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取り扱いを受けているので、という明確な理由が付いています。ですから直ちに同性カップルに使うことはできないんですよ。これは明らかな事務ミスだと私は思っています。ただですね、もう市長は最終的に判断をして突っ走ってますから、自治体としてですねきちんと理由付けをして事務処理をしなければなりません。お伺いします。打ち合わせで確認しましたけれども、基本決裁を採っていないというのは間違いないでしょうか?
市民環境部長 これまで議会等に説明してきました通り、同性パートナーの方の住民票の続柄につきましては、住民基本台帳事務処理要領の世帯主との続柄の記載方法における内縁の夫婦の考え方に準じて「夫(未届)」と記載できると判断したもので、事務処理ミスとは考えておりません。よって、5月2日の件につきましては、基本決裁はとっていないところであります。
高濱議員 これだけですね重要な行政事務の変更にあたってですね、基本決裁が無いというのは残念な話なんですよ。行政は言ってみれば文書行政です。重要な案件に関しては行政文書を作成してですね、きちんと経過を残さなければいけません。前例がないんですからね慎重にも慎重を期して自治体ってのは事務処理を行います。早速きちんとした事務手続を行うためにですね、基本決裁を取って記録を残して頂きたいと思いますがいかがでしょうか。
市民環境部長 5月2日の件については基本決裁はとっておりませんが、その後の今回の県での総務省への報告、総務省とのやりとり、全員協議会、市長定例記者会見等で説明した内容につきましては、決裁や記録をきちんと記録をしているところでございます。
高濱議員 次の質問に参ります。6月議会の一般質問で村崎議員がですね、元厚労省副大臣の橋本衆議院議員の発言を紹介しました。大村市パートナーシップ宣誓制度におけるよる「パートナー」といった記載を検討しても良かったんじゃないか?という発言ですね。これに対して市長はどうお考えですかと質問をされました。市長は住基法の記載要領の記載例の在り方がもう時代錯誤と認識しておりますので、そこの部分も付きまして総務省に改正を求めていきたいと考えています、という答弁でした。現時点で具体的に総務省に改正を求められましたでしょうか、お伺いします。
市長 住民票の写しの交付に関する本市からの質問に対して9月27日付で総務省から回答いただきました。そして、それについての本市の対応、本市は既に交付した住民票の写しについて特段の修正等を行わないというふうに返しておりますが、それらを10月18日付で報告させていただきました。その中で、住民基本台帳事務処理要領については、早期に必要な見直しを行って頂くよう、総務省に対してお願いをいたしているところでございます。
高濱議員 なかなかですね、いま表記する使うところがないというようなことでね、改正を求めるということですけども、こちら側からですね具体的に例えば同性パートナーだの何かを出すのはですね、確かに難しいのかなとは思いますよ。ですがね、他にも賛同した自治体がございますでしょ。そういったところとですねやはり連携を取りながらですね、そうしてどういった票が適当なのかというのもある程度案を出していかないと、やっぱり話にならないのかなと思います。これでですね、一応こうやりとりする中でで、現在の同性カップルの住民票記載の事務処理については一定の整理ができたと思います。私もですねはっきり理解できていないところがありましたのでですね、今後もでうね、そういったところは連携を取りながら進めていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
******
5月2日に同性カップルに「夫(未届)」の続柄の記載がある住民票を交付した件については、基本決裁はとっていないこと、10月18日付で総務省に対して特段の修正等を行わない返答した際に、住民基本台帳事務処理要領については「必要な見直し」を行うようお願いした、ということが新しい情報でしょうか。
6月議会の村崎議員の質疑については以下でまとめています。
光山千絵議員による9月定例会の質疑:住民票交付や記者会見実施の経緯
光山千絵議員による9月定例会での質疑は議事録があるので引用します。
充実した内容なので、細かく区切りながら紹介します。
大村市 令和 6年 9月 定例会(第4回) 09月09日-05号
◆5番(光山千絵君) 登壇
皆様、こんにちは。5番議員、みらいの風所属の幸福実現党、光山千絵です。先週より体調を崩しておりまして、皆様には大変御心配をおかけしましたが、回復いたしましたので、今日はしっかり質問に臨んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、項目1、市が交付した同性カップルへの住民票の続き柄における記載について。
本件に関しましては、5月28日に当事者の同性カップルの方々と本市が記者会見を行い、その内容が新聞、テレビ、ネットニュースなどで大変大きな話題となりました。その後も様々な影響が出ていますので、改めて今回の市の対応について整理しておきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
(1)住民票交付の経緯とその後の影響について。
まずは、5月2日に同性カップルの方々へ住民票を交付したときの経緯を御説明ください。◎市民環境部長(石山光昭君)
5月2日に、本市でパートナーシップ宣誓をされた方が市民課へ住民異動届を提出され、異動に伴う住民票の続き柄について、まず同居人となることを説明いたしました。
当事者からパートナーシップ宣誓制度の受領証の提示を受けたため、住民票の続き柄について縁故者と記載できることを説明したところ、夫(未届)とできないか相談がありました。
このことについて、市民課内で協議を行った結果、パートナーシップ宣誓制度の受領証の交付を受けている当事者は、住民基本台帳事務処理要領の世帯主との続き柄の記載方法における内縁の夫婦の考え方に準じて夫(未届)と記載できると判断し、そのように記載した住民票の写しを交付いたしました。◆5番(光山千絵君)
それでは、その後、5月28日に記者会見に至るまで、担当課から部長や市長へ報告が上がったのはいつの時点になるのでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
このことにつきましては、担当課から、私、担当部長へ5月17日金曜日に、田中副市長へ5月24日金曜日に、山下副市長及び市長へは5月27日月曜日に報告を行っております。◆5番(光山千絵君)
分かりました。
本市が当該住民票を交付してから他市でも同様の動きが広がっているとの報道がありますが、具体的にどの程度ほかの自治体へ波及しているのでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
各自治体のホームページ等によりますと、鳥取県倉吉市が令和5年10月から実施していましたが実績はなかったと聞いております。
また、令和6年7月1日から神奈川県横須賀市、香川県三豊市、栃木県鹿沼市が、9月2日から神奈川県逗子市と同じく葉山町が同様の記載を行うと公表されております。◆5番(光山千絵君)
分かりました。かなりいろんな自治体にも影響が広がっているということです。
それでは、(2)市が行った記者会見の経緯についてお尋ねいたします。
5月28日に市が記者会見を行うと判断した理由を教えてください。◎市民環境部長(石山光昭君)
住民票の写しの交付を受けた当事者が、5月28日に記者会見を実施されることを前日の5月27日に本市が把握いたしました。
併せて、多くの報道機関から問合せがあり、当事者の方の記者会見の後、速やかに、かつ各社個別にではなく一斉に本市の考え方などについて説明させていただいたほうがよいと判断し、本市の住民票の交付に関する説明会を実施いたしました。◆5番(光山千絵君)
市民からは、議会も了承していたのかと思った、先に説明があったのではなかったのかなどの声もありました。また、事前に全議員への説明もなく、早急に記者会見を開いたことに対して、全国初とのことで注目を集めたかったのではないかなどという市民からの御意見もありました。
記者会見を開かなければならないほど重要なことであるにもかかわらず、なぜ全議員に対して記者会見を開く前に先に説明を行われなかったのでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
5月27日月曜日に、当事者が翌日28日火曜日の13時から記者会見を実施するという情報を把握し、同日28日火曜日、その後、14時30分から本市から説明会を実施いたしました。
この説明会の前に全議員に対して説明することは時間的に難しかったので、27日に全議員に対し翌日28日に説明会を実施することをお伝えし、29日水曜日に28日の本市の説明会の概要について全議員へ文書で報告いたしました。
その後、6月13日木曜日の議会全員協議会において、今回の住民票における続き柄記載の経緯等について説明を行ったところでございます。◆5番(光山千絵君)
今、時間がなかったということをおっしゃったんですけれども、市民の皆様から聞かれたときに説明ができなかったんですよね。議会は了承していたんですかと、これはどういうことだったんですかと聞かれても説明ができませんでした。
私たちは市民の代表として議員をさせていただいていますので、市民の皆様にちゃんと説明ができるように、議会には先に説明をしていただきたかったと強く思っております。◎市長(園田裕史君)
議員から、先ほど全国初ということで注目を集めたかったんじゃないかという、こういう発言がありましたが、一切そういうことはございません。時系列は、今、部長がお答えしたとおりでございまして、最短で説明ができるという形でスケジュールを組みました。
また、議員から、今、議会も了承という言葉が出ましたが、了承を求める場ではなく、全員協議会であっても、それは説明をする場でありますので、了承という認識はそもそも異なるのではないかと思いますし、了承とはどういったことを指して了承ということになるのでしょうか。○議長(城幸太郎君)
反問ですか。◎市長(園田裕史君)
はい。◆5番(光山千絵君)
今、了承と言ったとおっしゃったんですけれども、私が了承と言った部分が自分でよく分からなかったんですが、議会に対して説明を先にしてほしかったというふうに言ったんですけれども、了承を得てほしかったというふうには言っていないんですが、市民の方から、議会が先に了承していたのかと思ったと言われたと言ったんですが、私は別に議会に了承を得てほしいと言ったわけではございません。◎市長(園田裕史君)
市民の方が議会も了承していたのかということを聞かれるということになるので、そういうことをすべきだとおっしゃったので、議員がそういう認識であれば、聞かれた市民の方に了承ということではないんですよとおっしゃったらよかったんではないかというふうに考えます。◆5番(光山千絵君)
私の説明不足でした。了承を得たのかと思ったとは言われたんですが、経緯とかを聞かれたときに説明ができなかったということに対して、私は説明を詳しくしていただきたかったということを申し上げたところです。
5月2日に同性カップルの方々へ住民票を交付したときの経緯
5月28日に市が記者会見を行うと判断した理由
9月9日時点で、神奈川県横須賀市、香川県三豊市、栃木県鹿沼市が、9月2日から神奈川県逗子市と同じく葉山町が同様の記載を行うと公表していること
これらが詳細に語られています。現在は東京都世田谷区と中野区でも同様の制度が敷かれ、世田谷区では実際に「妻(未届)」の記載のある住民票が同性カップルに交付されています。
なお、少なくとも仙台市と行橋市は、このような事務処理を明示的に否定しています。
内閣府男女共同参画局総務課調査室「いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱い」
では、次の質問に移ります。
(3)住民基本台帳法と住民基本台帳事務処理要領について。
本市が記載を行った夫(未届)については、住民基本台帳事務処理要領において、内縁の夫婦は法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ扱いを受けているので、夫(未届)、妻(未届)と記載するとされており、内縁の夫婦の続き柄として記載することが明示されています。
内閣府男女共同参画局総務課調査室が出している、いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱いによれば、法律婚の取扱いと同等のものとして、健康保険の扶養家族や公的年金制度の給付が認められるなど、様々な社会保障制度が認められています。
ただ、そうした権利を有していることが事実婚の場合、住民票を見ただけでは判断ができないので、続き柄に夫(未届)、妻(未届)と記載することで社会保障制度などの申請と受理を合理的に行うことができるよう定められていると考えられます。
それを、本市の場合、準婚として各種の社会保障の面で法律上の夫婦と同じ扱いを受けていない同性カップルに対し事実婚と同様の記載を行ったということが問題であり、他市で同様の記載がこれまでなかったことを踏まえても、これは事務処理要領に全くのっとっていない、許容範囲を超えた対応だったからではないでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
住民基本台帳事務処理要領の世帯主との続き柄の記載方法において、同性パートナーの続き柄に関してどのように記載するかは示されておりません。
また、総務省は、同性パートナーについては同居人と記載すべきと言っておられるようですが、事務処理要領には同居人という続き柄はどういう場合に記載するかは書いてありません。
つまり、議員が言われる事務処理要領の許容範囲というものが明確ではございません。夫(未届)と記載しましたことは自治事務として行ったことであり、自治体の裁量の範囲内と考えております。
自治事務であることと自治体の裁量の範囲内であることは、別の話です。
地方自治法では、自治事務であっても、法令違反等の場合には国は都道府県の執行機関に対して市区町村に対して是正の要求をするよう指示することができ、その後、都道府県の是正の要求があっても当該市区町村が自治紛争処理の審査に付すよう申し出ない場合等には自治体に対して違法確認訴訟をするよう都道府県に指示することができると定められています。(法245条の5第二項⇒法252条第一項)
また、緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは直接大臣から市区町村に対して要求することができます(同4項)*1
住民基本台帳法の趣旨と同性パートナーについては同居人とするとした法務省の国会答弁
◆5番(光山千絵君)
それでは、次の質問に移ります。
住民票は、住民基本台帳法によりその目的や在り方が定められています。まずは住民基本台帳法の目的について御説明ください。◎市民環境部長(石山光昭君)
住民基本台帳法第1条において、市町村において住民の居住関係の公証、選挙人名簿の登録その他の住民に関する事務の処理の基礎とするとともに、住民の住所に関する届出等の簡素化を図り、あわせて住民に関する記録の適正な管理を図るため、住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定め、もって住民の利便を増進するとともに、国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とするというふうに規定されております。◆5番(光山千絵君)
本法律の目的として定められているように、住民票は、唯一、住民の居住関係を公に証明するものであり、住民に関する記録を正確かつ統一的に行うことが求められています。
住んでいる自治体によってその書き方に違いがあったり、本市が言うように内縁の夫婦に準じた書き方はするけれど実際の事実婚とは同様の扱いではないとするなら、正確かつ統一的に行うとの法の趣旨から逸脱してしまうのではないかと思われますが、いかがでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
住民基本台帳事務処理要領における住民票の続き柄につきましては、正確かつ統一的に行うための十分な説明があるとは言えません。
例えば、同要領の続き柄につきましては、妻、子などのほか、同居人、縁故者などがありますが、どういった場合に同居人と記載するかは示されておらず、また縁故者につきましても自治体によっては同性パートナーの続き柄として記載しているところもあります。
同性パートナーの続き柄に関してどのように記載するかは事務処理要領に示されておらず、今回の件は法の趣旨から逸脱しているものとは考えておりません。
もし、今回の件で統一的に行う必要があるとするならば、同性パートナーの続き柄はこのように書くというふうに国が事務処理要領を見直すことが必要と考えております。◆5番(光山千絵君)
平成30年6月8日開催の衆議院法務委員会において、委員からの住民票の続き柄の今の記載について、同性パートナーについてはどのようになっていますかとの質問に対し、当時の総務大臣政務官からは、委員お尋ねの同性パートナーにつきましては、戸籍制度では同性結婚は認められておりませんで、親族関係があると言えないため、世帯主との続き柄につきましては同居人と記載することとしておりますとの答弁があっております。
これによれば同性カップルの場合は同居人との記載が妥当であり、拙速に今回のような本市独自の解釈で続き柄の記載を夫(未届)とするのは間違いであり、やるべきではないと思われます。
本答弁は御存じだと思いますが、住民基本台帳法や住民基本台帳事務処理要領を所管する総務大臣政務官の解釈に反して今回のような措置を取るべきではありません。なぜ今回のような対応をされたのでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
まず初めに、住民票の写しを交付いたしました5月2日の時点では、特に国からの通知もありませんでしたので、先ほど6年前の総務大臣政務官の答弁内容については把握しておりませんでした。
また、この総務大臣政務官の答弁は6年前のものでもあり、こちらはパートナーシップ宣誓をされた方ではなく同性パートナーについての答弁であるというふうに理解しております。
「大村市のものは自治体のパートナーシップ宣誓をした者に対する記載だから、そうではない同性パートナーに関する話は妥当しない」という主張。あり得ないでしょうこんなのは。
パートナーシップ宣誓というのは自治体の条例で定められているに過ぎないものです。それで法律上の義務を回避できるとする見解は、法体系上認められていません。
第196回国会衆議院法務委員会第19号平成30年6月8日*2
大村市「事実婚にまつわる社会保障制度まで認める判断ではない・総務省の不作為が混乱の元」
◆5番(光山千絵君)
次の質問に移ります。
(4)総務省からの回答と本市の対応について。
本市は、当該住民票の交付を行った後に総務省に対し今回の対応が妥当だったのか、誤りであったのかとの問合せを行われました。その後、総務省から回答がありましたが、どのような内容だったのでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
総務省からは、法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けていることを前提として夫(未届)、妻(未届)という続き柄が用いられている。当該続き柄を記載した住民票の写しは、実務上、社会保障制度の適用を判断するための公証資料として用いられており、住民基本台帳法の運用として実務上の問題があるという回答を頂いております。◆5番(光山千絵君)
総務省からの回答に対し市は再質問を行っておりますが、その後の回答はありましたでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
総務省からの回答に対し市からの質問を7月9日付で送っておりますが、こちらについては、まだ現時点で回答を頂いておりません。◆5番(光山千絵君)
総務省の見解として、実務上の問題があり住民基本台帳法の目的に沿ったものとは言えないと示されております。今回の対応を見直すべきと考えますが、いかがでしょうか。◎市民環境部長(石山光昭君)
7月8日に総務省から本市に対し先ほどの回答があり、その翌日の9日に総務大臣の記者会見が行われました。
その中で、総務大臣の発言としまして、総務省としては助言の考え方を丁寧に大村市に御説明申し上げました。私どもとしてはこの助言を踏まえて御判断いただければと考えているところでございますとの総務大臣の言葉がありました。
また、総務省からの回答におきまして、実務上の問題があるとの見解を示されていますが、各種社会保障の窓口におきましては、住民票の続き柄のみではなく、他の提出書類や聞き取りなどから総合的に各制度の適用の可否等を判断しておられるものと考えており、現在、市から国に対し、この実務上の問題がどういうものなのか、質問をしているところでございます。
さらに、市から当初の質問としてお尋ねしております今回の記載が妥当だったのか、誤りだったのかについて、まだ現時点では総務省から回答を頂いておりません。
以上のことから、現時点で今回の対応を見直すことは考えておりません。◆5番(光山千絵君)
住民基本台帳法の目的である住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を逸脱する取扱いを行い、国の意向に従わないことで、今後、国との関係性に影響が出るのではないかとも思われますが、その点はいかがお考えでしょうか。◎市長(園田裕史君)
先ほどから部長が繰り返し答弁させていただいておりますが、まず、逸脱していると考えているということが議員の認識でいいんですよね。そういうふうに周りが思われているということなんでしょうか。議員の認識として逸脱しているというふうにお考えだという御質問だと受け止めてよろしいでしょうか。
逸脱しているとおっしゃっているんですが、まず逸脱していると考えておりません。繰り返し申し上げていますように、自治事務の範囲内であるというふうに住民基本台帳法の中で解釈をしておりますし、総務省からあります実務上の問題ということでございますが、実際の窓口で実務をしているのは各基礎自治体でございます。この各基礎自治体の現場の実務に対して、我々の解釈の中でそう処理できると実務側が判断をしているので、そのことを総務省としては尊重していただきたいというふうに再質問で確認を取っておりますし、いまだ回答はあっておりません。
こういったことから、まだ回答がないということと実務上の問題というのは我々が実務を執行しているといった認識にありますので、今後、何らかの総務省の回答を待ちたいというふうに考えているところでございます。
また、今回の件については、7月8日に総務省から回答を頂いた後に、翌週の16日に総務省自治行政局住民制度課長から本市の市民課長へ直接お電話をいただきまして、丁寧に対応していきたいというふうに丁重に御連絡を先方からいただいているところでございます。
本市が取った対応が間違いであるとか、是正の必要があるというふうな回答があった場合は、その内容の詳細を確認する必要がありますが、いずれにしてもその回答が来ていないので今の時点では回答のしようがない。
加えて、私はずっと会見のときにも申しておりますが、そういった混乱が生じている、また、大村市がこういった事例としては全国で初めての事例ですが、大村市よりも先に鳥取県倉吉市がそういった明記をするというふうに公表をされているにもかかわらず、さらにはパートナーシップ宣誓制度の制度を導入している自治体は全国に400以上あるにもかかわらず、その部分について明確な通知であったり、改正がなかったということ自体がこういった混乱を招いているというふうに考えておりますので、もし我々が改正をするような状況になるんであれば、その前に総務省の記載例の在り方の改正が必要じゃないかというふうに考えております。◆5番(光山千絵君)
報道によりますと、産経新聞の記事では婚姻制度改変につなげるなと題し、大村市の対応は市民や行政の混乱を招くのではないか。家族の在り方や婚姻をめぐる制度は国民の合意が欠かせず、地方から動かすような問題ではない。性的少数者の差別解消や権利擁護は必要だが、社会の理解を欠いたまま拙速に進めればかえって分断を招き差別解消にもつながらないと主張しています。
今回の件に関して市民の皆様に御意見を伺ったところ、肯定的な意見、否定的な意見、両方ありましたが、最も多かったのはよく分からないという御意見でした。
今回、市は当事者の方々に寄り添った対応をされたとは思いますが、たとえそれが正しいことであったとしても、その過程はどんなやり方でもいいのだということになれば、法治主義や民主主義が根底から崩れてしまうおそれもあるのではないでしょうか。
市には、総務省の見解を真摯に受け止め適切な対応をしていただけるよう要望し、本質問は終わります。◎市長(園田裕史君)
今、議員から、一新聞社の考え方というものを披瀝されて、それに基づく質問の締めくくりであったかと思いますが、その産経新聞が書いている論評の中に、事実婚、いわゆる婚姻の制度が変わるというところに対してということがありますが、繰り返し申しておりますが、我々はこれを事実婚というふうに認めてこういった記載をしたのではなく、事実婚の方に記載する住民票の記載ができるという判断をしたことであって、事実婚、さらにそれにまつわる社会保障制度までを認めるというような判断で記載したわけではありません。
あくまで記載ができるのは自治事務の範囲内だというところで判断をして処理したということでございますので、そこは繰り返し言っていますが、そこに及ぶような形で対応したということではないということはしっかり御説明申し上げておきたいというふうに考えております。
大村市「事実婚にまつわる社会保障制度まで認める判断ではない・他の自治体が先に制度を敷いているが、それに対して総務省が何も言わない不作為があったのが混乱の元」と堂々と言い放っています。それは制度は有っても実際にそのような住民票を交付した実績が無かったからでしょう。
9月9日のこの時点では総務省に実務上の問題がどういうものなのか質問し、回答が無いとしていますが、その後、総務省は9月27日に大村市へ送った文書で「(住民票は)できる限り統一的に記録が行われるべきもの」という1999年の最高裁判決を引用し、大村市の記載は「最高裁判決と異なる認識を前提にしている」と指摘し、「改めてご判断をいただきたい」と求めていました。
最高裁判決もWEB公開されています。報道もされており、以下でまとめています。
地方自治法に基づく是正の要求等が実施された具体例と訴訟まで行われた実際の例
地方分権一括法による地方自治法改正前の反省により、違法確認の訴えができるようになっています。
逐条地方自治法 新版 第9次改訂版 / 松本 英昭 著 p1156-1157なお、総務大臣は、東京都知事に対し(平成二十一年二月)、また福島県知事に対し(平成二十一年八月)、東京都国立市及び福島県矢祭町の住民基本台帳法の事務の処理に関し、住民基本台帳ネットワークシステムに接続することを求める「是正の要求」をするよう指示し、東京都知事及び福島県知事は、当該指示に基づき、「是正の要求」をした。しかし、福島県矢祭町については、措置は講じられなかった。このように、「是正の要求」や「是正の指示」があっても地方公共団体が措置を講じないなどの場合において、関与を行なった国等が、地方公共団体の不作為の違法の確認の訴えを提起できる制度が平成二十四年の自治法の改正で定められた(法251の7,252)
法改正後の是正の要求の例としては、文科大臣が沖縄県八重山郡竹富町に対して、義務教育諸学校の教科書用図書の無償措置に関する事務の執行について是正の要求。結果、健教育委員会が竹富町の教科書共同採択地区からの分離を認め、単独採択が可能になったものがあります。
訴訟まで発展した実例として、沖縄米軍基地普天間飛行場の移設にかかる公有水面埋立て承認にかんする事件があります。裁判所が示した和解案を国と県が実行することとしたので、国交大臣が県知事に埋立承認の取消し処分を取り消すことについて是正の指示をした事案(h28.3.16)、県が係争処理委員会へ審査申出(同22日)、委員会が同年6.30に結論、国が7.22に訴訟提起、福岡高裁那覇支部h28.9.16に違法確認判決。最高裁h28.12.20上国棄却。
選択的夫婦別姓制度や同性婚の前に、既に日本国の人身管理制度に重大な問題が発生しているのですが、この事の重大性は、むしろネット上の方が気づいていないようです。
各地の地方議員らが、この問題に取り組んでいることは、もっと取り上げられるべきでしょう。
以上:はてなブックマークをお願いします
*1:(是正の要求)
第二百四十五条の五
2 各大臣は、その担任する事務に関し、市町村の次の各号に掲げる事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該各号に定める都道府県の執行機関に対し、当該事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを当該市町村に求めるよう指示をすることができる。
一 市町村長その他の市町村の執行機関(教育委員会及び選挙管理委員会を除く。)の担任する事務(第一号法定受託事務を除く。次号及び第三号において同じ。) 都道府県知事
~省略~
(市町村の不作為に関する都道府県の訴えの提起)
第二百五十二条 第二百四十五条の五第二項の指示を行つた各大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、同条第三項の規定による是正の要求を行つた都道府県の執行機関に対し、高等裁判所に対し、当該是正の要求を受けた市町村の不作為に係る市町村の行政庁(当該是正の要求があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。次項において同じ。)を被告として、訴えをもつて当該市町村の不作為の違法の確認を求めるよう指示をすることができる。
一 市町村長その他の市町村の執行機関が当該是正の要求に関する第二百五十一条の三第一項の規定による申出をせず(申出後に同条第五項において準用する第二百五十条の十七第一項の規定により当該申出が取り下げられた場合を含む。)、かつ、当該是正の要求に応じた措置を講じないとき。
~省略~
4 各大臣は、第二項の規定によるほか、その担任する事務に関し、市町村の事務(第一号法定受託事務を除く。)の処理が法令の規定に違反していると認める場合、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認める場合において、緊急を要するときその他特に必要があると認めるときは、自ら当該市町村に対し、当該事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。
*2:○松田委員 では、次にお尋ねしたいのは、今、LGBTなど、社会における生き方の多様性が広がりつつあると思います。そういった状況の中で、同性婚、同性パートナーに対しては行政の対応状況はどのようになっていますか。お答えをいただきたいと思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
我が国におきましては、同性間の婚姻は認められておりませんで、また、法律上、それに準ずる地位を認めるいわゆるパートナーシップ制度も設けられておりません。したがいまして、同性のカップルやパートナーの数等の実態については把握はしておりません。
他方、地方自治体レベルの対応ではございますけれども、一部の自治体におきましては、同性のカップルに対して証明書を発行して、その証明書を取得したカップルに家族向け区営住宅への申込み等を認めるなどの取組を行っているところがあるものと承知しております。
○松田委員 事実婚と内縁関係の場合、現在、住民票の続柄にはどのような記載が可能なのでしょうか。総務省の方から御説明いただきたいと思います。
○小倉大臣政務官 お答えいたします。
住民基本台帳法七条におきまして、住民票の記載事項といたしまして、世帯主との続き柄を記載することとされております。
世帯主との続き柄の記載方法につきましては、住民基本台帳事務処理要領におきまして、妻、子、父、母を始め、縁故者、同居人などと記載することとされております。
事実婚の場合の続き柄の記載につきましては、同事務処理要領におきまして、法律上の夫婦ではないが準婚として各種の社会保障の面では法律上の夫婦と同じ取扱いを受けておりますため、夫(未届)、妻(未届)と記載することとされております。
○松田委員 では、住民票の続柄の今の記載について、同性パートナーについてはどのようになっていますか。
○小倉大臣政務官 委員お尋ねの同性パートナーにつきましては、戸籍制度では同性結婚は認められておりませんで、親族関係があると言えないため、世帯主との続き柄につきましては同居人と記載することとしております。
○松田委員 事実婚、内縁関係では、遺族、財産分与など法律婚と同じ取扱いのものがあり、住民票に一定の記載も可能とのことでありますが、同性婚、同性パートナーについてはほとんど何もない状態に近いです。相続については、いずれも認められておりません。
そこで、資料を配らさせていただきましたが、外国においては事実婚や同性婚の制度はどうなっているのでしょうか。また、事実婚のパートナーや同性婚の配偶者、パートナーの相続権はどうなっているのでしょうか、御説明をいただきたいと思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
諸外国の状況につきまして網羅的に調査しているわけではございませんが、国立国会図書館による調査結果によりますと、例えば、オランダ、ベルギー、フランス、スペイン等におきましては同性婚が認められておりまして、これらの国におきましては、その配偶者には相続権が認められております。また、イギリス、オーストリア、スイス等では同性間の登録制のパートナーシップ制度が設けられておりまして、これらの国におきましては同性パートナーに対する相続権も認められていると承知しております。
また、これはフランスでございますけれども、同性間、異性間を問わず、法律上の婚姻とは異なりますPACSというものでございますが、民事連帯契約と呼ばれておりますパートナー制度が設けられておりまして、これらの者につきましても相続権が認められているものと承知しております。
○松田委員 先ほどお答えいただいて、公的な手続などは、できること、できないことがあるわけであります。方向性として、事実婚、内縁関係や同性パートナーでも可能なことをふやす方向で進めているのでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
○小野瀬政府参考人 お答えいたします。
事実婚や内縁関係にある者にどのような法的保護を与えるべきかにつきましては、それぞれの法律や個別の規定の趣旨、目的等に照らして検討する必要があると考えられます。また、国民意識の動向とも関係する事柄でありますことから、現時点でこれを一概に論ずるのは困難であるというふうに考えております。