日韓関係が冷え込む事で、韓国人観光客が来なくなって日本の利益が無くなると言う人が居ますが、ここで訪日外国人旅行消費額を眺めてみましょう。
- 訪日外国人旅行消費額の統計
- 韓国人客はお金を使わない?
- 韓国人客は全体でみると上位2番目の顧客ということに
- 客単価を上げるべき:行政コストとの関係
- 追記:1泊あたりの支出額を比較するべきか?
- 今後は欧州の客が増えるかもしれない
- まとめ:実は韓国人客の減少は痛手になっていない?
訪日外国人旅行消費額の統計
値(速報)及び10-12月期(1次速報)について | 2019年 | 報道発表 | 報道・会見 | 観光庁
観光庁のページに統計が掲載されています。
これを見ると、韓国に顕著な傾向が見られます。
韓国人客はお金を使わない?
1人当たりの旅行支出を見ると、韓国だけが5桁の消費額で、他は6桁の消費額。
内訳をみると、宿泊費と交通費は顕著に少なくて、その他に費やす費用も他の国と比べて軒並み低額になっています。
韓国人客は全体でみると上位2番目の顧客ということに
国ごとの消費額の総額を見ると、韓国人旅行客は中国人旅行客に次いで2番目に多く消費している客になります。
なので、たとえば「経済制裁・報復のために韓国人客が来れないようにしよう」という発想をしていると、日本の観光業に痛手になるということは一般的に言えるでしょう。
客単価を上げるべき:行政コストとの関係
ただし「客単価」という観点から見たとき、韓国人旅行客は優良顧客とは言えません。
「総額が多いから良い」ということはただちには言えません。
なぜなら、人が行きかう所には「行政コスト」がかかっているからです。
あくまでざっくりとした一般論ですが、客単価が低い客が大量にやってきて総額(売上)が大きくても、「利益」は増えないというのは分かりきった話です。
ですから、日本はこれから客単価を高める観光政策にシフトするべきなんじゃないでしょうか。
韓国人客がこれ以上増えても無駄なので、個人単位でお金をたくさん払ってくれる別の国の顧客を開拓した方が日本にとってメリットになる、という考え方もできるのではないでしょうか。
追記:1泊あたりの支出額を比較するべきか?
1泊あたりの支出額で見ると韓国は中国、香港、台湾に次ぐ支出額であると言えます。
上記の表から単純に計算すると韓国人はのべ753万人が来日していることになりますが(訪日外国人数の統計でも2018年は約753万人)、韓国の人口は約5100万人なので人数の伸び代はまだあります。
しかし、1泊あたりの支出額を比べて考えることは、果たして正しいのでしょうか?
まず、一般的に滞在日数が多くなるほど1泊当たりの支出額は低額になっていきます。
その上、「0泊=日帰り」が多い韓国では、1泊あたりの支出額に計算すると高額になるのは当たり前になります。
そのため、1泊あたりの支出額を客単価として捉えて良いかは一考の余地があります。
今後は欧州の客が増えるかもしれない
日EU航空安全協定が実質合意に至りました。相手側が行う航空機の安全性に係る検査結果・認証の相互受入れ、相手側と協力した安全監督の実施によって航空当局による重複検査を可能な限り避ける等、効率的な安全監督を可能とし、双方の運航者等のコスト削減を図るものです。協定の早期署名を目指します。
— 河野太郎 (@konotarogomame) July 29, 2019
この協定は,相手側が行う航空機の安全性に係る検査結果・認証等の相互受入れ,相手側と協力した安全監督の実施等によって,航空当局による重複検査等を可能な限り避ける等,効率的な安全監督を可能とし,日EU双方の運航者等のコスト削減を図るものです。
これはまさにEU諸国からの旅行者が来る際の行政コスト・民間コストの削減に寄与するものでしょう。このように、韓国人客がたとえ減ったとしても、それを補うような政策は着々と打っているわけです。そんなに韓国人客の減少を心配する必要はないのかもしれません。
まとめ:実は韓国人客の減少は痛手になっていない?
沖縄県が25日発表した6月の入域観光客数は前年同月比7%増の86万8200人と、6月として過去最高を更新した。5月まで2カ月連続で減少していた外国客が増加に転じたため。主要国・地域を見ると、台湾や中国本土客の増勢が目立つなか、韓国客だけはマイナスとなった。
県はこの理由について、「中韓関係の改善による中国への渡航需要回復やベトナムなど旅行先の多様化が主因」とし、「今後は日韓関係悪化の影響が懸念される」とみている。
主な国・地域別では、台湾が11%増の10万5300人、中国本土が11%増の6万7900人、韓国が4%減の4万5200人、香港が3%増の2万4200人だった。
外国客は8%増の29万8400人と3カ月ぶりに前年同月を上回った。航空路線の拡充やクルーズ船の寄港回数の増加が寄与した。
日本が対韓輸出管理の見直しを表明したのは7月1日ですから、影響が測れるのは次月の発表ということになります。
他の外国人客が軒並み増加しており、しかも韓国人よりも客単価が高いのですから、韓国人客の減少を殊更に「損失」と捉えることはできないでしょう。
追記:いずれにしても、本稿は消費の中身などの他の要素についてまったく分析していない、上記の表から一般的に有り得る推論を述べたまでですので、これが正しい認識だと言うつもりはありません。むしろ専門家がガチで分析するとどう評価されるのかが見てみたいです。
追記:訪日外国人旅行者の日帰り客の正確な統計が無いのでフェルミ推定しました。
以上