事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

視聴できないテレビもNHK契約義務:イラネッチケー裁判東京高裁判決

 

珍妙な判断だと思います。

視聴できないテレビもNHK契約義務:東京高裁

東京高裁「NHK受信できなくする機器取り付けても契約義務」
2021年2月24日 18時11分

1審の東京地方裁判所は原告の訴えを認め「NHKの放送を受信できる設備に当たらない」と判断して、契約を結ぶ義務はないとする判決を言い渡し、NHKが控訴しました。

2審の判決で東京高等裁判所の廣谷章雄裁判長は「NHKの放送を受信できなくする機器を取り付けたとしても、機器を取り外したり機能させなくしたりすることによって、放送が受信できる状態になる場合は、NHKの放送を受信できる設備に当たる」と指摘しました。

女性の設置したテレビはブースターや工具を使えばNHK放送の視聴が可能になると結論付けたようですが、これはかなり疑問符のつく判断です。

イラネッチケー開発者の掛谷英紀准教授

イラネッチケー開発者の掛谷英紀准教授は、このように指摘。

実際、1審判決は、この常識的な指摘通りの判断をしました。

イラネッチケー裁判1審東京地裁判決

NHKだけ映らないテレビの設置は放送受信契約締結義務が存在しないとする東京地裁判決全文 - 事実を整える

1審判決文を見ると、ブースターの取り付けや工具による取り外しによって視聴が可能になったと認定していますが、ブースターに関しては

ブースター及びそれに附帯する設備の購入費用は加工元テレビを購入した価格を超えており,そのような出費をしなければ被告の放送を受信できないようなテレビジョン受信機は,社会通念上,被告の放送を受信できる設備とはいえない。原告がブースターを所有しているとか,使用しているという立証は全くないから,放送受信契約締結義務が発生するとは認められない。

とし、取り外し加工については

被告は,本件テレビを被告の放送を受信することのできる状態に復元するのは容易に可能であることを主張するが、自ら本件加工を行ったわけではなく,専門的な知識も有しない原告にとっては,このような方法を思い付くことすら容易ではなく,実行することはなおさら困難 

このように判示し、【原告において視聴可能となる現実的可能性】の有無を判断していました。

ところが、高裁の判示は、報道に基づくと、【所有者の状況を問わない論理的な可能性】のレベルで「NHKの放送を受信できる受信設備」該当性を判断しているようです。

おかしい高裁判決

これだと【B-casカードを破棄しても再度交付を受ければ視聴可能だからB-cas装着機構を持つパソコンは全て「NHKの放送を受信できる受信設備」】とされかねません。

なお、本件訴訟は原告の女性が、イラネッチケーを【特殊な方法】で取り付けた民放のみ映るTVを使用していても、NHKの放送受信契約を締結する義務が存在しないことを確認する訴訟を提起した事案であり、NHKの側から「金払え」と言ってきた事案ではありませんから、一般人に対する影響は限定的かもしれません(「パソコンありますがB-casありません」が通用しなくなる」かもしれないが)

ただ、ホテルなどテレビが設置されてる個室毎に受信契約を締結するべきとされているような場所がイラネッチケーに活路を見出そうとしているような場合に、今回のような判断は重くのしかかってくるでしょう。

以上