香川県ネット・ゲーム依存症対策条例素案の中身が分かりました。
具体的にどう危険なのか、香川県民ではない者にとっても無関係ではないということを指摘します。
条例素案が修正されて更に悪化したようです
- 香川県のネット・ゲーム依存症対策条例
- 危険すぎる条例の文章:努力義務ではなく「ものとする」
- 「1日1時間、午後10時まで」
- 小泉進次郎構文
- 子どもの私生活上の行動を規制することの実効性に疑問
- 他人事ではない:パブリックコメントで全国民が反対すべき
- 香川県議会議長の大山一郎
- まとめ:パブコメと香川県の議員への陳情をするべき
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例
県条例素案にゲーム利用時間制限|NHK 香川県のニュース:魚拓
素案にはゲームの利用などについて、高校生以下の子どもを対象に1日あたり平日は60分、休日は90分に制限するとともに、夜間の利用は高校生は夜10時以降、小学生や幼児を含む中学生以下の子どもは夜9時以降、制限することが盛り込まれるということです。
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例は、条例素案をパブリックコメントにかけた上で審議を進めていく方針のようです。
条例素案については香川県公式ではまだですが、こちらで公開されています→コンテンツ文化研究会 / Institute of Contents Culture: 香川県ネット・ゲーム依存症対策条例に関する資料の公開
危険すぎる条例の文章:努力義務ではなく「ものとする」
県民の役割規定が置かれることは少なくないけど、「協力するよう努めるものとする」ではなくダイレクトに「協力するものとする」だもんなぁ。
— 松本ときひろ 弁護士 品川区議会議員 (@matsumoto_toki) 2020年1月10日
条例9条2項や18条では、県民の役割、保護者の役割として「協力するものとする」「させるものとする」という規定ぶりになっています。これは恐ろしいです。
このような条例の場合、通常は「努めるものとする」「努めなければならない」などと書くことで「努力義務」であることを明示するものです。
たとえば『川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例』では、公的機関側が名宛人である条項は「ものとする」ですが、市民側が名宛人である条項は「努めなければならない」と書いてあります。
しかし、ダイレクトに「ものとする」と書かれている条項というのは、かなり拘束力の強い規定であることが一般的に言えます。
さらに悪質なのは、9条2項は『「県又は市町が実施する施策に協力」するものとする』である点です。
個人が努力しろということではなく「俺たちの言うことを聞け」と言ってるのです。
「1日1時間、午後10時まで」
「1日1時間、午後10時まで」というのは、スマートフォン「等」の話のようです。
「スマートフォン等」は条例素案の2条6項で「インターネットを利用して情報を閲覧できるスマートフォン、パソコン等及びコンピューターゲーム」とあるので、ほとんどのゲーム機の利用が対象と言えるでしょう。
しかし、条例レベルでこのような具体的な数字が書かれているというのは【異常】の一言に尽きます。どこの監視社会でしょうか?
小泉進次郎構文
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例素案、前文も凄いな…。色々あるけど第3段落。
— 松本ときひろ 弁護士 品川区議会議員 (@matsumoto_toki) 2020年1月10日
「加えて、子どものネット・ゲーム依存症対策においては」…「ネット・ゲーム依存症対策に取り組んでいかなければならない」
小泉進次郎議員語録みたいになってる。 https://t.co/PAZI0pcmvV
香川県のネット・ゲーム依存症対策条例素案の前文には「子どものネット・ゲーム依存症対策においては」 から始まる文章で、文末が「ネット・ゲーム依存症対策に取り組んでいかなければならない」で終わっているところがあります。
まさに「小泉進次郎構文」です。
いいかげんな起案をしているということが伺えます。
子どもの私生活上の行動を規制することの実効性に疑問
親がどうとでも生活管理できる18歳以下よりも、親の目から離れる18歳~22歳の大学生のオンラインゲームの抑制をどうするか考えた方が、よほど国の未来の為になると思うよ。自省を込めて。
— 藤怜志🥶 (@fuj_sato) 2020年1月10日
「ゲームは一日30分」保護者監視下の元、大人が好ましいと思うゲーム(任天堂など子供向けのゲーム)のみをやって育ちましたが、親元を離れて以降反動で徹夜してやる程ハマったので規制の意味がありません。むしろ、子ども同士の会話にうまく混ざれなくてコミュ障になった
— るり (@rurishinoda) 2020年1月10日
18歳以下よりも親元を離れた者の方が依存症の危険は高まるし、子供の欲求を過度に抑圧する方が将来的な依存症のリスクが高いのではないかという指摘があります。
こうした観点からは、法の目的である「ネット・ゲーム依存症対策」に対する実効性に疑問が生じます。
ネットゲーム依存症の対策をする事には誰も反対してないんですよ。
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2020年1月11日
県民に「ものとする」という努力義務以上の規範を与えて私生活上の行動を制限しようとするのがおかしいんですよ。
相談体制や受診支援等を公的機関の責務にするだけならまだしも。
「依存症対策」は、何も県民の行動を規制することだけがあり得るのではありません。
当該条例にもあるように、県や市の責務として相談支援・予防対策構築をすることで良しとするべきではないでしょうか。
他人事ではない:パブリックコメントで全国民が反対すべき
香川県の出来事だからと言って、他の自治体の私たちも他人事ではありません。
なぜなら、条例起案の段階で「立法の必要性・正当性」が検討されるのですが、【他の自治体での取り組み状況】も参照されることがあり得るからです。
参考:https://www.daiichihoki.co.jp/store/upload/pdf/027722_pub.pdf
昨年12月に可決成立した川崎市の罰則付きヘイトスピーチ規制条例も、大阪市や東京都がヘイトスピーチ規制条例の制定をしていたことが考慮されていました。
したがって、今後香川県において実施されることが予定されているネット・ゲーム依存症対策条例素案に対するパブリックコメントには、是非とも全国から意見を投じていただきたいと思います。
香川県議会議長の大山一郎
さらに、香川県議会議長の大山一郎は、全国都道府県議会議長会理事(代理人) であるため、全国に対する影響力は無視できないと考えられます。
まとめ:パブコメと香川県の議員への陳情をするべき
条例制定の際には他の自治外での取り組み状況が「立法の必要性を示す資料」として提出・検討されるということを指摘しました。
よって、全国のどこからパブリックコメントを出しても、それは決して業務妨害ではありません(余程のことが無い限り)。香川県民だけの問題ではないのですから。そして、香川県民以外の者からの意見がすべて無駄であるということはないのですから。
とはいえ、川崎市のヘイトスピーチ罰則条例では日本属性者が罰則規定の保護対象から外れることについて反対のパブリックコメントが大量にあっても方針が変わらなかったので、地元議員さんへの陳情も同時に進めていく必要があると思います。川崎市の場合も、議員さんがメール等の声を拾っていました。
国会議員の山田太郎氏も動いています。
前から懸念していた香川県ゲーム利用制限条例、いよいよ現実に。ゲーム依存症対策とする条例、依存症外の人にも幅広く90分以内、夜も制限、親にも義務を課すのは誰の何の為なのか甚だ疑問!香川県民の方は是非県にパブリックコメントを!今後他府県や国への波及も懸念されますhttps://t.co/CSyHncBDQI
— 山田太郎 ⋈(参議院議員・全国比例) (@yamadataro43) 2020年1月10日
以上