事実を整える

Nathan(ねーさん) 法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

吉良よし子:選挙期間外の名前入りタスキは公職選挙法違反なのか?

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日本共産党の吉良よし子が公職選挙法違反をしていると言われています。

吉良よし子:公示日前に参議院選挙を明示して襷をして演説

魚拓:http://archive.is/mFue2

※動画の3分40秒くらいから。

いよいよ来月目の前に迫ってまいりました参議院選挙で、ここ東京選挙区から二期目を目指して参ります、吉良よし子でございます。なんとしてでも勝ち抜きます。どうぞよろしくお願いいたします

その後はこれまでの政治活動の報告のような内容だったみたいですが。

これは政治活動の枠を超えた選挙運動ではないでしょうか?

追加。これの19分くらいからの声掛けも、選挙運動でしょう。

選挙運動の定義とは:判例と解釈

最高裁判所第3小法廷 昭和38年(あ)第984号 公職選挙法違反被告事件 昭和38年10月22日
最高裁判所第3小法廷 昭和60年(あ)第608号 公職選挙法違反 昭和63年2月23日

公職選挙法一二九条、一四二条一項にいう「選挙運動」とは、原判決説示のとおり、特定の選挙の施行が予測されあるいは確定的となつた場合、特定の人がその選挙に立候補することが確定しているときはもとより、その立候補が予測されるときにおいても、その選挙につきその人に当選を得しめるため投票を得若しくは得しめる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘若しくは誘導その他諸般の行為をなすことをいうものと解するのが相当であり

これをコンパクトにすると「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」となります。

総務省|現行の選挙運動の規制

参院選の存在を明示した上で名乗り、「なんとしてでも勝ち抜きます。どうぞよろしくお願いいたします」と言ってその後に自身のこれまでの政治活動を振り返ったりするのは、上記に当たるのではないでしょうか?

「選挙の公約を言わなければ…」などということはありません。

まぁ、吉良議員は「最低賃金の引き上げや学費の値下げを訴え」てるので、マニフェストを言ってることになりますよね。

共産党の吉良議員:本人の名前入りタスキをかけて演説

ネット上では「公示日前に本人の名前入りタスキをかけて演説」が問題視されてます。

この根拠は選挙運動時の文書図画の掲示について定めた公職選挙法143条1項3号とされています。

(文書図画の掲示)
第百四十三条 選挙運動のために使用する文書図画は、次の各号のいずれかに該当するもの(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては、第一号、第二号、第四号、第四号の二及び第五号に該当するものであつて衆議院名簿届出政党等が使用するもの)のほかは、掲示することができない。
ー中略ー
三 公職の候補者(参議院比例代表選出議員の選挙における候補者たる参議院名簿登載者で第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されているものを除く。)が使用するたすき、胸章及び腕章の類

たすき」が公職選挙法上で表れているのはこの条文だけです。

なので、反対解釈をして、「選挙運動のためでない場合には、たすきは掲示することができない」と言われています。

ただ、実際には運用はバラバラです。

おそらくですが「この条文は選挙運動の場合について規定しているだけで、政治活動の場合については何も言ってない」という解釈があるのだろうと思います。

そこで、最近出た政府の閣議決定を見てみましょう。

政府の閣議決定の答弁書

衆議院議員高木錬太郎君提出選挙運動・政治活動の態様に関する質問に対する答弁書

平成三十年十二月十四日受領 答弁第一一四号
内閣衆質一九七第一一四号 平成三十年十二月十四日

公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(公職にある者を含む。以下「公職の候補者等」という。)の政治活動のために使用される当該公職の候補者等の氏名又は氏名が類推されるような事項を表示する文書図画及び公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第百九十九条の五第一項に規定する後援団体(以下「後援団体」という。)の政治活動のために使用される当該後援団体の名称を表示する文書図画については、同法第百四十三条第十六項各号に掲げるもの以外は掲示することができないこととされている。

一方、後援団体以外の政党その他の政治活動を行う団体の政治活動のために使用されるたすきについては、一般的には、選挙運動のために使用されるたすきと認められない限りにおいては、掲示することができものと考えている。
 いずれにしても、個別の行為が同法に違反するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。

後援団体以外の政党その他の政治活動を行う団体の政治活動のために使用されるたすきについては「選挙運動のため」 でなければ一般的にはたすきをかけることは可能、しかし、個別具体的な判断になる、ということが明言されています。

他方、公職の候補者等は政治活動のためには143条16項各号に掲げるもの以外は掲示できないと書かれています。

さて、吉良よし子の演説は政党等の団体の政治活動ではなく、自身の活動についてのものであると考えられます。なので、143条16項各号のものしか掲示できないと思いますが、143条16項各号には、「たすき」はありません。

143条16項

三 政治活動のためにする演説会、講演会、研修会その他これらに類する集会(以下この号において「演説会等」という。)の会場において当該演説会等の開催中使用されるもの

唯一、この規定がどう理解されているかがわかりませんが、たすきがこの中に含まれて居るとは考えられないでしょう。

よって、吉良よし子の行為には公職選挙法違反の疑いがあるということです。

まぁ、事前運動なのか、掲示規制違反なのかが不明ですが。

まとめ:たすきの是非は個別具体的に判断される

結局のところ、吉良よし子が公職選挙法違反か否かは、選挙管理委員会をはじめとして最終的に検察がどう判断するかにかかっています。

ただ、仮に違反ではないとしても

『日本共産党は、グレーのものであれば何でもやりまっせ!!』

と言っているようなものでしょう。

それって、公党としてどうなんでしょうね?

以上

日本共産党が破壊活動防止法上の調査対象団体であるソース