事業者への兵糧攻めをやめろ
- 消費者庁の公益通報者保護制度検討会
- MUFG「濫用的通報が半数、承認欲求目的が保護なら釈然としない」
- 事業者に外部通報の保護要件まで周知義務を課すのは企業に過大な負担
- 怪文書を公益通報と扱う義務が課される世界の末路が兵庫県齊藤知事の県民局長文書問題
消費者庁の公益通報者保護制度検討会
消費者庁では公益通報者保護制度検討会が定期的に開催されており、市井の事業者からのヒアリングなどを通して現行制度の課題等を把握、法改正や指針の改定に繋げようとしています。
公益通報者保護法は兵庫県斎藤知事の怪文書・県民局長懲戒処分の事案で話題になりましたが、この制度自体の性質によって引き起こされたと言えます。
この検討会の中で、非常に興味深い指摘がありました。
MUFG「濫用的通報が半数、承認欲求目的が保護なら釈然としない」
MUFGコンプライアンス統括部長片山
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年10月6日
>濫用的通報,不正な目的について実務では公序良俗に反する形ではないが自己の利益を図る目的と思われる通報者が少なからず存在,我々は受付時に目的の吟味や推測して対応を変える事はしないが仮に分析すると半数近くはそうしたものが含まれてるというのが肌感覚の実態 pic.twitter.com/UoNdKc1GCn
>不利益取扱いの抑止救済において、自分が嫌な人を異動させたい・自分が快適なように職場環境を変更させたい・主張を認めさせることで自己承認欲求を満たす目的の通報者が、通報したという事実のみをもって保護される事になるならば釈然としないというのが実務としての実感https://t.co/BIgPcT7wlS
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年10月6日
10月2日の第5回検討会では、三菱東京フィナンシャルグループのコンプライアンス統括部長片山氏がいくつか重要な発言をしていました。
2 点目は、濫用的通報についてです。濫用的通報の主なものには、不正な目的による通報があります。不正な目的については、公序良俗に反する形で、自己または他人の利益を図る目的などと現行では整理されています。実務の観点から言うと、公序良俗に反する形ではなく、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報者は、少なからず存在する気がします。私たちが実際に通報を受けた場合、通報者の目的について吟味はしませんし、その目的を推測して、対応を変えることも全くありませんが、仮にその点を分析すると、それが半数近くは含まれているのではないかと実務の肌感覚として持っています。
その思いがあったとしても、会社を良くするために真摯に向き合うのが私たちの日々の苦しみでもあります。例えば、あくまで推測ではありますが、自分の人事上の処遇を有利にする目的、自分が楽なように業務フローを変更させる目的、自分がしたくない仕事をしなくて済むようにする目的、自分が嫌な人を異動させたい、自分が快適なように職場環境を変更させる目的、会社に不満を述べることで自身のストレスを発散させる目的、自分の主張を認めさせることで自己承認欲求を満たす目的などではないかと考えたくなるような通報も存在します。これらは当然ながら会社として法令順守等の観点で是正すべき状況が生じているという趣旨で通報されるものなので、私たちがどのように感じようとも対応自体は全く変えていないことは強調しておきます。
こうした実態はそれなりの規模の会社なら多々あるようですし、何なら行政の庁舎内なんて政治的な思惑で出回る怪文書も混じってくる。
(東京都でも「土壌Xデー」なんてありましたよね。)
こうした実態を前提に、公益通報者保護制度について、貴重な提言がありました。
消費者庁の見解としては、単に事業者に対する反感などの公益を図る目的以外の目的が併存しているだけでは不正な目的とは言えない、誇張した通報であっても虚偽でない限り、直ちに犯罪には該当しないと整理しています。先ほど言ったとおり、従業員からなかなか100 パーセントの信頼を得られていない弊社の実態に照らすと、濫用的通報に罰則が導入された場合、労働者を萎縮させてしまうデメリットが生じることは理解できます。一方で、この後に述べる不利益取り扱いの抑止、救済では、例に挙げたような通報者のかたがたが通報した事実のみをもって保護されることになると、実務として釈然としない思いがします。
大企業における濫用的通報は9月の中間論点整理でも言及されていました。
安易に「通報」要件を認めてしまうと濫用的通報によって事業者が疲弊し、単なる兵糧攻め、経済活動の妨害になるということは、さんざん指摘してきました。
公益通報者保護制度検討会
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年10月2日
>大企業の内部通報窓口には公益通報には該当しない通報が多数なされており、従事者の負担が非常に大きい
日本の企業の業務効率を阻害する工作かな?
公益通報制度が経済活動を歪める規制にならないようにしなければならない。だから兵庫県のような濫用的通報は許されない pic.twitter.com/3yGfIo2TET
事業者に外部通報の保護要件まで周知義務を課すのは企業に過大な負担
第5回公益通報者保護制度検討会
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年10月5日
>赤堀一成委員
事業者に外部通報の2号3号通報の保護要件まで周知義務を課すのは企業に過大な負担を強いることに
企業が優先すべきは内部通報体制の整備と効果的な運用
外部通報の保護要件を詳細に把握し、従業員等に適切に周知するのは実務上困難であり現実的ではない pic.twitter.com/TFHWokcdc0
第5回公益通報者保護制度検討会
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年10月5日
>赤堀一成委員
周知義務は罰則付きではなく努力義務にして頂きたい
仮に罰則を導入するなら構成要件として周知義務の内容を具体的且つ明確定める必要
周知すべき事項や適用範囲が不明確であれば、企業は過剰な対応を強いられ、コンプライアンス体制に過度な負担を強いる pic.twitter.com/BxQkqJfb0K
赤堀一成委員は、大要「事業者に外部通報の2号3号通報の保護要件まで周知義務を課すのは企業に過大な負担を強いることに」「企業が優先すべきは内部通報体制の整備と効果的な運用」「外部通報の保護要件を詳細に把握し、従業員等に適切に周知するのは実務上困難であり現実的ではない」「周知義務は罰則付きではなく努力義務にして頂きたい」「仮に罰則を導入するなら構成要件として周知義務の内容を具体的且つ明確定める必要」「周知すべき事項や適用範囲が不明確であれば、企業は過剰な対応を強いられ、コンプライアンス体制に過度な負担を強いる」と指摘しています。
こうした広範囲な義務を課すことは企業に過剰な負担を強いることになり、事業活動を阻害することに利用されかねません。
また、探索禁止義務についても、法改正の必要が指摘されています。
第4回公益通報者保護制度検討会2:12:56~で山口弁護士も探索との関連から法文の改正をするべきとの見解を述べています。https://t.co/dSqu3aPyyg
— Nathan(ねーさん) (@Nathankirinoha) 2024年9月25日
現行法の法文は、元々は内部通報を念頭に置かれていた規定があったのに、なぜか指針の策定の途中で無理やり理解が捻じ曲げられ、義務の対象が拡大したという実態がありました。
こうなったのは指針とその解釈の策定が、法文を作成した者らの意思から離れて独善的に進められた経緯があったためでした。
このことが兵庫県斎藤知事の県民局長文書・懲戒処分事案に影響しています。
怪文書を公益通報と扱う義務が課される世界の末路が兵庫県齊藤知事の県民局長文書問題
怪文書を公益通報と扱う義務が課される世界の末路が兵庫県齊藤知事の県民局長文書問題でした。「通報」要件を満たしていないとしなければ、事業者に過大な負担をかけさせることができてします。
それは日本企業の競争力を削ぎ落し、海外企業との競争を考えた際にハンディキャップとなるでしょう。
公益を考えてきちんと実態を明らかにする意思を持って告発する者など、稀です。
私利私欲の捌け口に公益通報者保護制度が悪用されるような仕組み・法文・法解釈をしてはいけないと思います。独善的な正義感・理想論で省庁が規制をかけるべきものではない。濫用的通報への刑事罰もそうですが、それ以前の所で発想を変えなければいけないと思います。
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